
加給年金は「年金版の家族手当」と呼ばれる制度ですが、妻が年上の場合は厳しい制限があります。加給年金の支給条件は以下の通りです。
最も重要なポイントは、妻が65歳未満でなければならないという条件です。つまり、妻が年上で夫が65歳になった時点で妻が65歳以上の場合、加給年金は一切支給されません。
この制度により、例えば夫が65歳で妻が66歳の夫婦と、夫が65歳で妻が60歳の夫婦では、年間約22万円の差が生じることになります。同じように厚生年金保険料を納付してきたにも関わらず、配偶者の年齢によって受給額に大きな差が生まれる不公平な制度となっています。
妻が年上で加給年金を受け取れない場合でも、振替加算という救済措置があります。振替加算は妻の老齢基礎年金に加算される制度で、以下の条件を満たす必要があります。
妻が年上の場合、特に重要なのは自分で申請手続きを行う必要があるという点です。年下の妻の場合は自動的に振替加算が開始されますが、年上の妻の場合は「国民年金老齢基礎年金額加算開始事由該当届(様式第222号)」を年金事務所に提出しなければなりません。
振替加算の申請を忘れてしまうケースが多く、厚生労働省の調査によると、平成28年度には832件の支給漏れが発生しています。
日本年金機構の公式情報はこちらで確認できます。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html
加給年金と振替加算の年金額には大きな違いがあります。具体的な金額を比較してみましょう。
加給年金の年額
振替加算の年額
振替加算の金額は加給年金と比較して少額ですが、一度支給が開始されると終身で受け取れるという特徴があります。
支給期間の違いも重要なポイントです。
年上の妻の場合、振替加算は夫が65歳になった翌月から支給開始となり、妻が亡くなるまで継続して受け取ることができます。
加給年金制度における「妻が年上の不公平問題」は、年金制度の構造的な問題として長年指摘されています。同じ保険料を納付してきた夫婦でも、配偶者の年齢によって受給額に大きな差が生じる現実があります。
不公平の具体例
この問題に対する現実的な対策として、以下の方法が考えられます。
1. 振替加算の確実な申請
2. 働き方の見直し
3. 年金分割の活用
4. 個人年金の活用
年金制度の改正により、将来的には加給年金制度の見直しも検討されていますが、現在の制度下では振替加算を確実に申請することが最も重要な対策となります。
妻が年上の場合の振替加算申請には、以下の書類が必要です。
必要書類一覧
書類作成時の注意点
申請手続きの流れ
よくある失敗と対策
振替加算の申請漏れを防ぐため、毎年6月に送付される「年金額改定通知書」で振替加算額の項目を確認することが重要です。記載がない場合は、速やかに年金事務所に相談しましょう。
また、夫が共済年金の受給者である場合は、機構への届出が義務付けられているため、特に注意が必要です。共済年金の場合、妻の年金原簿に夫の加給年金情報が記録されないため、振替加算の支給漏れが発生しやすくなっています。
振替加算は過去5年分まで遡って受給できるため、申請が遅れても諦めずに手続きを行うことが大切です。年金制度は複雑ですが、適切な手続きを行うことで、妻が年上でも一定の救済措置を受けることができます。