

週10時間のパートでも、掛け持ちすれば雇用保険に入れます。
雇用保険に加入できるかどうかは、「週の所定労働時間」と「雇用見込み期間」という2つの基準によって決まります。この2つを両方満たしていれば、正社員かパートかという雇用形態は一切関係ありません。
まず1つ目の基準は、週の所定労働時間が20時間以上であることです。「所定労働時間」とは、実際に働いた時間ではなく、労働契約書や雇用契約書に記載されている契約上の時間を指します。たとえば、契約上は週18時間でも実態として毎週22時間働いていた場合、加入条件を満たさないと判断されることがあります。契約書の時間が基準です。
2つ目の基準は、31日以上の雇用が見込まれることです。これは「31日以上の雇用が確実に続く」という意味ではなく、「31日以上雇用が続く見込みがある」というレベルで十分です。雇用契約書に更新条項があれば、最初の契約期間が30日未満でも条件を満たすと判断される場合があります。意外と広く解釈されます。
注意が必要なのは、この2条件を満たしているにもかかわらず加入手続きをしていない事業主がいるという点です。厚生労働省の調査によれば、本来加入対象であるにもかかわらず未加入のパート労働者が一定数存在することが確認されています。自分が対象かどうかを確認することは、失業時のセーフティネットを守る上で非常に重要です。
雇用条件が条件を満たしているにもかかわらず会社が加入手続きをしてくれない場合、ハローワークに「被保険者資格の確認請求」を行うことで、過去2年分まで遡って加入を認めてもらえる制度があります。これは知っていると損しない制度です。
厚生労働省「雇用保険の加入手続はお済みですか!!」(雇用保険の加入条件と事業主の義務について公式解説)
週20時間という基準は、一見シンプルに見えて、実際の計算方法に迷う人が多いポイントです。基本は「所定労働時間」で判断します。
たとえば、月・水・金の週3日、1日7時間勤務の場合、週の所定労働時間は21時間となり、条件を満たします。一方、週4日・1日4時間勤務の場合は16時間となり、条件を満たしません。数え方が条件です。
重要なのは、残業時間を含めた「実労働時間」で判断するのではないという点です。毎週3時間の残業をしていても、契約上の所定労働時間が17時間であれば、加入条件を満たさないと見なされます。これは見落としやすいポイントです。
また、週によって勤務時間が変動する「変形労働時間制」の場合は、1か月の所定労働時間を週に換算して判断します。1か月の所定労働時間が87時間(20時間×4.33週)を超えていれば、週20時間以上とみなされます。
さらに、「学生アルバイト」には例外があります。昼間部の大学生や高校生など、学業を本業とする学生は、週20時間以上・31日以上の雇用見込みを満たしていても、原則として雇用保険に加入できません。ただし、卒業見込みで就職内定後の学生や、休学中の学生は加入対象となります。学生だけは例外です。
| 勤務パターン例 | 週所定労働時間 | 加入可否 |
|---|---|---|
| 週3日×7時間 | 21時間 | ✅ 加入対象 |
| 週5日×4時間 | 20時間 | ✅ 加入対象 |
| 週4日×4時間 | 16時間 | ❌ 加入対象外 |
| 週3日×6時間(残業2時間) | 18時間(契約上) | ❌ 加入対象外 |
東京労働局「パートタイム労働者と雇用保険」(週所定労働時間の算定方法と具体例を解説)
雇用保険はただ「失業したときにもらえるもの」と思われがちですが、実際には在職中から使える給付も多く含まれています。これは意外ですね。
代表的な給付が「基本手当(失業給付)」です。パートを退職した後、一定の条件を満たせばハローワークで受給申請ができます。受給額は「離職前6か月の賃金日額の約50〜80%」が目安で、年齢や賃金水準によって異なります。たとえば、月収15万円のパートが離職した場合、1日あたり約3,750〜6,000円程度の手当が受け取れる計算になります。
受給できる日数は、雇用保険の被保険者期間と年齢によって変わります。
在職中から使える給付も見逃せません。「育児休業給付金」は、育休中の67日分(180日)・50日分(以降)相当の給付を受け取れる制度で、パートでも加入していれば対象になります。また「教育訓練給付金」は、厚生労働大臣が指定する講座を受講した場合に受講費用の最大70%(上限56万円)が支給される制度です。スキルアップにも使えます。
さらに、「高年齢雇用継続給付」という制度もあります。60歳以降も働くパートで、60歳時点の賃金と比べて75%未満に低下した場合、最大で賃金の15%相当が支給されます。老後の収入補完として活用できる制度です。
厚生労働省「雇用保険制度」(各種給付の概要と金額を公式に解説)
雇用保険の失業給付では、離職理由によって受給の有利・不利が大きく変わります。多くのパート労働者が見落としているのが、この「特定理由離職者」という区分です。
通常、自己都合退職の場合は「2か月(2020年10月以降は原則2か月、ただし5年で2回以内は7日間の待期のみ)」の給付制限期間が生じます。しかし、特定理由離職者と認定されれば、この給付制限が免除されます。つまり待期期間(7日間)が終わればすぐ受給開始です。
特定理由離職者として認定される主なケースは以下の通りです。
パートに特に多いのが、「契約更新を希望したが会社に断られた」ケースです。これは一見「会社都合」に見えますが、正確には「特定理由離職者」として扱われ、給付制限なし・所定給付日数も優遇される可能性があります。
実際、契約更新を口頭で「次回は難しい」と言われただけで自主退職した場合は特定理由離職者と認定されないことがあります。必ず書面で更新不可の通知を受け、「更新を希望したが更新されなかった」という証拠を残しておくことが重要です。これが条件です。
ハローワークでの離職票の記載内容と実態が異なる場合、本人から異議申し立てを行うことができます。離職区分に納得できない場合は泣き寝入りせず申し立てを検討しましょう。
ハローワーク「雇用保険の給付制度」(特定理由離職者の要件と給付日数の詳細)
2022年1月から始まった「雇用保険マルチジョブホルダー制度」は、複数の会社で働くパート労働者にとって大きな転換点となった制度です。ただし、現在のところ対象は65歳以上の労働者に限られています。
従来の雇用保険は「1つの事業所で週20時間以上」という条件が必須でした。この制度では、2つの事業所のそれぞれの労働時間が週5時間以上(合計20時間以上)で、どちらかの事業所での雇用見込みが31日以上あれば加入できます。つまり、「A社で週11時間+B社で週11時間」という掛け持ちパートでも合算で22時間となり、条件を満たします。
| 項目 | 従来の雇用保険 | マルチジョブホルダー制度 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 全年齢 | 65歳以上 |
| 労働時間の要件 | 1社で週20時間以上 | 2社合計で週20時間以上(各社5時間以上) |
| 手続き | 事業主が行う | 労働者本人がハローワークで申請 |
| 保険料負担 | 事業主・労働者両者 | 両社と労働者が分担 |
注意点は、この制度への加入手続きは事業主ではなく労働者本人がハローワークに対して行うという点です。会社任せにしていると加入できないまま終わります。これは見落としがちな点です。
将来的には65歳未満への適用拡大が検討されています。副業・兼業が一般化する現代において、掛け持ちパートの雇用保険加入条件の整備は急務と言えます。今後の法改正情報を定期的に確認しておきましょう。
また、マルチジョブホルダーとして加入した場合の失業給付は、2つの事業所の賃金を合算して基本手当の日額が計算されます。受給できる金額が1社だけの場合より多くなる可能性があります。これは使えそうです。
副業・掛け持ちの給与管理と社会保険の状況を把握する際は、「年金ネット」(日本年金機構の公式サービス)や「マイナポータル」でも加入状況の確認が可能です。手続き漏れを防ぐために定期的にチェックする習慣をつけておくと安心です。
厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度について」(制度の詳細・申請手順・対象者の要件)
雇用保険の加入は事業主の義務です。週20時間以上・31日以上の雇用見込みを満たしているパートを雇用している場合、事業主は必ずハローワークに「被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。手続きは必須です。
しかし現実には、「パートは加入しなくていい」「うちは小さな会社だから関係ない」などと間違った認識を持つ事業主が存在します。雇用保険法では、事業主の規模や業種に関係なく、1人でもパートを雇えば適用事業所となります。
未加入に気づいたら、以下のステップで対処できます。
特に注意すべきは、2年の遡及期間という制限です。過去2年を超えた未加入期間については、原則として加入を認めてもらえません。気づいたときは早めに動くことが重要です。
なお、遡って加入した場合、その期間分の雇用保険料が労働者側にも発生します。保険料率は労働者負担分が賃金の0.6%(2023年度時点。一般の事業)ですので、月収15万円のパートであれば月900円、年間で10,800円程度の追納になります。痛いですね。
ただし、この追納額と引き換えに失業給付の受給資格を獲得できるケースがほとんどです。失業給付の受給額(月15万円相当×90日分=45万円程度)と比べれば、追納の価値は十分にあります。
現在の雇用保険の加入状況は、「雇用保険被保険者証」または「マイナポータル」で確認できます。雇用保険被保険者証は入社時に会社から受け取るか、ハローワークで再発行できます。まず確認することが先決です。
厚生労働省「事業主の皆さまへ 雇用保険への加入手続きについて」(加入義務と手続き方法の公式説明)