
基礎控除は、所得税額を計算する際に総所得金額から差し引くことができる所得控除の一種です。所得控除には全部で15種類あり、基礎控除はその中でも最も基本的な控除となっています。
所得控除は、個々の納税者の事情を考慮して税負担を調整するための仕組みです。例えば、医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除などがありますが、基礎控除は特別な条件なく適用される基本的な控除です。
所得税は「収入-経費-所得控除」に基づいて課税されるため、基礎控除を適用することで課税所得額が減少し、結果的に納税額を抑えることができます。
基礎控除が重要な理由は、生活に必要な最低限の所得には課税しないという考え方に基づいているからです。すべての納税者に一定の控除を認めることで、税負担の公平性を保つ役割を果たしています。
基礎控除の控除額は、2020年(令和2年)の税制改正により大きく変更されました。それまでは所得に関わらず一律38万円でしたが、改正後は所得に応じて段階的に設定されるようになりました。
現在(2024年)の基礎控除額は以下のとおりです。
納税者本人の合計所得金額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
さらに、2024年12月27日に閣議決定された「令和7年度税制改正の大綱」により、2025年からは基礎控除額がさらに変更されます。2025年以降の基礎控除額は以下のとおりです。
納税者本人の合計所得金額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,350万円以下 | 58万円 |
2,350万円超2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
この改正により、合計所得金額が2,350万円以下の納税者は、基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられ、より大きな税負担軽減を受けることができるようになります。
給与所得者が基礎控除を受けるためには、年末調整の際に「給与所得者の基礎控除申告書」を勤務先に提出する必要があります。この申告書は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という名称の書類の一部として提出します。
申告書の記入方法は以下のとおりです。
注意点として、この申告書を提出しないと基礎控除を受けることができません。また、合計所得金額が変わった場合は、速やかに修正申告書を提出する必要があります。
基礎控除と給与所得控除は、どちらも所得税を計算する際に適用される控除ですが、その性質と適用方法が異なります。
給与所得控除は、給与所得者のみに適用される控除で、給与収入から経費相当額を概算で控除するものです。給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が給与所得となります。
一方、基礎控除は、給与所得者だけでなく個人事業主など全ての納税者に適用される控除で、所得の種類に関わらず適用されます。基礎控除は、給与所得や事業所得などの所得から差し引かれます。
両者の主な違いは以下のとおりです。
項目 | 基礎控除 | 給与所得控除 |
---|---|---|
対象者 | 全ての納税者(所得制限あり) | 給与所得者のみ |
控除の性質 | 最低生活費に対する配慮 | 給与所得の必要経費の概算控除 |
控除額 | 所得に応じて最大58万円(2025年以降) | 給与収入に応じて変動(最低55万円) |
適用タイミング | 所得から控除 | 収入から控除して所得を算出 |
基礎控除と給与所得控除は併用することができます。給与所得者の場合、まず給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を算出し、その後、給与所得から基礎控除などの所得控除を差し引いて課税所得を計算します。
基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)を合わせると103万円になるため、年間の給与収入が103万円以下であれば所得税はかからないことになります。これが「103万円の壁」と呼ばれる理由です。
2025年(令和7年)からの基礎控除の改正は、多くの納税者に影響を与える重要な変更です。この改正では、合計所得金額が2,350万円以下の納税者の基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられます。
この改正による主な影響は以下のとおりです。
この改正は、物価上昇や経済状況の変化に対応するための措置と考えられます。将来的には、さらなる税制改正により基礎控除額や所得区分が変更される可能性もあります。
納税者としては、自分の所得状況を把握し、適切な控除を受けるために、最新の税制改正情報に注意を払うことが重要です。特に所得が境界線付近にある場合は、所得管理や節税対策を検討する価値があるでしょう。
基礎控除を最大限に活用するためには、所得を適切に管理することが重要です。特に所得が控除額の境界線付近にある場合、少しの工夫で税負担を大きく軽減できる可能性があります。
所得が境界線付近の場合の対策
2025年以降、合計所得金額が2,350万円を少し超える場合、基礎控除額が58万円から48万円に減少します。この場合、以下の対策を検討しましょう。
給与所得者の場合の活用法
給与所得者の場合、以下の点に注意すると基礎控除を効果的に活用できます。
個人事業主の場合の活用法
個人事業主の場合、以下の点に注意すると基礎控除を効果的に活用できます。
基礎控除を含む税制は定期的に改正されるため、最新の情報を常にチェックし、必要に応じて税理士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な所得管理と控除の活用により、合法的な範囲で税負担を最適化しましょう。