

死亡届を10日以内に出さないと、あなたが年金を「不正受給」した扱いになり返還義務を負います。
農業者年金の受給者または加入者が亡くなった場合、遺族は速やかに所定の手続きを進める必要があります。手続きの窓口は年金事務所ではなく、住所地の最寄りのJA(農業協同組合)です。ここが一般的な公的年金の手続きと大きく異なるポイントです。
届出の期限は、死亡後10日以内と定められています。提出する書類は「農業者年金死亡関係届出書(様式第K31号)」で、JAの窓口で入手するか、農業者年金基金のホームページからダウンロードして使用します。
手続き全体の大まかな流れは次のとおりです。
役所へ死亡届を提出してから、戸籍に死亡が反映されるまでおよそ1週間はかかります。土日祝日は役所が休みなので、その分も計算に入れておく必要があります。できれば亡くなってすぐ役所へ出向いて、いつ頃除籍が完了するか確認しておきましょう。段取りが命です。
なお、届出が遅れた場合は、亡くなった方への年金の支給がその後も続いてしまいます。余計な年金が振り込まれたとしても、それは過払い分として遺族が全額返還しなければならない義務を負います。意図的な放置は詐欺罪に問われるリスクもゼロではありません。期限に注意が必要です。
参考:農業者年金基金公式QAページ(受給者が死亡した場合の手続きについて詳しく記載されています)
https://www.nounen.go.jp/qa/tebiki/a/306.html
届出に必要な書類は、亡くなった方が「受給者」か「加入者(被保険者)」かによって若干異なります。整理が肝心です。
【亡くなった方が受給者の場合】
【亡くなった方が加入者(被保険者)の場合】
また、未支給年金や死亡一時金を請求する際には、亡くなった方と届出者の生計が同一であったことを証明できる書類が追加で必要です。同居していた場合は住民票の写しで確認できますが、別居していた場合は仕送りの記録など生計維持の実態を示す書類が求められます。証明できる書類がない場合は、民生委員や町内会長などに「同一生計証明」欄へ署名・捺印をもらうことで対応できます。
戸籍謄本のホッチキスは絶対に外さないでください。外した瞬間に原本ではなくなるとみなされ、手続きで使えなくなります。細かいことですが、実務では意外と多いミスです。
参考:佐賀市(農業委員会)による農業者年金死亡手続きの添付書類説明(受給者・加入者別に詳細が記載されています)
https://www.city.saga.lg.jp/main/102355.html
農業者年金(新制度・農業者老齢年金)では、加入者や受給者が80歳になる前に亡くなった場合、遺族に「死亡一時金」が支給される制度があります。これは積立型の仕組みを持つ農業者年金ならではの給付で、一般的な国民年金や厚生年金にはない特徴です。
死亡一時金の計算の考え方は、「80歳まで生きていれば受け取れたはずの農業者老齢年金を、予定利率で割り戻した現在価値」です。つまり80歳に近づけば近づくほど受け取れる一時金の額は少なくなり、若くして亡くなるほど金額が大きくなる仕組みになっています。
ただし支給には条件があります。以下の3点を満たす必要があります。
これは重要な情報です。たとえば80歳直前まで長生きして年金を多く受け取っていた場合、死亡一時金がゼロになるケースもあります。反対に比較的若いうちに亡くなれば、まとまった金額が遺族に支払われます。
さらに大きなメリットとして、農業者年金の死亡一時金は相続税・所得税ともに非課税です(農業者年金基金法第27条)。相続財産にカウントされないため、相続税の申告上でも有利に働きます。ほかの年金制度の「みなし相続財産」として課税される死亡一時金とは、扱いが明確に異なる点です。
参考:農業者年金基金公式QAページ(死亡一時金の支給要件と計算方法についての公式解説)
https://www.nounen.go.jp/qa/new/a/42.html
年金は「偶数月に前月・前々月分をまとめて振り込む」仕組みのため、亡くなった月や前月分がまだ振り込まれていないケースが多く発生します。この「本来受け取るべきだったのに振り込まれていなかった年金」が未支給年金です。遺族が代わりに請求することができます。
未支給年金を請求できる人の範囲は法律で決まっており、死亡当時に生計を同じくしていた親族に限られます。生計を別にしていた場合は請求できないため注意が必要です。
請求の順位は以下のとおりで、先順位の人がいると後順位の人は請求できません。
たとえば、配偶者が存命であれば、子や兄弟姉妹が先に請求することはできません。JAへの届出の際は、配偶者が存命であれば可能な限り同席してもらうのが手続きをスムーズに進めるコツです。
未支給年金は遺族固有の財産です。相続財産には該当しません。所得税の対象にはなりますが、相続税は課税されないという整理になっています。これは金融的に大きな違いです。
なお、未支給年金の請求権には時効があります。時効は死亡日の翌日から5年です。5年を経過すると請求権が消滅し、どんな事情があっても受け取れなくなります。亡くなってから年月が経ってから「そういえば未支給年金の請求をしていなかった」と気づいても、5年を超えていれば取り戻す手段はありません。5年以内が絶対条件です。
参考:農業者年金基金公式(受給権者のしおり兼重要事項説明書)未支給年金と死亡一時金の請求範囲・時効についての記載あり
https://www.nounen.go.jp/kanyu/jukyu/data/juyojikou_jukyu.pdf
金融に関心の高い方の中には、「農業者年金は農業者の話だから自分には関係ない」と思っている方も多いかもしれません。しかし、親が農業をしていた場合や、相続の場面で農業者年金が絡んでくることは十分にあります。見落とすと損失に直結します。
まず注意すべきは、農業者年金の死亡一時金と国民年金の死亡一時金はまったく別物だという点です。同時に両方の制度に加入していたケースでは、それぞれ別途手続きが必要です。農業者年金の手続きをJAに行ったからといって、国民年金の死亡届が自動的に処理されるわけではありません。
次に、農業者年金には「脱退一時金がない」という特徴があります。一般的な年金制度では、途中で脱退した際に「脱退一時金」として保険料の一部が戻ってくるケースがありますが、農業者年金(新制度)では脱退一時金の制度がありません。そのため、死亡時に請求できる給付は「死亡一時金」のみとなります。
また見落とされやすいのが、農業者年金の旧制度加入者のケースです。旧制度(昭和36年〜平成14年3月以前)に加入していた方が亡くなった場合、届出書の様式が「様式第K31号の2」と新制度とは異なります。遺族が気づかず間違った様式で提出してしまうと、手続きが遅れる原因になります。不明な点はJAや農業委員会に事前に確認しましょう。
さらに財産管理の観点から重要なのが、未支給年金や死亡一時金は「請求した人の固有財産」になるという点です。相続財産には含まれません。つまり、遺産分割の対象外であり、他の相続人が分割を要求できないことを意味します。相続トラブルを避けるためにも、誰が請求できるか(順位)を事前に把握しておくと安心です。
死亡手続きを確実に完了させるためにリストを整理しておきたい方は、農業者年金基金の公式サイトや最寄りのJA窓口で「農業者年金業務の手引き」を事前に入手しておく方法があります。特に相続が発生する可能性がある農家のご家族は、存命中から必要書類の場所や年金証書の保管場所を確認しておくことが最大の備えになります。
参考:農業者年金基金(脱退・死亡関係の様式一覧ページ。新制度・旧制度それぞれの届出書様式が確認できます)
https://www.nounen.go.jp/kanyu/youshiki/new02.html

Dd-272/家の光 北海道版 1981年3月号 農業者年金問答集 祭りのなかのヒーローたち 戦火の爪跡残すアンコールワット/L10/61220