

給付制限期間中でも再就職手当を申請すると、受け取れる金額が逆に増えるケースがあります。
まず「給付制限期間」という言葉の意味から確認しておきましょう。失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取るためには、退職後にハローワークで求職申込みを行い、7日間の「待期期間」を経る必要があります。この待期期間はすべての離職者に共通です。
問題は、待期期間のあとです。会社都合による退職(特定受給資格者)や、正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者)であれば、待期期間が終わればすぐに受給できます。ところが、正当な理由のない自己都合退職の場合は、さらに「給付制限期間」という待ちの期間が加わります。
つまり、給付制限期間とは「受給資格はあるのに、一定期間は支給しないよ」という国が設けたルールです。
これが原則です。
なぜこのようなルールが存在するのでしょうか?雇用保険法第33条の趣旨としては、自己都合退職者は「労働意欲が低い」または「再就職に積極的でない可能性がある」とみなされるため、給付制限によって積極的な求職活動を促す目的があります。また、雇用保険を生活費として安易に利用することを防ぐ意味合いもあります。
給付制限期間中は無収入になりますが、週20時間未満であればアルバイトが認められています。これは覚えておけばOKです。
結論から言うと、2025年(令和7年)4月1日以降に離職した人が対象です。
それ以前の2025年3月31日以前に退職している場合は、従来通り原則2ヶ月の給付制限が適用されます。この「離職日の基準」は多くの人が混同しやすいポイントです。ハローワークで手続きをした日ではなく、あくまで「退職日」を基準に判断されます。
| 離職日 | 給付制限期間(原則) | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年3月31日以前 | 2ヶ月 | 旧ルール適用 |
| 2025年4月1日以降 | 1ヶ月 | 新ルール適用(条件あり) |
この改正は、2024年(令和6年)に成立した雇用保険法改正の一環です。背景には、労働者が安心して転職・キャリアチェンジできる環境を整えようとする政府の方針があります。コロナ禍以降、転職市場が活性化し、給付制限の長さが転職行動の障壁になっているという指摘が続いていました。
厚生労働省の公式発表によると、この改正によって「待期期間(7日間)+給付制限(1ヶ月)=約1ヶ月半」で受給が開始できるようになりました。以前は「7日間+2ヶ月=約2ヶ月強」だったことを考えると、受給開始までの期間が約1ヶ月近く前倒しになったことになります。生活費への影響は大きいですね。
厚生労働省の改正詳細(令和7年4月施行)についての公式案内はこちらで確認できます。
以下のリンクは給付制限期間の短縮を含む令和7年4月施行分の制度改正の公式ページです。
厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」
「2025年4月以降に退職したから、自動的に1ヶ月だ」と考えると、思わぬ落とし穴にはまります。例外ルールがあるからです。
最も重要な例外は「過去5年以内に3回以上、正当な理由のない自己都合退職を行っている場合」です。この条件に該当すると、3回目以降の自己都合退職は給付制限が3ヶ月に戻ります。
回数のカウント方法は以下の通りです。
注意が必要なのは、「他社での退職歴も含めてカウントされる」という点です。前職、前々職での自己都合退職もカウントされます。厳しいところですね。
自分が何回目に当たるかを正確に把握しているのは、実はハローワークだけです。企業の人事担当者は従業員の他社での退職履歴を知ることができませんし、ハローワークも個人情報として開示しません。
では、どうすればよいか。退職を検討している方は、過去5年間で自己都合退職と失業保険の受給を何回行ったかを、自分でメモしておくことが有効です。もし「3回目かもしれない」という心当たりがあるなら、次で紹介する方法で制限を回避できる可能性があります。
懲戒解雇(重責解雇)のケースについては、横領・長期無断欠勤・重大な経歴詐称など極めて悪質な行為が対象です。単なる能力不足や協調性不足による普通解雇とは明確に区別されており、これらは会社都合(特定受給資格者)として給付制限なしになる場合もあります。
2025年4月の法改正で新設された最も注目すべき制度が「教育訓練による給付制限の完全解除」です。これは使えそうです。
対象となる教育訓練を受講した場合、給付制限期間そのものがゼロになります。つまり、7日間の待期期間だけで失業保険の受給が始まります。
| 条件 | 給付制限期間 |
|---|---|
| 通常の自己都合退職(2025年4月以降) | 1ヶ月 |
| 教育訓練を受講する場合 | 0ヶ月(解除) |
| 特定理由離職者・会社都合 | 0ヶ月(解除) |
対象となる教育訓練の種類は次の通りです。
タイミングについても重要なポイントがあります。「離職日前1年以内に受講した場合」と「離職後に受講する場合」の両方が対象です。
たとえば、退職前にTOEICのスコアアップ講座やFP資格の通信講座を受けていれば、その実績が給付制限解除の根拠になります。また、退職後にハローワークで教育訓練の受講を申告することでも対応可能です。
この仕組みには、政府のリスキリング(学び直し)推進という背景があります。転職を機にスキルを磨く人を、経済的に後押ししようという意図が明確です。
手続きとしては、ハローワークで求職申込みの際に「教育訓練を受講した(または受講予定である)」と申告し、受講証明書などを提出します。対象講座かどうかの確認は、厚生労働省の教育訓練給付制度の検索システムで行えます。
教育訓練給付金の対象講座検索は以下から確認できます。
講座が給付制限解除の要件に当てはまるかどうかを調べる際に活用できます。
給付制限期間が1ヶ月に短縮されても、その間は無収入になります。生活費の確保と求職活動の実績作りを同時にこなす必要がある期間です。
まず、受給開始までのスケジュール全体を把握しておきましょう。
求職活動実績についても確認が必要です。給付制限期間中であっても、認定日までに求職活動実績を積む必要があります。初回認定日(給付制限期間中に設定される)までには原則1回以上の求職活動実績が必要です。
求職活動実績として認められるものの例を挙げると、ハローワークでの職業相談、民間の職業紹介機関への相談、求人への応募などがあります。単なる求人情報の閲覧や、知人への紹介依頼だけでは実績として認められません。この点は注意が必要です。
生活費の確保策として、給付制限期間中のアルバイトが有効です。週20時間未満であれば「失業状態」とみなされ、後日基本手当を受給できます。ただし、アルバイトをした場合は必ず失業認定申告書に記載して申告しなければなりません。申告しないと不正受給と判断され、受給した金額の3倍を返還させられる可能性があります。痛いですね。
さらに、早期に再就職が決まった場合は「再就職手当」の活用も検討しましょう。所定給付日数の残日数に応じて、基本手当の60%または70%が一括で支給されます。給付制限期間から1ヶ月以内に就職した場合は、ハローワークまたは届出のある職業紹介機関からの紹介による就職が条件となる点に注意が必要です。給付制限明け2ヶ月目以降であれば、求人広告への直接応募でも対象になります。
再就職手当の詳細については以下の厚生労働省ページが参考になります。
基本手当残日数に応じた再就職手当の計算方法と受給条件が詳しく掲載されています。
「自己都合退職でも給付制限ゼロになれる方法がある」という事実は、意外と知られていません。
「特定理由離職者」に認定されると、会社都合退職と同様に給付制限なしで失業保険を受給できます。以下の理由がある場合、ハローワークに申告して認定を受けることが可能です。
これらの理由に当てはまる場合は「一身上の都合」ではなく、それぞれの具体的な理由をハローワークに申告することが重要です。申告にあたっては医師の診断書、辞令の写し、介護関係の書類など証明資料の提出が求められます。
ここで、金融・FP的な視点から退職タイミング戦略についても触れておきましょう。これは独自視点での整理です。
退職時期の設計は「いつ辞めるか」だけでなく「何日辞めるか」でも損得が変わります。雇用保険の基本手当日額は「離職前6ヶ月間の賃金の総額 ÷ 180」を基に算出され、その賃金には賞与は含まれません。ただし、退職月には日割り計算で賃金が変動します。
月末より1日前に退職すると社会保険料が1ヶ月分余計にかかるケースがある一方、月末退職にすることで健康保険の切れ目が生じないメリットがあります。つまり退職日の選択は、その後の手取り収入に直接影響します。
また、給付制限期間中は国民健康保険・国民年金への切替えが必要になります。これらの保険料は前年収入に基づいて計算されるため、高収入だった年の翌年に退職すると保険料負担が重くなることがあります。退職後の生活費を試算する際には、給付制限期間中の保険料支出も必ず組み込んでおくことが重要です。
特定理由離職者の認定についての詳細は厚生労働省の公式案内を参照してください。
特定受給資格者・特定理由離職者の認定基準が詳しくまとめられています。
厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」