

賞与の社会保険料は、月給と計算ルールが全然違います。
賞与の社会保険料を計算するうえで、最初に押さえるべき概念が「標準賞与額」です。これは、税引き前の賞与総支給額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額のことを指します。たとえば賞与が857,680円であれば、標準賞与額は857,000円となります。
毎月の給与の場合は「標準報酬月額」と呼ばれる等級表を使って保険料の基準額を決めますが、賞与は都度その支給額から直接算出するため、計算の仕組みが根本的に異なります。つまり標準賞与額が基本です。
標準賞与額には上限が設けられており、次の2つを理解しておく必要があります。
- 健康保険(介護保険):年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計額で 573万円 が上限
- 厚生年金保険:1回の賞与につき(同月2回以上なら合算して)150万円 が上限
573万円という数字はコンビニのコーヒーに換算すると約5,730杯分にもなる大きな金額ですが、高収入の方や複数回賞与を受け取る場合は、この上限に到達するケースが実際に存在します。上限を超えた分には保険料がかからないため、賞与の総額が大きい方ほど確認が重要です。
また、社会保険に賞与が含まれるようになったのは2003年(平成15年)から。それ以前は賞与に対して厚生年金の特別保険料1%しかかからず、給与を低く抑えて賞与を高くすることで社会保険料の負担を意図的に減らす企業が横行していました。この不公平を是正するために「総報酬制」が導入された背景があります。
賞与から差し引かれる社会保険料は、以下の4種類です。それぞれ計算ロジックが少しずつ異なるため、まとめて整理しておきましょう。
① 健康保険料
$$\text{健康保険料(本人負担)} = \text{標準賞与額} \times \text{健康保険料率} \div 2$$
健康保険料率は都道府県ごとに異なります。協会けんぽ(全国健康保険協会)の令和7年度の料率は、東京都が9.91%、沖縄県が9.44%(全国最低)、佐賀県が10.78%(全国最高)と約1.3ポイントの差があります。会社の所在地によって負担が変わる点は意外と見落とされがちです。
② 介護保険料(40歳以上65歳未満の方のみ対象)
$$\text{介護保険料(本人負担)} = \text{標準賞与額} \times 1.59\% \div 2$$
介護保険料率は全国一律で、令和7年度は1.59%です。40歳の誕生月から64歳になる月まで徴収されます。40歳未満の方には関係ありませんが、40歳を迎えた月から突然差し引かれ始めるため、初めて対象になった時に「急に手取りが減った」と驚く方が多いポイントです。
③ 厚生年金保険料
$$\text{厚生年金保険料(本人負担)} = \text{標準賞与額} \times 18.3\% \div 2 = \text{標準賞与額} \times 9.15\%$$
厚生年金保険料率は全国一律18.3%で固定(2017年9月以降変更なし)。上限は1回150万円ですが、この上限を超えると「超過分には課税されない」という話を知らない方が多いです。年収の高い方には実質的な節税効果があると言えます。
④ 雇用保険料
$$\text{雇用保険料(本人負担)} = \text{賞与総支給額} \times 0.55\% \text{(一般事業の場合、令和7年度)}$$
雇用保険料だけは「標準賞与額(1,000円未満切り捨て後)」ではなく、実際の賞与総支給額そのままに保険料率を掛けます。切り捨てをしない点が他の3つと異なるため、計算ミスが起きやすいポイントです。また上限額の設定もなく、賞与が高額なほど按分なく保険料も増え続けます。
具体的な計算例(東京都在住・35歳・賞与500,000円の場合)
| 保険の種類 | 計算式 | 本人負担額 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 500,000円 × 9.91% ÷ 2 | 24,775円 |
| 厚生年金保険料 | 500,000円 × 18.3% ÷ 2 | 45,750円 |
| 雇用保険料 | 500,000円 × 0.55% | 2,750円 |
| 合計(社会保険料) | | 73,275円 |
このケースでは、賞与額50万円に対して社会保険料だけで約7.3万円(約14.6%)が控除されます。さらに所得税が加わると、手取り額は概ね40万円前後になる計算です。
賞与が支給されたとしても、条件次第で社会保険料が免除されるケースがあります。これは知っておくと家計の管理や転職・育休のタイミングを考える際に役立ちます。
パターン①:月末以外に退職した月に支給された賞与
社会保険料の徴収は「資格喪失日の前月まで」が対象です。資格喪失日は退職翌日となるため、たとえば7月20日退職の場合、資格喪失日は7月21日。この場合は7月分の社会保険料は発生しないため、同月10日に受け取った賞与から社会保険料は控除されません。
一方、7月31日(月末)に退職した場合は資格喪失日が8月1日となり、7月分の保険料が発生。同月に支給された賞与からしっかり控除されます。退職タイミングが1日違うだけで手取り額が数万円変わるケースもあるため、退職日の設定は要確認です。
パターン②:育児休業中に支給された賞与(1ヶ月超え条件あり)
育児休業中は社会保険料が免除されますが、賞与に関しては「賞与支払月の末日を含み、連続して1ヶ月を超える育児休業を取得している場合」に限り免除となります(2022年10月以降の改正ルール)。
これは意外なポイントです。給与に関する月末育休の免除条件とは異なり、賞与は「末日を含んだ1ヶ月超」という厳しい条件が設定されています。たとえば12月末の賞与支給に対して免除を受けるには、12月31日を含む形で翌年2月1日以降まで育休を継続している必要があります。「産後パパ育休(最大28日間)」では基本的にこの条件を満たせない点にも注意が必要です。
パターン③:標準賞与額の上限を超えた分
前述の通り、健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1回150万円を超えた分には保険料はかかりません。この免除は申請不要で自動的に適用されますが、複数の会社を渡り歩いた同一年度内には注意が必要です。前職で一定額の保険料が徴収されていれば、転職先での累計額に合算する必要があり、申し出の手続きが求められるケースがあります。
日本年金機構:育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます(PDF)
金融に関心の高い方が特に知っておくべき「盲点」がこのルールです。賞与が年4回以上支給されると、社会保険上では「賞与」ではなく「賞与に係る報酬(給与の一部)」として扱われます。これが標準報酬月額の計算に組み込まれる仕組みへと変わります。
具体的には、年間賞与額を12で割った金額が毎月の給与に加算され、翌年の定時決定(算定基礎届)において社会保険料の計算基礎となります。
たとえば年間賞与が240万円の場合、1ヶ月あたり20万円が毎月の給与額に上乗せされ、社会保険料が計算されます。標準報酬月額の等級が上がれば、毎月の給与天引き保険料が増加するという影響が出ます。
なぜこのルールが問題になるかと言えば、業績インセンティブを四半期(3ヶ月)ごとに支払っている会社に勤めている場合、気づかないうちに「年4回以上の賞与支給」に該当してしまうケースがあるためです。等級が上がり、毎月の保険料負担が増えているにもかかわらず、本人がそのことを知らないケースも少なくありません。
加えて、このルールには将来の年金額への影響もあります。標準報酬月額が高くなれば将来の年金給付額も増える一方で、受給開始まで長期間保険料を余分に支払い続けることになるため、メリットとデメリットを天秤にかける必要があります。
💡 確認すべき行動はシンプルです。給与明細と賞与支払履歴を年間ベースで照らし合わせ、「自分の賞与が年何回支給されているか」を把握しておくことが出発点となります。
ジンジャー:賞与から控除する社会保険料の計算方法と注意点(社労士監修)
賞与から社会保険料が引かれることは「手取りが減る」というマイナスの側面だけではありません。厚生年金保険料は老後の年金受給額に直結するため、賞与が多いほど将来もらえる年金も増えるという「積み立て」の面があります。
厚生年金の年金額の計算には「平均標準報酬額」が使われており、標準賞与額も加算される仕組みになっています。モデルケースとして、年間賞与が100万円の方と200万円の方では、老後の年金受給額に毎年数千〜1万円程度の差が生じることがあります。
一方で、iDeCoや確定拠出年金(DC)との組み合わせを検討する場合は注意も必要です。iDeCoの掛け金は社会保険料に影響を与えないため(所得控除にはなるが、標準報酬月額や標準賞与額には影響しない)、賞与から引かれる社会保険料の額はiDeCoの有無に関わらず変わりません。つまり賞与の保険料はiDeCoでは減らせません。
賞与の手取りを少しでも正確に把握したいなら、「賞与の社会保険料 自動計算ツール」などの無料シミュレーターを活用するのが効率的です。都道府県・年齢・賞与金額を入力するだけで本人負担額が即座にわかるツールがいくつか公開されており、事前に試算しておくと賞与使途の計画が立てやすくなります。
賞与額面と手取りのギャップを正しく認識したうえで、資産形成や繰り上げ返済などのタイミングを判断するのが、金融リテラシーの高い賢い活用法と言えます。額面だけで計画を立てると、実際の入金額が予想を大きく下回ることがあります。
社労士クラウド:社会保険料の自動計算シミュレーションツール(給与・賞与対応)
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