

定率法で減価償却費を計算しているつもりが、改定償却率への切り替えを忘れると税務調査で過少申告とみなされ、加算税を課されることがあります。
定率法の償却率は、自分で好きな数値を設定するものではありません。資産の「法定耐用年数」をもとに、国税庁が定めたルールに従って計算される数値です。
現在(2012年4月1日以降に取得した資産)に適用されるのは「200%定率法」と呼ばれる方式です。求め方はシンプルで、まず定額法の償却率を出し、それを2倍にするだけです。
| ステップ | 計算の内容 | 計算式 |
|---|---|---|
| ①定額法の償却率を求める | 耐用年数の逆数 | 1 ÷ 耐用年数 |
| ②200%定率法の償却率を求める | 定額法の率×2 | (1 ÷ 耐用年数)× 2 |
例えば耐用年数が5年の機械装置であれば、定額法の償却率は 1÷5=0.200、これを2倍すると0.400となります。つまり定率法の償却率は0.4(40%)です。このように、基本的な計算は非常にわかりやすい構造になっています。
ただし、実際の申告では国税庁が公表している「減価償却資産の償却率等表」に記載された数値を使います。これが原則です。
耐用年数5年だと0.400がそのまま一致しますが、耐用年数6年の場合は 1÷6≒0.167 → ×2=0.333 となるため小数点以下の端数処理の関係から、表では0.333と記載されています。端数のある耐用年数では計算結果と表の数値が微妙にずれることがあるため、実務では必ず表を参照するのが安全です。
200%定率法という名前は「定額法の2倍の償却率を使う」という意味に由来します。これにより初年度に多くの費用を計上でき、節税効果が高いことが特徴です。テレビや家電を買い替えた直後が一番価値が高く、年々劣化していくイメージと同じで、資産の実態価値の変化に合わせた合理的な方式といえます。
参考:定率法の計算式・保証率・改定償却率が耐用年数ごとに一覧化されています。実務での申告には必ずこの表を確認しましょう。
定率法の償却率を求めるうえで、多くの人が見落としがちなポイントがあります。それは「資産をいつ取得したか」によって適用する方式が異なるという点です。
| 取得時期 | 適用方式 | 償却率の求め方 | 耐用年数5年の例 |
|---|---|---|---|
| 2007年3月31日以前 | 旧定率法 | 専用の旧償却率表を参照 | 0.369 |
| 2007年4月1日〜2012年3月31日 | 250%定率法 | (1÷耐用年数)×2.5 | 0.500 |
| 2012年4月1日以降 | 200%定率法 | (1÷耐用年数)×2 | 0.400 |
2012年4月1日は重要な区切り日です。この日以降に取得した資産は、それ以前より償却率が引き下げられています。250%から200%への変更ですから、初年度に計上できる償却費が減ったことを意味します。設備投資の時期によって節税効果が変わる、ということですね。
ここで注意したいのは、「取得時期」がどの日付を指すかです。契約日や支払日ではなく、資産を実際に事業の用に供した日(事業供用日)が基準となります。3月末に購入して4月から使い始めた場合は2012年4月1日以降に取得した扱いとなり、200%定率法が適用されます。
古い設備を今も保有している法人などは、その資産がどの時期に取得されたものかを確認することが大切です。帳簿や固定資産台帳にある取得日を確認し、適切な表の数値を使うのが基本です。
また、旧定率法(2007年3月以前取得)は別途「旧定率法の償却率表」があります。現在の200%定率法とは計算構造がまったく異なるため、混同しないよう注意が必要です。
参考:200%定率法の概要と、250%定率法から切り替わった経緯をわかりやすく解説しています。
定率法の計算は「償却保証額」という概念を理解するまでが難しい、という声がよく聞かれます。ここでは取得価額100万円、耐用年数5年の機械装置(2012年4月以降取得)を例に、実際の計算の流れを追ってみます。
この場合の各数値は次のとおりです。
償却保証額とは「毎年の減価償却費がこの金額を下回ってはいけない」という下限の基準です。定率法は未償却残高が減るにつれて償却費も小さくなりますが、極端に少ない金額で延々と償却が続かないよう、この下限が設けられています。
| 年度 | 期首未償却残高 | 通常の償却費(×0.4) | 償却保証額との比較 | 計上する償却費 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,000,000円 | 400,000円 | 400,000円 ≧ 108,000円 | 400,000円 |
| 2年目 | 600,000円 | 240,000円 | 240,000円 ≧ 108,000円 | 240,000円 |
| 3年目 | 360,000円 | 144,000円 | 144,000円 ≧ 108,000円 | 144,000円 |
| 4年目 | 216,000円 | 86,400円 | 86,400円 < 108,000円 ⚠️ | 108,000円(改定) |
| 5年目 | 108,000円 | − | 改定償却率で継続 | 107,999円(1円残す) |
4年目で注意が必要です。通常計算の86,400円が償却保証額の108,000円を下回ります。この時点から計算方式を切り替えます。
改定償却率を使った計算は「改定取得価額 × 改定償却率」です。改定取得価額は、切り替わった年の期首未償却残高(216,000円)を指します。216,000円 × 0.5 = 108,000円。つまり原則です。
5年目は108,000円 × 0.5 = 54,000円ですが、実際には期首残高の108,000円から1円を残した107,999円を計上します。最後は1円だけを残す、というルールです。
この計算方式の切り替えを忘れると、4年目以降の償却費が過少計上になります。資産台帳を管理する際は、必ず「償却保証額に達したか」の確認を毎年行うことが大切です。
「定率法の方が節税になる」と聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、その差がどのくらいなのかを数字で理解している人は意外と少ないです。
取得価額500万円、耐用年数6年の機械(2012年4月以降取得、定率法償却率:0.333)を例に、初年度の償却費を比較します。
| 計算方法 | 初年度の償却費 | 節税効果(法人税率23%想定) |
|---|---|---|
| 定率法(0.333) | 5,000,000円 × 0.333 = 1,665,000円 | 約383,000円の税負担減 |
| 定額法(0.167) | 5,000,000円 × 0.167 = 835,000円 | 約192,000円の税負担減 |
初年度だけで約19万円もの差になります。これは設備投資の多い中小企業では、特に大きい差です。5年間のトータルで計上する減価償却費の総額は同じでも、前倒しで費用計上できる分、資金の手元残りが違ってきます。
定率法は初期に多く計上し、後半は少なくなる構造です。定額法は毎年均等なので、利益計画が立てやすい一方、初年度の節税効果は薄くなります。
注意点があります。建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアについては、法人であっても個人事業主であっても定額法のみが義務付けられており、定率法を使うことはできません。この点を知らずに「不動産を買ったから定率法で節税しよう」と思っても適用できないため、事前の確認が必要です。
また個人事業主の場合、基本は定額法です。定率法を使いたい場合は、あらかじめ税務署へ「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出しなければなりません。届出なしで定率法を使うことはできません。これが原則です。
初年度の節税を最大化したい場合は、設備投資のタイミングを年度の早い時期にすることも有効です。年の途中で取得した場合は月割り計算となるため、4月に取得した場合と12月に取得した場合では同じ年度でも計上できる償却費に大きな差が出ます。
参考:定率法による節税の考え方と、法人・個人それぞれの減価償却の扱いの違いが詳しく解説されています。
国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」
定率法の計算に必要な「償却率」「改定償却率」「保証率」の3つの数値は、すべて国税庁の「減価償却資産の償却率等表」に記載されています。主要な耐用年数のものを以下にまとめました。
| 耐用年数 | 定額法の償却率 | 定率法の償却率(200%) | 改定償却率 | 保証率 |
|---|---|---|---|---|
| 2年 | 0.500 | 1.000 | − | 0.02789 |
| 3年 | 0.334 | 0.667 | 1.000 | 0.11289 |
| 4年 | 0.250 | 0.500 | 1.000 | 0.12499 |
| 5年 | 0.200 | 0.400 | 0.500 | 0.10800 |
| 6年 | 0.167 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 |
| 8年 | 0.125 | 0.250 | 0.334 | 0.07909 |
| 10年 | 0.100 | 0.200 | 0.250 | 0.06552 |
| 15年 | 0.067 | 0.133 | 0.143 | 0.04565 |
| 20年 | 0.050 | 0.100 | 0.112 | 0.03486 |
耐用年数2年の資産は、定率法の償却率が1.000(100%)となっています。これは取得した初年度に全額費用計上できることを意味します。例えば法定耐用年数2年となる中古の普通乗用車を事業用に購入した場合、1年分として計上すれば取得価額の全額を一括で経費にできるという、かなり強力な節税ができます。これは使えそうです。
実務で注意すべきポイントを整理します。
会計ソフトを使っている場合は、取得日・取得価額・耐用年数・償却方法を正確に登録することで、これらの計算は自動化されます。手計算で確認したい場面では、上の表と計算ステップを使って検証することができます。
なお、資産の種類ごとの法定耐用年数は「主な減価償却資産の耐用年数表」(国税庁)で確認できます。例えば普通乗用車は6年、金属製の事務机・いすは15年、パソコンは4年といった具合に、資産の種類や材質によって細かく分類されています。
自社の固定資産台帳と照らし合わせ、正しい耐用年数が使われているかを定期的に確認する習慣をつけておくと、計算ミスによる申告誤りのリスクを大幅に下げられます。それだけで十分です。
参考:定率法・定額法の各耐用年数に対応した償却率・改定償却率・保証率の数値を確認できます。実務での計算に必須の資料です。