地震保険料控除とは火災保険との違いと節税術

地震保険料控除とは火災保険との違いと節税術

地震保険料控除とは何か、火災保険との違いを正しく理解する

火災保険に毎年保険料を払っているのに、年末調整で何も申告していないとしたら、最大1万2,500円を毎年捨てていることになります。


この記事の3つのポイント
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火災保険料は控除対象外、地震保険料はOK

セットで加入していても控除できるのは地震保険部分のみ。この違いを知らないと年末調整で損をします。

💰
所得税で最大5万円・住民税で最大2.5万円の控除

所得税率20%の人が上限まで控除を受けると、年間1万2,500円の税負担軽減になります。

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過去5年分をさかのぼって還付申告できる

申告を忘れていた年があっても、5年以内なら還付申告が可能。今からでも間に合います。


地震保険料控除とは何か、火災保険料が対象外になる理由

地震保険料控除とは、居住用の建物や家財を対象とした地震保険の保険料を支払った場合に、一定の金額を所得から差し引ける制度です。国税庁が定める所得控除の一種で、課税対象となる所得が減ることで、所得税住民税の両方の負担が軽くなります。


よく混同されるのが、火災保険の保険料が対象になるかどうかという点です。結論は明確で、火災保険料は控除の対象になりません。かつては「損害保険料控除」という制度があり、火災保険料も控除できた時代がありました。しかし2006年(平成18年)の税制改正によって、2007年(平成19年)分から損害保険料控除は廃止されています。


制度の廃止が意外と知られていないのが実情です。


現在、控除の対象となるのは原則として地震保険の保険料部分のみとなっています。火災保険と地震保険をセットで契約している場合でも、申告できるのは地震保険に相当する保険料だけです。控除証明書に記載された「地震保険料」の金額だけを記入する、という点が実務上の大切なポイントになります。


地震保険料控除の対象となる契約の条件は以下のとおりです。


  • 納税者本人または生計を一にする配偶者・親族が所有する居住用の建物・家財が対象であること
  • 別荘・空き家・店舗・事務所・賃貸アパート(オーナー所有分)は対象外であること
  • 店舗併用住宅の場合は、居住用部分の割合に応じた保険料のみが対象になること


「居住用」であることが条件です。


参考:国税庁が公式に定義する地震保険料控除の要件はこちらで確認できます。


国税庁|No.1145 地震保険料控除(令和7年4月1日現在)


地震保険料控除の控除額の計算方法と具体的な節税シミュレーション

控除の仕組みを理解するには、「控除額」と「実際に戻る税金」の2つを分けて考えることが重要です。控除額とは所得から差し引かれる金額であり、戻る税金はその控除額に税率をかけた金額になります。


【所得税の控除額】


年間の地震保険料 所得税の控除額
5万円以下 支払い保険料の全額
5万円超 一律5万円


【住民税の控除額】


年間の地震保険料 住民税の控除額
5万円以下 支払い保険料の1/2
5万円超 一律2.5万円


つまり控除額の上限は、所得税で5万円・住民税で2.5万円です。


では実際にいくら戻るのでしょうか?戻る税金の計算式は「(所得税の控除額 × 所得税率)+(住民税の控除額 × 10%)」で求められます。住民税の税率は全国一律10%が基本です。


たとえば、年間の地震保険料が5万円を超えており、所得税率が20%のケースで計算してみましょう。


  • 所得税の軽減額:5万円 × 20% = 1万円
  • 住民税の軽減額:2.5万円 × 10% = 2,500円
  • 合計の軽減額:1万2,500円(年間)


これはコンビニのランチ約50回分に相当します。申告書に数行記入するだけで、毎年このくらいの節税効果が得られるのは大きなメリットです。所得税率が高い人ほど恩恵が大きくなります。33%の人なら所得税だけで1万6,500円の軽減になります。


参考:控除額の計算について、freeeの解説ページにわかりやすい早見表があります。


freee|地震保険料控除でいくら戻ってくる?控除額の計算方法や手続き方法を解説


地震保険料控除の申請方法、年末調整と確定申告の手順

控除を受ける方法は、会社員個人事業主かによって手順が異なります。どちらのケースも、保険会社から届く「地震保険料控除証明書」が必要です。これは毎年10月中旬〜下旬に郵送されるのが一般的なので、届いたらすぐに保管しておきましょう。


【会社員の場合:年末調整での申請手順】


  1. 10〜11月頃に会社から「給与所得者の保険料控除申告書」を受け取る
  2. 地震保険料控除証明書の内容(保険会社名・保険期間・支払保険料)を申告書に転記する
  3. 申告書に証明書の原本を添付して、会社の指定期限(通常11月上〜中旬)までに提出する
  4. 12月または翌年1月の給与に還付金が含まれる形で精算される


提出期限を過ぎると年末調整での対応ができなくなります。その場合は、自身で確定申告(還付申告)を行う必要があるので注意が必要です。


【個人事業主・フリーランスの場合:確定申告での申請手順】


  1. 控除証明書(原本)を用意する
  2. 年間の支払保険料をもとに控除額を計算する
  3. 確定申告書の「第一表・第二表」にある「地震保険料控除」欄に金額を記入する
  4. 控除証明書を添付して税務署に提出する(e-Tax利用時は証明書の添付省略が可能)


e-Taxなら手続きがスムーズです。


住民税の控除分は、年末調整・確定申告どちらの場合も、翌年度の住民税に自動的に反映されます。改めて市区町村に申告し直す必要はありません。年末調整で所得税の還付を受け、翌年の住民税が下がる、という形で2段階で節税効果が出るということです。


参考:国税庁の公式ページで年末調整に使う申告書様式をダウンロードできます。


国税庁|給与所得者の保険料控除の申告(年末調整の手引き)


地震保険料控除の対象となる旧長期損害保険、意外と知られていない経過措置

2006年以前に積立型の長期損害保険(積立火災保険など)に加入していた人は、現在でも地震保険料控除の枠組みで所得控除を受けられる場合があります。これが「旧長期損害保険に関する経過措置」です。まだ持っている人は少なくありません。


対象となる旧長期損害保険契約の3要件は以下のとおりです。


  • 2006年12月31日以前に締結した契約(保険期間の始まりが2007年1月1日以降のものは除く)
  • 満期返戻金がある契約で、保険期間が10年以上であること
  • 2007年1月1日以降に契約内容の変更を行っていないこと


この「変更していないこと」という条件は見落としがちです。


旧長期損害保険料として控除できる金額は、地震保険とは別の計算式を使います。所得税では支払保険料が2万円超の場合に一律1.5万円、住民税では1.5万円超の場合に一律1万円が上限となります。


さらに重要なのは、地震保険と旧長期損害保険の両方に加入している場合、それぞれの控除を合算できるという点です。ただし合計の上限は所得税で5万円・住民税で2.5万円であることに変わりありません。どちらか一方だけが上限に達していない場合は、両方を合算して申告するとよりお得になります。


また、一つの保険契約で地震保険料と旧長期損害保険料の両方が含まれる場合、どちらか一方しか選べません。この場合は有利な方を計算してから選択することが大切です。


参考:国税庁が公表している旧長期損害保険に関する経過措置の詳細はこちら。


国税庁|地震保険料控除に関する経過措置(質疑応答事例)


地震保険料控除を賃貸住まいや申告忘れのケースで最大活用する方法

持ち家の人だけが地震保険料控除を使えると思っていたとしたら、それは誤解です。賃貸住宅に住んでいる人も、家財を対象とした地震保険に加入していれば、同じように控除を受けられます。これが意外と知られていません。


賃貸の場合、入居者が加入する地震保険の補償対象は「家財(家具・家電・衣類など)」です。建物は大家が保険に入るため、入居者は家財保険として地震特約を付ける形になります。この家財向け地震保険の保険料も、控除の対象になります。


家財保険でも対象です。


ただし、投資用不動産のオーナーが加入する地震保険は対象外となります。あくまでも「自分が居住している住居」またはその居住用家財が対象です。別荘や空き家、オーナーとして所有する賃貸アパートの建物には適用されません。


もう一つ知っておきたいのが、過去に申告し忘れた年がある場合は、5年以内であればさかのぼって還付申告できるという点です。たとえば、5年間ずっと申告を忘れていた場合は、合計で数万円の還付を受けられる可能性があります。


さかのぼり申告は今からでも間に合います。


手続きは、各年度の確定申告書と地震保険料控除証明書をそろえて税務署に提出するだけです。会社員でも、年末調整で申告し忘れた年については、自分で還付申告書を出せます。5年以上が経過した年分については時効となるため、まだ間に合うなら早めに動くのが得策です。


なお、一括払いで複数年分の地震保険料を払っている場合は、「支払保険料 ÷ 保険期間(年)」で1年分に換算した金額が控除対象となります。たとえば、5年一括払いで10万円なら、1年あたり2万円が対象となるイメージです。


まとめると、地震保険料控除を正しく活用するためのポイントは次の4点に集約されます。


  • 🔑 控除できるのは火災保険料ではなく地震保険料のみ
  • 🔑 所得税で最大5万円・住民税で最大2.5万円の控除(税率20%なら年間1.2万円超の節税)
  • 🔑 賃貸住まいでも家財向け地震保険で控除可能
  • 🔑 申告し忘れた年は5年以内なら還付申告でさかのぼれる


控除証明書は毎年10月中旬以降に届きます。届いたらすぐに年末調整の書類と一緒にまとめておく習慣をつけておくと、申告漏れを防ぐことができます。地震への備えが節税にもつながる制度を、ぜひ毎年しっかり活用してください。


参考:ソニー損保による地震保険料控除の総合解説(住民税の控除額表も掲載)。


ソニー損保|地震保険料控除とは?所得控除を受ける条件や控除額を解説