森林環境税 計算と個人住民税の均等割額の関係

森林環境税 計算と個人住民税の均等割額の関係

森林環境税 計算の基本と実務対応

森林環境税の基本情報
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導入時期

令和6年度(2024年度)から課税開始

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税額

個人一人あたり年額1,000円

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徴収方法

個人住民税(市区町村民税・都道府県民税)の均等割と併せて徴収

森林環境税の計算方法と個人住民税との関係

森林環境税は、令和6年度(2024年度)から導入された国税で、個人住民税均等割と併せて徴収される仕組みとなっています。計算方法としては非常にシンプルで、国内に住所を有する個人に対して一律で年額1,000円が課税されます。

 

この森林環境税の導入は、東日本大震災復興財源確保のための住民税均等割の臨時増税措置(年額1,000円)が令和5年度で終了するタイミングと合わせて設計されています。そのため、納税者の負担感を抑える工夫がなされています。

 

具体的な計算の流れは以下のとおりです。

  1. 前年の所得に基づいて個人住民税(市区町村民税・都道府県民税)の計算を行う
  2. 個人住民税の均等割額(標準税率:市区町村民税3,000円+都道府県民税1,000円=合計4,000円)を算出
  3. 森林環境税1,000円を加算
  4. 合計5,000円を均等割額として徴収

ただし、地域によっては都道府県や市区町村が独自に環境税などの超過課税を実施している場合があり、その場合は上記の標準税率に加算されることになります。

 

森林環境税の納税義務者と非課税基準の計算

森林環境税の納税義務者は「国内に住所を有する個人」とされていますが、すべての人が納税義務を負うわけではありません。一定の所得基準以下の方や特定の条件に該当する方は非課税となります。

 

重要なポイントは、森林環境税と個人住民税では非課税基準が異なる点です。そのため、個人住民税が非課税であっても、森林環境税は課税される場合があります。

 

森林環境税の非課税基準は以下のとおりです。

  1. 生活保護法による生活扶助等を受けている方
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下の方
  3. 前年の合計所得金額が以下の計算式で算出される金額以下の方
    • 扶養親族がいない場合:38万円以下(給与収入のみの場合は93万円以下)
    • 扶養親族がいる場合:28万円×(本人+扶養親族数)+10万円以下
    • ※控除対象配偶者または扶養親族がいる場合は上記に16万8千円が加算

一方、個人住民税の非課税基準は以下のとおりです。

  1. 生活保護法による生活扶助等を受けている方
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下の方
  3. 前年の合計所得金額が以下の計算式で算出される金額以下の方
    • 扶養親族がいない場合:43万円以下(給与収入のみの場合は98万円以下)
    • 扶養親族がいる場合:33万円×(本人+扶養親族数)+10万円以下
    • ※控除対象配偶者または扶養親族がいる場合は上記に16万8千円が加算

この違いにより、年収93万円超98万円以下の給与所得者などは、個人住民税は非課税でも森林環境税は課税されるケースが生じます。税理士としては、この点を顧問先に明確に説明し、混乱を防ぐことが重要です。

 

森林環境税の計算例と実務上の留意点

森林環境税の計算は基本的にシンプルですが、実務上いくつかの留意点があります。ここでは具体的な計算例と共に解説します。

 

【計算例1】給与収入のみの単身者の場合

  • 給与収入:300万円
  • 給与所得控除後:300万円 - 110万円 = 190万円
  • 基礎控除:48万円
  • 課税所得:142万円
  • 個人住民税均等割:4,000円(市区町村民税3,000円+都道府県民税1,000円)
  • 森林環境税:1,000円
  • 合計均等割額:5,000円

【計算例2】給与収入のみで扶養家族1名の場合

  • 給与収入:300万円
  • 給与所得控除後:300万円 - 110万円 = 190万円
  • 基礎控除:48万円
  • 扶養控除:38万円
  • 課税所得:104万円
  • 個人住民税均等割:4,000円
  • 森林環境税:1,000円
  • 合計均等割額:5,000円

実務上の留意点としては、以下の点に注意が必要です。

  1. 令和6年度分の個人住民税については定額減税(特例控除)が実施されている場合があります
  2. 森林環境税は所得割額の計算には影響しません
  3. 森林環境税は租税条約による免除等の対象外となります
  4. 森林環境税の税収は全額が森林環境譲与税として都道府県・市町村へ譲与されます

特に、個人住民税の特別徴収(給与天引き)を行っている企業の給与担当者には、令和6年度からの変更点を事前に説明しておくことが望ましいでしょう。

 

森林環境税の導入背景と使途の計算根拠

森林環境税が導入された背景には、日本の森林整備に関する課題があります。日本の国土の約7割は森林ですが、林業の担い手不足や木材価格の低迷などにより、適切な管理が行き届いていない森林が増加しています。

 

森林環境税は、以下のような目的で導入されました。

  1. 温室効果ガス排出削減目標の達成
  2. 災害防止や国土保全
  3. 生物多様性の保全
  4. 森林資源の循環利用の促進

森林環境税の税収は全額が森林環境譲与税として、以下の基準で都道府県・市町村に配分されます。

  • 私有林人工林面積(50%)
  • 林業就業者数(20%)
  • 人口(30%)

この配分基準により、森林を多く有する地方自治体に重点的に配分される仕組みとなっています。ただし、森林の少ない都市部の自治体にも人口に応じた配分があり、木材利用の促進や普及啓発などに活用されています。

 

森林環境譲与税の使途は、以下のように定められています。

  • 間伐や人材育成・担い手の確保
  • 木材利用の促進
  • 普及啓発
  • その他森林整備及びその促進に関する費用

税理士としては、顧問先に対して森林環境税の導入背景や使途について説明することで、新たな税負担への理解を促すことができるでしょう。

 

森林環境税の計算に関する税理士のアドバイスポイント

税理士として顧問先に森林環境税について説明する際のポイントをまとめます。特に、個人事業主や中小企業の経営者に対しては、以下の点を押さえておくと良いでしょう。

 

  1. 負担増への誤解を解消する

    令和5年度までの東日本大震災復興財源のための臨時増税(1,000円)が終了し、代わりに森林環境税(1,000円)が導入されるため、基本的には負担増とはならないことを説明します。

     

  2. 非課税基準の違いに注意

    個人住民税と森林環境税では非課税基準が異なるため、特に所得が少ない方については、どちらの税金が課税されるのか個別に確認が必要です。

     

  3. 特別徴収義務者への影響

    給与の特別徴収を行っている企業は、令和6年度分の住民税から森林環境税が含まれることになります。特別徴収税額の通知書の見方や、従業員への説明方法についてアドバイスしましょう。

     

  4. 節税対策への影響

    森林環境税は一律1,000円の定額課税であり、所得控除や税額控除の対象とはならないため、通常の節税対策では軽減できない点を説明します。

     

  5. 法人への直接的影響はない

    森林環境税は個人に対する課税であり、法人には直接課税されません。ただし、特別徴収義務者としての事務負担は発生します。

     

  6. 地方自治体独自の森林環境税との違い

    一部の都道府県では独自に森林環境税(森林税)を導入している場合があります。国税の森林環境税と混同しないよう、違いを明確に説明しましょう。

     

  7. 将来的な税率変更の可能性

    現在は年額1,000円ですが、将来的に税率が変更される可能性もあることを念頭に置いておくと良いでしょう。

     

顧問先からよくある質問としては、「森がない都市部に住んでいるのになぜ払う必要があるのか」というものがあります。これに対しては、森林の恩恵(酸素供給、水源涵養、CO2吸収など)は全国民が受けているため、広く薄く負担する仕組みになっていることを説明すると理解が得られやすいでしょう。

 

また、個人事業主の場合は、森林環境税は事業税所得税とは異なり、必要経費や税額控除の対象とはならない点も押さえておくべきポイントです。

 

森林環境税の計算と地方自治体独自の環境税との関係

国税である森林環境税とは別に、一部の地方自治体では独自に森林環境税(または森林税、水源環境税など名称は様々)を導入しています。これらと新たに導入された国税の森林環境税との関係について理解しておくことは、税理士として重要です。

 

地方自治体独自の森林環境税の例。

  1. 高知県森林環境税
    • 個人:県民税均等割に年額500円を上乗せ
    • 法人:法人県民税均等割に5%を上乗せ
  2. 神奈川県水源環境保全税
    • 個人:県民税均等割に年額300円を上乗せ
    • 法人:法人県民税均等割に一定割合を上乗せ
  3. 宮城県みやぎ環境税
    • 個人:県民税均等割に年額1,200円を上乗せ
    • 法人:法人県民税均等割に一定割合を上乗せ

これらの地方独自の環境税と国税の森林環境税は、課税の根拠や使途が異なります。地方独自の環境税は各自治体の条例に基づいて徴収され、その地域の森林保全や環境対策に使われます。一方、国税の森林環境税は全国一律で徴収され、森林環境譲与税として全国の自治体に配分されます。

 

実務上の注意点としては、両方の税金が課税される地域に住んでいる納税者は、国税と地方税の両方の森林環境税(または類似の名称の税)を負担することになります。例えば、宮城県の場合、令和6年度以降は以下のようになります。

  • 標準的な住民税均等割:4,000円(市町村民税3,000円+県民税1,000円)
  • みやぎ環境税:1,200円
  • 国税の森林環境税:1,000円
  • 合計:6,200円

税理士としては、顧問先が所在する地域の地方税制度を確認し、国税の森林環境税との重複課税がある場合は、その旨を説明することが重要です。また、地方独自の環境税は時限立法であることが多いため、適用期間にも注意が必要です。

 

森林環境税に関する情報は、各地方自治体のホームページや国税庁のホームページで確認することができます。最新の情報を把握し、顧問先に正確なアドバイスを提供することが求められます。

 

国税庁:森林環境税について詳しく解説されています
林野庁:森林環境税及び森林環境譲与税の制度概要が確認できます