試算表とは何か・貸借対照表との違いと関係性

試算表とは何か・貸借対照表との違いと関係性

試算表とは何か・貸借対照表との関係と違い

試算表と貸借対照表は「同じもの」だと思っていると、銀行融資の審査で判断を誤り、数百万円単位の資金調達に失敗するリスクがあります。


この記事の3つのポイント
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試算表とは何か

総勘定元帳を集計した内部確認用の一覧表。仕訳・転記ミスの発見と経営状況の把握が主な目的で、法的な作成義務はない。

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貸借対照表との違い

試算表は「全勘定科目を網羅した社内資料」、貸借対照表は「資産・負債・純資産のみを外部に示す決算書」。役割も作成義務も異なる。

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融資・経営管理への活用

月次試算表を毎月10日までに提出できる体制が、銀行融資の審査通過率を大きく左右する。試算表は「融資の3点セット」のひとつ。


試算表の基本:仕訳帳・総勘定元帳との流れを知る

試算表とは、仕訳帳から総勘定元帳に転記した内容が正確かどうかを確かめるために作成する、勘定科目ごとの集計一覧表のことです。英語では "Trial Balance(T/B)" と呼ばれ、会計の現場では「TB(ティービー)」と略されることもよくあります。


会計処理の流れとして、まず日々の取引を仕訳帳に記録し、それを勘定科目ごとに分類した総勘定元帳に転記し、最後にその総勘定元帳の数値をまとめて試算表を作成するという順番になります。試算表が一種の「中間チェックポイント」として機能しているわけです。


試算表の最大の特徴は、借方と貸方の合計金額が必ず一致するという原則にあります。複式簿記では、すべての取引に借方と貸方が等しく発生するため、正しく記録されていれば両者の合計は自動的に揃います。合計が食い違っていれば、どこかで記入ミス・転記ミス・計算ミスが起きているサインです。


つまり試算表です。


重要なのは、試算表には法的な作成義務がない点です。会社法や法人税法が定める義務は「正確な会計帳簿の記録・保存」であり、試算表の作成自体は任意です。しかし実際には、月次・四半期・年次など定期的に作成する企業がほとんどで、その理由は後述する融資対策や経営改善への実用性の高さにあります。


freee公式|試算表とは?種類ごとの作り方をわかりやすく解説(公認会計士・税理士監修)


試算表の3種類:合計・残高・合計残高の使い分け

試算表には「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類があり、それぞれ記載内容と活用場面が異なります。違いを整理しておくと実務で迷いません。


まず合計試算表は、勘定科目ごとに一定期間の借方合計・貸方合計をまとめたものです。取引のボリューム(お金の動きの規模)が一目でわかりますが、各科目の現在残高は直接読み取れません。「この期間にどれだけ取引があったか」を把握したいときに向いています。


次に残高試算表は、借方合計と貸方合計の差額、すなわち各科目の「残高」だけを集計した表です。現在の資産・負債・収益・費用の残高をすっきりと確認できるため、貸借対照表や損益計算書へ転記する際のベースになります。特に決算時に作成する「決算整理前残高試算表」と「決算整理後残高試算表」は、決算作業の根幹を支える重要書類です。


そして合計残高試算表は、合計試算表と残高試算表を1枚にまとめたものです。金額の動き(合計)と現在の状態(残高)を同時に把握できるため、経営分析に非常に便利です。ただし、表が大きくなるため作成の手間はやや増します。これが原則です。


| 種類 | 記載内容 | 主な用途 |
|------|----------|----------|
| 合計試算表 | 各科目の借方・貸方の合計金額 | 取引規模の把握、転記ミスの確認 |
| 残高試算表 | 各科目の借方・貸方の残高 | 決算書作成のベース資料 |
| 合計残高試算表 | 合計金額と残高の両方 | 経営分析・融資提出用 |


実際に銀行へ提出する場面では、合計残高試算表が最も情報量が多く信頼性が高いとして好まれる傾向にあります。税理士事務所や会計ソフトで自動生成される月次試算表も、多くの場合この合計残高試算表の形式です。


弥生公式|残高試算表とは?試算表の作り方・見方をわかりやすく解説


試算表と貸借対照表の違い:内部資料と外部報告の決定的な差

「試算表と貸借対照表は何が違うの?」という疑問は、金融や会計を学び始めた人が最初につまずくポイントのひとつです。両者の違いは、大きく3つの観点で整理できます。


① 作成目的の違い


試算表は、仕訳や転記の正確性を確認するための「内部管理資料」です。経営者や経理担当者が社内で使う書類であり、銀行への提出はあくまで任意です。一方、貸借対照表は会社の財政状態を株主・銀行・取引先・税務署など外部の利害関係者に示す「外部報告用の決算書」であり、会社法のもとで年1回の作成が義務付けられています。


② 記載科目の違い


試算表には「全ての勘定科目」が含まれます。資産・負債・純資産(貸借対照表に対応する科目)と、収益・費用(損益計算書に対応する科目)がすべて一覧になっています。貸借対照表はそこから「資産・負債・純資産」に関する科目だけを抽出した書類です。損益計算書は「収益・費用」に関する科目だけを抽出した書類であり、試算表はその両方の親元といえます。


③ 作成タイミングと義務の違い


試算表は月次など任意のタイミングで作成しますが、貸借対照表は決算日時点での財政状態を確定させるために年1回作成し、外部に開示する義務があります。株式会社の場合は少なくとも貸借対照表の公告が会社法上の義務です。


意外ですね。試算表は「決算書の元データ」ですが、それ自体は決算書ではないのです。


試算表を作成し、そこから資産・負債・純資産の科目を抜き出して整形したものが貸借対照表に、収益・費用の科目を抜き出して整形したものが損益計算書になります。つまり試算表は決算書の「原材料」であり、貸借対照表はその一部を加工して完成させた「製品」に例えられます。


小谷野会計グループ|試算表と決算書の違いは?活用方法や税務署が見るポイントを解説


試算表と銀行融資:月次提出が融資成否を左右する理由

金融に興味を持つ人、とくに事業経営に関わる立場の人にとって、試算表の最も実用的な側面が「銀行融資との関係」です。


銀行が融資の申し込みを受けた際、決算書だけでは情報が不十分です。なぜなら決算書は年に1回しか作成されないからです。決算から6か月が経過していれば、その間の業績変化はまったく反映されていません。


そこで銀行が求めるのが月次試算表です。決算期から3か月以上が経過した時点での追加融資申請には、試算表の提出がほぼ必須となっています。銀行担当者は提出された試算表をもとに、6か月分の売上・利益を2倍して「年間着地予測」を算出し、稟議書に添付します。この数値が融資審査を大きく左右するのです。


銀行が試算表で具体的にチェックしているポイントは以下の4点です。


- 📊 売上の変動:前期比で増減傾向はどうか、原因に合理性があるか
- 💰 利益の状況:黒字か赤字か、赤字の場合は営業利益段階か経常利益段階か
- 🏦 借入金残高の変動:借入が増えている場合、どこの金融機関からかを確認
- 📑 不透明な勘定科目:貸付金・立替金・出資金など説明困難な科目がないか


毎月試算表が提出できない会社は、銀行からの信頼を失います。これは痛いですね。「経理に任せているからわからない」という経営者の発言は、銀行員を最も不安にさせる言葉のひとつだといわれています。試算表をすぐに提出できない状態は、事務フロー上に何らかの問題が潜んでいるサインとも解釈されるからです。


試算表を毎月10日までに作成できる体制を整えることが、融資交渉を有利に進める最初の一歩です。会計ソフト(freee会計・弥生会計マネーフォワード クラウド会計など)を活用すれば、銀行明細との自動連携によって仕訳が自動化され、月次試算表の作成工数を大幅に削減できます。


和田経営相談事務所|銀行融資と試算表の関係・銀行が試算表でチェックしているポイントを詳解


試算表の読み方:金融リテラシーを高める「独自の視点」

試算表は会計上の正確性チェックだけでなく、「経営の実態を先読みするツール」として機能します。この視点はあまり語られませんが、金融に興味のある人にとって大きな武器になります。


試算表には、貸借対照表と損益計算書の「リアルタイム版」が詰まっています。正式な決算書は年1回ですが、試算表を月次で読めば、実質的に毎月の「財務三表の速報版」として使えるのです。


特に注目すべき科目をいくつか挙げます。


現金・預金残高(資産の部):会社がすぐに動かせる現金がどれだけあるかを示します。黒字経営でも現金が枯渇すれば倒産します(いわゆる「黒字倒産」)。現金残高が毎月の固定費の2〜3か月分を下回り始めたら要注意のサインです。


売掛金の増減(資産の部):売掛金が急増している場合、売上は伸びていても回収が遅れている可能性があります。売上が1,000万円増えて売掛金が同額増えているだけでは、実際の現金は増えていません。


借入金残高(負債の部):月次で借入金の増減を追うことで、返済スケジュールと資金繰りのバランスが見えてきます。借入金が売上の6か月分を超えていれば、多くの銀行は「過剰債務」と判断します。


販売費および一般管理費(費用の部):売上対比で人件費や家賃などの固定費が何%を占めているかをチェックします。この比率が毎月の試算表で上昇傾向なら、収益構造の悪化を早期に察知できます。


月次試算表を「前月比」「前年同月比」で比較するクセをつけると、数字が「動く物語」として読めるようになります。これが基本です。経営者や投資家が試算表をもとに早期判断できるのは、こうした比較分析の積み重ねがあるからです。なお、マネーフォワード クラウドの調査(2026年2月実施、有効回答635名)によると、決算数値に誤りが生じる最大の原因は「手入力によるミス(入力漏れ・桁間違いなど)」で40.8%を占めており、デジタルツールによる自動化が経営品質の向上に直結することが数字にも表れています。


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