議決権行使助言ISSが日本企業の株主総会を動かす仕組みと最新基準

議決権行使助言ISSが日本企業の株主総会を動かす仕組みと最新基準

あなたの投資判断に直結する知識を網羅。


議決権行使助言ISSとは何か:仕組みと基準を徹底解説

社外取締役が12年以上在任しているだけで、あなたが投資する企業の経営トップが株主総会で反対票を集め、選任を失敗するリスクがある。


🔍 この記事の3ポイント要約
📌
ISSとは何か?

米国の議決権行使助言会社の最大手。約3,100社の機関投資家を顧客に持ち、日本の約2,500社以上の上場企業の株主総会議案を分析して「賛成・反対」を推奨する、事実上の株主総会の影響力を持つ組織です。

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反対推奨は年々急増中

2024年、ISSの反対推奨件数は2023年比で66%増加。日経225銘柄のうち半数以上で争点となった議案が発生しており、助言基準の厳格化が日本市場に大きな波紋を広げています。

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2026年以降、新ルールが続々適用

在任期間12年ルール(2026年2月〜)、女性取締役10%未満で反対(2027年2月〜)など、ISSの助言基準は更新が続いています。投資家・企業経営者ともに最新情報の把握が不可欠です。


議決権行使助言会社ISSとは何か:基本的な役割と歴史

ISS(Institutional Shareholder Services Inc.)は、1985年に米国で設立された議決権行使助言会社です。日米を含む10カ国以上に拠点を構え、約3,100社の機関投資家を顧客として持ちます。企業でいえば、日本では証券代行大手のサービスに相当する機能を、投資家側の視点から担っていると考えると分かりやすいでしょう。


具体的には、上場企業が株主総会に提出する各議案(取締役選任、役員報酬、定款変更など)を分析し、株主にとって利益となるかどうかの観点から「賛成」「反対」の推奨レポートを作成して機関投資家に提供します。


つまり、ISS自身は株主ではありません。


あくまで機関投資家への助言を行う「情報提供者」です。


もともとISSは1985年に米国労働省の元幹部らによって創業されました。当時は年金基金などの機関投資家が急速に株式投資を拡大するなか、膨大な数の議案を個別に精査する時間とリソースが不足していたという背景があります。その課題を解決するためのサービスとして、議決権行使助言業が生まれました。


これは実用的ですね。


現在は日本市場でもISSとグラス・ルイス(Glass, Lewis & Co., LLC)の2社がほぼ寡占状態にあります。2社合計で多くの機関投資家をカバーしており、特に外国人機関投資家への影響力は絶大です。


📎 大和証券:議決権行使助言会社の基本的な役割と概要(用語解説)


議決権行使助言ISSのビジネスモデル:誰がお金を払っているのか

ISSのビジネスモデルは、主に2種類の収益源から成り立っています。まず1つ目が、機関投資家(年金基金・投資信託・大学寄付基金など)から受け取る分析レポートの提供料です。機関投資家は大量の株式を保有しているため、自社だけで全議案を精査することが難しく、ISSのレポートに対価を払って議決権行使の判断をサポートしてもらいます。


2つ目が、企業向けコンサルティング業務です。上場企業が「ISSにどう評価されるか」を事前に確認したり、ガバナンス改善のアドバイスを受けたりするためのサービスです。


ここが重要な点です。


つまり、ISSは「機関投資家側」と「企業側」の両方からビジネスを受けているという構造になっています。これが「利益相反」問題として長く批判されてきた背景です。企業向けコンサルをして報酬をもらいながら、同じ企業の議案に対して機関投資家に推奨を出す、という構造です。この点について、ISSは子会社との間に厳格なファイアーウォール(情報遮断・オフィス分離など)を構築していると説明しています。


一方のグラス・ルイスは企業向けコンサルティング業務を原則として行っていないため、利益相反リスクが比較的小さいと認識されています。この違いは、両社の信頼性評価においても重要な観点です。





























比較項目 ISS グラス・ルイス
設立 1985年(米国) 2003年(米国)
顧客規模 約3,100社の機関投資家 多数の機関投資家
企業向けコンサル 子会社が実施 原則なし
利益相反リスク 批判あり(ファイアーウォールで対応) 比較的低い


議決権行使助言ISSの影響力:反対推奨で経営トップが落選するリアル

ISSの反対推奨が実際の議決権行使結果にどれほど影響を与えるかは、データが如実に示しています。2024年の株主総会シーズン(2023年7月〜2024年6月)の日経225銘柄の分析では、ISSから1件以上の反対推奨を受けた企業が136社(34.7%)に上りました。


前年の64社(28.4%)から大幅増です。


さらに、ISSの反対推奨が付いた会社提案議案の件数は2023年の116件から2024年には193件と、66%増になっています。これは単なる数字の変化ではなく、「ISSが基準を厳格化し続けている」ことの直接的な現れです。


実際にISSの反対推奨が選任否決につながったケースも存在します。取締役候補者が「0.4%差で否決された」という事例も報告されており、ISSの推奨が最終的な賛成票の動向を左右する場面があることは現実の話として確認されています。外国人機関投資家の多くがISSのレポートを参照して議決権を行使するため、外国人持株比率が高い企業ほど、ISSの推奨による影響を強く受ける傾向にあります。


投資家にとって重要なのは、ISSの推奨が否決や低賛成率につながった議案は株式市場でも注目されやすく、その企業の株価や評判に影響が及ぶ場合があるということです。保有銘柄のガバナンス問題を早めに把握しておくことが、リスク管理の観点から有効です。


📎 Georgeson:2024年日本定時株主総会シーズンレビュー(ISSの反対推奨件数推移データ収録)


議決権行使助言ISSのROE基準:「5%」の意味と実際の運用

ISSが定める日本向けの基準で、長年投資家と企業の双方から注目されているのが「ROE(自己資本利益率)5%基準」です。具体的には、過去5期平均のROEが5%を下回り、かつ改善傾向にない企業の「経営トップである取締役」の選任に対して、反対推奨を出す基準です。


ここでポイントになるのが「5%は最低水準であり、目指すべきゴールではない」という点です。


ISSのポリシー文書にも明記されています。


欧米主要市場のROE水準が概ね10%超であることを考えると、5%という基準は日本企業の現状に合わせた「床の数字」に過ぎません。


この基準が日本で初めて大きく話題になったのは2015年のことです。当時ISSが「ROE5%未満かつ改善なしの企業経営トップに反対推奨」と打ち出したことで、日本の機関投資家からも「企業に資本効率を意識させる効果がある」と歓迎する声が上がりました。


「直近の会計年度のROEが5%以上ある場合」は「改善傾向あり」と判断されます。また、企業再編などにより新たにその企業に入社したばかりの経営トップには、例外的に反対を推奨しない場合もあります。


ROE基準が条件です。


なお、機関投資家各社は独自のROE基準を別途設定しているケースも多く、8%基準を採用する運用会社も少なくありません。ISSの5%が「絶対ライン」ではなく、複数の視点からの評価が組み合わさって最終的な賛否が決まる点も覚えておきましょう。


議決権行使助言ISSの政策保有株式基準:純資産20%ラインの意味

ISS基準の中でもう一つ重要なのが、政策保有株式に関する基準です。「政策保有株式の保有額が純資産の20%以上」である企業の経営トップに対して、原則として反対推奨を出すという内容です。この基準は2022年2月から正式に導入されました。


政策保有株式とは、いわゆる「株式の持ち合い」のことです。取引先や融資先との関係維持を目的に、純粋な投資目的ではなく保有している株式を指します。日本独自の慣習ですが、ISSはこれを「資本効率の低下」「市場規律の弱体化」として問題視しています。


具体的な計算方法としては、有価証券報告書に掲載される「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の貸借対照表計上額に「みなし保有株式」を加えた合計が、純資産の20%以上かどうかで判定します。


意外ですね。


ISSが分析した2025年の日本企業3,083社のうち、この基準に抵触している(政策保有株式が純資産の20%以上)企業は9.0%でした。


なお、分析に使用する有価証券報告書は1年前のものになる点が重要です。例えば2026年6月開催の株主総会を分析する際は、2025年6月提出の有価証券報告書の情報が使われます。これは企業側にとって「直近の縮減努力が即座に反映されにくい」という問題を生んでいます。


この情報は投資先選定にも活かせます。政策保有株式が多い企業はISSの反対推奨リスクが高い傾向があるため、「保有銘柄の政策保有株式比率を有価証券報告書でチェックする」という習慣を持つと、リスク管理の精度が上がります。




























指標 ISSの基準・内容
ROE(自己資本利益率) 過去5期平均が5%未満かつ改善なし→経営トップに反対推奨
政策保有株式 純資産の20%以上→経営トップに反対推奨(2022年2月〜)
社外取締役割合 取締役会の3分の1未満→経営トップに反対推奨
女性取締役 0名→経営トップに反対推奨(2027年2月〜は10%未満で反対)
取締役会出席率 社外取締役の出席率75%未満→当該社外取締役に反対推奨


📎 ISS公式:2026年版日本向け議決権行使助言基準(全文・日本語PDF)


議決権行使助言ISSの2026年新基準:在任期間12年ルールの衝撃

2026年2月1日から適用が始まった新しいISS基準として、特に企業側に大きな影響を与えているのが「在任期間12年基準」です。これは、監査に関わる社外取締役や社外監査役の在任期間が12年以上に達している場合、その選任議案に反対推奨を出すというルールです。


対象となるのは、監査等委員会設置会社の「監査等委員である社外取締役」、指名委員会等設置会社の「社外取締役」、そして監査役設置会社の「社外監査役」です。なお、ISSは監査役設置会社の一般の社外取締役(監査等委員ではないもの)については、このルールを適用しない点が特徴的です。


つまり全員が対象ではありません。


また、在任期間の計算方法にも注意が必要です。取締役に選任される直前まで監査役として在籍していた場合、その監査役期間も合算して12年かどうかを判断します。「監査役から社外取締役に横滑りした」パターンも対象になる可能性があります。


なぜこの基準が導入されたのでしょうか?ISSによれば、「長期在任によって独立性が徐々に低下する」という懸念に対処するためです。選任当初は独立性があると判断されても、年月とともに経営陣との関係が深まり、実質的な監督機能が低下するリスクへの対処として設計されています。また、長期在任の取締役が退任することで、社外取締役の人材プールが拡大するという副次的な効果も期待されています。


📎 大和総研:ISS 2026年以降の助言基準公表レポート(在任期間・多様性基準の解説)


議決権行使助言ISSの2027年新基準:女性取締役10%未満で反対へ強化

現行(2026年時点)のISSの基準では「株主総会後の取締役会に女性取締役が一人もいない場合」に経営トップへの反対推奨が出ます。しかし2027年2月1日以降の株主総会からは、基準が大幅に引き上げられます。「女性取締役の割合が10%未満」であれば反対推奨が出るという内容です。


これは事実上の意味が大きく変わります。女性取締役を1名だけ選任してクリアしていた企業でも、取締役会規模によっては10%を超えられない可能性があります。例えば取締役が10名の会社では女性を1名選任しても10%ちょうどのため、基準をクリアできます。しかし取締役が11名以上いる場合、1名だけでは10%未満となり、反対推奨の対象になります。


同業のグラス・ルイスは、東証プライム市場上場企業に対する女性取締役割合を、2026年1月以降は「20%以上」と定めており、ISSよりも厳しい水準を求めています。


厳しいところですね。


機関投資家各社も独自基準を持っており、例えばりそなアセットマネジメントはプライム上場企業の取締役会に占める女性比率が10%未達であれば代表取締役の選任に反対するとしています(2025年1月〜適用)。野村アセットマネジメントは2025年11月以降、女性取締役の最低基準を「1名」から「10%」に引き上げています。助言会社と機関投資家の基準が連動して厳格化しているということです。


議決権行使助言ISSの独立性基準:何が「独立していない」とされるのか

ISSの助言基準における「社外取締役の独立性」の判断は非常に詳細に定められています。この基準に触れていない投資家が意外と多いのですが、自分の保有銘柄を評価する際の重要な知識です。


ISSが「独立していない」と判断するのは、以下のような関係を持つ社外取締役です。



  • 📌 会社の大株主・主要借入先・主幹事証券・主要取引先・監査法人での勤務経験がある

  • 📌 会社とコンサルティング・顧問契約などの重要な取引関係が現在または過去にある

  • 📌 親戚が会社に勤務している

  • 📌 会社に直接の勤務経験がある

  • 📌 会社が政策保有目的で保有する投資先企業での勤務経験がある

  • 📌 在任期間が12年以上である(2026年2月以降、監査関係の役員に適用)


一見「社外」に見えても、取引先企業からの出向者や政策保有先企業の出身者は独立性なしと判断されます。


注意が必要です。


ただし、重要な点があります。ISSは「独立性基準を満たさない」という理由だけでは、原則として社外取締役の選任議案に反対推奨を出しません。独立性の問題が選任反対につながるのは、特定の条件(指名委員会等設置会社での独立比率不足など)が重なったときに限られます。つまり独立性の欠如は即座に否決につながるわけではないということです。


議決権行使助言ISSへの日本企業の対応策:エンゲージメントと開示

ISSから反対推奨が出ると、企業側はどう対応するのでしょうか?まず「ISSのレポートに対する見解を公表する」ケースがあります。野村ホールディングスや太陽HDなど、実際にISSの反対推奨に対する公式見解をプレスリリースとして発表した事例が複数確認されています。これは企業が株主・投資家に対して直接メッセージを届ける手段として重要です。


次に、株主総会前の「エンゲージメント(対話)」の強化があります。ISSはレポート発行前に企業から情報提供を受け付けており、追加の補足情報がレポートの内容に影響することもあります。


正確な情報開示と積極的な対話が基本です。


企業側からすると、ISSの基準は「シングル推奨(賛成または反対の一択)」を機械的に適用してくると批判されることもあります。しかし、数値基準に該当しなくてもISSが個別判断をするケースも存在します。


基準のみで全てが決まるわけではありません。


投資家目線から見ると、ISSへの対応方針や開示内容の充実度は、その企業のガバナンス意識の高さを測る指標にもなります。ISSや機関投資家との対話に積極的な企業は、コーポレートガバナンスの実践が進んでいる可能性が高く、長期投資先として参考にできる視点です。


📎 BUSINESS LAWYERS:ISSとグラス・ルイスの議決権行使助言方針改定と機関投資家の基準比較(最新版)


議決権行使助言ISSとグラス・ルイスの違い:2社徹底比較

日本市場で影響力を持つ議決権行使助言会社は、ISSとグラス・ルイスの2社がほぼ市場を二分しています。両社の基準は共通する部分も多いものの、細部では異なります。結論から言えば、グラス・ルイスの方が特定項目で厳しい基準を持っています。


政策保有株式について見ると、ISSは「純資産の20%以上」で反対推奨ですが、グラス・ルイスは「純資産の10%以上」の場合に取締役会議長への反対助言を出す基準を持っています。つまりグラス・ルイスの方がハードルが低く(より引っかかりやすく)設定されています。ただし例外条件として、ROEが8%以上の場合や、5年以内に20%以下に縮減する計画を開示している場合は反対を控える余地があります。


女性取締役基準においては、グラス・ルイスはプライム市場上場企業に対して2026年1月以降「20%以上」を求めるのに対し、ISSは2027年2月から「10%以上」基準を適用予定です。


これも一歩先を行っていますね。


一方で注目される動きとして、グラス・ルイスは2025年10月に「2027年より単一の賛否推奨を事実上取りやめる」方針を公表しました。これはビジネスモデルの大転換であり、助言内容をより柔軟・多角的なものにしていく意向とされています。ISSはこのような動きを今のところ見せていません。


2社の方向性が分岐しつつある局面です。


































基準項目 ISS グラス・ルイス
政策保有株式・反対ライン 純資産の20%以上 純資産の10%以上(議長に反対)
女性取締役(現行〜2026年) 0名で反対 プライム:10%未満で反対(〜2025年)
女性取締役(2026〜2027年) 0名で反対(〜2027年2月) プライム:20%未満で反対(2026年〜)
在任期間基準 12年以上の監査関係役員に反対(2026年〜) 全社外役員・全社外監査役が12年以上で議長等に反対(2025年〜)
将来の推奨モデル 単一推奨を継続 2027年に単一推奨を廃止予定


議決権行使助言ISSが日本の株主総会に与える本当の影響力:投資家視点の独自考察

ここからは少し視点を変えて、ISS推奨の「本当の影響力」について掘り下げます。よく言われるのが「ISSが反対推奨を出すと、機関投資家は自動的にそれに従う」という見方です。


しかしこれは正確ではありません。


日本のスチュワードシップ・コードは、機関投資家に「自ら議決権行使の判断を行い、その理由を説明すること」を求めています。ISSの推奨に機械的に従うことは、コードの趣旨に反する可能性があります。多くの日本の機関投資家(三井住友トラスト・アセットマネジメント、野村アセットマネジメントなど)は独自の議決権行使基準を策定しており、ISSとは別の判断で賛否を決めるケースが多数存在します。


つまりISSは「多数派に従うように促す機関」ではなく、「参考データのひとつ」という位置づけが本来の姿です。


これが原則です。


ただ現実には、外国籍の機関投資家(グローバルなアセットオーナーやヘッジファンドなど)はISS等のレポートを主要な判断材料とするケースが多く、外国人持株比率が高い企業ほどISSの推奨が結果に直結しやすい傾向があります。日経225採用銘柄の場合、外国人持株比率が30〜40%以上に達している企業も珍しくなく、こうした銘柄ではISSの影響が特に大きくなります。


これは使えそうです。


さらに、ISSのレポートは「分析レポートの入手方法」がISS公式ページに記載されており、上場企業の実務担当者や高度な調査を行う個人投資家でも入手できます。ISSが何を問題視しているかを事前に把握し、投資判断や保有継続の検討に活かすという積極的な使い方も可能です。


📎 JPX(日本取引所グループ):ISS視点から見た議決権行使助言会社の役割と課題(研究レポート)


議決権行使助言ISSの規制をめぐる動向:米国と日本の対照的な状況

議決権行使助言会社のあり方をめぐる規制論議は、日米で大きく対照的な展開を見せています。


米国では、2025年以降のトランプ政権発足とともに大きな変化が起きています。DEI(多様性・公平性・インクルージョン)政策への反発から、議決権行使助言会社がジェンダー・人種・LGBTなどの多様性を基準に反対推奨することへの批判が強まりました。米国ISSはダイバーシティ基準の適用を停止しています(2025年2月の時点)。また、テキサス州など複数の州が議決権行使助言業者に対する規制強化を進める動きも見られます。


一方、日本では規制圧力がほぼ存在しないため、ISSの助言方針の厳格化は止まる気配がありません。政策保有株式・ジェンダー・在任期間と、毎年のように新たな基準が追加・引き上げられています。


この対照的な状況は今後も続くとみられます。


なお日本証券経済研究所のレポートでは、「ISS等の助言基準の決定プロセスについて透明化を促す対応が必要」という指摘もされており、規制の必要性を論じる学術的議論は日本でも続いています。ただし現状では法的規制には至っていない状況です。


📎 日本証券経済研究所:議決権行使助言会社の規制論議に関する学術的考察(PDF)


議決権行使助言ISSと個人投資家:知っておくべき実践的活用法

ISSは機関投資家向けのサービスというイメージが強いですが、個人投資家にとっても活用できる情報があります。ISSの公式サイトでは、日本向け議決権行使助言基準(ポリシー)を日本語PDFで無料公開しており、誰でも閲覧できます。


これは無料です。


このポリシーを読むことで、投資先企業がどのようなガバナンス上の問題を抱えているかを自分でチェックする「モノサシ」として使えます。


例えば以下のような確認ができます。



  • 📋 保有銘柄の過去5期平均ROEが5%を上回っているか(有価証券報告書で確認)

  • 📋 政策保有株式の額が純資産の20%未満か(有価証券報告書の「株式の保有状況」で確認)

  • 📋 取締役会に占める社外取締役の割合が3分の1以上か(招集通知・コーポレートガバナンス報告書で確認)

  • 📋 女性取締役が1名以上いるか(2027年2月〜は10%以上が基準)

  • 📋 社外取締役・監査役の在任期間が12年以内か(招集通知の略歴欄で確認)


これらは、企業のガバナンス水準を測るシンプルかつ実践的な指標です。ISSの基準をそのまま使うのではなく、複数の観点を持ちながら投資判断の一材料として位置づけるのがバランスの取れたアプローチです。


特に外国人持株比率が高い大型株(日経225採用銘柄など)への投資を考える際は、ISSの基準との整合性を確認しておくことが、株主総会前後のリスクを把握するうえで有効です。具体的には、6月の株主総会シーズン前(3〜5月ごろ)に対象企業のガバナンス状況を確認しておくことをおすすめします。