振替加算とは何か金額と受給条件を徹底解説

振替加算とは何か金額と受給条件を徹底解説

振替加算とは何か金額と受給条件をわかりやすく解説

老齢基礎年金を繰り下げ受給すると、その間は振替加算も1円ももらえません。


この記事の3つのポイント
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振替加算とは加給年金の「振り替わり」

配偶者が65歳になったとき、夫の老齢厚生年金に付いていた加給年金が打ち切られ、代わりに妻(または夫)の老齢基礎年金に上乗せされる給付が振替加算です。生涯受け取り続けられます。

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金額は生年月日によって大きく異なる

最大で年額238,600円(昭和2年4月1日以前生まれ)、昭和40年〜41年4月1日生まれでは年額16,033円と大幅に差があります。昭和41年4月2日以降生まれの方は支給額ゼロです。

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申請しないと1円も受け取れない

振替加算はねんきん定期便に記載されないため、自分から気づくことが難しい給付です。特に妻が年上の場合は別途届出が必要で、申請漏れによる支給漏れが全国で多数発生しています。


振替加算とは加給年金の代わりに老齢基礎年金へ加算される制度


振替加算は、厚生年金に一定期間加入した人の配偶者が65歳を迎えたときに、その配偶者自身の老齢基礎年金に上乗せして支給される制度です。もともと夫(または妻)の厚生年金に付加されていた「加給年金」は、配偶者が65歳になった瞬間に打ち切られます。その代わりとして、配偶者本人の年金に移して加算されるのが振替加算です。


制度の名前にある「振替」とは、まさにこの「夫の年金から妻の年金へ振り替える」というイメージを表しています。ただし法令上、「振替加算」という言葉自体は使われておらず、正式には「老齢基礎年金への加算」と表記されています。意外ですね。


加給年金とのもっとも大きな違いは受給期間にあります。加給年金は配偶者が65歳になると終了する有期の給付ですが、振替加算は一度受給を開始すると生涯受け取り続けられます。少ない金額でも、20年・30年と積み重なれば大きな差になります。


この制度が生まれた背景には、1986年(昭和61年)の年金制度改正があります。それ以前は、会社員の妻が国民年金に加入するかどうかは任意でした。改正によって強制加入となりましたが、それ以前に加入できなかった期間が短い世代は、老齢基礎年金を満額受け取れない状態でした。振替加算はこの世代の救済策として設けられた制度です。


年金の種類 誰に支給されるか いつまで受給できるか
加給年金 厚生年金加入者(夫)の年金に加算 配偶者が65歳になるまで
振替加算 配偶者(妻)の老齢基礎年金に加算 生涯(終身)


つまり、加給年金は夫がもらうもの、振替加算は妻がもらうもの、という整理が基本です。


受給資格が発生する条件は大きく3つあります。第一に、配偶者の厚生年金・共済年金への加入期間が合計240ヶ月(20年)以上あること。第二に、振替加算を受ける本人の生年月日が1926年(大正15年)4月2日〜1966年(昭和41年)4月1日の間であること。そして第三に、老齢基礎年金を受給する権利があり、本人自身の厚生年金加入期間が240ヶ月未満であることです。


結論は「配偶者が20年以上厚生年金に入っていて、自分は短かった場合に受け取れる」です。


参考情報:日本年金機構による加給年金額と振替加算の詳細な条件・手続き
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html


振替加算の金額は生年月日で決まる一覧表と計算方法

振替加算の金額は、受け取る本人(被扶養者側)の生年月日によって異なります。これが最も重要なポイントです。年齢が若くなるほど金額が段階的に下がり、最終的には昭和41年4月2日以降に生まれた方は金額がゼロとなります。


なぜ若い世代ほど少ないのかというと、この制度が「国民年金に任意加入だった時代を過ごした世代」を補うために設計されているからです。1986年の時点で20歳以上だった人(=昭和41年4月1日以前生まれ)が対象で、それ以降の生まれの人は最初から40年間の強制加入を果たせるため、補填が不要とみなされています。


2026年度時点(令和8年度)における主な金額は以下の通りです。


生年月日(配偶者=受取本人) 年額(円) 月額(円)
昭和2年4月1日まで 238,600円 19,883円
昭和10年4月2日〜昭和11年4月1日 181,336円 15,111円
昭和20年4月2日〜昭和21年4月1日 117,630円 9,802円
昭和30年4月2日〜昭和31年4月1日 54,162円 4,513円
昭和35年4月2日〜昭和36年4月1日 22,255円 1,854円
昭和36年4月2日〜昭和41年4月1日 16,033円 1,336円
昭和41年4月2日以降 0円 0円


月額1,336円は「少ない」と感じるかもしれません。しかし、65歳から受給して85歳まで生きた場合、20年間で約32万円の受け取りになります。申請一つで手に入る金額としては、決して見逃せません。


振替加算の金額は固定ではなく、「224,700円×改定率×政令で定める率」という計算式で毎年度改定されます。物価や賃金の変動に応じて金額が変わるのが原則です。令和7年(2025年)4月から令和8年(2026年)3月の改定率は前年から引き上げとなり、238,600円が最高額となっています。これは使えそうです。


なお、加給年金の金額(最大415,900円/年)と振替加算の金額は異なります。「加給年金が振り替わるから金額は同じはず」と思っている方も多いですが、この認識は誤りです。加給年金の額に関係なく、振替加算の額は本人の生年月日のみで決まります。


参考情報:2025年度・2026年度の振替加算金額一覧(日本年金機構公式)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html


振替加算をもらえる人ともらえない人の条件と注意点

振替加算を受け取れるかどうかは、複数の条件をすべて満たしているかで決まります。以下に整理します。


✅ 振替加算を受け取れる人の条件(すべて該当すること)


- 生年月日が1926年(大正15年)4月2日〜1966年(昭和41年)4月1日の間
- 老齢基礎年金の受給権がある(受給資格期間10年以上)
- 配偶者の厚生年金・共済年金の加入期間が合計240ヶ月(20年)以上
- 自身の厚生年金・共済年金の加入期間が合計240ヶ月(20年)未満
- 65歳到達時点で配偶者に生計を維持されていた
- 障害年金を受給していない


❌ 振替加算を受け取れないケース


- 昭和41年4月2日以降の生まれ
- 本人の厚生年金加入期間が20年以上ある
- 配偶者の年金加入期間が20年未満
- 老齢基礎年金を繰り下げ受給している期間中(65歳以降に年金を遅らせて受け取っている場合)
- 本人が障害年金を受給中


「生計を維持されている」という条件は、税法上の扶養とは別物です。同居していれば基本的に認められ、別居でも仕送りや健康保険の扶養関係があれば対象になります。前年収入が850万円未満・所得が655万5,000円未満であれば、実際に本人の収入が配偶者より多くても条件を満たします。これは意外ですね。


注意が必要なのは、繰り下げ受給との関係です。老齢基礎年金を70歳まで繰り下げて受け取る場合、その間は振替加算も一切支給されません。これは知らないと数十万円単位の損失につながります。一方で、老齢厚生年金だけを繰り下げて老齢基礎年金は65歳から受け取れば、振替加算は通常通り支給されます。老齢基礎年金の繰り下げを検討しているなら、振替加算の受取額と繰り下げ増額分を比較することが大切です。


また、65歳以降も働き続けて厚生年金に加入し、加入期間が20年に達した場合は振替加算の支給が停止されます。この判断は収入との比較で考える必要があります。


振替加算の手続き方法と申請漏れを防ぐポイント

振替加算の手続き方法は、基本的には老齢年金の請求手続きと一緒に行います。老齢年金の「裁定請求書」に配偶者に関する必要事項を記入することで申請できます。


📝 裁定請求書に記入が必要な項目(主なもの)


- 配偶者の氏名・生年月日
- 配偶者の基礎年金番号
- 配偶者の年金コード(年金を受給している場合)


この記入を忘れていたり、配偶者の年金番号を把握していないケースで手続き漏れが起きやすくなっています。あらかじめ配偶者の「ねんきん定期便」や「年金証書」を手元に用意しておくと手続きがスムーズです。


受給が始まっているかどうかは、毎年5〜6月に年金機構から届く「年金額改定通知書」の「国民年金」欄を確認してください。「振替加算額」と金額が記載されていれば受給されています。記載がない場合は、お近くの年金事務所に問い合わせることを強くおすすめします。


厄介なことに、振替加算はねんきん定期便には記載されません。これが支給漏れの大きな原因の一つです。


妻が年上の場合は別途届出が必要です。 夫より先に65歳を迎えた妻は、その時点では夫がまだ年金を受けていないため、振替加算の対象か判断できません。夫が65歳になったタイミングで、以下の書類を年金事務所に提出します。


- 「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届」
- 戸籍謄本
- 世帯全員の住民票
- 本人の所得証明書


日本年金機構の調査では、振替加算の支給漏れが過去に約10万人以上に上ったことが明らかになっています。支給漏れが判明した場合は最大5年間さかのぼって請求できますが、5年を超えた分については時効により受け取れなくなります。これは痛いですね。


参考情報:振替加算のもらい漏れ事例とパターン(社会保険専門サイト)
https://www.syakaihoken.jp/17164328877122


振替加算と加給年金の2025年以降の改正と今後の動向

2025年6月に年金制度改正法が成立し、加給年金制度に大きな変更が加えられることになりました。2028年4月から子に対する加給年金額の増額と、配偶者に対する加給年金額の見直しが行われる予定です。これにより「加給年金をもらえない」または「もらえる額が変わる」ケースも出てきます。


振替加算は廃止されるのでしょうか?


結論として、振替加算は廃止されません。振替加算は昭和41年4月1日以前生まれの人だけを対象としており、その対象者が自然に少なくなることで制度が終了するという性質があります。社会保障審議会年金部会でも「振替加算が終了するタイミングが、加給年金の役割終了のひとつの目安」という議論はあるものの、今すぐ廃止される方向性は示されていません。


加給年金は今後も対象者が新たに生まれるのに対し、振替加算は既存の対象者が減っていくだけなので、制度改正の俎上には乗りにくい状況です。加給年金の廃止議論の影響を受けないのが振替加算の特徴です。


一方で現役世代が注意すべきは、加給年金そのものの縮小・廃止リスクです。加給年金は今後の改正次第で大幅に変わる可能性があります。老後の収入設計においては、年金だけに頼らずiDeCoや積立NISAなどの自助努力も並行して検討することが、より安定した準備につながります。


将来の年金額について具体的に把握したい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」で自分の加入履歴や見込み額を確認しておくとよいでしょう。ねんきんネットはマイナンバーカードがあれば登録なしでログインできます。


制度 2025年改正の影響 廃止の見通し
加給年金(配偶者分) あり(縮小・見直しの方向) 将来的に廃止議論あり
振替加算 なし 昭和41年4月1日以前生まれの対象者がいなくなるまで継続


参考情報:振替加算の今後と2025年加給年金改正の動向(詳細解説)
https://www.yasiro.co.jp/eitaikuyo/media/archives/24647




定年後のおカネ―週刊東洋経済eビジネス新書No.273