監査役設置会社廃止の登録免許税を正しく知る方法

監査役設置会社廃止の登録免許税を正しく知る方法

監査役設置会社の廃止と登録免許税の正しい知識

監査役設置会社の定めを廃止しても、登録免許税がゼロになることはなく、むしろ申請のタイミングと組み合わせ次第で、最大9万円以上の差が生じることがある。


📋 この記事の3つのポイント
💰
登録免許税は「区分ごと」に課税される

監査役設置会社の廃止は「ツ区分」で3万円。取締役会廃止と同時に行うと、合計7万円(資本金1億円以下)が基本。 同区分はまとめても追加税なし。

⚠️
会計限定の登記は「自動的に消えない」

会計限定監査役の登記がある場合、監査役設置会社の廃止登記と同時に抹消申請が必要。忘れると別途1万円(資本金1億円超は3万円)の登録免許税が追加でかかる。

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廃止できない会社もある

資本金5億円以上または負債200億円以上の「大会社」、公開会社(株式譲渡制限なし)は、原則として監査役設置会社の廃止ができない。


監査役設置会社の廃止とは何か:登録免許税との基本的な関係

監査役設置会社の定めとは、会社の定款に「監査役を置く」と定めた規定のことです。この定めを廃止するには、株主総会の特別決議で定款変更を行い、その後2週間以内に管轄法務局へ変更登記を申請する必要があります。


登記の申請には登録免許税の納付が必須です。これは登録免許税法によって定められており、未納付のまま申請すると商業登記法第24条に基づき却下されます。


これが前提です。


では、監査役設置会社の定めの廃止に伴う登録免許税はいくらなのか。


答えは原則として 3万円 です。


登録免許税法別表第一第24号の「ツ区分」に分類されているため、この金額が基本となります。


ただし、多くの会社では監査役設置会社の廃止だけでなく、取締役会の廃止や役員変更なども同時に行います。その場合、区分ごとに登録免許税が加算される仕組みを理解しておくことが非常に重要になります。


国税庁:No.7191 登録免許税の税額表(公式の税額一覧が確認できます)


監査役設置会社の廃止に必要な「登録免許税の区分」の仕組み

登録免許税は、登記の種類ごとに「区分」があり、同じ区分に属する登記をいくつ行っても1回分の税額しかかかりません。これを理解しているかどうかで、支払う登録免許税の総額が大きく変わります。


監査役設置会社の定めの廃止は「ツ区分(その他の事項)」に該当し、税額は1件につき3万円です。


「ツ区分」には次のような登記も含まれます。


登記の内容 区分 税額
商号変更 3万円
目的変更 3万円
株式の譲渡制限に関する規定の変更 3万円
監査役設置会社の定め設定・廃止 3万円
会計参与設置会社の定め設定・廃止 3万円
資本金の額の減少 3万円


これらをすべて1回の申請にまとめても、登録免許税は3万円のみです。つまり、目的変更と監査役設置会社廃止を同時に申請しても、合計は3万円で済むということです。


これは使えそうです。


一方、取締役会の設置・廃止は「ワ区分」として別途3万円がかかります。役員変更は「カ区分」として資本金1億円以下の会社なら1万円です。これらは「ツ区分」とは別の区分なので、それぞれ加算されます。


区分が違えば加算される、が原則です。


e-Gov法令検索:登録免許税法別表第一(登記区分の法的根拠が確認できます)


監査役設置会社のみを廃止する場合の登録免許税の計算例

取締役会を設置していない会社(取締役1名+監査役1名の構成)が、監査役設置会社の定めを廃止して取締役1名のみの会社になる場合を見てみましょう。


登記の内容 区分 登録免許税
監査役設置会社の定めの廃止 3万円
監査役の退任(役員変更) 1万円(資本金1億円以下の場合)
合計 - 4万円


このケースでは合計4万円が基本です。シンプルな構成ならこの金額が目安になります。


ただし、会計限定監査役の登記がある場合には注意が必要です。その抹消登記も同時に申請する必要がありますが、「カ区分」の役員変更と同一区分となるため、追加の登録免許税は発生しません。監査役退任と会計限定登記の抹消を同時に申請すれば、合わせて1万円(または3万円)のままです。


逆に、監査役廃止の登記を先に完了させてから後日に会計限定の抹消だけを申請すると、別途1万円(資本金1億円超は3万円)の登録免許税が追加でかかります。


タイミングが重要です。


RSM汐留パートナーズ司法書士法人:監査役廃止の登記と会計限定の登記(会計限定登記の抹消に関する詳細解説)


取締役会と監査役設置会社を同時廃止したときの登録免許税合計額

多くの中小企業では、監査役設置会社の廃止と取締役会の廃止を同時に行います。


このケースが最も一般的な手続パターンです。


取締役会設置会社(取締役3名+代表取締役1名+監査役1名)が、取締役1名のみのシンプルな会社に移行する場合の登録免許税は次のとおりです。


登記の内容 区分 登録免許税
取締役会設置会社の定めの廃止 3万円
監査役設置会社の定めの廃止 3万円
株式の譲渡制限に関する規定の変更 ツ(同区分) 追加なし(0円)
取締役・監査役の変更(退任・辞任) 1万円(資本金1億円以下)
合計 - 7万円


株式の譲渡制限の承認機関を「取締役会」から「株主総会」に変更する手続きも同時に必要になることが多いですが、これは「ツ区分」に属するため追加の登録免許税は発生しません。


これは覚えておくと助かります。


なお、資本金が1億円を超える会社の場合、役員変更(カ区分)の税額が1万円から3万円に増えるため、合計は9万円になります。


高島司法書士事務所:取締役会・監査役設置会社の定め廃止の登記(具体的な費用計算の解説)


監査役設置会社を廃止できない会社の条件と登録免許税上の注意点

全ての会社が自由に監査役設置会社の定めを廃止できるわけではありません。廃止できない条件を把握しておくことで、無駄な手続きを避けられます。


以下のいずれかに該当する場合は、監査役の設置が法的に義務付けられています。


- 公開会社(株式の譲渡制限がない会社):株主総会等の承認なしに株式を自由に譲渡できる会社。


上場企業はすべてこれに該当します。


- 大会社:資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の会社(会社法第2条第6号)。


この規模の会社には監査役設置が必須です。


- 取締役会設置会社:取締役会を廃止せず、かつ会計参与も置いていない場合、監査役の廃止は認められません。


- 会計監査人設置会社:会計監査人の監督機関として監査役が必要なため、廃止できません。


これらの条件に当てはまる場合、そもそも廃止の登記申請自体が法的に無効となります。登録免許税を払って登記申請しても受理されないリスクがあるため、事前確認が条件です。


会社の登記謄本(登記事項証明書)を確認し、これらの要件をクリアしているかどうかを確認してから手続きを進めましょう。


法務局で1通600円程度で取得できます。


会計限定監査役の登記がある場合の登録免許税の落とし穴

平成27年5月1日の会社法改正以降、非公開会社かつ非大会社の監査役については、その監査の範囲を「会計に関するものに限定する」定款規定を設けることができるようになりました。


これが「会計限定監査役」です。


この会計限定の旨は、登記事項となっています。そのため、監査役設置会社の定めを廃止する際には、この会計限定の登記も同時に抹消しなければなりません。


ここで注意すべき点があります。


監査役設置会社の廃止登記を申請しても、会計限定の登記は自動的に消えません。登記官が連動して抹消してくれるわけではないのです。


意外ですね。


もし廃止登記と会計限定の抹消登記を別々のタイミングで申請してしまった場合、後から会計限定の抹消だけを単独で申請することになります。この場合、「カ区分」の登録免許税として1万円(資本金1億円超は3万円)が別途必要になります。


一方、監査役廃止と同時に申請すれば、会計限定の抹消は役員変更と同一区分のため追加費用ゼロです。つまり、申請のタイミングを誤るだけで1万円が追加になるわけです。


痛いですね。


この仕組みを知らないまま手続きを進めると、余分な出費が発生します。会計限定の登記があるかどうかは登記謄本で確認できるため、手続き前に必ず確認しておきましょう。


司法書士九九法務事務所:監査役設置会社の定めの廃止に関するFAQ(会計限定登記の注意点が詳しく解説されています)


登録免許税を節約する「同一申請まとめ」の具体的な活用法

商業登記の登録免許税を節約するうえで最も効果的な方法が、「同一区分の登記を1回の申請にまとめる」ことです。


例えば、監査役設置会社の廃止を検討しているタイミングで、商号変更や目的変更、株式の譲渡制限規定の変更なども予定しているとします。これらはすべて「ツ区分」に属するため、同時に1回の申請でまとめれば、追加の登録免許税は一切発生しません。


具体的な節約例を見てみましょう。


申請方法 登記の内容 登録免許税
別々に申請(3回) 商号変更+目的変更+監査役設置会社廃止 3万円×3=9万円
同時に1回の申請 商号変更+目的変更+監査役設置会社廃止 3万円のみ


この例では6万円もの差が出ます。会社の変更事項が複数ある場合は、タイミングをそろえてまとめて申請することが経済的です。


ただし、日付が異なる登記を1つの申請にまとめる際は、時系列の整合性に注意が必要です。たとえば2月1日に商号をAからBに変更したのに、2月10日付の書類が旧商号Aのままになっていると、登記申請が却下されます。書類の商号や日付は前後の流れに矛盾がないよう整理することが条件です。


GVA法人登記:商業登記の登録免許税を安くする方法(一括申請による節税の具体例が豊富)


監査役設置会社廃止の手続きフローと必要書類の全体像

登録免許税の金額を正確に把握したうえで、実際の手続きがどのような流れになるかも確認しておきましょう。手続き全体の理解が費用の見積もり精度を高めます。


手続きの基本的な流れは以下のとおりです。


① 会社の現状確認(登記謄本の取得・定款の確認)
② 廃止できる条件のチェック(公開会社・大会社・取締役会の有無など)
③ 株主総会の特別決議(定款変更の決議)
④ 変更登記申請書の作成(申請書・株主総会議事録・株主リストなど)
⑤ 登録免許税の計算・収入印紙または電子納付の準備
⑥ 管轄法務局への登記申請(変更発生日から2週間以内に申請)


申請が期限を超えると、会社法第976条に基づき100万円以下の過料が科される可能性があります。


厳しいところですね。


必要書類の主なものは次のとおりです。


- 株式会社変更登記申請書
- 株主総会議事録(特別決議の記録)
- 株主リスト(議決権の過半数に関する情報を含む)
- 定款(変更後の内容が反映されたもの)
- 登録免許税分の収入印紙または電子納付の証明


司法書士に依頼する場合は、これらに加えて委任状が必要です。司法書士への報酬は事務所によって異なりますが、2〜8万円程度が相場となっています。登録免許税はあくまでも実費ですので、司法書士報酬とは別にかかる点も念頭においておきましょう。


法務局:株式会社変更登記申請書のサンプルPDF(実際の申請書の記載例が確認できます)


監査役設置会社廃止のメリット・デメリットと登録免許税の費用対効果

手続きに費用がかかる以上、廃止することが本当に得なのかどうかを冷静に判断する必要があります。これは登録免許税の費用対効果という観点から考える話です。


廃止のおもなメリット


- 名目だけの監査役を置く必要がなくなり、無用なトラブルを回避できる
- 今後の役員変更登記の手間と費用が削減される(例:監査役の重任登記が不要になる)
- 不必要な役員報酬を支払わなくて済む
- 取締役会廃止と合わせることで、会社機関をシンプルにできる
- 役員の任期を最大10年まで延長できるため、2年ごとの重任登記コストを削減できる


廃止のおもなデメリット


- 登記費用が一時的に4〜7万円(司法書士費用を加えれば10万円超)かかる
- 会社としての対外的な信用力がやや低下する可能性がある
- 取締役会廃止と合わせると、株主総会の決議事項が増える場合がある


特に、名目上の監査役に年間数十万円の報酬を支払っているケースでは、廃止による1回の登録免許税(最大7万円)は1年以内に回収できます。長い目で見た費用対効果は決して悪くないというのが実態です。


一方で、融資を受けている会社や取引先から信用力を重視されている場合、廃止によるイメージダウンのリスクは慎重に評価すべきです。財務状況や取引関係を踏まえて判断することが前提です。


「監査役設置会社廃止+役員任期延長」の組み合わせで長期コストを最小化する独自戦略

ここでは、検索上位では語られにくい独自の視点をお伝えします。監査役設置会社の廃止と役員任期の延長を組み合わせることで、長期的な登録免許税の総額を大幅に圧縮できます。


旧来型の取締役会設置会社(取締役の任期2年・監査役の任期4年)の場合、役員変更登記が毎回必要です。資本金1億円以下の会社でも、1回の役員変更登記につき1万円の登録免許税がかかります。4年間に2回の役員変更をすれば2万円、さらに監査役の重任分も含めると追加コストが積み重なります。


これに対して、監査役設置会社を廃止したうえで取締役の任期を10年に延長すれば、10年間は役員変更登記そのものが不要になります(重任がない場合)。10年間で2〜5回分の登記コストが節約できる計算です。


具体的に比較すると以下のようになります。


パターン 10年間の役員変更登記費用 廃止費用(一時) 10年合計
廃止しない(任期2年) 5回×1万円=5万円 0円 5万円
廃止する(任期10年) 0〜1回×1万円=0〜1万円 7万円 7〜8万円


一見すると廃止しない方が安く見えます。しかし、この試算には監査役の報酬や実務上の人員確保コストが含まれていません。名目上であっても監査役に年間5〜10万円の報酬を支払っている会社は多く、その場合は廃止後の総コストが大きく逆転します。


廃止に伴う初期の登録免許税(7万円程度)を「投資」として捉え、10年・20年のスパンで費用対効果を計算することが重要です。


結論は長期視点で変わります。


監査役設置会社廃止の登録免許税に関するよくある疑問と回答

登録免許税の計算や手続きに関して、よく寄せられる疑問をまとめました。実務上で混乱しやすいポイントを中心に解説します。


Q1:株式の譲渡制限規定の変更も同時に行う場合、登録免許税は増えますか?


増えません。株式の譲渡制限に関する規定の変更は「ツ区分」に属するため、監査役設置会社の廃止と同一区分です。


1回の申請でまとめれば追加税額はゼロです。


Q2:登録免許税は現金で払えますか?


登録免許税は収入印紙(申請書に貼付)か、オンライン申請の場合は電子納付で支払います。


現金の直接持参は通常できません。


収入印紙は法務局内の売店や郵便局で購入できます。


Q3:申請は自分でできますか?司法書士に頼まなければいけませんか?


法的には本人申請も可能です。ただし、書類作成の正確性を担保するために司法書士に依頼する会社が多いのが実態です。司法書士費用の相場は2〜8万円程度であり、登録免許税は別途実費でかかります。


Q4:登記申請を遅らせると何か問題がありますか?


変更発生日(株主総会の決議日)から2週間以内に申請しなければなりません。期限を超えると100万円以下の過料の対象になります。2週間は思ったより短いため、決議後は速やかに準備を進めることが重要です。


Q5:登録免許税を多く払いすぎた場合は返ってきますか?


還付請求手続きを行うことで戻ってきます。ただし、手続きには数ヶ月かかることが多く、すぐには返金されません。正確な金額を最初から計算することが最善です。


RSM汐留パートナーズ司法書士法人:よくある登記の登録免許税一覧(実務で頻出の計算例が網羅されています)


監査役設置会社の廃止手続きで後悔しないための事前チェックリスト

手続きを進める前に確認しておくべき項目を整理しました。これを事前に確認しておくことで、申請後の修正や追加費用を防ぐことができます。


登記謄本で確認すべき事項


- 「監査役設置会社」の登記がある → 廃止登記の対象
- 「取締役会設置会社」の登記がある → 取締役会廃止の登記も同時に必要
- 「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある旨」の登記がある → 会計限定の抹消登記も同時に申請が必要
- 株式の譲渡制限の承認機関が「取締役会」になっている → 「株主総会」や「代表取締役」への変更登記も必要
- 資本金の額が1億円以上か → 役員変更(カ区分)の税額が3万円に変わる
- 資本金5億円以上・負債200億円以上(大会社)か → 廃止不可


定款で確認すべき事項


- 監査役に関する規定の範囲(複数条にわたる場合は大幅変更が必要)
- 取締役会に関する条文の記載(廃止後に削除または修正が必要)
- 代表取締役の選定方法の規定(取締役会廃止後は「互選」や「株主総会決議」等に変更が必要)


これらを一つひとつ確認してから手続きに入ることが、追加費用ゼロで完了させるための条件です。とくに会計限定の登記は見落としやすい項目なので注意が必要です。


不安な点がある場合は、司法書士への相談(初回無料の事務所も多い)を検討するのが現実的な選択肢です。相談だけなら費用がかからない事務所も多くあります。