

税務署に指摘されてから納付すると、追徴額が自主納付より2倍の10%加算になります。
非居住者とは、日本国内に住所がなく、かつ現在まで引き続き1年以上の居所もない個人のことを指します。海外在住の外国人だけでなく、長期海外赴任中の日本人も「非居住者」として扱われる点は覚えておきましょう。
非居住者等(非居住者と外国法人の総称)に対して国内源泉所得を支払う者は、原則として所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、納付する義務があります。これが非居住者の源泉所得税の基本的な仕組みです。
源泉徴収の対象となる所得は大きく13種類に分類されており、主なものと税率は以下の通りです。
| 所得の種類 | 税率 |
|---|---|
| 給与・賞与・退職手当等 | 20.42% |
| 不動産等の賃料 | 20.42% |
| 人的役務の提供対価 | 20.42% |
| 著作権・工業所有権等の使用料 | 20.42% |
| 貸付金の利子 | 20.42% |
| 土地建物等の譲渡対価 | 10.21% |
| 上場株式等の配当等 | 15.315% |
| 預貯金・公社債等の利子 | 15.315% |
多くの所得に対して20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が課される点が、居住者への通常の源泉徴収と大きく異なります。つまり、非居住者へ支払う報酬は「一律20.42%控除」が基本です。
ただし、すべての支払いが源泉徴収の対象となるわけではありません。例外があります。不動産の賃料については、借主が個人であり、自己または親族の居住用として借りる場合は源泉徴収が不要とされています。一方で、法人が借りる場合や事業用として借りる個人の場合は、金額にかかわらず必ず源泉徴収が必要です。
このルールを知らずに「個人だから大丈夫」と思い込み、非居住者に全額賃料を払ってしまうケースが税務調査で頻繁に指摘されています。源泉徴収が必要かどうかの判断が原則です。
国税庁による非居住者等への源泉徴収の仕組みについての公式ページです。対象所得の範囲や納付期限の根拠条文を確認できます。
国税庁「No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ」
非居住者分の源泉所得税を納付する際は、通常の給与用の納付書とは別に、専用の納付書を使う必要があります。この専用書類の正式名称は「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」、実務では通称「マル非(丸非)の納付書」と呼ばれています。専用書類が必要です。
📌 マル非納付書の入手方法
- 税務署の窓口または郵送依頼: 所轄税務署に電話で請求すれば郵送してもらえます。窓口でも入手可能です。
- 金融機関(銀行・ゆうちょ銀行)の窓口: 用意されている場合があります。在庫が少ない場合もあるため事前確認が安心です。
- e-Tax(電子申告): 電子データとして作成・送信が可能です。紙の納付書は不要になります。
- PDFダウンロード(参考様式): 国税庁ウェブサイトで様式の確認ができますが、実際の納付には税務署の正規書類またはe-Taxを使います。
記載の際に特に注意が必要な欄は以下です。
- 「区分」欄: 支払った国内源泉所得の種類に対応するコードを記入します。例えば、給与・賞与等はコード31、著作権使用料はコード12、不動産賃貸料はコード13、土地等の譲渡対価はコード21など、所得の種類ごとに異なるコードが定められています。コードの選択ミスに注意が必要です。
- 「納期等の区分」欄: 原則として国内源泉所得を支払った年月を記載します。ただし、確定後1年を経過した未払配当等や、納期の特例を受けている場合は記載方法が変わります。
- 「復興特別所得税非課税該当」欄: 租税条約の適用で所得税が免除・軽減される場合や、外国居住者等所得相互免除法の適用がある場合は「1」を記入します。この欄を空欄にしてしまい、本来不要な復興特別所得税まで納付してしまう事例があります。
また、複数の種類の国内源泉所得が混在する場合は、原則として所得の区分ごとに別々の納付書を作成する必要があります。1枚にまとめられると思っているケースでも、実際は分けなければならないことがあります。これは要注意です。
国税庁が公開している「マル非」納付書の記載要領の公式ページです。各区分コードと記載方法の詳細を確認できます。
国税庁「納付書の記載のしかた(非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書)」
源泉徴収した所得税および復興特別所得税の納付期限は、原則として「支払った月の翌月10日まで」です。翌月10日が基本です。
たとえば、4月に非居住者へ報酬を支払った場合は5月10日が納付期限となります。この期限を1日でも過ぎると、不納付加算税の対象になる可能性があります。
ただし、「みなし国内払い」の規定が適用される場合は、納付期限が異なります。これが実務上で混乱しやすいポイントの一つです。
⚠️ みなし国内払いとは?
国内源泉所得が国外で支払われた場合、原則として源泉徴収は不要です。しかし、支払者が国内に住所・居所、または事務所・事業所などを有している場合は、「国内で支払ったものとみなす」規定が適用されます。この規定が「みなし国内払い」です。
この場合の納付期限は通常の翌月10日ではなく、翌月末日になります。事務手続きに時間がかかることを考慮した配慮です。いいことですね。
| 支払いの形態 | 納付期限 |
|---|---|
| 国内での通常の支払い | 支払月の翌月10日 |
| みなし国内払い(国外支払いだが支払者が国内事業所等を保有) | 支払月の翌月末日 |
また、給与の支払人員が常時9人以下の源泉徴収義務者は「納期の特例」を申請できます。通常は毎月納付が必要ですが、特例を受けると1〜6月分を7月10日、7月〜12月分を翌年1月20日にまとめて納付できるようになります。
ただし、非居住者への支払いに関しては重要な注意点があります。非居住者への報酬等の大半は、この納期の特例の対象外です。しかし例外として、非居住者に支払う給与については納期の特例が適用できるとされています(所得税法上の根拠あり)。
対象かどうかの判断を誤ると、本来は7月まで待てる納付を毎月しなければならない、あるいはその逆のケースが生じます。事前に税務署または税理士に確認しておくことをお勧めします。
非居住者への国内払い給与と納期の特例の適用関係を詳しく解説している税理士法人のページです。
非居住者への支払いにかかる源泉所得税は、租税条約を適用することで大幅に軽減・免除できる場合があります。日本は2025年8月1日時点で156カ国・地域と租税条約を締結しており、その範囲は広大です。
租税条約が適用される場合、原則20.42%の税率が例えば米国との条約では配当に対して10%(保有割合10%以上の場合)または5%(50%以上を6カ月超保有の場合)に下がるケースがあります。知っていると得する制度です。
この軽減・免除を受けるためには、所定の手続きが必要です。
📄 租税条約の届出に必要な手続きの流れ
届出書が支払日の前日までに間に合わなかった場合、その支払いには日本国内法の税率(20.42%など)が適用されます。厳しいところですね。
ただし、諦める必要はありません。その後、届出書とあわせて「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を支払者経由で税務署に提出することで、軽減税率との差額の還付を受けることができます。
なお、租税条約の限度税率が日本国内法の税率以下になる場合は、復興特別所得税を源泉徴収する必要がありません。復興特別所得税まで控除してしまうと過剰徴収になるため、この点の確認が条件です。
租税条約による源泉徴収の減免手続きや届出書の提出方法を詳しく解説した税理士法人のコラムです。
東京共同会計事務所「非居住者に対する源泉徴収~税率・手続き・租税条約などを徹底解説」
非居住者への支払いに関する源泉徴収漏れは、実際の税務調査でも頻繁に指摘される案件です。気をつけたいところです。
代表的な事例として、コロナ禍において海外駐在員が日本に一時帰国し、その間も日本本社から給与を支払っていたケースが挙げられます。三菱電機では、この状況に対して不納付加算税を含む約1.4億円の追徴課税が行われたとして報道されました。
源泉徴収漏れが発生した場合のペナルティは以下の通りです。
| ペナルティの種類 | 計算方法・割合 |
|---|---|
| 不納付加算税(自主的に納付) | 不納付税額 × 5% |
| 不納付加算税(税務署の指摘後に納付) | 不納付税額 × 10% |
| 延滞税 | 法定納期限の翌日から完納まで年率で計算(年7.3%〜最高14.6%) |
たとえば、100万円の源泉税を納め忘れていて税務調査で指摘された場合、不納付加算税だけで10万円の追加負担になります。自主的に気づいて納付すれば5万円で済みます。この差は大きいですね。
特に見落としやすい源泉徴収漏れのパターンは以下の3つです。
- 🏠 不動産賃料(法人が非居住者から借りるケース): 管理会社経由で支払っていると、貸主が非居住者だと気づかないまま全額支払ってしまうことがあります。契約書の貸主欄を必ず確認することが原則です。
- 🧑💼 海外赴任者がコロナ等で一時帰国している間の給与: 日本本社が給与を支払い、日本国内で業務を行っていれば国内源泉所得に該当します。183日ルールの適用可否も確認が必要です。
- ✍️ フリーランス・クリエイターへの著作権使用料や技術指導料: 相手が海外在住の個人であれば非居住者に該当し、20.42%の源泉徴収が必要です。
源泉徴収漏れが発覚した際は、速やかに不足分を自主的に納付することが最善策です。自主納付であれば不納付加算税が5%に軽減されるからです。税務署の指摘を待ってしまうと10%になります。これが原則です。
なお、支払相手が非居住者のため後から源泉徴収分を回収できない場合、その回収できなかった分(支払者が実質負担した分)は追加の支払いとみなされ、その部分にもさらに源泉徴収義務が生じる点には十分な注意が必要です。
非居住者が絡む不動産取引での源泉漏れと不納付加算税の関係について、具体的な事例を交えて解説しているページです。
株式会社KACHIEL「非居住者が絡む不動産の源泉漏れと不納付加算税」