協会けんぽと組合健保どっちが得か保険料率と付加給付で比較

協会けんぽと組合健保どっちが得か保険料率と付加給付で比較

協会けんぽと組合健保どっちが得か

組合健保の2割以上が協会けんぽより保険料が高い

この記事の3ポイント
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保険料率の逆転現象

組合健保の22.5%が協会けんぽ(平均10.0%)より高い保険料率を設定しており、必ずしも組合健保が得とは限らない

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付加給付の差額効果

組合健保は自己負担2万円超の医療費で付加給付が発生し、協会けんぽより年間数万円の給付差が生じる

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企業負担割合の選択肢

組合健保は企業負担を50%超に設定可能で、従業員負担を3.7%まで下げられるケースもある

協会けんぽと組合健保の基本的な違いと保険料率


税務担当者として給与計算を行う際、健康保険料の計算は避けて通れない業務です。会社員が加入する健康保険には「協会けんぽ」と「組合健保」の2種類があり、どちらに加入するかは企業の規模や業種によって決まります。


参考)「協会けんぽ」と「組合健保」とは?健康保険をわかりやすく解説…


協会けんぽは全国健康保険協会が運営し、健康保険組合を設立していない企業の従業員が加入します。保険料率は都道府県ごとに異なり、2026年度の全国平均は10.0%です。最も高い佐賀県で10.42%、最も低い新潟県で9.35%となっています。


つまり都道府県差が約1%あるということですね。



参考)組合健保と協会けんぽ 経営者が知っておくべき健康保険の基礎知…


一方、組合健保は従業員700人以上の大企業または同業種3,000人以上で設立できる独自の健康保険組合です。保険料率は法令により3%〜13%の範囲で各組合が自主的に決定できます。多くの組合では7%〜9%程度に設定されており、協会けんぽより低いのが一般的です。


参考)同じ社保だけど、中身がちょっと違う「協会けんぽ」と「組合健保…


しかし、2022年度のデータでは組合健保の22.5%が保険料率10.0%を超えており、協会けんぽより高い状況にあります。高齢化による医療費支出や後期高齢者支援金の増大が原因です。


協会けんぽが常に割高とは限りません。



参考)【保険者向け】組合健保・協会けんぽの違いを図解で解説


付加給付制度による実質的な自己負担額の差

組合健保の最大のメリットは「付加給付」と呼ばれる独自の給付制度です。協会けんぽは健康保険法で定められた法定給付のみを行いますが、組合健保は法定給付に加えて独自の上乗せ給付を実施できます。


参考)【社労士が解説!】組合健保?協会けんぽ? 健康保険の保険者の…


具体的な例を見てみましょう。医療費総額100万円の手術を受けた場合、自己負担は3割の30万円です。高額療養費制度により一般所得者の自己負担限度額は約8万円となり、これは協会けんぽも組合健保も共通です。

ここで差が出るのが付加給付です。多くの組合健保では1カ月の自己負担上限を2万円〜3万円に設定しています。例えば東北電力健康保険組合では自己負担額から3万円を控除した額を付加給付として支給します。医療費総額173,200円(自己負担51,960円)の場合、51,960円-30,000円=21,900円が付加給付金として戻ってきます。


参考)保険給付一覧


TJK(東京都情報サービス産業健康保険組合)では自己負担2万円を超えた分を付加給付として支給しています。年間で複数回通院や入院がある場合、協会けんぽと比べて数万円から十数万円の差額が生じる可能性があります。


これは大きなメリットです。



参考)TJK独自のメリット「付加給付」 – TJK 東…

TJK独自のメリット「付加給付」の詳細では、具体的な給付例と計算方法が確認できます。

企業負担割合と従業員の実質負担額

協会けんぽでは保険料を事業主と従業員が折半(50%ずつ)で負担することが原則です。一方、組合健保では規約により従業員の負担割合を50%より低く設定できます。


参考)協会けんぽと組合健保の違い - 会社員の健康保険を比較


日立健康保険組合の例では、保険料率8.7%のうち事業主が5%、従業員が3.7%を負担しています。協会けんぽ(東京都)の従業員負担約5%と比べて1.3%低い計算です。標準報酬月額30万円の場合、協会けんぽでは月14,970円の負担ですが、日立健保では10,530円で済みます。


年間で約5万3千円の差額が生じます。



参考)同じ社会保険(健康保険)でも違う?協会けんぽと健康保険組合の…


ただし企業側から見ると、従業員負担を減らせば企業負担が増加します。税務担当者としては給与計算時に正確な負担割合を把握し、労使それぞれの負担額を正しく計算する必要があります。健康保険料の計算式は「標準報酬月額×保険料率」で、この結果を労使で分担します。


参考)給与計算の外注先は税理士と社労士どちら?業務範囲と違法性を解…


給与から天引きする社会保険料の計算ミスは従業員の信頼低下に直結するため、組合ごとの負担割合を正確に把握することが重要です。


参考)健康保険料の計算方法をわかりやすく解説!【シミュレーション付…

税務担当者が知るべき保険者選択の影響

税務担当者の実務において、協会けんぽと組合健保の違いは給与計算だけでなく、年末調整や社会保険料控除の処理にも影響します。社会保険料は税法上の控除対象となるため、従業員ごとに正確な納付額を把握する必要があります。


参考)税理士と社会保険労務士(社労士)、業務内容の違いはある?頼め…


健康保険料の算定には標準報酬月額を使用しますが、これは毎年4月〜6月の報酬月額の平均により決定されます。協会けんぽの保険料率は毎年3月に改定されるため、税務担当者は年度ごとの料率変更を確認し、給与計算システムに反映させなければなりません。


参考)給料から社会保険料が引かれる額 – 具体例を用いて解説


組合健保の場合、付加給付の存在により従業員の実質的な医療費負担が軽減されます。これは福利厚生の一環として従業員満足度に寄与しますが、税務上の処理には影響しません。それでも採用活動や従業員定着の観点では、組合健保加入は企業の魅力として訴求できる要素です。


参考)公認会計士と税理士必見!健康保険組合で得られる意外なメリット…

「協会けんぽ」と「組合健保」とは?健康保険をわかりやすく解説では、保険者の違いと実務への影響が詳しく解説されています。
給与計算の外注を検討する際、社会保険料の計算は社労士の業務範囲です。税理士は年末調整を担当しますが、健康保険料や厚生年金保険料の算定は社労士に依頼する方が適切です。事業所得や給与所得の控除対象として健康保険料を計上する際は、正確な金額の把握が不可欠です。


協会けんぽと組合健保の保険料比較シミュレーション

実際の数字で比較してみましょう。


標準報酬月額30万円の従業員を例にします。



協会けんぽ(東京都、保険料率9.99%)の場合:

  • 月額保険料:30万円×9.99%=29,970円
  • 従業員負担(50%):14,985円
  • 年間従業員負担:約18万円

組合健保A(保険料率7.02%、従業員負担37%)の場合:

  • 月額保険料:30万円×7.02%=21,060円
  • 従業員負担:7,792円
  • 年間従業員負担:約9.4万円

この例では年間約8.6万円の差額が生じます。


組合健保が有利ですね。



しかし組合健保B(保険料率10.4%、折半負担)の場合:

  • 月額保険料:30万円×10.4%=31,200円
  • 従業員負担(50%):15,600円
  • 年間従業員負担:約18.7万円

この組合健保では協会けんぽより年間約7千円高くなります。2022年度では組合健保の21.7%が介護保険料率でも協会けんぽより高い1.9%以上となっています。


参考)「組合健保」の保険料が、「協会けんぽ」より安いとは限らない …

標準報酬月額50万円の場合、この差はさらに拡大します。協会けんぽ(東京)で月24,950円、組合健保Aで月17,550円、組合健保Bで月26,000円です。給与水準が高い従業員ほど、保険料率の違いが実額に大きく影響します。

高額療養費と付加給付の組み合わせ効果

高額療養費制度は協会けんぽも組合健保も共通ですが、付加給付との組み合わせで実質負担が大きく変わります。


参考)健康保険組合(組合健保)と全国健康保険協会(協会けんぽ)の違…


一般所得者(標準報酬月額28万〜50万円)が医療費総額200万円の治療を受けた場合を考えます。


自己負担3割で60万円です。


高額療養費の自己負担限度額は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」で計算されます。


参考)付加給付

この場合の限度額は80,100円+(2,000,000円-267,000円)×1%=97,430円です。協会けんぽではこの約9.7万円が実質負担となります。

日本製鉄健康保険組合のような付加給付制度では、自己負担額から2万5千円を控除した額を支給します。


つまり実質負担は2万5千円です。


協会けんぽと比べて約7.2万円軽減されます。


これは知っておくと得します。



参考)医療費負担額と給付金|保険給付いろいろ|健保のしくみ|日本製…

家族で複数の医療費がかかる場合、合算高額療養費と合算高額療養費付加金の制度があります。被保険者Bさんが医療費総額20万円(自己負担6万円)、被扶養者Cさんが医療費総額12万円(自己負担3.6万円)を同月に支出した場合、世帯合算で高額療養費が適用されます。

組合健保では付加給付により、さらに負担が軽減されるケースが多いです。慢性疾患で定期通院が必要な従業員や、家族に医療ニーズが高い方がいる場合、組合健保の付加給付は大きなメリットになります。


日本製鉄健康保険組合の医療費負担額と給付金では、付加給付の具体的な計算例が確認できます。

組合健保の財政状況と将来の保険料動向

組合健保の約6割が赤字経営という現実があります。2019年度のデータでは、全組合の平均保険料率は9.218%で5年連続9%超となりました。後期高齢者支援金などの拠出金負担が増大しており、組合の8割近くで拠出金が保険料収入の4割以上を占めています。


参考)健保組合の2割強で「協会けんぽ」以上の保険料率、2割弱で支出…

健保組合の2割近くでは拠出金負担が5割以上に達しており、実際の加入者への給付よりも高齢者医療への拠出が多い状況です。この財政圧迫により、協会けんぽ以上の保険料率を設定する組合が全体の22.1%に達しています。

税務担当者としては、自社の健保組合の財政状況を把握し、将来的な保険料率の上昇リスクを認識しておく必要があります。給与計算システムの料率設定は毎年確認し、組合からの通知に基づいて速やかに更新することが求められます。


組合健保が解散すると、加入者は協会けんぽに移行します。これは国庫負担の増加にもつながるため、国の医療財政全体にも影響を与えます。企業の人事労務担当者としては、組合の財政健全性も福利厚生の一環として確認すべきです。

比較表:協会けんぽと組合健保の主な違い

項目 協会けんぽ 組合健保
保険料率 都道府県別(平均10.0%) 組合別(3%〜13%)
従業員負担割合 50%(固定) 50%以下に設定可能
付加給付 なし あり(組合による)
自己負担上限 所得区分による 2万円〜3万円が多い
保険料率10%超の割合 - 22.5%
設立要件 自動加入 700人以上または3,000人以上

どちらが得かの判断基準と実務への活用

協会けんぽと組合健保のどちらが得かは、保険料率、従業員負担割合、付加給付の有無を総合的に判断する必要があります。


保険料負担で比較する場合:

  • 組合健保の保険料率が10%未満で従業員負担割合が50%未満なら組合健保が有利
  • 組合健保の保険料率が10%以上なら協会けんぽと同等かそれ以上の負担になる可能性あり
  • 都道府県別の協会けんぽ料率も確認する(新潟県9.35%と佐賀県10.42%で約1%差)

医療費負担で比較する場合:

  • 定期通院や慢性疾患がある場合、組合健保の付加給付で年間数万円の軽減効果
  • 健康で医療機関をほとんど利用しない場合、付加給付のメリットは小さい
  • 家族に医療ニーズが高い方がいる場合、付加給付の恩恵が大きい

税務担当者としては、給与計算時に正確な保険料率と負担割合を適用することが最も重要です。標準報酬月額の決定タイミング(定時決定は年1回、随時改定は報酬が大きく変動した時)を理解し、算定基礎届や月額変更届の提出期限を守る必要があります。


健康保険料は税法上の社会保険料控除の対象となり、年末調整時に源泉徴収票に記載されます。従業員から保険料に関する問い合わせがあった際は、保険者の種類、保険料率、負担割合を説明できるようにしておくことが望ましいです。


【保険者向け】組合健保・協会けんぽの違いを図解で解説では、制度理解を深めるための図解資料が参考になります。
最終的には、保険料の月額差と年間差、医療費がかかった場合の実質負担差を具体的に計算し、自社の従業員にとってどちらが有利かを判断することが重要です。組合健保だから必ず得というわけではないことが基本です。




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