
相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。この基礎控除額を超えた部分にのみ相続税が課税されるため、遺産総額がこの基礎控除額以下であれば相続税は発生しません。
法定相続人の数え方には重要なポイントがあります。
法定相続人の数には養子も含まれますが、制限があります。被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人まで法定相続人として数えられます。
例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。遺産総額が4,800万円以下なら相続税はかからないということです。
相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして法定相続人の数を計算する点も重要です。
相続税の課税価格を算出するには、まず相続財産の総額を正確に把握する必要があります。対象となる財産は以下の通りです。
プラスの財産
マイナスの財産
特別な財産
生命保険金と死亡退職金については、500万円×法定相続人の数まで非課税となります。例えば、法定相続人が3人の場合、1,500万円まで非課税です。
財産の評価方法も重要で、現金や預貯金は亡くなった日の残高、不動産は路線価や固定資産税評価額、有価証券は亡くなった日の終値などを基に評価します。
意外に見落としがちなのが、債務免除です。遺言で「相続人が故人への債務を帳消しにする」とあった場合、その免除分も相続財産として加算されます。
相続税の税率は10%から55%までの7段階に分かれており、法定相続分に応じた取得金額によって決まります。重要なのは、実際の相続分ではなく、法定相続分で計算することです。
相続税の税率表
計算の流れは以下の通りです。
例えば、課税遺産総額が5,200万円で、配偶者と子ども2人が相続人の場合。
この総額を実際の相続割合で配分します。
相続税の概算を把握するために、早見表と速算表を活用することが重要です。これらの表を使えば、複雑な計算をしなくても相続税の目安を知ることができます。
早見表の見方
速算表の使い方
法定相続分に応じた取得金額に税率を乗じ、控除額を差し引いて税額を算出します。
計算例:法定相続分に応じた取得金額が2,000万円の場合
2,000万円×15%-50万円=250万円
早見表を使用する際の注意点。
これらの特例を適用した場合の税額は早見表とは異なるため、詳細な計算が必要です。
国税庁の公式サイトでは、相続税の計算方法や各種特例について詳しく説明されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
相続税の計算には、多くの人が見落としがちな重要なポイントがあります。これらを理解しておくことで、想定外の税負担を避けることができます。
生前贈与の加算期間延長
令和6年1月1日以降の贈与から、相続財産への加算期間が3年から7年に延長されました。これにより、相続開始前7年以内の贈与財産も相続税の対象となります。
みなし相続財産の計算ミス
生命保険金の非課税枠は500万円×法定相続人の数ですが、この計算を間違えるケースが多くあります。例えば、法定相続人が2人で保険金が1,500万円の場合、非課税枠は1,000万円のため、500万円が課税対象となります。
債務控除の適用範囲
債務として控除できるのは、被相続人が確実に負担すべき債務のみです。保証債務や連帯保証債務は、実際に履行が確実でない限り控除できません。
相続時精算課税制度の影響
この制度を利用した贈与財産は、贈与時の価額で相続財産に加算されます。土地などの値上がりが期待できる財産では有利ですが、値下がりした場合は不利になる可能性があります。
小規模宅地等の特例の適用要件
自宅の土地の評価を80%減額できる特例ですが、適用要件が厳格です。
税務調査のリスク
相続税の申告漏れが発見された場合、重いペナルティが課されます。特に現金、有価証券、貴金属などの申告漏れは税務調査で発見されやすいため、注意が必要です。
これらのポイントを理解し、必要に応じて税理士などの専門家に相談することで、適切な相続税の計算と申告を行うことができます。相続は人生で何度も経験することではないため、専門知識を持つプロのサポートを受けることをお勧めします。