

一般口座で保有した割引債が償還されると、実際の利益がゼロでも税金だけ取られることがあります。
債券には大きく分けて「利付債」と「割引債」があります。利付債は定期的に利子が支払われるタイプ、割引債は利子がなく額面より低い価格で発行される代わりに満期で額面を受け取るタイプです。割引債では、この構造上、償還差益が必然的に生まれやすくなっています。
つまり償還差益が基本です。
低クーポン債や国庫短期証券(T-Bill)、ストリップス債なども、満期に額面で返ってくる仕組みから償還差益が発生する代表的な商品です。 これらは個人投資家にも広く購入されています。 mof.go(https://www.mof.go.jp/jgbs/publication/debt_management_report/2020/saimu2020-2-4.pdf)
特定公社債の償還差益は、税率20.315%(所得税15.315%・住民税5%)の申告分離課税の対象です。 faq.click-sec(https://faq.click-sec.com/faq/show/264)
内訳を整理すると以下の通りです。
申告分離課税とは、給与などの総合所得とは切り離して、一定税率で課税する方式です。高所得者であっても税率が上がらないのが特徴で、これは債券投資の大きなメリットと言えます。
税率は一律です。
なお、2016年1月の税制改正以降、特定公社債の分類や課税方式が大きく変わりました。 以前は割引債の償還差益が「源泉分離課税(税率18%)」だったのが、現在は申告分離課税に統一されています。制度変更前後で扱いが異なるため、古い情報を参照している場合は注意が必要です。 yamada-partners(https://www.yamada-partners.jp/reform/h25/f01-change-in-the-taxation-methods-of-public-and-corporate-bonds)
参考:公社債等の課税方式の変更について(税理士法人山田&パートナーズ)
https://www.yamada-partners.jp/reform/h25/f01-change-in-the-taxation-methods-of-public-and-corporate-bonds
確定申告が必要かどうかは、保有している口座の種類によって大きく異なります。これが意外と見落とされがちなポイントです。
| 口座の種類 | 源泉徴収 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 自動で徴収される | 原則不要 |
| 特定口座(源泉徴収なし) | なし | 原則必要 |
| 一般口座 | みなし計算で徴収 | 必要(課税関係が完結しない) |
特定口座(源泉徴収あり)で保有している場合は、証券会社が自動で税金を計算・納付するため、確定申告は不要です。 最もシンプルな管理方法と言えます。 qa.smbcnikko.co(https://qa.smbcnikko.co.jp/faq/show/114?category_id=98&site_domain=default)
問題は一般口座です。一般口座で保有する割引債が償還される場合、「みなし割引率」に基づいて計算されたみなし償還差益に対して20.315%が源泉徴収されますが、これだけでは課税関係は完結しません。 実際の取得価額と異なる計算になるため、確定申告で精算する必要があります。 daiwa.dga(https://daiwa.dga.jp/faq_detail.html?id=1292)
みなし割引率は厳しいですね。
具体的には、発行から償還まで1年超の割引債の場合、みなし償還差益は「償還金額×25%」で計算されます。 100万円の割引債なら25万円がみなし償還差益とされ、これに20.315%をかけた約50,787円が源泉徴収されます。 実際の利益が2万円しかないのに5万円以上が先に徴収されるケースもあるため、確定申告で取り戻すことが必須です。 sc.mufg(https://www.sc.mufg.jp/learn/knowledge/tax_bond.html)
確定申告で実際の差益に基づいて精算すれば、過剰徴収された税金は還付されます。放置すると完全な損失になります。
参考:国税庁「公社債の償還金と税金」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1510.htm
参考:大和証券「一般口座の割引債の償還差益と確定申告」
https://daiwa.dga.jp/faq_detail.html?id=1292
多くの投資家が知らない事実があります。償還差益は株式の譲渡損と損益通算できます。 nomuraholdings(https://www.nomuraholdings.com/jp/investor/shareholders/tax/main/010/teaserItems3/0/linkList/0/link/tax_4_6.pdf)
特定公社債の償還差益は「上場株式等の譲渡所得等」に分類されます。これにより、同じグループの損失と相殺することが可能です。 j-flec.go(https://www.j-flec.go.jp/links/jikan/qa/054.html)
損益通算できる組み合わせは以下の通りです。
数字で見てみましょう。A社株で20万円の損失が出ていて、保有債券の償還差益が10万円だったとします。損益通算を行うと、実質損失は10万円となり、償還差益10万円に対する約2万円の税金はゼロになります。これは使えそうです。
損益通算を活用するには、原則として確定申告が必要です。 特定口座(源泉徴収あり)を複数持っている場合でも、口座をまたいで損益通算するには確定申告しなければなりません。これが条件です。 nta.go(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm)
年末に株式損失が出ている場合、保有債券の償還差益と通算することを意識して運用計画を立てると、実質的な手取りを増やせます。確定申告の手間はかかりますが、数万円単位での節税につながるケースもあります。
参考:野村ホールディングス「2025年度版 税金の本 第4章 第6節 公社債」
https://www.nomuraholdings.com/jp/investor/shareholders/tax/main/010/teaserItems3/0/linkList/0/link/tax_4_6.pdf
NISA口座で保有した債券の償還差益は非課税です。 税率20.315%がゼロになるのは大きなメリットです。 fsa.go(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/)
通常の課税口座で100万円の償還差益が出ると、約20万円が税金で持っていかれます。一方、NISA口座ならその20万円がそのまま手元に残ります。 長期保有を前提とした債券投資では、この差は非常に大きくなります。 moneycanvas.bk.mufg(https://moneycanvas.bk.mufg.jp/know/column/RUagfRMGM8kfzW8/)
ただし、重要な落とし穴があります。NISA口座で生じた損失は、他の口座の利益と損益通算できません。 償還差損が生じた場合でも、特定口座や一般口座の利益と相殺することは不可です。 fsa.go(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf)
意外ですね。
さらに、NISA口座での損失を翌年以降に繰り越すこともできません。 つまり、NISA口座で値下がりしたまま償還を迎えると、損失は完全に切り捨てられます。非課税の恩恵と引き換えに、損失の税務活用は完全に封じられているわけです。 fsa.go(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf)
このため、償還リスクが比較的低い国債や高格付け社債をNISA口座に優先配置し、値動きリスクが高いものは特定口座(源泉徴収あり)で保有するという分け方が、節税面では合理的と言われています。口座の使い分けが肝心です。
参考:金融庁「NISAを利用する皆さまへ」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf
参考:日本証券業協会「債券投資にかかる税金」
https://www.j-flec.go.jp/links/jikan/qa/054.html