地方創生応援税制と国税庁の申告で得する節税術

地方創生応援税制と国税庁の申告で得する節税術

地方創生応援税制を国税庁への正しい申告で最大限に活用する方法

自社の本社がある都市に寄附しても、税額控除はゼロ円です。


この記事の3つのポイント
💡
最大9割の税負担軽減が可能

損金算入(約3割)+税額控除(最大6割)の2段階で、寄附額の最大約9割を軽減できます。実質負担はわずか1割になる可能性があります。

⚠️
対象外ルールを事前に確認

本社所在地の自治体や地方交付税の不交付団体(東京都など)への寄附は税額控除の対象外です。申告前に必ず確認が必要です。

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国税庁の申告書作成が必須

寄附しただけでは控除は受けられません。国税庁の別表6(24)など所定の明細書を添付して法人税の確定申告を行う必要があります。


地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)とは何か:制度の基本を国税庁の視点で整理する

地方創生応援税制は、正式名称を「地方創生応援税制」といい、一般には「企業版ふるさと納税」という名前で広く知られています。国が認定した地方公共団体の地方創生事業に対して企業が寄附を行った際、法人関係税から税額控除を受けることができる制度です。


制度が創設されたのは2016年(平成28年)4月のことです。もともとは2021年3月31日までの時限措置でしたが、2020年4月の法改正で5年間延長され、さらに令和7年度税制改正(2025年)によって、2028年(令和10年)3月31日まで再延長が決定しました。つまり現在も現役の制度です。


金融や税務に関心のある方なら「節税効果が高い制度」という印象はお持ちかと思います。それは正しい認識です。ただし、制度のフルパワーを引き出すには、国税庁の定める申告手続きを正確に踏む必要があります。


この制度の最大の特徴は「2段階の税制優遇」にあります。1段階目は損金算入で、寄附額の全額を損金として計上できるため、課税所得が圧縮され法人税等が軽減されます(軽減効果は約3割)。2段階目が税額控除で、寄附額の最大6割が法人税・法人住民税・法人事業税から直接差し引かれます。2つを合わせると、最大で寄附額の約9割が税負担の軽減に充てられる計算です。つまり9割が軽減されます。


たとえば100万円を寄附した場合、実質的な企業負担は約10万円。これはクオカード1万円分の返礼品目当てで行う個人のふるさと納税とはまったく異なる、法人向けの強力な節税スキームです。


税目 控除割合 控除上限
法人住民税 寄附額の4割 法人住民税法人税割額の20%
法人税 住民税で4割に達しない残額(上限は寄附額の1割) 法人税額の5%
法人事業税 寄附額の2割 法人事業税額の20%


この控除の順番が重要です。まず法人住民税から控除し、そこで枠を使い切れなかった場合に残りを法人税から控除する、という順序になります。各税目には上限があるため、計算を正しく行わないと本来受けられるはずの控除を取り逃がすことになります。


参考資料:国税庁が公開している法人税申告別表の解説と様式はこちらで確認できます。


法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)|国税庁


地方創生応援税制で使える寄附先の条件と「対象外になる落とし穴」

節税目的で企業版ふるさと納税を検討する場合、最初につまずきやすいのが「寄附先の要件」です。どこへでも寄附すれば税額控除が受けられるわけではありません。これは意外と見落とされがちです。


まず寄附先の条件として、「国が認定した地方公共団体のまち・ひと・しごと創生寄附活用事業」であることが必須です。認定申請は原則として年3回(5月・9月・1月目途)行われており、現在認定を受けている自治体は内閣府の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」から確認できます。認定されていない事業への寄附は、通常の損金算入しか認められません。


次に、対象外となる重要なルールが2つあります。


1つ目は「本社所在地への寄附は対象外」というルールです。地方税法上の「主たる事務所または事業所」が所在する都道府県・市区町村への寄附は、この制度の税額控除の対象になりません。損金算入の効果(約3割軽減)だけは残りますが、税額控除(最大6割)は受けられないため、節税効果は大幅に下がります。


2つ目は「地方交付税の不交付団体への寄附は対象外」というルールです。東京都や東京都23特別区、千葉県市川市、神奈川県川崎市など、財政的に豊かで地方交付税を受け取っていない自治体が対象外となります。不交付団体は毎年変わりますので、総務省が公表する最新情報を確認するのが確実です。


対象外かどうかは原則です。東京都内に本社があっても、東京都以外の自治体の認定事業に寄附すれば問題ありません。


さらに、もう一点注意が必要なのが「経済的利益の授受禁止」というルールです。個人向けのふるさと納税では返礼品を受け取るのが一般的ですが、企業版では寄附の代償として補助金を受け取ること・市場価格より低い金利での貸付・入札での便宜供与などが明示的に禁止されています。これを違反すると計画の認定が取り消される事案も実際に発生しています(令和7年度の延長時に制度の透明化が強化された背景の一つです)。


  • 🔴 本社が所在する自治体への寄附 → 税額控除なし(損金算入のみ)
  • 🔴 地方交付税不交付団体(東京都など)への寄附 → 対象外
  • 🔴 認定を受けていない事業への寄附 → 税額控除なし
  • 🔴 青色申告法人でない → 制度の対象外
  • 🔴 1回あたり10万円未満の寄附 → 対象外(合計額ではなく1回あたり)


特に「1回あたり10万円以上」という条件は見落とされがちです。合計金額ではなく1回の寄附単位での条件です。複数回に分けて計9万円ずつ寄附しても、1回も控除対象になりません。注意が必要です。


地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の制度詳細|内閣府地方創生推進事務局


国税庁への申告手続きの流れ:別表6(24)の書き方と地方税の明細書

寄附を行っても、国税庁への申告を正しく行わなければ控除は一切受けられません。これが原則です。実際に寄附した企業の中に、申告書の添付漏れで税額控除を取り逃がすケースがあります。手続きの流れを正確に押さえておくことが大切です。


申告の全体の流れは3ステップで構成されています。


  1. 🏛️ 寄附の申し込みと実施:内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイトから対象事業を探し、寄附を申し込む
  2. 📄 領収書(寄附金受領証)の受け取りと保管:寄附先自治体から発行される受領証は申告の必須書類。紛失厳禁です
  3. 📑 確定申告時に所定の明細書を添付して提出:事業年度終了の翌日から原則2ヶ月以内が提出期限


申告書類の準備については、国税(法人税)と地方税(法人事業税・法人住民税)でそれぞれ書類が必要です。


国税(法人税)側では2種類の別表を用意します。1つ目が「別表十四(二)寄附金の損金算入に関する明細書」で、寄附金を損金算入するために必要な書類です。2つ目が「別表六(二十四)認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」で、こちらが税額控除を受けるための核となる書類です。別表六(二十四)の計算には、①特定寄附金の額、②税額控除基準額(寄附額×20%)、③特定寄附金基準額(寄附額×10%)、④調整前法人税額の5%という上限額の確認が含まれます。


地方税側では、都道府県に提出する「第七号の三様式:特定寄附金を支出した場合の税額控除の計算に関する明細書」と、市区町村に提出する「第二十号の五様式:特定寄附金を支出した場合の税額控除の計算に関する明細書」が必要です。これらは各自治体のHPからダウンロードできます。


100万円を寄附した場合のシミュレーション例を示すと以下の通りです。


税目 計算式 控除額(上限内の場合)
法人事業税 100万円 × 20% 20万円
法人住民税 100万円 × 40% 40万円(上限内の場合)
法人税 住民税で使い切れなかった残額(上限は寄附額の10%) 最大10万円
損金算入分(約3割) 課税所得圧縮による間接的軽減 約30万円相当
合計軽減効果 最大約90万円(約9割)


ただし重要な前提があります。実際の法人税等の納税額が少ない場合(つまり利益が少ない場合)、各税目の上限にかかるため、9割すべての控除は受けられないことがあります。利益が十分な事業年度に寄附を行うことが、節税効果を最大化するコツです。


企業版ふるさと納税をぜひご活用ください!(制度の軽減効果の詳細)|内閣府


令和7年度改正で何が変わったか:2028年3月まで延長と透明化強化

令和7年度(2025年度)の税制改正で、地方創生応援税制は2028年(令和10年)3月31日まで3年間の適用延長が決まりました。延長自体はポジティブなニュースですが、同時に制度の「透明化・適正化」に向けた見直しも行われています。


延長が決まった背景には、制度の普及とともに一部で不適切事案が発生していたことがあります。「寄附者である法人が寄附活用事業に参加し、実質的に利益を享受する」といったケースで地域再生計画の認定が取り消された事案です。これを受けて、以下の改正が加えられました。


  • 📢 報告手続きの義務化:認定地方公共団体から国(内閣府)への寄附活用事業の報告が義務化されました。これにより認定されている自治体の数が絞り込まれる可能性があります
  • 🔍 寄附者法人名の公表:寄附を行った企業名が公表されるケースが生じます。CSR・IRとしてプラスに働く場合もありますが、企業ブランドへの影響を意識する必要があります
  • 📋 チェックリストの提出:寄附活用事業に関するチェックリストの提出が求められ、手続きの透明性が高まります


制度の延長は確定しています。2025年4月1日から2028年3月31日までに支出した特定寄附金が対象となります。法人の事業年度でいうと、2025年4月以降に開始する事業年度から順次適用されます。


今後の注目点として、関係法令の整備状況や、国への報告が適切に行われなかった場合の寄附者側への影響、企業名公表の具体的な運用方法などが挙げられます。制度を活用している、または今後活用を検討している企業は、内閣府・国税庁のサイトで最新情報を定期的に確認することが重要です。


令和7年度改正の詳細はこちら。


地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長(令和7年度税制改正)|山田&パートナーズ


金融リテラシーの高い企業担当者だけが知る「節税効果を最大化する実践的視点」

多くの解説記事が「最大9割軽減」という数字を打ち出しますが、実際には各税目の上限や利益水準によって効果は変わります。制度の理解を深めることで、より現実的な節税計画が立てられます。これは実践的なポイントです。


まず、「利益の出ている事業年度に実施する」という基本原則があります。先述のとおり、法人住民税・法人事業税・法人税はそれぞれ上限があり、そもそもの税額が小さければ控除しきれません。東京ドーム5個分の売場面積を持つような大型小売業であっても、赤字年度には効果がほぼゼロになります。寄附のタイミングを事業計画と連動して考えることが重要です。


次に、地方拠点強化税制との併用も検討に値します。企業版ふるさと納税が「外部への寄附に伴う節税」であるのに対し、地方拠点強化税制は「本社機能の地方移転・拡充に伴う節税」です。地方への本社移転(移転型)で雇用増加人員1人あたり90万円、地方企業が本社機能を拡充する(拡充型)で1人あたり50万円の税額控除を3年間受けられます。在宅・リモートワークが普及した現在では、こちらの活用ハードルも下がっています。


また、寄附先の選定では認知度だけでなく「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業の内容」に注目することが大切です。事業内容が自社の事業ドメインや地域戦略と合致していれば、単なる節税を超えてパートナーシップや採用ブランディングに活用できます。たとえばニトリホールディングスは北海道夕張市のコンパクトシティ推進に6,000万円超を寄附しており、地域との深い連携を実現しています。


  • ✅ 利益が出る事業年度に寄附を集中させる
  • ✅ 年度中に増える認定事業を定期的にチェック(年3回認定)
  • ✅ 寄附先の事業内容を自社戦略と照らし合わせる
  • ✅ 地方拠点強化税制との組み合わせも検討する
  • ✅ 申告書の作成は専門の税理士に確認する


さらに、申告ミスによる控除の取り逃がしは意外と多いです。別表6(24)の計算や地方税明細書の添付漏れが起きると、本来9割近く回収できるはずの寄附コストが丸ごと損失になります。初めて制度を活用する場合は、顧問税理士や税務署への事前確認を必ず行いましょう。


企業版ふるさと納税の寄附先を探したい場合は、内閣府が運営する下記ポータルサイトから認定事業を地域・キーワードで検索できます。


企業版ふるさと納税ポータルサイト|内閣府地方創生推進事務局