

年金をもらいながら、さらに最大24万円超の給付金が一括でもらえることをご存じですか?
高年齢求職者給付金とは、65歳以上の雇用保険被保険者(高年齢被保険者)が離職して失業状態になった際に支給される、雇用保険制度上の一時金です。65歳未満の方が受け取る「基本手当(失業手当)」に相当する制度ですが、給付の仕組みが大きく異なります。
最も大きな違いは「一時金」として一括で支払われる点です。基本手当は4週間ごとにハローワークへ通い、失業認定を受けながら分割で受け取る仕組みですが、高年齢求職者給付金は審査が完了すれば、給付日数分の金額をまとめて口座に受け取ることができます。一度の申請で完結するため、手続きの負担が少ない点も特徴です。
また、2017年1月の雇用保険法改正以前は、この給付金は一生に1回しかもらえませんでした。現在は何度でも受給が可能です。離職と再就職を繰り返しても、そのつど受給要件(離職日前1年間に被保険者期間が通算6か月以上)を満たしていれば、給付金を受け取ることができます。制度改正の恩恵は大きく、65歳以降も複数の職場を渡り歩く方には特に有利な制度設計になっています。
なお、2025年時点で高年齢求職者給付金の基本手当日額には上限・下限が設けられており、60歳以上65歳未満の区分が適用されます。2025年8月1日改定後の最高額は1日あたり7,623円、最低額は2,411円です。給付率(賃金日額に対する基本手当日額の割合)は賃金日額に応じて約45〜80%の範囲で決まります。
参考:65歳以上の雇用保険・高年齢求職者給付金の公式案内(厚生労働省)
離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内> – 厚生労働省(PDF)
受給するには、大きく3つの要件をすべて満たすことが必要です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①年齢 | 離職時点で65歳以上の雇用保険被保険者であること |
| ②被保険者期間 | 離職日以前1年間に、被保険者期間が通算6か月以上あること |
| ③失業状態 | 就職の意思・能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できない状態であること |
「失業の状態」という言葉の意味が少しわかりにくいかもしれません。ハローワークが定める「失業」とは、「働く意思と能力がありながら職に就けていない状態」のことです。ただ無職であればよいわけではなく、求職活動の実態が伴っていることが求められます。
被保険者期間の数え方も重要です。離職日から1か月ずつ遡り、各1か月の中に「賃金支払基礎日数が11日以上」か「労働時間が80時間以上」ある月を1か月として数えます。通算で6か月以上あればよいため、複数の会社を渡り歩いた経歴があっても合算できます。ただし、離職と再就職の「空白期間」は算入されないため注意が必要です。
次の場合は、要件を満たしていても受給できないケースがあるため事前に確認しましょう。
自己都合退職の場合は、7日間の「待期」に加えて「給付制限」が課される点も押さえておきましょう。2025年4月1日以降に自己都合退職した場合、5年間で2回までは1か月の給付制限(それ以降は3か月)が設定されています。会社都合の場合は待期7日のみで済みます。
支給額は「基本手当日額 × 支給日数」で計算します。支給日数は被保険者期間によって2段階に分かれます。
| 被保険者期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 6か月以上1年未満 | 30日分 |
| 1年以上 | 50日分 |
「基本手当日額」は次の手順で算出します。
まず「賃金日額」を計算します。
$$\text{賃金日額} = \frac{\text{退職前6か月の賃金合計}}{180}$$
賃金には基本給のほか通勤手当・役職手当なども含まれますが、ボーナス・退職金は含みません。
次に、賃金日額に応じた給付率(45〜80%)を掛けて基本手当日額を求めます。賃金日額が低いほど給付率は高く、収入が少ない方を手厚く保護する仕組みです。
いくつか具体的なケースを見てみましょう。
🧮 ケース1:月給24万円・被保険者期間15年・67歳で退職
🧮 ケース2:月給18万円・被保険者期間20年・68歳で退職
🧮 ケース3:月給30万円・被保険者期間8か月・66歳で退職
給付率が適用されるゾーンの細かい区切りは毎年8月に改定されるため、実際の試算は最寄りのハローワークまたは厚生労働省の最新資料で確認することをおすすめします。
なお、この給付金は所得税・住民税が一切かかりません。非課税所得です。確定申告も不要です。年金とも同時受給できるため、例えば月10万円の年金を受け取りながら20万円の一時金を受け取れるケースも十分にあり得ます。
手続きはすべてハローワーク(公共職業安定所)の窓口で行います。お住まいの住所を管轄するハローワークに出向く必要があります。
📌 申請の流れ
📋 申請に必要な書類
注意点が2つあります。まず、離職票が届くのを待っている間にも「退職日の翌日から1年」という受給期限のカウントは始まっています。手続きが遅れると満額を受け取れない可能性があるため、離職票が届き次第すぐに動くことが原則です。
次に、待期中(7日間)のアルバイト・パートは禁止です。この期間に1日4時間以上働いてしまうと待期期間が延長され、受給開始がさらに後ろ倒しになります。意外と見落としがちなポイントです。
参考:ハローワーク手続きの詳細はこちら
雇用保険の高年齢求職者給付金を受けようとする方へ – 長野労働局(厚生労働省)(PDF)
「65歳で退職するのと64歳11か月で退職するのは、どちらが金銭的に有利か?」この問いに明確な答えを出しているサイトは少ないため、ここで整理します。
| 比較項目 | 基本手当(64歳以下) | 高年齢求職者給付金(65歳以上) |
|---|---|---|
| 支給日数 | 90日〜最大330日 | 30日または50日 |
| 支給方法 | 4週間ごと(分割) | 一括 |
| 年金との併給 | ❌ 特別支給の老齢厚生年金は停止 | ✅ 老齢厚生年金と同時受給可 |
| 課税 | 非課税 | 非課税 |
| 手続きの回数 | 4週ごとに認定が必要 | 基本1回で完結 |
総受給額だけを単純比較すれば、基本手当(64歳以下)の方が圧倒的に大きくなる傾向があります。例えば自己都合・加入20年以上の場合、基本手当は最大150日分受給できる一方、高年齢求職者給付金はたった50日分です。
ただし、基本手当の受給中は老齢厚生年金(特別支給)の支給が全額停止されます。仮に月10万円の年金がある場合、4か月間で40万円が丸ごと止まる計算です。この「年金停止によるロス」を考慮すると、必ずしも基本手当が有利とは言えません。
また、高年齢求職者給付金はすぐに再就職する予定がある方にとって非常に合理的です。一括受給できる・年金を止めなくていい・手続きが1回で済む、という3つの利点があります。自分のライフプランに照らして、どちらが実質的に有利かを試算することが大切です。
この判断には、ファイナンシャルプランナー(FP)への相談も有効です。年金の繰り上げ・繰り下げ受給との組み合わせや、再就職後の給与水準を踏まえたシミュレーションは個人の状況に大きく左右されます。無料相談を提供しているFP窓口も増えているため、退職前に一度確認しておくと安心です。
参考:年金と失業保険の関係を詳しく解説