

所得税の申告が不要でも、住民税の申告だけは1円以上の一時所得があれば原則義務です。
一時所得とは、所得税法が定める10種類の所得区分のうちのひとつで、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務・役務の対価でも資産の譲渡による対価でもない一時的な収入」のことを指します。つまり、定期的に発生するビジネス収益や給与ではなく、偶発的・臨時的に入ってきたお金が主な対象です。
具体的には以下のようなものが一時所得に該当します。
注意が必要なのは、同じ競馬の払戻金でも、継続的かつ営利目的と認定された場合は「雑所得」に区分されることです。2017年には、大量・継続的な馬券購入を行っていた納税者が雑所得と認定された裁判例が登場しています。一時所得か雑所得かで計算方法が大きく異なります。
雑所得との最大の違いは「特別控除50万円」と「課税金額の1/2計算」の有無です。一時所得には50万円の特別控除が適用され、さらに課税対象となる金額は2分の1に圧縮されます。雑所得にはこの優遇措置が一切ありません。つまり一時所得は、雑所得よりも税負担が大幅に軽いということですね。
また、宝くじの当選金は非課税です。これは購入時にすでに税金が課されているためで、たとえ1億円当選しても所得税はかかりません。一方、競馬の払戻金は課税対象になるので、この違いは押さえておくべきポイントです。
国税庁「No.1490 一時所得」(一時所得の定義・該当例を網羅的に確認できる公式ページ)
一時所得の計算式は以下の通りです。
| 計算ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 一時所得の金額 | 総収入金額 ー 収入を得るために支出した金額 ー 特別控除額(最大50万円) |
| ② 課税される一時所得 | ① × 1/2 |
| ③ 合算して課税所得を計算 | ② + 給与所得など他の所得を合算→所得控除を差し引く |
| ④ 税額算出 | ③ × 所得税率(累進課税)+ 住民税率10% |
具体例で見てみましょう。契約して15年が経過した生命保険の満期返戻金として200万円を受け取ったとします。この15年間で払い込んだ保険料の合計が170万円だとすると、一時所得の計算は次のようになります。
まず(200万円 − 170万円 − 50万円)= △20万円 となり、マイナスです。この場合、一時所得はゼロとなり確定申告は不要です。これが基本です。
では、払込保険料が100万円、受取額が200万円だった場合はどうでしょう。(200万円 − 100万円 − 50万円)× 1/2 = 25万円 が課税対象となります。給与所得者であれば他の所得と合算して確定申告が必要かどうかを判断します。
一時所得が総合課税に組み込まれる点も重要です。例えば、給与所得だけで課税所得300万円(税額20万2,500円)の人が、上記の25万円の一時所得を合算すると課税所得325万円になります。税率区分が上がることで、税額が約3万円ほど増加する可能性があります。金額次第で課税の重さが変わるので注意に注意が必要ですね。
国税庁「No.2260 所得税の税率」(所得税速算表・累進税率の確認に使える)
「一時所得があれば必ず確定申告が必要」と思っている方は多いですが、実際には不要なケースが多数あります。判断の基準は次の通りです。
| 状況 | 申告の要否 |
|---|---|
| 給与所得者で一時所得の課税対象額を含む給与・退職所得以外の所得合計が20万円以下 | ✅ 不要 |
| 一時所得の収入が90万円以下(経費ゼロの場合) | ✅ 不要 |
| 一時所得の計算結果がマイナス | ✅ 不要 |
| 年収2,000万円超 | ❌ 必要 |
| 医療費控除・ふるさと納税の寄附金控除で申告する場合 | ❌ 必要(一時所得も含めて全部申告) |
| 初めて住宅ローン控除を受ける場合 | ❌ 必要 |
ここに大きな落とし穴があります。「一時所得が20万円以下だから申告不要」という20万円ルールは、そもそも確定申告をしない場合に限って適用される特例です。医療費控除などで確定申告書を1枚でも提出することを決めた場合には、20万円以下の一時所得もすべて申告書に記載しなければなりません。これが条件です。
例えば、一時所得の課税対象額が10万円しかなくても、その年に医療費控除の申告を行うなら、必ず10万円分も申告書に書く必要があります。「20万円以下だから書かなくてOK」とした場合、過少申告として加算税の対象になる可能性があります。痛いですね。
申告は翌年2月16日〜3月15日が原則の期間です。期限を過ぎても速やかに申告すれば5%の無申告加算税で済みますが、税務調査で指摘された場合は15〜20%に跳ね上がります。
国税庁「No.1490 一時所得 Q&A」(給与所得者の申告要否の具体的な判断例が掲載)
所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別の話です。これが多くの人が見落とす落とし穴です。
所得税の20万円ルールは国の特例であり、住民税には適用されません。1円以上の一時所得がある場合、原則として住民税の申告義務が発生します。確定申告をすれば税務署から自治体に情報が送付されるため別途の手続きは不要ですが、確定申告をしていない場合は、自分で住民税申告書を市区町村の窓口に提出する必要があります。
住民税の申告先は現住所の市区町村役場の課税担当窓口です。提出期限は翌年3月15日。郵送やeLTAXによる電子申告も可能です。「去年ふるさと納税で返礼品を受け取ったが、所得税の申告は不要だから何もしなかった」という方は、住民税の申告が必要になっていないか、一度確認してみてください。
無申告が続いた場合、税務署は過去7年分まで調査できます。調査で発覚した場合には、本税に加えて無申告加算税(15〜20%)と延滞税が加算されます。例えば本税が50万円だとすると、無申告加算税だけで最大10万円の追徴が発生する計算です。これは使えそうな知識ですね。
住民税の申告書は市区町村の窓口やウェブサイトで入手できます。一時所得の収入金額や経費・控除額がわかる書類(保険の支払調書、払戻金の受取記録など)を手元に用意してから記入すると、スムーズに対応できます。
弥生「住民税申告と所得税の確定申告の関係とは?」(住民税申告の基礎知識と手順をわかりやすく解説)
金融に関心のある方の中には、ふるさと納税を積極的に活用している方も多いはずです。ふるさと納税の返礼品は、法人(自治体)からの贈与として一時所得に分類されます。これは意外ですね。
ただし、ふるさと納税の返礼品だけで50万円の特別控除を超えることは通常のケースではほぼありません。問題が起きやすいのは「複数の一時所得が重なった年」です。例えば、ふるさと納税の返礼品が年間30万円分、生命保険の満期返戻金で利益が30万円発生した場合、合算すると60万円になり、特別控除の50万円を超えます。特別控除は一時所得全体で合算して計算するため、それぞれを「別枠で50万円」とみなすことはできません。複数の一時所得があった年は合算に注意が必要です。
また、保険の満期返戻金を受け取る際に、一括で受け取るか年金として受け取るかで所得区分が変わります。一括受取は一時所得、年金形式の分割受取は雑所得です。一時所得には50万円の特別控除と1/2圧縮があるため、一般的には一括受取のほうが税負担を抑えやすい場合が多くなります。受取方法を選ぶ前に、どちらの所得区分になるかを確認することをおすすめします。
確定申告書の書き方については、「確定申告書 第二表」の「所得の内訳」欄に一時所得の内容(種目・支払者名・金額)を記入し、次に「第一表」の「収入金額等 一時(サ)」欄、「所得金額等 総合譲渡・一時(11)」欄へと転記する流れになります。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使うと、画面の誘導に従うだけで自動計算してくれるので、初めての方でも作業しやすいです。
国税庁「No.1903 給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合」(会社員の保険満期金申告の具体的な手順を解説)
ふるなび「ふるさと納税の返礼品と一時所得・確定申告の注意点」(返礼品が一時所得になるケースと計算例をわかりやすく説明)