

育休中でも、賞与の社会保険料は自動では免除されずに引かれることがあります。
育児休業等期間の保険料免除制度は、育児・介護休業法に基づき育休を取得した従業員が対象となる制度で、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の3種類が免除されます。これが制度の基本です。
よく混同されますが、雇用保険料や労災保険料は免除の対象外です。育休中に給与が支払われた場合は、雇用保険料は通常どおり控除されます。つまり「社会保険料=全部免除」ではないので注意が必要です。
この制度の大きな特徴は、従業員(被保険者)負担分だけでなく、事業主(会社)負担分も両方まとめて全額免除になる点です。標準報酬月額の約15%相当が従業員・会社それぞれ免除されるため、金額的なメリットは非常に大きいと言えます。仮に月給が30万円前後の方であれば、従業員負担分だけで月に約3万円〜4万円程度の保険料が免除される計算になります。
また、免除期間中であっても健康保険の給付(病気・ケガでの医療費など)は通常どおり受けられます。保険料を払っていないからといって、保険証が使えなくなるわけではありません。これは使えそうです。
さらに重要な点として、免除期間中も将来の年金額の計算においては「保険料を納付した期間」として扱われます。育休取得で年金が減る心配はないということですね。
| 保険の種類 | 免除対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | ✅ 免除 | 都道府県ごとに料率が異なる |
| 介護保険料 | ✅ 免除 | 40歳以上が対象 |
| 厚生年金保険料 | ✅ 免除 | 料率は全国一律18.3% |
| 雇用保険料 | ❌ 対象外 | 賃金が発生した場合は控除あり |
| 労災保険料 | ❌ 対象外 | 会社負担のみのため従業員には無関係 |
参考:育児休業等期間の免除対象となる保険料の詳細は日本年金機構の公式ページで確認できます。
厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)|日本年金機構
保険料免除の期間は「月単位」で決定されます。日割り計算は行われないため、育休の開始日・終了日のタイミングによって免除される月数が変わってくる点が重要です。
基本ルールは「育休開始日が属する月から、終了日の翌日が属する月の前月まで」です。たとえば4月10日に育休を開始し、翌年3月31日に終了した場合、4月〜3月の12か月分が免除対象となります。
さらに2022年10月の法改正で、短期育休も免除対象に広がりました。開始日と終了日が同じ月内に収まる場合でも、その月に14日以上育休を取得していれば、当該月の保険料が免除されます。たとえば10月5日〜10月25日の育休(21日間)であれば、改正前は免除対象外でしたが、改正後は免除されるようになっています。
月末最終日1日だけ育休を取得した場合も、その月の保険料は免除対象です。この点については注意が必要な落とし穴があります。
「14日」の計算には土日祝日が含まれます。ただし、就業した日は除外されます。14日が条件です。
なお、連続して複数回の育休を取得した場合は、まとめて1つの育休として扱われるため、連続する育休の合計で「月をまたいでいるか」「14日以上か」を判断します。
参考:免除期間の詳細な計算方法や具体例は厚生労働省のパンフレットで確認できます。
育児休業等期間中の社会保険料(免除要件・手続きの流れ)|厚生労働省
賞与にかかる社会保険料の免除は、月給分と異なるルールが適用されます。ここは多くの方が誤解しているポイントです。
2022年10月以降、賞与の保険料免除の条件は「賞与を支払った月の末日を含む、連続した1か月を超える育休を取得している場合」に限定されました。改正前は「月末に育休を取得していれば免除」という比較的ゆるい要件でしたが、現在は1か月超の連続育休が条件です。
具体例で見てみましょう。
ここでいう「1か月超」とは暦日で判断します。10月15日から育休を開始した場合、11月15日の翌日である11月16日以降まで継続していて初めて「1か月超」となります。
痛いですね。賞与が30万円の場合、社会保険料(健保+厚年)は約8万円以上にもなります。免除対象外になるかどうかで、この差が生じます。
この改正は「月末1日だけ育休を取得して賞与の保険料を節税する」という悪用を防ぐために導入されました。制度の趣旨として理解しておくと記憶に残りやすいでしょう。
なお、「産後パパ育休(出生時育児休業)」は最大28日間のため、単独では賞与の保険料免除条件(1か月超)を満たせません。産後パパ育休と通常の育休を継続して取得することで、合計1か月超となれば免除対象となります。組み合わせが条件です。
参考:2022年10月からの改正内容の詳細は日本年金機構の告知ページで確認できます。
令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました|日本年金機構
育児休業等期間の保険料免除は、申請しなければ自動的には適用されません。手続きが必要です。
具体的な手続きの流れは次の通りです。まず従業員が会社に育休取得の申し出を行い、その後、会社が「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)」を作成して、管轄の年金事務所または加入している健康保険組合に提出します。この申出書の提出が完了して初めて、免除が認められる仕組みです。
提出のタイミングは「育休期間中」が原則ですが、育休終了後1か月以内であれば遅延理由書なしでも受理されます。ただし、2年以上が経過すると時効が成立するため、申請自体ができなくなる点に注意が必要です。
万が一、免除承認前に保険料の納入告知が来てしまった場合でも、翌月以降に差額が調整されます。過払い分が戻ってくるため、焦る必要はありません。落ち着いて対応すれば大丈夫です。
育休を延長する場合は、改めて「育児休業等取得者申出書(延長)」の提出が必要です。予定より早く育休を終了する場合は、速やかに会社に申し出て「育児休業等取得者終了届」を提出してもらいましょう。手続きの漏れが1件でもあると、余分な保険料を払い続けてしまう可能性があります。
会社が手続きを忘れていないか、育休前に担当者に確認しておくと安心です。
参考:申出書の様式や提出方法の詳細は日本年金機構の手続きページで確認できます。
育児休業等を取得し、保険料の免除を受けようとするとき|日本年金機構
育休を取得しても社会保険料が免除されないケースは、意外と見落とされています。代表的なパターンをまとめます。
会社役員(代表取締役・取締役など)は育休中の免除対象外という点は、特に重要です。役員は育児・介護休業法の適用対象外であるため、健康保険法・厚生年金保険法における「育休に基づく保険料免除」を受けることができません。産休中は免除対象になるのに、育休中は対象外という非対称な扱いが存在します。これは意外ですね。
仮に月給80万円の女性役員が育休を1年間取得した場合でも、保険料免除はゼロです。一般の従業員であれば年間で80万円以上免除されるケースもあるため、立場による差は非常に大きいと言えます。
また、国民健康保険(国保)に加入しているフリーランスや個人事業主は対象外です。厚生年金・健康保険(協会けんぽ・健保組合)に加入していない方は、この制度を利用できません。ただし、一部の国民健康保険組合(医師国保、士業の国保組合など)では独自規定で免除制度を設けているところもあるため、加入している組合に個別確認が必要です。
さらに独自視点の落とし穴として、育休明けに時短勤務に移行すると標準報酬月額が下がり、将来の年金額が減る可能性があるという点があります。この問題には「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という制度が用意されており、子どもが3歳になるまでの期間中に標準報酬月額が低下した場合、育休前の高い標準報酬月額に基づいて年金を計算してもらえます。
「養育期間標準報酬月額特例申出書」を事業主経由で年金事務所に提出することで、みなし措置が適用されます。この申請も自動ではないため、復職後に忘れずに手続きを進めることが重要です。申請が必須です。
参考:養育期間のみなし措置の詳細と申請方法については日本年金機構の専用ページで確認できます。