試用期間中の解雇・会社都合が退職後の生活を左右する

試用期間中の解雇・会社都合が退職後の生活を左右する

試用期間中の解雇・会社都合になる条件と知っておくべき権利

試用期間中でも、会社都合で解雇されたのに失業保険が1円も出ないことがあります。


📋 この記事の3つのポイント
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試用期間中の解雇は原則「会社都合」

試用期間中であっても労働契約は成立しており、会社の一方的な解雇は原則として「会社都合退職」に分類されます。就業規則に「解雇できる」と書いてあっても自動的に有効にはなりません。

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失業保険は「6ヶ月以上加入」が絶対条件

会社都合の解雇でも、雇用保険の被保険者期間が過去1年以内に6ヶ月未満の場合は失業保険を受給できません。前職の加入期間と通算できるケースもあるため、確認が必須です。

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不当解雇なら慰謝料50〜100万円+バックペイが請求できる

正当な理由なく解雇された場合は不当解雇として争う権利があります。解雇が無効と認められれば解雇後の給与相当額(バックペイ)と慰謝料を請求できます。まずは解雇理由証明書の請求から始めましょう。


試用期間中の解雇が「会社都合」になる仕組みとは

試用期間とは、本採用前に会社が従業員の業務適性を見極めるために設ける期間のことです。期間は就業規則によって異なりますが、一般的に1ヶ月〜6ヶ月で設定されているケースが多く見られます。


多くの人が「試用期間中だから自由に辞めさせられる」と思いがちです。これは大きな誤解です。


法的には、試用期間中も会社と従業員の間には「解約権留保付き労働契約」が成立しています。つまり、試用期間中であっても、本採用後の従業員と同じように労働契約が存在しているということです。そのため、会社が一方的に労働契約を解約する「解雇」は、試用期間中でも正当な理由がなければ認められません。


試用期間中の解雇・本採用拒否による退職は、原則として「会社都合退職」に分類されます。ただし、重大な経歴詐称や労働者側に落ち度がある場合には、自己都合退職扱いになることもあります。


なお、「試用期間中の解雇」と「本採用拒否(試用期間満了時の解雇)」は法的に別の扱いをされています。試用期間中の途中での解雇のほうが認められにくく、本採用拒否のほうが比較的広い範囲で認められるとされています(最高裁昭和48年12月12日・三菱樹脂事件)。


種類 タイミング 解雇の難易度
試用期間中の解雇 試用期間の途中 厳格(正当理由が高度に求められる)
本採用拒否 試用期間満了時 比較的緩やか(ただし合理的理由は必要)


試用期間中の解雇に正当な理由として認められるケース

試用期間中の解雇が正当と認められるかどうかは、「客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当かどうか」という基準(労働契約法第16条)によって判断されます。


正当と認められやすいケースは以下のとおりです。


  • 著しい能力不足:適切な指導・教育を行ったうえで、それでも改善が見込めないと客観的に判断できる場合。特に、即戦力として採用された経験者には厳しく判断されることがあります。
  • 重大な経歴詐称:最終学歴・職歴・犯罪歴・資格の有無など、採用の判断に直結する重要事項を虚偽記載していた場合。些細な誤りでは解雇が認められないこともあります。
  • 勤務態度の著しい悪さ:指示を繰り返し無視したり、他の従業員との重大なトラブルを起こしたりするケースが該当します。注意・指導を重ねても改善しないことが必要です。
  • 無断欠勤の継続:複数回かつ改善が見込めない無断欠勤が続く場合。1〜2回程度では理由として弱く、勤怠記録の蓄積が欠かせません。
  • 業務上以外の病気やケガによる就労不能:私傷病で就労継続が困難な場合は解雇できることがありますが、休職規定がある会社では先に休職対応をすべきとされています。


一方、正当とは認められないケースも確認しておく必要があります。たとえば、成果が出なかったことだけを理由に解雇したケース、新卒採用者や未経験者に対して十分な指導なしに能力不足と判断して解雇したケースは不当解雇になる可能性が高いとされています。厳しいところですね。


裁判例でも、獣医師として採用された従業員に一部ミスがあったとしても「改善の余地があり、解雇は無効」と判断されたケース(東京地裁平成25年7月23日・ファニメディック事件)があるように、能力不足の解雇は非常に慎重な判断が求められます。


試用期間中の解雇と失業保険の受給条件・注意点

会社都合で解雇された場合、失業保険(雇用保険の基本手当)は「給付制限なし」で受給できます。自己都合退職だと原則として1ヶ月の給付制限がありますが、会社都合では7日間の待機期間だけで済む点が大きな違いです。


ただし、ここで見落としやすい条件があります。雇用保険の被保険者期間が「直近1年以内に6ヶ月以上」必要という点です。


試用期間が短かった場合、その会社だけでは6ヶ月に届かないことも珍しくありません。ただ、前職での雇用保険加入期間と通算できる場合があります。具体的には、前職を辞めてから1年以内で、なおかつ前職の雇用保険を受給していない場合は、前職の被保険者期間も合算して条件を満たせることがあります。ハローワークへの確認が必須です。


また、給付日数も自己都合と会社都合では大きく異なります。会社都合の特定受給資格者に該当すると、年齢や被保険者期間によって最大330日まで受給できます。自己都合では最大150日ですから、差は最大で180日分にもなります。日額7,000円換算でおよそ126万円の差が生じる計算になります。これは使えそうです。


さらに、失業保険と並行して確認してほしいのが「解雇予告手当」です。試用期間中であっても、雇用開始から14日を超えて働いていた場合には、30日前の解雇予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが会社に義務付けられています(労働基準法第20条・第21条)。月給25万円の場合、解雇予告手当は25万円前後になります。


  • 雇用開始14日以内の解雇:解雇予告・解雇予告手当不要(ただし解雇の合理性は必要)
  • 雇用開始14日超の解雇:30日前予告、または解雇予告手当(平均賃金×30日分以上)が必要


解雇予告手当をもらっていない場合は、会社に請求することができます。払われない場合はハローワークや労働基準監督署への相談が選択肢になります。


参考:試用期間中に受け取れるお金や手続きについて、厚生労働省の情報も確認しておきましょう。


厚生労働省 Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)


不当解雇だと思ったら請求できる4つのお金

試用期間中に解雇されたとき、会社の説明に納得できない場合は不当解雇として争う権利があります。不当解雇が認められた場合に請求できるお金は、大きく4種類あります。


① 解雇予告手当:雇用開始14日超の場合に支払われる手当。これは解雇の有効・無効を問わず請求できます。


② 失業保険:退職後の生活を支える基本手当。会社都合なら給付制限なしで7日後から受給が始まります。


③ バックペイ(解雇後の給与相当額):解雇が無効と認められた場合、解雇日から復職または和解成立までの間に本来もらえたはずの賃金を請求できます。裁判が長引くほど金額が増えます。月給30万円で1年かかれば360万円規模になります。


④ 慰謝料:不当解雇の違法性が認められた場合に請求できます。一般的な相場は50万〜100万円程度ですが、悪質性の高い事案に限られるケースが多いです。


これらを請求するための第一歩は「解雇理由証明書」の請求です。解雇予告された従業員は、労働基準法第22条第2項に基づき会社に対して解雇理由証明書の発行を求めることができます。会社は「遅滞なく」交付しなければならず、拒否した場合は労働基準法違反になります。


解雇理由証明書を手元に置いたうえで、ハローワーク・労働基準監督署・労働局のあっせん制度・弁護士への相談を経て、対応方針を決めるのが現実的な流れです。


参考:不当解雇への対処法や解雇理由証明書について、弁護士監修の詳細解説があります。


試用期間中の解雇や本採用拒否をされたら?不当解雇になる解雇理由や対処法|アディーレ法律事務所


試用期間の解雇後・転職活動での正しい履歴書の書き方と面接対策

試用期間中に解雇されると、「履歴書にどう書けばいいのか」という不安を抱える人が多くいます。ここが転職活動で最も気になるポイントでもあります。


まず、短期間の在職歴であっても履歴書に記載するのが原則です。意図的に書かなかった場合、後から発覚すると「経歴詐称」と判断され、内定取り消しや入社後の解雇につながる可能性があります。


退職理由の欄には「一身上の都合により退職」という定型文を使う人も多いですが、会社都合の解雇の場合は「会社都合により退職」と書いても問題ありません。むしろ正直に記載したほうが、面接官との信頼関係を損なわずに済むことがあります。


面接では、解雇された事実を隠すよりも「自分が改善すべきと感じた点」と「次の職場でどう活かすか」を簡潔に伝える方が好印象を与えられます。具体的には「〇〇の部分で業務に沿った経験が不足していたと認識しており、現在は△△で補っています」のような言い方が有効です。


また、転職活動中の生活費については、会社都合で解雇されていれば失業保険が7日の待機後から支給されます。給付期間中に就職活動を続けながら生活を守る計画を立てることが重要です。


転職エージェントを活用する場合、「会社都合退職」であることを正直に伝えると、担当者が適切な求人を紹介しやすくなります。経歴に空白が生じやすい期間だからこそ、プロのサポートを受けながら活動するのが有効な選択肢の一つです。


参考:解雇後の転職活動や面接での伝え方について、実践的な情報が掲載されています。


試用期間中に解雇されたら会社都合になる?解雇が不当なケースと正当なケースを解説|Indeed キャリアガイド(社会保険労務士監修)