

再就職手当は「早く就職した人がもらえる手当」だと思っていませんか?実は、給付制限期間中に自力で仕事を決めると、数十万円の手当が丸ごと消える落とし穴があります。
「就職促進給付」と「再就職手当」の名前が似ているため、同じものだと思っている方は少なくありません。これは基本的な誤解です。
就職促進給付とは、雇用保険制度における「失業等給付」のうちのひとつのカテゴリーです。失業者が早期に安定した職業へ就けるよう支援するために設けられた給付の総称であり、複数の手当を含む「大きな傘」のようなものです。
つまり、再就職手当はその傘の下にある「個別の手当の名前」にすぎません。
就職促進給付の全体像を理解するために、まず構成を確認しましょう。就職促進給付は大きく3つに分かれます。「就業促進手当」「移転費」「求職活動支援費」です。このうち一般に最もよく知られているのが就業促進手当であり、さらにその中に「再就職手当」「就業促進定着手当」「常用就職支度手当」が含まれます。なお、かつては「就業手当」も含まれていましたが、2025年3月31日をもって廃止されました。
| 就職促進給付の分類 | 含まれる手当・費用 |
|---|---|
| 就業促進手当 | 再就職手当 / 就業促進定着手当 / 常用就職支度手当 |
| 移転費 | 鉄道賃・船賃・航空賃・車賃・移転料・着後手当 |
| 求職活動支援費 | 広域求職活動費 / 短期訓練受講費 / 求職活動関係役務利用費 |
再就職手当は就業促進手当の一種です。構造の理解が基本です。
ここを正確に理解しておくだけで、転職活動において「自分が申請できる給付が複数ある可能性がある」と気づくことができ、受け取れるはずの給付金を逃さずに済みます。実際、各手当は申請タイミングや条件が異なるため、体系的に把握しておくことが重要です。
参考リンク:厚生労働省による就職促進給付の公式解説ページ(各手当の要件・支給額の基準を確認できます)
ハローワークインターネットサービス|就職促進給付
再就職手当は、失業保険(基本手当)の受給資格者が早期に安定した職業に就いた場合に受け取れる手当です。支給額は「基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率」で計算されます。
注目すべきは給付率の設定です。
つまり早く動くほど得られる金額が増える設計になっています。
具体例で確認しましょう。所定給付日数が90日の方が、基本手当日額5,000円で全日数を残したまま就職した場合を計算すると、70%適用で「5,000円 × 90日 × 70% = 315,000円」となります。これが3分の1の31日を残しての就職であれば「5,000円 × 31日 × 60% = 93,000円」となり、差額は実に22万円以上に開きます。所定給付日数が長い方ほど、この差はさらに大きくなります。
ただし、受給には複数の条件を満たす必要があります。主なものを整理すると、①7日間の待期期間が終了していること、②1年を超えて継続して勤務することが見込まれる安定した職業であること、③前職の会社や関係会社ではないこと、④過去3年以内に再就職手当を受給していないこと、⑤ハローワークに求職申し込みをした前から内定が決まっていないこと、などが挙げられます。
ここで特に見落とされやすいのが「⑤の内定タイミング」と「給付制限期間の就職経路」です。
自己都合退職などで給付制限を受けている場合、待期期間満了後1ヶ月以内に再就職するときは、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者(リクルート・マイナビ等の正規の転職エージェントなど)の紹介でなければ再就職手当は受け取れません。この1ヶ月を過ぎれば就職経路は問いませんが、その前に知人からの紹介や企業の直接応募で内定を取ってしまうと、対象外となるリスクがあります。これは注意が必要ですね。
参考リンク:ハローワーク公式のPDF資料(申請条件と給付率の早見表が確認できます)
ハローワーク|再就職手当のご案内(PDF)
再就職できたけれど、以前よりも給料が下がってしまった。そういった状況を想定して設けられているのが、就業促進定着手当です。
就業促進定着手当は、再就職手当を受け取った方が対象です。条件が3つあります。①再就職手当を受給済みであること、②同じ事業主に6ヶ月以上継続して雇用保険の被保険者として雇用されること、③再就職後6ヶ月間の1日あたりの賃金が、離職前の賃金日額を下回っていることです。この3つをすべて満たしたときに申請できます。
支給額の計算は少し複雑です。「(離職前の賃金日額 ー 再就職後6ヶ月の1日あたり賃金額)× 再就職後6ヶ月間の賃金支払い基礎日数」で算出します。
ただし上限額があります。
現行(2025年4月改正後)の上限は「基本手当日額 × 基本手当支給残日数 × 20%」です。改正前は、再就職手当の給付率70%を受けた場合は残日数の30%、60%を受けた場合は残日数の40%が上限でした。この引き下げにより、受け取れる最大額がかなり圧縮されています。痛いですね。
例として、基本手当日額5,000円・支給残日数60日で再就職した方の場合の上限は「5,000円 × 60日 × 20% = 60,000円」です。改正前に70%給付率で受けた場合の上限は「5,000円 × 60日 × 30% = 90,000円」でしたので、最大で3万円の差が生じる計算になります。
またひとつ重要な点として、再就職手当は「起業(自営を開始した場合)」も支給対象になりますが、就業促進定着手当は起業が支給対象外です。再就職手当を起業で受け取った方は、就業促進定着手当には申請できません。就業促進定着手当は雇用保険の被保険者として雇用されていることが条件です。
参考リンク:ハローワーク公式ページ(就業促進定着手当の計算方法・申請書類の記載例があります)
ハローワーク|就業促進定着手当のご案内(PDF)
再就職手当の申請期限は、就職した日の翌日から1ヶ月以内が原則です。
しかし入社直後は業務の習得や環境への適応で手一杯になりやすく、手続きを後回しにしてしまうことが珍しくありません。実際、約70%の受給資格者が申請しないまま受け取り損ねているという指摘もあります。
朗報としては、1ヶ月の期限を過ぎても2年以内であれば遡って申請が可能です。申請期限が過ぎても、時効が成立するまでの2年間は申請窓口が開いています。ただし1ヶ月以内の期日内に申請したほうが支給が早い点は変わりません。2年以内なら問題ありません。
申請に必要な書類は以下の通りです。
就業促進定着手当の場合は申請のタイミングが異なります。再就職後6ヶ月が経過した翌日から2ヶ月以内が申請受付期間です。ハローワークから申請書類が郵送されてきますので、受け取ったら速やかに出勤簿の写し・給与明細または賃金台帳の写し(事業主の原本証明が必要)などを準備して手続きを進めます。
申請先は再就職手当の支給申請を行ったハローワークです。郵送での提出も可能です。
手続きに不安がある場合は、申請前にハローワークの窓口で相談することをおすすめします。書類の不備があると支給が遅れる原因になるため、事前確認は効果的です。
2025年4月1日に施行された雇用保険制度の改正は、受給者にとって看過できない内容でした。
まず就業手当が廃止されました。就業手当は、正規雇用(常用雇用)以外の形態で働いた場合、つまりアルバイトや業務委託、パートタイムなどで就業したときに支給されていた手当です。フリーランスとして副業を持ちながら転職活動をしていた人や、正規就職の前に短期の仕事を試している人にとって利用実態があった制度でしたが、2025年4月以降に支給要件を満たした場合は支給されません。
就業促進定着手当については、支給上限額が引き下げられました。改正前は再就職手当の給付率70%適用者は残日数の30%、60%適用者は40%が上限でしたが、改正後は給付率に関係なく一律で残日数の20%に統一されました。受給可能な最大額が実質的に縮小したと言えます。
もうひとつ、あまり知られていない制度として常用就職支度手当があります。これは障害のある方など就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に支給されるもので、支給残日数が所定給付日数の3分の1未満の状態でも受給できる点が再就職手当と異なります。
| 比較項目 | 再就職手当 | 就業促進定着手当 | 常用就職支度手当 |
|---|---|---|---|
| 支給対象 | 早期に安定就職した人 | 再就職手当受給後、賃金低下した人 | 就職困難者(障害者等) |
| 残日数条件 | 1/3以上残す必要あり | なし(再就職手当受給が前提) | 1/3未満でもOK |
| 給付率・上限 | 60%または70% | 残日数の20%が上限 | 90日分の40%が基本 |
| 申請期限 | 就職翌日から1ヶ月以内(原則) | 6ヶ月経過翌日から2ヶ月以内 | 就職後速やかに |
資産形成や家計管理に関心を持つ方にとって、こうした給付制度を把握しておくことは家計最適化の一環です。転職のタイミングや退職の時期を考えるうえで、受け取れる給付額がどれだけ変わるかを事前にシミュレーションしておく価値があります。
再就職手当の概算支給額はハローワーク公式の計算ツールやカシオの高精度計算サイトで試算できます。転職活動の計画を立てる段階で一度確認しておくと、給付金を最大化できるタイミングで就職に踏み切りやすくなります。
参考リンク:2025年の改正内容の公式資料(厚生労働省による概要PDF)
厚生労働省|令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について(PDF)