

耐用年数が2年の資産を定率法で処理すると、2年かかるどころか1年目に全額費用にできます。
固定資産を購入した際、その費用を購入年に一括計上するのではなく、使用期間にわたって少しずつ費用化する手続きが「減価償却」です。定率法は、その減価償却の計算方法の一つで、毎年の期首未償却残高(まだ費用化されていない残りの金額)に一定の率=償却率を掛けて減価償却費を求める方法です。
定率法の最大の特徴は、初年度の減価償却費が最も大きくなるという点にあります。なぜなら、期首未償却残高は取得直後が最大で、毎年減少していくからです。つまり、かけ算の元になる数字が年々小さくなるため、結果として減価償却費も逓減(だんだん小さく)していきます。
ここで押さえたいのが「償却率」の意味です。
| 用語 | 意味 | 役割 |
|---|---|---|
| 償却率 | 期首未償却残高に掛ける率 | 通常の減価償却費を求める |
| 保証率 | 取得価額に掛ける率 | 償却保証額(最低償却額)を求める |
| 改定償却率 | 改定取得価額に掛ける率 | 保証額を下回った年以降に使う |
つまり定率法は「3つの率」を使う計算です。
定額法が「取得価額×定額法の償却率」で毎年同額を計上するだけなのと比べると、定率法は途中で計算ルールが変わる点がやや複雑です。とはいえ、仕組みを理解してしまえばそれほど難しくありません。
現行の税法(2012年4月1日以降に取得した資産)では、「200%定率法」が適用されます。200%とは、定額法の2倍という意味です。
定率法の償却率を自分で求める計算式は、次のとおりです。
| ステップ | 計算 | 例(耐用年数5年) |
|---|---|---|
| ① 定額法の償却率を出す | 1 ÷ 耐用年数 | 1 ÷ 5 = 0.2 |
| ② 200%定率法の償却率を出す | 定額法償却率 × 2 | 0.2 × 2 = 0.4 |
耐用年数5年なら償却率は0.4(40%)です。これを期首未償却残高に掛ければ、その年の減価償却費が計算できます。
ただし実務では、この率を自分で計算する必要はほぼありません。国税庁が公表している「減価償却資産の償却率等表」に、耐用年数ごとの償却率・改定償却率・保証率がすべて記載されているからです。計算ミスを防ぐためにも、この表を参照するのが原則です。
以下は耐用年数2年〜10年の主な数値です。
| 耐用年数 | 定率法の償却率 | 改定償却率 | 保証率 |
|---|---|---|---|
| 2年 | 1.000 | — | — |
| 3年 | 0.667 | 1.000 | 0.11089 |
| 4年 | 0.500 | 1.000 | 0.12499 |
| 5年 | 0.400 | 0.500 | 0.10800 |
| 6年 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 |
| 7年 | 0.286 | 0.334 | 0.08680 |
| 8年 | 0.250 | 0.334 | 0.07909 |
| 10年 | 0.200 | 0.250 | 0.06552 |
ここで見逃せないのが、耐用年数2年のケースです。償却率が「1.000」となっており、1年目に取得価額の100%を一気に費用化できます。これは200%定率法の仕組み上、耐用年数2年の場合は2×(1÷2)=1.0 となるためです。つまり、耐用年数2年の資産は定率法を使えば事実上1年で全額償却が終わるということです。中古車の節税スキームなどで活用されることがある、実務上の重要ポイントです。
国税庁の償却率等表はこちらで確認できます。
計算の基礎となる国税庁公式の償却率等表(PDF)。耐用年数ごとの償却率・改定償却率・保証率が網羅されており、定率法の計算に必須の参照先です。
実際の計算手順を、具体的な数値を使って確認しましょう。
【前提条件】
① 償却保証額を求める
まず「最低でもこれだけは償却する」という基準金額=償却保証額を計算します。
> 償却保証額 = 取得価額 × 保証率 = 100万円 × 0.108 = 108,000円
② 各年の通常の減価償却費を求める
「期首未償却残高 × 0.400」で毎年計算します。
| 年次 | 期首未償却残高 | 通常の減価償却費 | 償却保証額との比較 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,000,000円 | 400,000円 | ✅ 上回る → 通常計算 |
| 2年目 | 600,000円 | 240,000円 | ✅ 上回る → 通常計算 |
| 3年目 | 360,000円 | 144,000円 | ✅ 上回る → 通常計算 |
| 4年目 | 216,000円 | 86,400円 | ❌ 下回る → 改定償却率へ切り替え |
| 5年目 | 216,000円(改定取得価額) | — | 改定償却率で計算 |
③ 改定償却率による計算に切り替える
4年目から通常計算額(86,400円)が償却保証額(108,000円)を下回りました。この年以降は「改定取得価額 × 改定償却率」で計算します。
> 4年目:216,000円 × 0.500 = 108,000円
> 5年目:216,000円 × 0.500 = 108,000円 → ただし最後の1円を残すため 107,999円
改定取得価額は「通常計算が初めて保証額を下回った年の期首未償却残高」です。つまり4年目期首の216,000円がそのまま使われます。
5年間の合計は 400,000 + 240,000 + 144,000 + 108,000 + 107,999 = 999,999円(残り1円を備忘価額として保持)となり、ほぼ全額を費用化できます。これが基本です。
定率法計算の途中から計算方式が変わる理由を含め、改定償却率のしくみを詳しく解説したページです(公認会計士監修)。
freee「減価償却の定率法とは?定額法との違いや償却率、計算方法などを解説」
定率法は、税制改正のたびに償却率の計算方式が変わってきました。取得した年代によって使うべき方式がまったく異なるため、古い資産が帳簿に残っている場合は注意が必要です。
250%定率法から200%定率法への変更は、2011年12月の法人税法改正によるものです。同じ資産でも取得時期によって税務上の処理が変わるため、特に会社の合併・吸収や会計ソフトの乗り換えが発生した際は、資産の取得日付を正確に入力することが非常に重要です。
たとえば耐用年数10年の資産なら、次のように償却率が異なります。
| 取得時期 | 適用方式 | 耐用年数10年の償却率 |
|---|---|---|
| 2007年3月31日以前 | 旧定率法 | 0.206 |
| 2007年4月1日〜2012年3月31日 | 250%定率法 | 0.250 |
| 2012年4月1日以降 | 200%定率法 | 0.200 |
この表を見れば、取得時期がひとつ違うだけで初年度の償却費が大きく変わることがわかります。単なる日付の確認不足が、税務申告の誤りや過少申告につながるリスクがあります。
国税庁の公式ページ。定額法・定率法それぞれの計算方法と具体例が確認でき、取得時期ごとのルールも整理されています。
国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」
定率法はすべての資産・すべての事業者が自由に選べるわけではありません。ここが意外と見落とされがちなポイントです。
まず資産の種類による制限があります。以下の資産は定率法が選べず、定額法一択です。
不動産投資をしている場合、建物部分は定率法を使いたくても使えません。これを知らずに定率法で申告してしまうと、税務調査で問題になる可能性があります。
次に事業者の種類による違いも重要です。
| 事業者の区分 | 原則の償却方法 | 変更するには |
|---|---|---|
| 法人 | 定率法(届出不要) | 定額法に変えたい場合→届出が必要 |
| 個人事業主 | 定額法(届出不要) | 定率法に変えたい場合→届出が必要 |
法人は定率法が原則なので、初期に大きな減価償却費を計上して法人税を圧縮するメリットをそのまま享受できます。一方、個人事業主は何もしなければ定額法が適用され、定率法の初期節税効果を得るには税務署へ「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出する手続きが必要です。
届出は資産の取得した年分の確定申告期限(翌年3月15日)までに提出する必要があります。この期限を過ぎると変更できなくなるため、設備投資のタイミングに合わせて事前に確認しておくことが大切です。
定率法を選択できるかどうかで、節税できる金額は決して小さくありません。たとえば100万円の設備を耐用年数5年で処理する場合、定率法の初年度は40万円(40%)、定額法では20万円(20%)と、初年度だけで20万円もの差が生まれます。
この差が課税所得の圧縮に直結するため、設備投資を検討している個人事業主ほど、あらかじめ税理士に届出の要否を確認しておく価値があります。
個人事業主と法人の減価償却の違い、定率法・定額法の選択と届出の方法を詳しく解説したページです。
マネーフォワードクラウド「法人と個人事業主で減価償却の方法は異なる?計算方法などを紹介」
定率法の最大の活用価値は「キャッシュフロー改善」にあります。これは節税の話でもありますが、もう少し深く掘り下げると、単に税金が減るだけでなく手元資金の時間的価値という観点からも大きな意味を持ちます。
100万円の設備を購入した場合、定率法と定額法では初年度の減価償却費に次のような差が生まれます(耐用年数5年の場合)。
| 年次 | 定率法(200%) | 定額法 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 400,000円 | 200,000円 | +200,000円 |
| 2年目 | 240,000円 | 200,000円 | +40,000円 |
| 3年目 | 144,000円 | 200,000円 | ▲56,000円 |
| 4年目 | 108,000円 | 200,000円 | ▲92,000円 |
| 5年目 | 107,999円 | 199,999円 | ▲92,000円 |
合計の費用額は同じですが、定率法を使うと初期2年間で多くの費用を計上でき、その分だけ早く税負担を軽くできます。法人税率が30%前後の法人であれば、1年目だけで 200,000円 × 30% = 約6万円分の税負担を前倒しで軽減できる計算です。
「利益が多かった年」に大型設備を購入して定率法を適用することで、その年の課税所得を最大限に圧縮できます。これは使えそうです。
逆に、定率法を選ぶと後半の減価償却費は少なくなるため、後半の年度は利益が大きく見えやすいという点も理解しておく必要があります。長期融資を申請する際など、財務諸表を見せる場面では、定額法のほうが損益が安定して見える場合もあります。
また、投資用不動産を持つ場合は一点注意が必要です。建物は定率法を使えないため、土地を除いた建物部分は定額法で計算することが義務付けられています。耐用年数は鉄筋コンクリート造の住宅用なら47年で、定額法償却率は0.022です。「建物を買ったら定率法で初期に大きく減価償却できる」という思い込みは違反になりません、という話ではなく、そもそも制度上できない点を覚えておけばOKです。
設備投資のタイミングや事業規模によっては、税理士との事前相談が費用対効果の面でも大きなリターンをもたらすことがあります。定率法・定額法の選択は一度届け出ると変更に手間がかかるため、最初の判断が肝心です。
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