

「地方」と名前についているのに、あなたの会社の申告先は国の税務署です。
地方法人税とは、2014年(平成26年)10月1日以降に開始する事業年度から適用された、法人を対象とする税金です。正式には「地方法人税法」に基づいて徴収される国税に分類されます。
ここで「国税」という点に引っかかる方が多いのですが、これを子供にもわかりやすいたとえ話で説明してみましょう。たとえば学校のクラスに10人の生徒がいて、成績の良い5人の子だけが月1,000円のお小遣いをもらっているとします。残りの5人は月200円しかもらえません。先生がそれを不公平に思い、「全員から一度お小遣いを集めて、均等に配り直そう」と決めたとすれば、これが地方法人税の考え方に近いです。
つまり原則です。都市部の企業が多い地域(東京・大阪など)と、企業が少ない地方では、法人税系の税収に大きな偏りが生まれていました。地方法人税はその格差を是正するために、国が一度企業から徴収して各地域に再分配する仕組みです。
名称に「地方」と入っているので地方税と思いがちですが、申告・納付先はあくまで国(税務署)です。国が集めたお金は地方交付税の財源として活用され、税収が少ない地域に配分されます。
| 税の種類 | 納付先 | 課税主体 |
|---|---|---|
| 地方法人税 | 国(税務署) | 国税 |
| 法人住民税 | 都道府県・市町村 | 地方税 |
| 法人事業税 | 都道府県 | 地方税 |
| 法人税 | 国(税務署) | 国税 |
この表を見ると、法人関連の税金はいくつか存在していて、混同しやすい状況にあることがよくわかります。「地方法人税=国税」という事実だけは、ぜひ頭に入れておいてください。
参考:地方法人税の制度の目的と仕組みについて総務省が詳しく解説しています。
地方法人税の計算はシンプルです。計算式は次のとおりです。
つまり法人税額が決まれば、あとは10.3%をかけるだけ。10.3%は原則です。税率は2019年(令和元年)10月1日以後に開始する事業年度から適用されている数字で、それ以前は4.4%でした。
子供向けにたとえると、「100円の法人税があれば、10円ちょっと(10.3円)が地方法人税になる」というイメージです。
具体的な計算例を見てみましょう。資本金300万円の中小企業で、課税所得が2,000万円だったケースを想定します。
約40万円強というと、東京都内のワンルームマンションの家賃1か月分程度のイメージです。決して小さくない金額です。
法人税率には2段階の仕組みがあります。資本金1億円以下の中小企業であれば、課税所得800万円以下の部分は税率15%、800万円超の部分には23.2%が適用されます。一方で資本金1億円超の大企業は、全所得に一律23.2%が課せられます。この違いが地方法人税の金額に直結します。
なお、令和7年4月1日以後に開始する事業年度について、所得が年10億円を超えた事業年度では、800万円以下の部分の法人税率が17%に変更されています。これは注意が必要です。
法人税の税率の詳細については国税庁の公式情報が参考になります。
地方法人税と混同されやすい税金のひとつが「法人住民税」です。名前が似ているうえ、どちらも法人に課される税という点でわかりにくくなっています。整理するとシンプルです。
法人住民税とは、都道府県や市町村などの地方自治体が、その地域で事業を営む法人に課す地方税のことです。「法人都道府県民税」と「法人市町村民税」の総称で、地域の行政サービスを支える財源です。
法人住民税はさらに「法人税割」と「均等割」の2種類から構成されています。
ここで意外な事実があります。赤字の会社でも法人住民税の均等割だけは必ず発生します。最低でも年間7万円前後(東京都で資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合)の負担が生じます。法人を設立したからには、黒字・赤字に関わらず一定のコストがかかるということです。
一方で地方法人税は法人税額がゼロ(赤字の場合)なら、10.3%をかけてもゼロになります。赤字なら問題ありません。
地方法人税が新設されたことで、法人住民税の「法人税割」の税率が引き下げられました。具体的には都道府県民税分と市町村民税分を合わせて計5.9ポイント引き下げられています(令和元年10月以降)。つまり、地方法人税10.3%が上乗せされた分、法人税割が5.9%分減っているので、トータルの負担はほぼ変わりません。これが大事なポイントです。
| 比較項目 | 地方法人税 | 法人住民税(法人税割) |
|---|---|---|
| 税の種類 | 国税 | 地方税 |
| 納付先 | 国(税務署) | 都道府県・市町村 |
| 赤字の場合 | 非課税(ゼロ) | |
| 税率 | 法人税額の10.3% | 法人税額に各自治体の税率を乗算 |
法人住民税の詳しい仕組みについては弥生会計のページが参考になります。
弥生|法人住民税とは?法人税・法人事業税との違いやしくみを解説
地方法人税の申告・納付は、実は法人税とまとめて行えます。手順は思ったよりシンプルです。
まず申告書については、法人税の確定申告書(別表一)の中に地方法人税の欄が含まれているため、法人税申告書を提出すると同時に地方法人税の申告も完了します。別々の書類を作る必要はありません。
納付の期限も法人税と同じで、事業年度終了日の翌日から2か月以内です。たとえば3月決算の会社なら5月31日が納付期限です。この期限を過ぎると延滞税が発生するため、注意が必要です。
納付方法は次の3つから選べます。
これは使えそうです。e-Taxを活用すれば、窓口に出向く時間を節約しながらポイントを貯めることもできます。クレジットカードで納付する場合は手数料がかかる点を忘れないように。たとえば法人税と地方法人税を合計して100万円払う場合、手数料は100×99円=9,900円になります。
また、法人税額がゼロでも地方法人税の確定申告書は必ず提出しなければなりません。申告書の欄に「0」と記載して提出するルールがあります。ゼロでも申告は必須です。
e-Taxの登録方法や使い方については、国税庁の公式案内で確認できます。
地方法人税が創設された背景を深く掘り下げると、日本の「税収の偏在」という根深い問題が見えてきます。この問題は金融や投資に興味がある人にとっても、企業価値や地域経済を評価するうえで重要な視点です。
日本全体の法人住民税の市町村税収に占める割合は約8%とされていますが、企業が集中する特定の自治体ではそれが2〜3割を占めるケースもあります(日本経済新聞の報道より)。つまり、東京・愛知・大阪などの都市部には企業が集まり、税収が豊かです。一方で地方の自治体は税収が乏しく、行政サービスの質に差が生まれやすい構造があります。
地方法人税は、この格差を縮小するために設計された「再分配の仕組み」です。都市部の法人から集めた税を国が一度受け取り、地方交付税として各地域に配分します。東京都は地方交付税の「不交付団体」として知られていますが、それでも地方法人税は納付しなければなりません。この点が、都市部の企業にとって「形を変えた負担増」と感じられる理由でもあります。
厳しいところですね。しかし同時に、地方インフラが整備されることで物流コストが下がったり、地方での市場が生まれたりするメリットも間接的にあります。企業として見れば、地方法人税は単なる費用ではなく、地域市場の底上げに貢献するコストとも解釈できます。
金融に興味がある人がこの税の仕組みを理解しておくと、企業分析や地域経済の読み解きに活かせます。たとえば地方移転を検討している企業の実効税率を比較する際、法人住民税の税率が自治体ごとに異なるため、所在地によって実際の税負担が変わるケースがあります。節税目的で地方移転を検討している企業の動向も、この文脈で読めるようになります。
日本経済新聞の記事では市町村税収における法人住民税の割合や格差の実態が詳しく解説されています。
また、税収偏在の問題と是正策については、総務省の資料でより詳しく確認できます。