減価償却の計算方法・定額法と耐用年数・取得価額の基本

減価償却の計算方法・定額法と耐用年数・取得価額の基本

減価償却の計算方法・定額法の仕組みと正しい使い方

定額法で計算しているのに、法人は届出なしでは定率法が自動的に適用されます。


📊 この記事の3つのポイント
📐
定額法の計算式はシンプル

「取得価額 × 定額法の償却率」で毎年同額を計上。耐用年数ごとに償却率が法定されており、計算ミスが起きにくいのが特徴です。

⚠️
法人と個人事業主で原則が異なる

個人事業主は届出なしで定額法が適用されますが、法人は定率法が原則。定額法を使いたい場合は税務署への届出が必要です。

🏠
中古資産は耐用年数の計算が別ルール

中古資産には「簡便法」という専用の耐用年数計算方式があり、法定耐用年数をそのまま使うのは誤りです。節税効果にも大きく影響します。


減価償却の計算方法・定額法とは何か?基本の仕組みを理解する


減価償却とは、取得価額が10万円以上で使用可能期間が1年以上の固定資産を、その耐用年数にわたって分割して経費計上していく会計処理のことです。建物・機械・車両・パソコンなど、事業で使う資産は時間の経過とともに価値が下がるため、購入した年度に全額を費用計上するのではなく、「何年かけて使うか(法定耐用年数)」に応じて毎年少しずつ経費にしていきます。


定額法はその中でも最も基本的な計算方法です。計算式は以下のひとつだけです。


定額法の計算式:

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率


「取得価額」とは資産を取得するために支払った金額の合計で、本体価格だけでなく設置費・送料・購入手数料なども含まれます。「定額法の償却率」は耐用年数ごとに財務省令(耐用年数省令)で定められており、1÷耐用年数でおおよそ算出できます。たとえば耐用年数5年なら0.200、耐用年数10年なら0.100です。


定額法の大きな特徴は、毎年の減価償却費が一定である点です。耐用年数が終わるまで、毎年まったく同じ金額を経費として計上し続けます。これはちょうど、ローンの均等返済のような感覚に近いといえるでしょう。計算がシンプルです。


最終年度だけ注意が必要で、償却額を1円だけ残します。これを「備忘価額」と呼びます。帳簿上の残高がゼロになると、その資産がまだ存在して事業で使われているのか廃棄済みなのかが区別できなくなるため、あえて1円を残して記録に留めるのです。処分・売却した段階で初めてその1円も帳簿から消すことができます。


耐用年数 定額法の償却率 取得100万円の場合の年間償却費
3年 0.334 33万4,000円
4年 0.250 25万円
5年 0.200 20万円
6年 0.167 16万7,000円
10年 0.100 10万円
22年(木造建物) 0.046 4万6,000円


参考:定額法・定率法の償却率一覧(国税庁公式)。全耐用年数の償却率が掲載されています。


国税庁 No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後取得分)


減価償却の計算方法・定額法と定率法の違いと選び方

定額法に対して、もうひとつの主要な方法が「定率法」です。定率法は毎年の未償却残高(まだ償却していない金額)に一定の率を掛けて計算するため、初年度の減価償却費が最も多く、その後は年々少なくなっていきます。この2つの違いを整理すると、次のようになります。


比較項目 定額法 定率法
毎年の償却額 一定(均等) 初年度が最大・徐々に減少
計算の簡単さ ◎ シンプル △ 毎年異なる
初年度の節税効果 △ 低め ◎ 高い
利益計画の立てやすさ ◎ 立てやすい △ 初期ほど費用が重い
個人事業主の原則 ✅ 定額法が原則 届出が必要
法人の原則 届出が必要 ✅ 定率法が原則


ここで多くの人が見落としがちな重要な点があります。個人事業主は原則として定額法が適用されますが、法人はまったく逆で、届出なしだと定率法が自動的に使われます。つまり、法人が定額法を使いたい場合は、「減価償却資産の償却方法の届出書」を所轄の税務署へ提出しなければなりません。これが原則です。


一方で、建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェアは、法人であっても個人事業主であっても問答無用で定額法のみが認められています。定率法は選べません。特に2016年(平成28年)4月1日以降に取得した建物附属設備や構築物については、税制改正によって定率法が廃止されました。不動産投資で節税を狙う場合、この改正によって節税効果が大きく変わったという点は知っておいて損がありません。


具体例を使って定額法と定率法の差を体感してみましょう。取得価額100万円・耐用年数5年の機械を購入したとします。


- 定額法の場合:毎年20万円ずつ、5年間均等に計上
- 定率法の場合:1年目40万円 → 2年目24万円 → 3年目14万4,000円 → 4〜5年目は一定額


定率法は1年目の節税額が倍近くなりますが、後半は大幅に少なくなります。この違いが「いつ利益を上げたいか」「いつ節税を最大化したいか」によって選択を左右します。つまり戦略次第です。


減価償却の計算方法・定額法での具体的な計算例(パソコン・車・建物)

ここでは代表的な3つの資産を使って、定額法の計算を実際に行います。計算の流れを一度体験しておくと、実務でも迷わなくなります。


💻 例1:パソコン(取得価額32万円・耐用年数4年)


パソコンの法定耐用年数は4年です。耐用年数4年の定額法償却率は0.250です。


- 年間減価償却費:32万円 × 0.250 = 8万円
- 1年目〜3年目:各8万円を計上
- 4年目(最終年):7万9,999円を計上(備忘価額1円を残す)


🚗 例2:普通自動車(取得価額200万円・耐用年数6年)


普通自動車(自家用)の法定耐用年数は6年、定額法の償却率は0.167です。


- 年間減価償却費:200万円 × 0.167 = 33万4,000円
- 6年間にわたって毎年同額を計上します


🏢 例3:鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所(取得価額3,000万円・耐用年数50年)


建物(事務所、SRC造)の法定耐用年数は50年です。定額法の償却率は0.020です。


- 年間減価償却費:3,000万円 × 0.020 = 60万円
- 50年間、毎年60万円を計上し続けることになります


この3,000万円の建物が年間60万円の経費になるというのは、一見すると地味に見えるかもしれません。しかし不動産投資においては、この毎年60万円の「実際には現金が出ていかない経費」が所得を圧縮し続けるため、長期的に見れば大きな節税効果を持ちます。これは使えそうです。


なお、年の途中に資産を取得した場合、初年度の減価償却費は月割計算になります。たとえば10月に購入し、11月から使い始めた場合、その年度に計上できるのは「年間の減価償却費 × 使用月数÷12」です。使い始めた月を起点とする点に注意してください。


参考:定額法・定率法それぞれの計算方法と仕訳例を詳しく解説。


OBC 360° | 減価償却費はどう計算する?定額法・定率法の計算方法や注意点を解説


減価償却の計算方法・定額法で中古資産の耐用年数を正しく求める

金融・投資に関心がある方が特に注意すべきなのが「中古資産の耐用年数」です。中古で取得した資産には、新品と同じ法定耐用年数をそのまま使うことはできません。中古資産専用の計算ルール(簡便法)を使って、まず耐用年数を算出してから定額法の計算に進む必要があります。


簡便法による中古資産の耐用年数の計算式は2パターンあります。


①法定耐用年数を全部経過した資産の場合(超えている場合):

中古の耐用年数 = 法定耐用年数 × 20%


②法定耐用年数の一部を経過した資産の場合(経過途中の場合):

中古の耐用年数 =(法定耐用年数 − 経過年数)+(経過年数 × 20%)


計算結果が2年未満になった場合は、耐用年数は一律「2年」として扱います。また、1年未満の端数は切り捨てるルールです。


🚗 具体例:8年落ちの普通自動車(法定耐用年数6年)を購入した場合


法定耐用年数6年を経過年数8年が超えているため、パターン①を使います。


- 中古の耐用年数:6年 × 20% = 1.2年 → 2年未満なので「2年」


耐用年数2年の定額法償却率は0.500です。つまり、取得価額の半分をわずか2年で経費計上できます。300万円の8年落ち中古車なら、毎年150万円弱を償却できる計算です。これがよく言われる「中古車節税」の仕組みです。


ただし、この節税には重要な落とし穴があります。節税のために高額な中古車を購入すると確かに今期の課税所得は下がりますが、手元の現金は購入代金分だけ確実に減ります。車検や維持費も年落ちが大きい車ほど高くなる傾向があり、長期的なキャッシュフローで考えると必ずしも得とは言えない場面もあります。節税効果と実費負担のバランスを冷静に計算することが条件です。


また、取得前に改造・大規模修繕を行い、その費用が新品価格の50%を超える場合は、中古資産の特例が使えず新品と同じ法定耐用年数で計算しなければなりません。中古物件のリノベーションを行う場合は、この点を事前に確認しておく必要があります。


参考:中古資産の耐用年数の計算方法を具体例で解説。


税理士法人Accompany | 中古車の耐用年数の具体的な計算方法


減価償却の計算方法・定額法で見落としやすい5つの注意点

定額法の計算式自体はシンプルですが、実際に運用するとさまざまな落とし穴があります。知っておくと損を回避できる注意点を5つ取り上げます。


① 法人は「届出」がないと定額法が使えない


前述の通り、法人の法定償却方法は定率法です。定額法を使いたい場合は、新たに事業所を設けた場合や新しい種類の資産を取得した場合に、税務署へ届出書を提出する必要があります。届出の期限は「最初にその資産を取得した事業年度の確定申告の提出期限まで」です。期限を過ぎると届出が無効になり、自動的に定率法が適用されてしまいます。期限には注意が必要です。


② 減価償却しなかった年の分を翌年に繰り越せない


法人の場合、減価償却は任意で行えます(任意償却)。しかし、減価償却をしなかった年の分を翌年に2年分まとめて計上することはできません。「今期は利益が少ないから減価償却を見送り、来期にまとめて計上しよう」という考え方は誤りで、計上を先送りした分の節税効果はその年限りで消えてしまいます。厳しいところですね。


③ 事業に使った月数だけが減価償却の対象になる(月割計算)


年の途中で資産を購入した場合、初年度は使用開始月から決算月までの月数分しか計上できません。「12月に購入して12月決算」の場合、1年分の1/12しか計上できないことになります。個人事業主の場合も同様で、「買ったから全額計上できる」という思い込みは要注意です。


④ 土地・骨董品・美術品(100万円以上)は減価償却の対象外


減価償却できるのは時間の経過で価値が下がる資産だけです。土地は経年で価値が変わらない(あるいは上がる)ため対象外です。また取得価額が1点100万円以上の美術品・骨董品も原則として減価償却できません。不動産投資で購入した物件のうち、土地の価値と建物の価値を正確に分けて計算することがポイントになります。建物のみが減価償却対象です。


⑤ 耐用年数を間違えると過去の申告にも影響する


減価償却の耐用年数を誤って設定した場合、その後の全事業年度にわたって税額計算がずれてしまいます。一度設定した耐用年数は原則として変更できないため、特に中古資産や用途が複合的な資産については、取得時に慎重に確認することが大切です。税理士や税務署への相談が有効です。


参考:個人事業主と法人の違い、届出の必要性を詳しく解説。


弥生 | 個人事業主の減価償却の計算方法は?法人との違いも解説


減価償却の計算方法・定額法を金融・投資の視点で活用する独自の考え方

定額法による減価償却を、単なる会計処理としてではなく「キャッシュフロー設計のツール」として捉えると、資産運用の見え方が変わります。


定額法の核心は「キャッシュアウトなき経費」という点です。減価償却費は帳簿上の経費ですが、その年に実際に現金が出ていくわけではありません。たとえば年間の売上が500万円、減価償却費以外の経費が350万円、定額法による減価償却費が50万円の事業者の場合を考えます。


- 帳簿上の利益:500万円 − 350万円 − 50万円 = 100万円(ここに課税)
- 実際の手元資金の増加:500万円 − 350万円 = 150万円(現金は50万円多く手元に残る)


つまり減価償却費は「帳簿では経費なのに実際には手元に現金が残る」という仕組みを生み出します。これは減価償却費分だけ税金を減らしながら、同額の現金を手元にプールできるという意味で、手元資金が増やせます。


不動産投資においてこの効果は特に大きく機能します。賃料収入が毎月入ってくるなかで、定額法による建物の減価償却費が毎年継続的に所得を圧縮するため、手元のキャッシュは増えつつ課税所得は抑えられるという状態が続きます。これを「デフレクション(減価による節税)」と呼ぶこともあります。


ただし、この効果には出口(売却時)への注意が必要です。減価償却によって帳簿上の建物価値(取得費)が下がった分、売却時の「譲渡所得」が大きくなります。具体的には、取得費を5,000万円で購入して1,000万円分を減価償却した建物を5,000万円で売却した場合、取得費は4,000万円(5,000万円−1,000万円)として計算されるため、1,000万円分の譲渡所得が上乗せで課税対象になります。


💡 投資戦略的なポイント

定額法は「毎年均等な節税効果が続く」という点で、長期保有・安定収入の資産(例:賃貸不動産)と相性が良い計算方法です。売却を短期で考えているなら、初期に多く償却できる定率法のほうが有利になるケースもあります(ただし建物は定額法のみ)。



また、青色申告をしている中小企業者・個人事業主には「少額減価償却資産の特例」があります。取得価額が30万円未満の資産であれば、合計300万円を上限として、その年に全額を一括経費にできます。パソコンや周辺機器、ソフトウェア、スマートフォンなど、30万円以下の事業用資産を複数取得した年は、この特例を使うかどうかを判断することで課税所得の調整ができます。


参考:減価償却の仕組みと節税効果を不動産投資の観点から解説。


Relo不動産 | 不動産投資の減価償却と節税の仕組み!節税額の計算方法と注意点




自己減価償却おかしい学生が壊れた私はお金を持っていません スマホケース iPhone 15 Plus 用