少額配当等とは何か仕組みと確定申告の関係

少額配当等とは何か仕組みと確定申告の関係

少額配当等とは何か・仕組みと税務の基本

配当金が少額でも、源泉徴収されているから確定申告しないほうが手取りが増える場合があります。


💡 少額配当等 3つのポイント
📌
少額配当等の定義

1銘柄・1回の配当金額が10万円以下(計算期間1年未満なら5万円以下)の配当のこと。

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確定申告は原則不要

少額配当等は確定申告しないことを選択できる。ただし住民税申告が必要なケースあり。

⚠️
申告すると損する場合も

所得が高い人が確定申告すると税率が上がり、還付どころか追加納税になるケースがある。


少額配当等とは何かを定義から理解する

少額配当等とは、所得税法上の特例区分のひとつで、一定金額以下の配当所得を指します。具体的には、1銘柄あたり1回の配当金額が10万円以下(支払計算期間が1年未満の場合は5万円以下)の配当が対象です。この基準は意外とシンプルです。


大企業の株を大量に保有していない限り、多くの個人投資家が受け取る配当はこの「少額配当等」に該当します。たとえば、トヨタ自動車株を100株保有して年2回配当を受け取っても、1回の配当額が10万円を超えないケースがほとんどです。つまり一般的な個人投資家の配当はほぼ少額配当等に当たります。


この区分が重要なのは、税務上の取り扱いが通常の配当所得と異なる点にあります。少額配当等は確定申告をしないことを選択できる「申告不要制度」の対象となります。この選択ができることで、納税者は自分に有利な方法を選べます。


  • 対象:1銘柄・1計算期間あたりの配当金額が10万円以下
  • 計算期間が1年未満の場合は上限5万円以下
  • 非上場株式の配当も対象になる(ただし大口株主は除外)
  • 株式数比例配分方式で受け取った上場株式の配当は別扱い


少額配当等かどうかは「1銘柄ごと・1回の支払いごと」に判定するのがポイントです。複数銘柄から配当を受け取っていても、それぞれ個別に判定します。合算して判定するわけではありません。


少額配当等の源泉徴収の仕組みと税率

配当金が支払われる際、証券会社や発行会社が税金をあらかじめ差し引いて支払います。これが源泉徴収です。少額配当等も例外ではありません。


源泉徴収される税率は以下のとおりです。


種別 所得税率 住民税率 合計
上場株式の配当 15.315% 5% 約20.315%
非上場株式の少額配当等 20.42% なし(申告で納付) 20.42%〜


上場株式の配当については、特定口座(源泉徴収あり)を使っている場合、この20.315%が自動的に差し引かれます。手元に届く配当金は税引き後の金額です。シンプルですね。


非上場株式の場合は少し複雑で、源泉徴収は所得税のみで住民税は自分で申告・納付するのが原則です。ここを見落とすと住民税の申告漏れになります。注意が必要です。


源泉徴収された税金は、確定申告をすることで還付を受けられる場合もあります。ただし所得水準によっては、申告することで税負担が増えるケースもあります。申告前に税率の確認が必要です。


少額配当等の確定申告・申告不要制度の選択方法

少額配当等は「申告不要」を選択できます。これが最大のメリットです。


申告不要制度を選択すると、源泉徴収で課税関係が完結し、確定申告の手間が省けます。給与所得のみのサラリーマン投資家にとっては特に便利な制度です。


ただし、申告不要を選ぶべきかどうかは個人の所得水準によって変わります。


  • ✅ 申告不要が有利なケース:課税所得が695万円超(所得税率23%以上)の人
  • ✅ 申告して還付が有利なケース:課税所得が330万円以下(所得税率10%以下)の人
  • ⚠️ 損益通算したい場合:株の譲渡損失と配当を相殺するなら申告が必要


「確定申告したほうが得か損か」を判断する簡単な目安は、自分の所得税の限界税率が配当の源泉徴収税率(15.315%)より低いかどうかです。これが基本です。


課税所得330万円以下なら税率は10%のため、確定申告して差額の約5%分を還付してもらえます。たとえば配当金が年10万円なら、5,000円程度が戻ってくる計算になります。これは使えそうです。


住民税については注意点があります。2023年分以降、所得税で申告した場合、住民税も同じ選択(申告あり)になる仕組みに変わりました。以前は所得税だけ申告して住民税は申告不要にする「有利な分離」ができましたが、現在はできません。この変更を知らない投資家が意外と多いです。


少額配当等と損益通算・配当控除の活用

少額配当等の申告を選択することで使える税制上の特典が2つあります。損益通算と配当控除です。


損益通算とは、株の売却で出た損失と配当所得を相殺できる仕組みです。たとえば年間で株の売買損が15万円あり、配当収入が8万円あった場合、確定申告すると差し引きマイナス7万円として課税されません。損失がある年は申告が有利になります。


損益通算を使うには「総合課税」ではなく「申告分離課税」を選択する必要があります。上場株式の少額配当等は申告分離課税を選べます。確定申告書の記入方法に注意が必要です。


配当控除は、総合課税を選んだ場合に使える控除です。課税所得1,000万円以下の部分については、配当金額の10%を税額から直接控除できます。所得税率が低い人には非常に有利な制度です。


  • 配当控除率(所得税):課税所得1,000万円以下の部分→10%、超える部分→5%
  • 配当控除率(住民税):課税所得1,000万円以下の部分→2.8%、超える部分→1.4%
  • 外国株の配当には配当控除が適用されない点に注意


外国株(米国株など)の配当は配当控除の対象外です。これは意外と知られていません。米国株の高配当ETFを保有している投資家が「配当控除が使える」と思って申告した場合、計算が狂うことがあります。外国株は別扱いと覚えておけばOKです。


参考:配当控除の計算方法と適用条件について(国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm


少額配当等とNISA・特定口座との関係と実践的な判断基準

NISA口座で受け取った配当金は、少額配当等の区分とは別の話になります。NISAは非課税口座のため、源泉徴収そのものが行われません。受け取った配当金はそのまま全額が手取りになります。NISAなら申告不要の議論自体が不要です。


特定口座(源泉徴収あり)の場合、上場株式の配当は証券会社が自動的に源泉徴収します。この場合は確定申告しなくても税務上の問題はありません。手間が最小限で済みます。


一方で、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で受け取った少額配当等は、自分で確定申告するかどうかを判断する必要があります。放置すると住民税の申告が漏れるリスクがあります。


実践的な判断のチェックリストをまとめます。


  • 📌 NISA口座の配当 → 非課税・申告不要
  • 📌 特定口座(源泉徴収あり)の配当 → 原則申告不要でOK
  • 📌 課税所得330万円以下 → 申告して配当控除または還付を狙う
  • 📌 株の売却損がある年 → 損益通算のために申告が有利
  • 📌 課税所得695万円超 → 申告不要が有利(申告すると税率が上がる)
  • 📌 外国株の配当 → 配当控除なし・外国税額控除を検討


自分の所得水準と口座の種類を把握することが、最初のステップです。証券会社のマイページで年間取引報告書を確認すれば、受け取った配当の総額や源泉徴収額がすぐわかります。確認は1度で済みます。


参考:申告不要制度と確定申告の選択に関する国税庁のQ&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm


少額配当等の取り扱いは、自分の所得に合った選択をするだけで年間数千円〜数万円の差が生まれます。特に確定申告の時期が近づいたら、自分の課税所得と配当金額を照らし合わせて最適な選択をするようにしてください。