

育休中は、社会保険料が自動で免除されると思っていませんか。実は申請を忘れると1円も免除されず、毎月数万円の損失が出ます。
育児休業中の社会保険料免除の期間は、「育児休業を開始した日が属する月」から、「育児休業が終了する日の翌日が属する月の前月」までが原則です。
この表現はわかりにくいので、具体例で整理します。たとえば8月10日に育休を開始し、3月20日に終了した場合、終了日翌日である3月21日が属する月は「3月」です。その前月は「2月」となるため、免除対象は8月〜2月の計7か月分となります。
「終了月の前月まで」が原則です。
では、月末最終日まで育休を取得した場合はどうなるでしょう?8月10日〜3月31日まで育休を取得したケースでは、終了日翌日の4月1日が属する月は「4月」で、その前月は「3月」となります。この場合は8月〜3月の計8か月分が免除対象になります。月末まで休んだか、それより1日でも早く復帰したかで、免除月数が1か月変わるのです。厳しいところですね。
免除期間は月単位で判断されます。日単位の育休取得期間と一致しないことがあるため、特に復帰のタイミングには注意が必要です。
免除を受けるのは健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の3種類が対象で、雇用保険料や労災保険料は対象外であることも覚えておきましょう。なお、免除されている期間も「保険料を納付したもの」として年金計算に反映されるため、将来の年金が減ることはありません。
参考:育児休業等期間中の社会保険料免除について(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/index.html
2022年10月1日の制度改正により、育休の開始日と終了日が同一月内にある場合(月をまたがない短期育休)でも、その月に14日以上の育休を取得していれば社会保険料が免除されるようになりました。
この「14日ルール」は、たとえば産後パパ育休(出生時育児休業)のように短期間の育休を取得する男性を主に対象にしています。8月10日〜8月25日まで育休を取得すれば期間は16日間となり、8月分の社会保険料は免除されます。これは使えそうです。
ただし、重要な注意点があります。14日ルールは給与の社会保険料にのみ適用され、賞与(ボーナス)の社会保険料には使えません。賞与の免除には別の要件が設けられているからです。
14日にカウントできる日数については、就業した日は除外されます。出生時育児休業のように育休中の就業合意がある場合、就業した時間の合計を1日の所定労働時間数で割り、1未満を切り捨てた日数分が差し引かれます。たとえば所定労働時間8時間の社員が3日間にわたり合計15時間就業した場合、15÷8=1日(切捨て)が控除され、14日以上の要件を満たすかどうかに影響します。14日ちょうどを狙う場合は細かい計算が必要です。
参考:育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直しについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/pamph/dl/06_0004.pdf
ボーナスにかかる社会保険料の免除は、2022年10月の法改正によってルールが大きく変わりました。改正前は、賞与支給月の月末日に育休を1日でも取得していれば賞与の社会保険料が免除されていましたが、改正後は「賞与を支払った月の末日を含む連続した1か月を超える育休を取得している場合」に限定されました。
具体的に確認します。賞与支給日が6月30日で、育休期間が6月1日〜6月30日の場合、これは連続期間がちょうど1か月(暦上は30日間)であり「1か月を超える」には該当しません。免除の対象外となります。一方、6月1日〜7月2日まで育休を取得していれば暦日で1か月を超えるため、6月支給の賞与も免除対象になります。1か月超えが条件です。
この改正は、かつて行われていた「ボーナス月の月末だけ1日育休を取得し、賞与の保険料をゼロにする」という節税スキームを封じるために設けられました。
賞与の免除判定において、期間の起算は「暦による1か月」です。2月10日〜3月9日のように月ごとの日数に関係なく、同じ日付を区切りとして判定します。土日・祝日も計算に含まれます。
なお、給与にかかる社会保険料は引き続き14日ルールが適用されるため、月をまたがない育休でも免除を受けられる場合がある一方、賞与はより厳格な要件が必要だという点に注意が必要です。賞与と給与では免除の条件がまったく異なります。
参考:育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます(日本年金機構PDF)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0729.files/ikukyu-chirashi.pdf
社会保険料の免除が受けられる上限は「子が3歳になるまで」です。育児・介護休業法が定める育休期間(原則1歳まで、最長2歳まで)を超えても、「育休に準ずる休業」を会社が認めれば、子が3歳の誕生日前日まで免除対象となります。これは非常に大きなメリットです。
多くの人は「育休は1歳まで」「延長しても2歳まで」と認識しているため、2歳を超えた時点で免除終了と思い込みがちです。しかし実際には3歳未満の子を養育するための休業に会社が応じてくれる場合には、最長3歳直前まで免除が継続します。
また、育休を延長する際には重要な注意点があります。育休期間の延長のたびに「育児休業等取得者申出書(延長版)」を事業主経由で年金事務所または加入健保組合に提出し直す必要があります。最初の申請が自動的に延長されるわけではありません。延長が決まった段階でその都度届出が必要です。
標準報酬月額の観点でも注意が必要です。育休復帰後に時短勤務等で給与が下がると標準報酬月額が低下し、保険料は減るものの老後の年金が減ってしまうリスクがあります。こうしたケースでは「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という制度を申請することで、子が3歳になるまでの間は育休前の高い標準報酬月額に基づいて年金が計算されます。復帰後の年金が減るリスクを避けられるため、活用を検討するとよいでしょう。
参考:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(日本年金機構)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html
育休を取得したからといって、誰でも自動的に社会保険料が免除されるわけではありません。いくつかの例外と、手続きの注意点があります。
まず、免除を受けられないケースとして「会社役員(代表取締役・取締役等)」が挙げられます。役員は育児・介護休業法の適用対象外であるため、育休中の社会保険料免除も受けられません。産前産後休業中の免除は別の根拠法(健康保険法・厚生年金保険法)により受けられますが、育休の免除は対象外です。ただし、実態として労働者性が高い「兼務役員」の場合は例外的に免除が認められる場合があります。
次に、国民健康保険加入者です。パートや短時間労働者で会社の社会保険に加入していない場合、育休中の社会保険料免除制度(健康保険・厚生年金)の対象外となります。なお、国民健康保険組合に加入している場合は、組合独自のルールで免除される場合もあるため、加入先に事前確認することを勧めます。
申請についてはここが大事です。社会保険料免除は、事業主が「育児休業等取得者申出書」を管轄の年金事務所または加入健保組合に提出することで初めて有効になります。自動免除ではありません。提出期限は育休期間中、または終了後1か月以内です。1か月を超えてしまうと理由書や証明書類の添付が必要となります。
| ケース | 免除の可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 会社員・正社員 | ✅ 可 | 事業主の申出が必要 |
| パート・社会保険加入済み | ✅ 可 | 要件を満たせば対象 |
| 会社役員(取締役等) | ❌ 不可 | 育介法の適用外 |
| 国民健康保険加入のパート | ❌ 原則不可 | 組合国保は別途確認 |
| フリーランス・自営業 | ❌ 現時点では不可 | 2026年10月より国民年金は免除対象予定 |
なお、2026年10月1日施行予定の制度改正により、フリーランス・自営業者など国民年金第1号被保険者についても、1歳未満の子を養育する期間中の国民年金保険料が免除される制度が始まる見込みです。所得要件や育休取得の有無は問われない方向で検討されています。新制度の恩恵を受けられる人が大幅に増えます。
参考:育休期間中の社会保険料免除 申請・手続きの詳細(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/pamph/dl/06_0004.pdf