基本手当日額の計算シュミレーションと給付率の仕組み

基本手当日額の計算シュミレーションと給付率の仕組み

基本手当日額の計算・シュミレーションで給付額を正確に把握する方法

退職したら扶養に入れると思っていても、基本手当日額が3,612円を超えると社会保険料が別途かかり、手取りが予想より大幅に減ります。


📋 この記事の3つのポイント
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基本手当日額の計算は2ステップ

「退職前6ヶ月の賃金総額÷180=賃金日額」を出し、そこに年齢別の給付率(50〜80%)をかけることで基本手当日額が確定します。ボーナスは計算に含まれない点に注意です。

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給付総額は「日額×所定給付日数」で決まる

所定給付日数は離職理由・年齢・雇用保険加入期間で90日〜330日まで変動します。会社都合と自己都合では受給総額が数十万円単位で変わるケースがあります。

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日額3,612円の壁と不正受給リスクに注意

基本手当日額が3,612円以上になると扶養から外れ、国保・年金の保険料負担が発生します。また、受給中のアルバイト未申告は不正受給となり、受け取った金額の最大3倍を返還するペナルティが科されます。


基本手当日額の計算で使う「賃金日額」の正しい出し方と注意点


基本手当日額を計算する上で、まず押さえなければならないのが「賃金日額」という概念です。これは、退職日直前の6ヶ月間に支払われた賃金の合計額を180で割った金額のことで、すべての計算の起点となります。


ここで多くの方が見落としがちなのが「何を賃金に含めるか」という点です。基本給はもちろん、残業代・役職手当・住宅手当・通勤手当(非課税分含む)・家族手当など、毎月経常的に支払われるものはすべて含まれます。一方、賞与(ボーナス)・決算賞与・退職金・結婚祝い金といった「3ヶ月を超える周期で支払われる賃金」や「臨時に支払われる賃金」は計算から除外されます。


ボーナスが多い給与体系で働いている人は要注意です。仮に年収600万円でも、うち200万円がボーナスなら、月給ベースで計算される賃金日額はかなり低くなります。「年収600万円だから失業手当も高いはず」という先入観は危険です。賞与を除いた月給ベースで考えることが基本です。


計算式を整理すると、以下のようになります。










項目 計算式 含まれるもの・含まれないもの
賃金日額 退職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180 基本給・残業代・各種手当 ✅ / ボーナス・退職金 ❌


また、計算の基礎となるのは「手取り額」ではなく「額面給与(総支給額)」です。手取りから逆算しようとすると、控除額の分だけ賃金日額が低く見積もられてしまいます。給与明細の「支給合計欄」の数字を使うことが基本です。


つまり「賃金日額=ボーナス抜き・額面の月給ベース」が原則です。


参考:厚生労働省による基本手当日額の算定基準(令和7年8月1日改定版)
厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります(令和7年8月1日から)」PDF


基本手当日額のシュミレーション:年齢別の給付率と上限額の仕組み

賃金日額が算出できたら、次に年齢ごとの「給付率」をかけて基本手当日額を求めます。給付率は一律ではなく、賃金が低い人ほど高い率が適用される「逆進的な設計」になっています。低所得者ほど手厚く保護されるという考え方に基づいています。これは意外ですね。


給付率の範囲は原則50〜80%です。ただし60〜64歳は45〜80%と、やや低めに設定されています。また、年齢ごとに基本手当日額には上限額が設けられており、令和7年8月1日以降は以下の通りです。









離職時の年齢 賃金日額の上限額 基本手当日額の上限額
29歳以下 14,510円 7,255円
30〜44歳 16,110円 8,055円
45〜59歳 17,740円 8,870円
60〜64歳 16,940円 7,623円


たとえば29歳で月給30万円(賃金日額:約10,000円)の人の場合、給付率は約62%となるため、基本手当日額は約6,200円になります。これが1ヶ月(28日分)の給付で計算すると、1回あたりの振込額は約17万3,600円です。


ポイントは「上限額を超えた分は切り捨て」という点です。たとえば45歳で月給60万円(賃金日額:約20,000円)の人でも、上限額の17,740円が適用され、基本手当日額は8,870円が上限になります。高収入の方ほど、「想定より少ない」と感じやすいです。


この上限額・下限額は「毎月勤労統計」のデータを基に、毎年8月1日に改定されます。退職のタイミングによっては、受給途中で日額が変わるケースもあります。かならず最新のリーフレットで確認が必要です。


なお、下限額は年齢に関わらず全年齢共通で「2,411円(令和7年8月1日以降)」です。


参考:給付率や上限額の詳細な計算方法については以下のページが参考になります
失業給付(基本手当)早見表|令和7年8月1日現在の上限額一覧


基本手当の計算シュミレーション:年齢・月収・離職理由別の受給総額モデルケース

計算式の理解を深めるために、具体的なモデルケースで受給総額をシュミレーションしてみましょう。条件によって総額が大きく変わることが実感できます。





























ケース 年齢・月給・退職理由 賃金日額 基本手当日額 所定給付日数 受給総額(目安)
Aさん(20代・自己都合) 27歳・月給25万円・勤続4年・自己都合 約8,333円 約5,707円 90日 約51万円
Bさん(30代・自己都合) 34歳・月給30万円・勤続12年・自己都合 10,000円 約6,207円 120日 約74万円
Cさん(40代・会社都合) 45歳・月給35万円・勤続15年・会社都合 約11,667円 約6,494円 270日 約175万円


同じ30代前半・月給30万円でも、勤続9年の自己都合退職なら給付日数が90日で総額約55万円になりますが、勤続12年だと120日に延びます。たった3年の差で、受給総額が約19万円違ってきます。


ここで重要なポイントをひとつ。自己都合退職の場合、ハローワーク離職票を提出してから7日間の待期期間の後、さらに「給付制限期間」が設けられます。2025年以降、自己都合退職の給付制限は原則2ヶ月(一部の条件を満たせば1ヶ月)に短縮されましたが、それでも最初の約2ヶ月間は受給できません。


一方、会社都合(特定受給資格者)の場合は7日間の待期期間のみで、その後すぐに給付が始まります。給付日数も最大330日と大幅に優遇されます。Cさんのケースのように、同じ勤務条件でも離職理由の違いで受給総額が100万円以上変わるケースは珍しくありません。


離職理由の認定は退職者の一存では決まりません。会社がハローワークに申告し、両者の言い分を踏まえてハローワークが最終決定します。退職前に、離職理由の認識をあらかじめ確認しておくことが重要です。









離職理由 所定給付日数の範囲 給付制限
自己都合(一般) 90〜150日 原則2ヶ月あり
会社都合(特定受給資格者) 90〜330日 なし
特定理由離職者(契約満了など) 90〜330日 なし
定年退職 90〜150日 なし


会社都合か自己都合かは、受給総額を大きく左右します。


参考:離職理由別の所定給付日数の詳細はこちら
ハローワーク公式「基本手当の所定給付日数」(厚生労働省)


基本手当日額が3,612円を超えると扶養から外れて社会保険料が発生する仕組み

失業保険は非課税所得のため「税金はかからない」と知っている方は多いです。ただし、社会保険(健康保険)の扶養判定では話が別です。


社会保険の扶養に入れる収入基準は「年収130万円未満」です。この130万円を日割りすると、130万円÷12ヶ月÷30日=3,611.1円となります。そのため、基本手当日額が3,612円以上の場合は「年収130万円以上になる見込みがある」とみなされ、社会保険の扶養から外れることになります。


これを「日額3,612円の壁」と呼びます。要注意ですね。


扶養から外れると、国民健康保険と国民年金に自分で加入・納付しなければなりません。2025年度の国民年金保険料は月1万7,510円(2026年度は月1万7,920円)、国民健康保険料は前年所得や居住地域によって異なりますが、たとえば前年所得300万円の東京都新宿区在住の場合は月約2万7,615円(40〜64歳以外)が目安とされています。


合計すれば毎月4〜5万円以上の社会保険料が発生する可能性があります。これは受給している基本手当日額の金額によっては、受給額よりも出費の方が大きくなりかねません。


注目すべき点がもう一つあります。基本手当日額が3,612円未満なら受給期間中も扶養に入れますが、受給終了後や待期期間中・給付制限期間中は扶養に入れる可能性があります。つまり「扶養から外れているのは受給している期間だけ」という選択肢も存在します。


受給期間中に扶養から外れた後、受給終了後に再度扶養に入る手続きをすることで、トータルの社会保険料負担を抑えられます。手続きは配偶者の勤め先の健康保険組合を通じて行います。


60歳以上の方は収入基準が異なり、年収180万円未満が扶養条件となるため、基本手当日額5,000円以上で扶養を外れることになります。


参考:失業給付と扶養の関係についての詳細


基本手当の受給中にバイトをすると日額が減額される仕組みと不正受給リスク

基本手当の受給中にアルバイトをしてもよいかどうかは、多くの人が気になるポイントです。原則として「週20時間未満かつ31日以上継続しない」範囲のアルバイトであれば認められています。ただし、金額の多い少ないにかかわらず、ハローワークへの申告が義務です。


問題になりやすいのは「少額だから申告しなくていいだろう」という判断です。これは厳密には不正受給にあたります。


アルバイト収入を申告した場合のルールはこうなっています。アルバイト収入から控除額(1,391円)を差し引いた金額と、基本手当日額の合計が「前職賃金日額×80%」を超えると、超えた分の手当が減額されます。また働いた日数分の手当が「先送り(繰り越し)」になることもあります。


一方、申告せずにアルバイトをして受給し続けた場合はどうなるか。不正受給が発覚すると、以下の3つのペナルティが課されます。



  • 🛑 支給停止:不正が発覚した日以降の失業手当が即日停止される

  • 💸 返還命令:不正に受け取った全額の返還が命じられる

  • ⚖️ 納付命令(3倍返し):悪質な場合は返還額に加えてその2倍の納付を命じられる(合計で不正受給額の3倍)


たとえば、不申告のアルバイトで3ヶ月間・合計30万円分を不正受給したケースでは、最悪の場合90万円を支払う義務が生じます。「バレないかもしれない」という考えは危険です。


なぜバレるかというと、ハローワークは税務署と情報を共有しており、確定申告源泉徴収票から収入の事実が明らかになります。また、アルバイト先の企業から雇用保険の手続きがされた場合も、自動的に発覚します。「1時間だけ」でも就労の事実がある日は申告が必須です。


申告は義務と割り切って、正直に申告することが最も安全な選択です。申告した場合でも、ルールの範囲内なら手当の全額がゼロになるわけではありませんし、繰り越しになった日数は受給期間内に後日受け取れる仕組みになっています。


参考:不正受給の事例と罰則についての行政の公式案内
大阪労働局「不正受給について(事例等)」(厚生労働省)


基本手当と再就職手当の関係:早期就職すると損しないどころか得をする仕組み

「失業手当は満額もらってから再就職すべき」という考え方は、実は必ずしも正しくありません。早期に就職した方が、トータルの受取額が増えるケースがあります。


所定給付日数の3分の1以上が残っている状態で安定した職に就いた場合、残日数に応じた「再就職手当」が一括で支給されます。具体的な計算式は以下の通りです。



  • 残日数が所定給付日数の3分の2以上のとき:残日数 × 基本手当日額 × 70%

  • 残日数が所定給付日数の3分の1以上(3分の2未満)のとき:残日数 × 基本手当日額 × 60%


たとえば、所定給付日数120日・基本手当日額6,000円の人が、残60日のタイミングで就職した場合、再就職手当は「60日 × 6,000円 × 60% = 21万6,000円」が一括で受け取れます。満額受給を待つと最後の60日分で36万円が受け取れる計算ですが、再就職後の給与収入も加わるため、経済的なトータルは早期就職の方が上回ることがほとんどです。


早期再就職はお得です。


なお、再就職手当には受給条件があります。受給資格決定日より前から内定していた会社への就職はNG、離職前の会社への再就職もNG、離職後すぐの就職も1ヶ月経過後でなければ受給できない(自己都合の場合)などの制限があります。


もう一つ知っておきたいのが「就業促進定着手当」です。再就職手当を受給後、再就職先での賃金が前職より低い場合に、差額の一部を補填してくれる制度です。この存在を知らずに申請しない人が多いため、再就職後も忘れずに確認しておきたい給付です。


再就職手当の申請はハローワークへ「就職日の翌日から1ヶ月以内」に行う必要があります。申請には期限があります。就職が決まったタイミングですぐにハローワークに相談し、手続き期限を確認しておくことをおすすめします。


参考:再就職手当の受給要件と申請方法についての詳細
マネーフォワード クラウド「再就職手当とは?受給額の計算方法や手続き方法を解説」




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