仮換地の登記ができない理由と正しい手続きの流れ

仮換地の登記ができない理由と正しい手続きの流れ

仮換地で登記できない仕組みと正しい手続きの全知識

仮換地に住んでいる間は、登記簿の名義も地番もずっと「昔の土地(従前地)」のままです。


この記事の3つのポイント
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仮換地では所有権移転登記は「従前地」で行う

仮換地に所有権はなく、登記簿上の手続きはすべて従前地(元の土地)に対して行います。換地処分の公告後にはじめて正式な登記が可能になります。

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住宅ローンの抵当権設定も「従前地」が対象

仮換地に対して抵当権を設定することはできません。金融機関が担保を取る場合も従前地への抵当権設定が必要です。共有仮換地や従前地に設定できない場合は融資対象外になります。

換地処分まで平均10年以上かかるケースも

土地区画整理事業は事業開始から換地処分の完了まで、平均5〜10年、大規模事業では20年以上かかることもあります。その間、登記簿の地番や面積は従前地のまま更新されません。


仮換地とは何か・従前地との違いを理解する


仮換地とは、土地区画整理事業の途中で地権者に一時的に割り当てられる土地のことです。ただし「一時的」とはいえ、実態はほぼそのまま本換地(正式な換地)になるため、建物を建てたり売買したりする方も多くいます。


土地区画整理事業では、従前地(区画整理前の元の土地)・仮換地・換地・保留地という4種類の土地が存在します。この中で地権者がまず直面するのが「仮換地」です。区画整理全体の工事が完了してから一括で換地処分するのでは、地権者が何年も土地を使えない状態が続いてしまいます。そこで、工事が完了した区画から順次、使用収益できる仮の土地を指定する仕組みが「仮換地指定」です。


仮換地が指定されると、地権者は仮換地で建物を建てたり賃貸経営を行ったりする「使用収益権」を得ます。一方で所有権は従前地に残ったままになります。つまり、「実際に使っている土地」と「登記簿に載っている土地」が別の場所・別の地番になるという、一般の土地取引では起こりえない状態になるのです。


この所有権と使用収益権の分断こそが、仮換地に直接登記ができない根本的な理由です。


仮換地の登記ができない法的根拠:土地区画整理法第99条・107条

仮換地に登記ができない理由は、感覚的なものではなく、土地区画整理法の明確な条文に基づいています。


これが基本です。


土地区画整理法第99条第1項では、仮換地指定の効力発生日から換地処分の公告がある日まで、地権者は仮換地について使用または収益をすることができる一方、従前地については使用または収益できないと定めています。つまり法律上、「使う権利(使用収益権)」は仮換地に移行しますが、「所有する権利(所有権)」は従前地に留まり続けるのです。


所有権は従前地にあるため、不動産登記の仕組み上、仮換地を単独で登記の対象にすることはできません。仮換地の段階では、登記簿上の表題部には従前地の地番・面積が記載されたまま変わりません。


さらに、土地区画整理法第107条第3項では、換地処分の公告日以降、換地処分による登記が完了するまでの間は、施行地区内の土地・建物に関する他の登記を原則として行うことができないと規定されています。ただし例外として、登記申請人が確定日付のある書類によって公告前に登記原因が生じたことを証明できる場合は、この限りではないとされています。


これら2つの条文が組み合わさることで、仮換地は「換地処分の公告まで直接の登記ができない土地」として法的に位置づけられています。


土地区画整理法の条文全文(e-Gov法令検索)


仮換地の所有権移転登記はどう行うのか:従前地を使う仕組み

登記できないとはいえ、仮換地を売買することは法的に可能です。では売買の際にはどう手続きするのでしょうか?


仮換地の売買では、法的には従前地を売買することになります。所有権は従前地にあるため、所有権移転登記も従前地の地番に対して行います。このとき、売買契約書には登記簿上の従前地の表示と、仮換地指定通知書に記載された仮換地の情報(場所・面積・街区・画地番号など)の両方を記載することが実務上の原則です。


購入した側は、従前地の登記名義を自分に移転することで、仮換地を使用収益する権利と、将来換地処分を受ける権利も自動的に引き継ぎます。これを「仮換地承継」と呼び、引き渡し後に区画整理事務所へ届出を行う必要があります(通常は買主が行います)。


手続きの流れは次のようになります。売主と買主の間で売買契約を締結し(従前地の表示・仮換地の表示を併記)、従前地に対して所有権移転登記を申請し、仮換地承継届を区画整理施行者へ提出する、という順序です。換地処分が完了すると、施行者が嘱託登記によって自動的に登記の表題部を換地後の地番・面積に書き換えてくれます。この書き換えは土地家屋調査士や司法書士ではなく、施行者が行う点が通常の土地取引と大きく異なります。


仮換地を売買する際の手続きと注意点(終活・相続手続きの相談窓口)


仮換地で住宅ローンが通りにくい本当の理由

仮換地で家を建てようとしたとき、住宅ローンの審査に苦労するケースが少なくありません。


痛いところですね。


銀行や住宅ローン会社は、融資の担保として対象不動産に抵当権を設定します。しかし仮換地には所有権がないため、仮換地そのものに抵当権を設定することは不可能です。担保に入れるとしたら従前地ということになりますが、従前地は「登記簿上の地番・面積」であり、実際に使っている仮換地の場所とは異なります。銀行の審査担当者にとってこの状態は担保評価がしにくく、融資を躊躇する要因になります。


フラット35(住宅金融支援機構)の場合は仮換地への融資も一定の条件を満たせば可能ですが、「資金実行後すみやかに第1順位の抵当権を設定できない場合は融資金を受け取れない」という条件があり、また「登記閉鎖期間中」には融資実行自体が制限されます。民間銀行でも、仮換地・保留地の物件に対してはオンライン完結型の住宅ローン事前審査の対象外としているところが多いのが現状です(三菱UFJ銀行など)。


共有仮換地(複数区画の所有者が従前地を共有持分として保有している仮換地)の場合は、さらに状況が複雑になり、多くの金融機関で融資対象外となります。仮換地の物件を購入する際は、あらかじめ担当の金融機関に仮換地であることを明示して審査を依頼することが必須です。


フラット35における仮換地への融資条件(住宅金融支援機構FAQ)


仮換地で地目変更登記ができないケースと例外

仮換地では所有権移転登記以外にも、地目変更登記が原則としてできないという制限があります。


地目変更登記とは、農地(田・畑)を宅地に変更するなど、土地の用途(地目)が変わった際に登記簿上の記載を更新する手続きです。通常であれば現況に合わせて登記を変更できますが、仮換地指定後の従前地については、この地目変更登記の申請が原則として受理されません。


ただし例外があります。従前地と仮換地のすべての部分の現況が、同一の地目に変更されていることが重図(重複図面)等で確認できる場合には、地目変更登記が受理されることがあります(法務省通達)。つまり、従前地も仮換地もどちらもすでに宅地として利用されている状態が確認できれば、受理される可能性があるということですね。


さらに、農地が絡む仮換地では農地法の適用も継続されます。土地区画整理事業が行われているからといって農地法の許可が免除されるわけではないため、農地転用が必要な場合は、区画整理事務所への届出とは別に農業委員会の許可または届出も必要です(登記研究265号参照)。農地を含む仮換地を取り扱う際は、この点を忘れずに確認しましょう。


仮換地で相続登記を行う際の手続きと注意点

仮換地を相続した場合も、登記手続きは従前地に対して行います。


これが原則です。


相続登記とは、不動産の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更する手続きです。2024年4月から相続登記が義務化され(改正不動産登記法)、相続を知った日から原則3年以内に登記申請をしなければペナルティが課されます。仮換地の状態であっても、この義務は免除されません。


手続きの方法は、通常の相続登記と基本的に同じで、従前地の登記簿に対して相続を原因とする所有権移転登記を申請します。このとき、仮換地指定証明書(区画整理事務所が発行)を合わせて取得しておくと、相続後の売買や融資の際に「従前地と仮換地が同一権利関係にある」ことを第三者に証明する際に役立ちます。


相続税の評価については、仮換地指定がある場合は仮換地の価額を基準に評価するのが原則です。ただし、仮換地の使用・収益を開始できない状態や造成工事が完了していない場合は従前地の価額で評価します。また、造成工事の途中で工事完了まで1年を超えると見込まれる場合は、仮換地の価額の95%で評価されるという特例もあります。相続が発生したタイミングによって評価方法が異なるため、税理士への相談を早めに行うことが重要です。


土地区画整理事業施行中の相続税評価の方法(富士綜合事務所)


換地処分の公告後に登記が一時停止される「登記閉鎖期間」とは

換地処分の公告が出た後、すぐに全員が登記できるわけではありません。


意外ですね。


換地処分の公告日の翌日から、区画整理の一括登記(嘱託登記)が完了するまでの間、施行地区内の土地・建物に関するすべての登記手続きが一時的に停止されます。


この期間を「登記閉鎖期間」と呼びます。


一般的にこの閉鎖期間は3〜4カ月程度とされています。


この期間中は、売買登記・相続登記・抵当権設定登記など、あらゆる登記申請が受け付けられません。そのため、換地処分の公告直後に土地の売買や融資を予定していた場合は、手続きが数カ月間ストップしてしまうリスクがあります。


ただし前述の通り、確定日付のある書類によって公告前に登記原因が生じたことを証明できる場合には、この停止規定の例外として登記申請が受理されます。不動産売買の契約日が換地処分公告より前であることを確定日付付きの書類(公証人役場での確定日付取得など)で証明できれば、閉鎖期間中でも申請可能です。この例外規定の存在は、仮換地の売買を進める際に知っておくと大変有用です。


仮換地で建物の登記を行う場合:底地地番と括弧書きの仕組み

仮換地の上に建物を新築した場合、建物の表題登記(建物の物理的情報を登記簿に記録する手続き)は可能です。ただし、建物の所在地番には独特のルールが適用されます。


建物の所在地番として登記されるのは、建物が実際に建っている仮換地ではなく、その仮換地の「底地」、すなわち区画整理前の土地の地番になります。例えば「○市○町○番地(仮換地○○土地区画整理事業地区内○街区○画地)」という形式で記録されます(昭和34年7月10日建設省計画局長通達に基づく)。


土地の登記簿には従前地の地番が記載され、建物の登記簿にも従前地の地番が記載されているにもかかわらず、実際の所在は仮換地という状態になります。一見すると表記に矛盾があるように見えますが、これは法令・通達に基づく正規の取り扱いです。


このことが原因で、土地と建物に共同抵当権を設定するケースでは、登記簿上の地番が異なって見え、担当の金融機関や司法書士が困惑するケースがあります。あらかじめこの仕組みを理解したうえで、関係者に説明しておくとスムーズです。換地処分の公告後は、施行者の申請によって建物の所在地番も換地後の地番に自動変更されます。建物所有者が自分で申請する必要はありません。


仮換地上の建物登記の所在地番に関する詳細解説(Legal Forest)


保留地への登記が換地処分まで一切できない理由

仮換地よりさらに注意が必要なのが「保留地」への登記の問題です。


保留地とは、区画整理事業の費用を賄うために地権者全員が減歩した土地の中から生み出された、換地に割り当てられない土地のことです。施行者(組合や市区町村など)が売却して事業費を捻出するために確保されています。


この保留地には、対応する従前地が存在しません。つまり、仮換地のように「従前地に対して登記する」という方法が使えないのです。保留地に対する所有権は換地処分の公告日の翌日にはじめて施行者に帰属します(土地区画整理法第104条第11項)。それ以前に保留地を購入しても、買主が取得できるのはあくまで「使用収益権」と「換地処分後に所有権を得る債権的権利」にすぎず、登記することはできません。


換地処分の公告後、施行者が保留地の所有権保存登記を行い、その後、最終的な保留地の買主(何回転売されていても最後の買主)に対して所有権移転登記が行われる流れになります。保留地に抵当権を設定したい場合は、換地処分の公告後に土地の登記が完了してからでなければ抵当権設定登記ができません。それ以前は、建物のみに抵当権を設定し、土地については換地処分後に追加で抵当権設定登記をする方法が一般的な実務対応です。


仮換地の登記で投資家・購入者が陥りやすい5つの誤解

金融・不動産投資に関心のある方が仮換地に関して持ちがちな誤解は、実際の取引でトラブルの原因になります。


誤解①「仮換地を買えば仮換地の地番で登記できる」 → 実際には登記簿上の地番はあくまで従前地のままです。仮換地には地番がなく、登記は従前地に対して行います。


誤解②「登記ができないから売買も無効」 → 売買契約自体は有効に行えます。所有権移転登記は従前地に対して行い、使用収益権が買主に引き継がれます。


誤解③「換地処分が終われば自動で自分の名義になる」 → 換地処分後の表題部変更は施行者が自動で行ってくれますが、所有者の権利部(甲区)は換地処分前に行った登記がそのまま維持されます。未登記のまま换地処分を迎えると名義が旧所有者のままになりますので注意が必要です。


誤解④「清算金は売主が全額負担する」 → 清算金(面積の増減による精算)の負担者は売買契約の特約によって自由に決めることができます。


特約が未設定だとトラブルの原因になります。


誤解⑤「仮換地で固定資産税はかからない」 → 仮換地は使用収益できる土地として「みなす課税」が適用され、固定資産税および都市計画税が課税されます。登記がないからといって非課税にはなりません。


これらの誤解はどれも「お金」に直結します。事前に1つずつ確認しておくことで、数十万〜数百万円単位のトラブルを回避できます。


仮換地の登記手続きを専門家に依頼すべきタイミング

仮換地に関わる登記手続きは、通常の土地に比べて複雑な要素が多く重なります。


専門家への依頼が不可欠です。


特に専門家(司法書士・土地家屋調査士)への相談が必要になる場面として、次の状況が挙げられます。仮換地の売買で所有権移転登記を行う場面(従前地と仮換地の両方の情報整理が必要)、仮換地上に建物を新築して建物表題登記・所有権保存登記を申請する場面、相続が発生して相続登記と仮換地証明の取得を同時進行させる場面、そして住宅ローンを利用して抵当権設定登記を従前地に対して行う場面です。


仮換地の登記に不慣れな専門家に依頼すると、書類の表記ミスや申請漏れが発生しやすいため、土地区画整理事業の登記実務に経験豊富な司法書士・土地家屋調査士を選ぶことが重要です。区画整理事務所に「登記手続きに詳しい専門家の紹介を依頼する」という方法も有効で、事業を主体的に進めてきた施行者は地域の専門家ネットワークを持っていることが多いです。


費用面では、仮換地の所有権移転登記の登録免許税は通常の土地と同様に従前地の固定資産税評価額をもとに計算されます。なお、換地処分後の区画整理登記(施行者による嘱託登記)には登録免許税はかかりません。


これは知っておくと得する情報です。


土地区画整理事業に関する登記の実務詳細(松井事務所)


換地処分完了後の登記の流れ:自動的に更新される部分・自分でやる部分

換地処分の公告があった翌日、正式に換地の所有権が確定します。その後の登記手続きには「施行者が自動でやってくれること」と「権利者が自分でやらなければならないこと」の2種類があります。


これだけ覚えておけばOKです。


施行者が自動的に行う手続きとして、土地の表題部(地番・地積・地目など)の変更登記、建物の所在地番の変更登記、換地の地目が宅地に変更される際の変更登記があります。


一方、権利者が自分で行う必要がある手続きとして、登記名義人の住所変更登記があります。換地処分によって住所(登記上の表示)が変わっても、権利部(甲区・乙区)に記載されている登記名義人の住所は自動的に変更されません。放置しておくと、その後の売買や相続の際に「登記簿の住所と現在の住所が一致しない」として手続きが煩雑になります。


また、合併換地(複数の従前地を1筆の換地にまとめるケース)の場合は、新たな登記識別情報(権利証に相当)が発行されます。一方、1対1換地や分割換地では新たな識別情報は発行されず、従前地の権利証をそのまま使用し続けます。換地処分後に権利証(登記識別情報)が手元に届かないからといって慌てる必要はなく、従前地の権利証が引き続き有効です。


換地処分と登記の流れをわかりやすく解説(SUUMO・東京土地家屋調査士会監修)




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