基礎控除とは 所得税の計算と控除額の段階的設定について

基礎控除とは 所得税の計算と控除額の段階的設定について

基礎控除の仕組みと申告方法

基礎控除の基本情報
💰
所得控除の一種

基礎控除は15種類ある所得控除の一つで、合計所得金額が2,500万円以下の納税者が適用できます。

📊
段階的な控除額

2025年からは所得に応じて最大58万円の控除が受けられますが、所得増加に伴い控除額は段階的に減少します。

📝
申告方法

給与所得者は年末調整で「基礎控除申告書」を提出し、個人事業主は確定申告で申告します。

基礎控除とは所得控除の一種

基礎控除は、所得税額を計算する際に総所得金額から差し引くことができる所得控除の一種です。所得控除には全部で15種類あり、基礎控除はその中でも最も基本的な控除となっています。

 

所得控除は、個々の納税者の事情を考慮して税負担を調整するための仕組みです。例えば、医療費控除や社会保険料控除生命保険料控除などがありますが、基礎控除は特別な条件なく適用される基本的な控除です。

 

所得税は「収入-経費-所得控除」に基づいて課税されるため、基礎控除を適用することで課税所得額が減少し、結果的に納税額を抑えることができます。

 

基礎控除が重要な理由は、生活に必要な最低限の所得には課税しないという考え方に基づいているからです。すべての納税者に一定の控除を認めることで、税負担の公平性を保つ役割を果たしています。

 

基礎控除の控除額と所得制限について

基礎控除の控除額は、2020年(令和2年)の税制改正により大きく変更されました。それまでは所得に関わらず一律38万円でしたが、改正後は所得に応じて段階的に設定されるようになりました。

 

現在(2024年)の基礎控除額は以下のとおりです。

納税者本人の合計所得金額 基礎控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

さらに、2024年12月27日に閣議決定された「令和7年度税制改正の大綱」により、2025年からは基礎控除額がさらに変更されます。2025年以降の基礎控除額は以下のとおりです。

納税者本人の合計所得金額 基礎控除額
2,350万円以下 58万円
2,350万円超2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

この改正により、合計所得金額が2,350万円以下の納税者は、基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられ、より大きな税負担軽減を受けることができるようになります。

 

基礎控除の申告書の書き方と注意点

給与所得者が基礎控除を受けるためには、年末調整の際に「給与所得者の基礎控除申告書」を勤務先に提出する必要があります。この申告書は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という名称の書類の一部として提出します。

 

申告書の記入方法は以下のとおりです。

  1. 基本情報の記入:氏名、住所、マイナンバーなどの基本情報を記入します。
  2. 合計所得金額の見積額の計算
    • 給与所得の金額
    • 公的年金等の雑所得の金額
    • その他の所得の金額(事業所得、不動産所得など)
    • これらを合計した金額を記入します。
  3. 控除額の区分の判定:合計所得金額の見積額に基づいて、該当する区分にチェックを入れます。
  4. 区分Ⅰの記入:合計所得金額が900万円以下の場合は「A」、900万円超950万円以下の場合は「B」、950万円超1,000万円以下の場合は「C」、1,000万円超1,805万円以下の場合は「D」と記入します。
  5. 基礎控除の額の記入:該当する基礎控除額を記入します。

注意点として、この申告書を提出しないと基礎控除を受けることができません。また、合計所得金額が変わった場合は、速やかに修正申告書を提出する必要があります。

 

基礎控除と給与所得控除の違いと併用

基礎控除と給与所得控除は、どちらも所得税を計算する際に適用される控除ですが、その性質と適用方法が異なります。

 

給与所得控除は、給与所得者のみに適用される控除で、給与収入から経費相当額を概算で控除するものです。給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が給与所得となります。
一方、基礎控除は、給与所得者だけでなく個人事業主など全ての納税者に適用される控除で、所得の種類に関わらず適用されます。基礎控除は、給与所得や事業所得などの所得から差し引かれます。

 

両者の主な違いは以下のとおりです。

項目 基礎控除 給与所得控除
対象者 全ての納税者(所得制限あり) 給与所得者のみ
控除の性質 最低生活費に対する配慮 給与所得の必要経費の概算控除
控除額 所得に応じて最大58万円(2025年以降) 給与収入に応じて変動(最低55万円)
適用タイミング 所得から控除 収入から控除して所得を算出

基礎控除と給与所得控除は併用することができます。給与所得者の場合、まず給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を算出し、その後、給与所得から基礎控除などの所得控除を差し引いて課税所得を計算します。

 

基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)を合わせると103万円になるため、年間の給与収入が103万円以下であれば所得税はかからないことになります。これが「103万円の壁」と呼ばれる理由です。

 

基礎控除の2025年改正と将来的な影響

2025年(令和7年)からの基礎控除の改正は、多くの納税者に影響を与える重要な変更です。この改正では、合計所得金額が2,350万円以下の納税者の基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられます。

 

この改正による主な影響は以下のとおりです。

  1. 税負担の軽減:合計所得金額が2,350万円以下の納税者は、基礎控除額が10万円増加するため、所得税負担が軽減されます。所得税率が10%の場合、年間1万円の税負担軽減となります。
  2. 所得区分の細分化:所得による控除額の区分がより細かくなり、2,350万円という新たな境界線が設けられます。
  3. 高所得者への影響なし:合計所得金額が2,400万円を超える納税者については、控除額に変更はありません。
  4. 源泉徴収への影響:令和7年分以後の所得税、および令和8年1月1日以降に支払われる給与や公的年金等の源泉徴収に適用されます。

この改正は、物価上昇や経済状況の変化に対応するための措置と考えられます。将来的には、さらなる税制改正により基礎控除額や所得区分が変更される可能性もあります。

 

納税者としては、自分の所得状況を把握し、適切な控除を受けるために、最新の税制改正情報に注意を払うことが重要です。特に所得が境界線付近にある場合は、所得管理や節税対策を検討する価値があるでしょう。

 

国税庁の基礎控除に関する詳細情報はこちら

基礎控除を最大限活用するための所得管理術

基礎控除を最大限に活用するためには、所得を適切に管理することが重要です。特に所得が控除額の境界線付近にある場合、少しの工夫で税負担を大きく軽減できる可能性があります。

 

所得が境界線付近の場合の対策
2025年以降、合計所得金額が2,350万円を少し超える場合、基礎控除額が58万円から48万円に減少します。この場合、以下の対策を検討しましょう。

  1. 所得の繰り延べ:年末に発生する所得を翌年に繰り延べることで、当年の所得を境界線以下に抑える方法があります。
  2. 経費の前倒し:個人事業主の場合、予定していた経費を前倒しで計上することで、所得を調整できる可能性があります。
  3. 所得分散:家族経営の場合、適切な範囲で家族に所得を分散させることで、家族全体の税負担を軽減できることがあります。

給与所得者の場合の活用法
給与所得者の場合、以下の点に注意すると基礎控除を効果的に活用できます。

  1. 副業所得の管理:副業がある場合、合計所得金額が境界線を超えないよう注意しましょう。
  2. 確定申告の活用:年末調整だけでなく、確定申告を行うことで、年末調整では控除しきれなかった控除を適用できる場合があります。
  3. 各種所得控除の活用:基礎控除だけでなく、他の所得控除(医療費控除、寄附金控除など)も併せて活用することで、総合的な税負担を軽減できます。

個人事業主の場合の活用法
個人事業主の場合、以下の点に注意すると基礎控除を効果的に活用できます。

  1. 適切な経費計上:事業に関連する経費を適切に計上することで、所得を適正化します。
  2. 所得の平準化:年度によって所得に大きな変動がある場合、可能な範囲で所得を平準化することを検討しましょう。
  3. 青色申告の活用:青色申告を行うことで、青色申告特別控除(最大65万円)を受けられるため、基礎控除と合わせてさらに税負担を軽減できます。

基礎控除を含む税制は定期的に改正されるため、最新の情報を常にチェックし、必要に応じて税理士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な所得管理と控除の活用により、合法的な範囲で税負担を最適化しましょう。

 

基礎控除の詳細と活用方法についての参考情報