

合同会社を選ぶと、税金が安くなると思っていませんか?実は法人税率は合同会社も株式会社も完全に同じで、節税額に差は出ません。
「合同会社の方が税金が安い」という情報を耳にしたことがある方も多いでしょう。これは半分正解で、半分は誤解です。
合同会社と株式会社は、どちらも税法上「普通法人」として扱われます。つまり課せられる税金の種類も計算方法も、まったく同じです。具体的には以下の5種類の税金が発生します。
| 税金の種類 | 内容 |
|---|---|
| 🔵 法人税 | 所得800万円以下:15%、超過分:23.2%(中小法人) |
| 🔵 法人住民税 | 法人税割+均等割(赤字でも最低7万円) |
| 🔵 法人事業税 | 所得に応じて課税 |
| 🔵 消費税 | 売上1,000万円超で課税義務 |
| 🔵 固定資産税 | 事業用資産があれば課税 |
結論は同じです。法人として得た利益に対する税率は、合同会社でも株式会社でも変わりません。
ただし、一点だけ注意すべきことがあります。赤字決算になった年でも「法人住民税の均等割」は必ず発生します。これも合同会社と株式会社で同じで、最低でも年間約7万円は支払わなければなりません。痛いですね。
個人事業主との大きな違いは「累進課税か比例課税か」という点です。個人事業主の所得税は最大45%まで上がる累進課税ですが、法人税は所得に関わらず一定の税率が適用されます。所得が年間600万円を超えてくると、法人化による節税メリットが実感しやすくなります。
参考リンク(法人税率の詳細:国税庁の法人税の税率についての公式説明)
国税庁|No.5759 法人税の税率
税率は同じでも、設立にかかる費用には大きな違いがあります。これが実質的な「初期コスト」の差です。
🏢 株式会社の設立費用(目安)
- 定款認証手数料:3万〜5万円(資本金によって変動)
- 定款の収入印紙:4万円(電子定款なら不要)
- 登録免許税:最低15万円
- 謄本手数料:約2,000円
- 合計:約23〜24万円
🏢 合同会社の設立費用(目安)
- 定款認証手数料:0円(認証不要)
- 定款の収入印紙:4万円(電子定款なら不要)
- 登録免許税:最低6万円
- 謄本手数料:約2,000円
- 合計:約6〜10万円
合同会社は定款の公証人認証が不要な点が最大の差です。株式会社の設立の場合、公証役場で定款を認証してもらう必要があり、ここで数万円が発生します。さらに登録免許税も株式会社の最低15万円に対して、合同会社は最低6万円と9万円安く抑えられます。
電子定款を利用すれば収入印紙代4万円も不要になるので、合同会社の最小設立費用は約6万円だけ覚えておけばOKです。
株式会社と合同会社の差額は平均して約14万円程度。この差は、飲食店の1ヶ月分の家賃に近い金額です。スモールビジネスや副業の法人化を考えている方には、この差は小さくありません。
参考リンク(設立費用の詳細比較)
マネーフォワードクラウド|合同会社にかかる税金とは?株式会社との違いや節税方法も解説
合同会社と株式会社の税率は同じですが、「個人事業主と法人」で比べると節税効果は大きく異なります。ここが理解の核心部分です。
🔑 法人化(合同会社含む)で使える節税手段
| 節税手段 | 個人事業主 | 合同会社・株式会社 |
|---|---|---|
| 役員報酬を経費に算入 | ❌ | ✅ |
| 給与所得控除の活用 | ❌ | ✅ |
| 生命保険料の経費算入範囲が広い | △ | ✅ |
| 役員退職金の損金算入 | ❌ | ✅ |
| 赤字の繰越期間 | 3年 | 10年 |
たとえば、年間の事業所得が600万円の個人事業主が合同会社を設立して同額の役員報酬を受け取ると仮定します。この場合、個人の所得税率は20%であるのに対して、法人税率は15%(800万円以下の軽減税率)が適用されます。さらに「給与所得控除」も加わるため、税負担の合計が年間数十万円以上変わることも珍しくありません。
これは使えそうです。
また、合同会社には利益配分を出資比率と関係なく自由に決められるという特徴があります。これは株式会社にはない制度で、貢献度の高いメンバーへの報酬を定款ベースで柔軟に設計できるのが強みです。
さらに法人設立後2年間は、次の条件を満たせば消費税が免除されます。
- 資本金1,000万円未満であること
- 前々年の売上が1,000万円以下であること
年商800万円のフリーランスが合同会社を設立した場合、設立後2年間で消費税(10%分)の納付が免除されるため、最大で年間80万円規模の節税につながる計算になります。
参考リンク(法人化節税の詳細)
ミツモア(税理士監修)|合同会社は節税に有利!株式会社・個人事業主との違いを解説
設立時の費用だけでなく、設立後に毎年かかるコストにも違いがあります。ここを見落とすと、長期的な経営コストを誤った金額で計算してしまいます。
📋 株式会社に発生するが合同会社には不要なコスト
| 費用の種類 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 決算公告(官報掲載) | 約6〜7万円/年 | 不要 |
| 役員変更登記(重任) | 約1万円〜/回 | 不要(任期なし) |
| 役員変更の専門家報酬 | 数万円〜 | 不要 |
株式会社は毎年、決算内容を世間に公開する「決算公告」を行う義務があります。最もコストの低い「官報への掲載」でも、年間6〜7万円の掲載料が発生します。10年運営すれば、それだけで60〜70万円になります。
合同会社にはこの義務がありません。
さらに株式会社の役員には任期があり(最長10年)、任期満了ごとに役員変更の登記が必要で、その都度1万円以上の登録免許税が発生します。司法書士などに依頼すれば専門家報酬も加算されます。合同会社は役員任期がないため、この費用は一切かかりません。
10年間での累積コスト差を計算すると、決算公告だけで約70万円、役員変更登記を2〜3回行えばさらに数万円の差がつきます。これが基本です。
ただし、一つ注意点があります。合同会社の社員(出資者)が死亡した場合、定款に「相続による持分承継」を明記していないと、その社員は自動的に退社扱いとなり、一人会社では解散になるリスクがあります。株式の相続とは仕組みが異なる点です。事業承継を見据えるなら、設立時に定款へ必要な条項を盛り込む必要があります。
参考リンク(ランニングコスト比較)
小谷野税理士法人|合同会社と株式会社の費用を比較!設立費用から年間のランニングコストまで
「税率は同じ」「設立費用は合同会社が安い」「ランニングコストも合同会社が有利」ここまで見ると、合同会社一択に思えてきます。しかし実際には、どちらが正解かはあなたのビジネスモデルと将来設計によって変わります。
✅ 合同会社が向いているケース
- 小規模スタートアップ、フリーランスの法人化
- 大企業との大型受注や上場を考えていない
- 意思決定をスピーディに行いたい
- 家族や少人数のチームで経営する
✅ 株式会社が向いているケース
- 投資家からの出資(エクイティファイナンス)を受けたい
- 株式市場への上場(IPO)を目指している
- 大企業・官公庁との取引で「株式会社」の信用が求められる
- 多くの人材を採用してブランド力を高めたい
注目すべきは、社会的信用の差です。たとえばアマゾンジャパン合同会社やアップルジャパン合同会社のような世界的企業でも合同会社として運営できる一方、国内の中小企業や個人事業主が「法人格を取りたい」という段階では、取引先によっては株式会社を求められるケースもゼロではありません。
税金面だけではなく、「自分のビジネスが成長した先に何があるか」で会社形態を選ぶことが原則です。
また、見落とされがちな視点として「将来の株式会社への変更コスト」があります。合同会社から株式会社への組織変更は可能ですが、別途登記費用(最低6万円〜)と定款認証の手続きが必要になります。最初から将来のIPOや外部資金調達を視野に入れているなら、初期投資として株式会社を選ぶ方が合理的な場合もあります。
| 判断基準 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 初期費用を抑えたい | ◎ | △ |
| 毎年のランニングコスト | ◎ | △ |
| 社会的信用・採用力 | △ | ◎ |
| 外部投資・IPO | ❌ | ◎ |
| 法人税率 | 同じ | 同じ |
| 経営の自由度 | ◎ | △ |
税金面で両社の差はありません。だからこそ、「設立後の事業展開」と「初期・維持コストのバランス」が選択の決め手になります。
参考リンク(合同会社の選択基準の詳細)