不当解雇の慰謝料とうつ病で請求できる金額の相場

不当解雇の慰謝料とうつ病で請求できる金額の相場

不当解雇と慰謝料とうつ病の関係・請求の全知識

不当解雇で慰謝料が自動的にもらえると思っていませんか?実は、不当解雇と認められても慰謝料が支払われないケースの方が多数派です。


この記事でわかること
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不当解雇の慰謝料相場

裁判例では50万円〜100万円程度。ただし不当解雇と認定されても慰謝料まで認められないケースが多く、バックペイ(未払賃金)が主な請求手段になります。

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うつ病と損害賠償の関係

業務が原因のうつ病は労災+会社への損害賠償の両方が請求できます。慰謝料は軽症で10万〜50万円、重症では300万円超になるケースも存在します。

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請求を成功させる証拠と手順

解雇通知書・診断書・業務記録が三大証拠。労災申請の時効は2年なので、症状が出たらすぐに動くことが重要です。


不当解雇の慰謝料が「自動的には認められない」理由


不当解雇と認定されれば慰謝料が必ずもらえる、と考えている方は少なくありません。しかし、法律の実務はそれとは大きく異なります。


裁判所の考え方では、解雇によって生じた精神的苦痛は、バックペイ(解雇期間中の未払賃金)の支払いによって補てんされると扱われるのが基本原則です。つまり、賃金さえ支払われれば精神的ダメージは回復したとみなされてしまうのです。


慰謝料が別途認められるのは、「バックペイでは到底補えない特段の精神的苦痛」があると判断された場合に限定されます。不当解雇の慰謝料が認められた裁判例を見ると、次のような特殊な悪質事情が加わっているケースがほとんどです。


- 🔴 解雇事由を社内掲示板や取引先に公表して名誉を傷つけた
- 🔴 長期間にわたるパワハラ・セクハラを受けた末の解雇だった
- 🔴 労働基準監督署への相談を理由に報復的に解雇された
- 🔴 妊娠・産休中など法律で明確に禁止された状況での解雇だった


つまり慰謝料請求は「不当解雇+αの違法行為」があって初めて認められると理解しておく必要があります。この点が一般常識と大きくズレているため、「不当解雇されたのに慰謝料がもらえなかった」という結果になってしまう方が後を絶ちません。


バックペイについては別の話で、中小企業でも1,000万円を超える支払いを命じられた事例が珍しくないほど、実は高額になりやすい請求です。金銭的に回収したいのであれば、慰謝料よりもバックペイをメインに据えた戦略が現実的です。


不当解雇の認定基準や対応については、労働契約法第16条が根拠となります。


e-Gov法令検索:労働契約法(第16条:解雇権濫用の禁止)


うつ病で不当解雇された場合の慰謝料・損害賠償の相場

業務が原因でうつ病を発症し、さらに不当解雇まで受けた場合は、慰謝料の金額が大きく変わってきます。重要なのは「うつ病の重症度」と「業務との因果関係が認められるか」の2点です。


うつ病に関する慰謝料(入通院慰謝料)の相場目安をまとめると、以下のようになります。


| うつ病の程度 | 慰謝料の目安 |
|---|---|
| 軽症(短期間で回復) | 10万〜50万円程度 |
| 中等症(1年程度の治療) | 100万〜150万円程度 |
| 重症(長期・後遺症あり) | 200万〜300万円超 |


これはあくまで慰謝料単体の目安です。損害賠償全体では、治療費・休業損害・後遺症に対する逸失利益などが積み重なるため、合計額はこれを大幅に上回ることがあります。


実際の裁判例では、パワハラによるうつ病を原因とした解雇で、東京地裁平成14年の国際信販事件において慰謝料150万円が認められたケースがあります。このケースでは、従業員一人を資料置き場の席に隔離するなどのいやがらせの末に解雇されており、「うつ病の診断書」が高額な慰謝料認定に直結しました。


「うつ病の診断書があれば慰謝料が跳ね上がる」というのは半分正解で半分誤りです。重要なのは、うつ病と業務の間に「因果関係」があると証明できるかどうかです。診断書はあくまで証拠の一つに過ぎず、パワハラや長時間労働との結びつきを示す業務記録や証言がセットで必要になります。


うつ病の損害賠償相場について、最新の裁判例を踏まえた詳細な解説はこちらが参考になります。


うつ病の損害賠償ホントの相場は?最新の裁判例から適正な金額を解説(大阪社労士事務所 法律解説ページ)


不当解雇時にうつ病を理由とした解雇が「無効」になるケース

うつ病を理由にした解雇が無効になる場面を知っておくことは、自身の権利を守るうえで不可欠です。これが条件次第で請求できる金額を大きく左右します。


まず大前提として、労働基準法第19条は「業務上の疾病で療養のために休業している期間およびその後30日間」は解雇を禁止しています。つまり、仕事が原因でうつ病になった場合は、療養中に解雇することは法律上できません。仮に解雇通知が来ても、その解雇は無効です。


ただし、例外として「療養開始から3年を経過しても治癒しない場合に平均賃金1,200日分を支払うことで解雇できる」とされています。1,200日分というのは、月給30万円の人であれば約1,200万円に相当します。会社にとっては決して安くない出費であり、この制度を知っていれば交渉の材料になります。


また、業務が原因ではないうつ病(私傷病)の場合でも、休職期間が終了した時点で「主治医が復職可能と診断している」にもかかわらず解雇するのは、不当解雇になる可能性が非常に高くなります。逆に、「主治医も復職は困難と判断している」場合で、かつ就業規則の休職期間が満了した後であれば、解雇が有効と認められる余地があります。


整理すると、解雇が無効になりやすいのは次のパターンです。


- ✅ 業務が原因のうつ病で療養中(労基法19条の保護期間中)
- ✅ 主治医が復職可能と判断しているのに解雇された
- ✅ 長時間労働やパワハラが会社側の原因として認められる
- ✅ 解雇回避の努力(配置転換・業務軽減など)を会社が全く行っていない


解雇が無効となれば、雇用契約は継続していることになり、その間の賃金(バックペイ)を遡って全額請求できます。職場復帰を希望するかどうかにかかわらず、まず「解雇無効」の主張をすることが金銭的に最も有利なアプローチになります。


うつ病になった社員を解雇したい時|解雇できる・できないケースを弁護士が解説(ベンナビ労働問題)


不当解雇・うつ病で慰謝料を請求するために必要な証拠と手順

不当解雇やうつ病による損害賠償を成功させるためには、証拠の準備が勝負の7割を決めると言っても過言ではありません。感情的に動く前に、まず証拠を固めることが先決です。


用意すべき主な証拠は次のとおりです。


| 証拠の種類 | 内容・入手方法 |
|---|---|
| 解雇通知書・解雇理由証明書 | 口頭で告げられた場合でも、会社に「解雇理由証明書」の交付を請求できる(労基法22条) |
| 医師の診断書 | うつ病の発症時期・症状・業務との関連性を記載してもらう |
| 労働時間の記録 | タイムカード・PCのログイン履歴・メール送受信履歴など |
| パワハラの証拠 | 録音データ・メール・LINE・証人の証言 |
| 就業規則・雇用契約書 | 解雇理由が就業規則の条文と整合しているか確認するため |


注意すべきは時効の問題です。労災給付の請求権は原則2年(年金給付は5年)で時効を迎えます。うつ病の症状が出たと感じた時点からカウントが始まるため、放置している時間はありません。


また、不当解雇の場合の損害賠償請求権も、原則として「損害を知った時から3年」(民法724条)で時効になります。解雇された後、精神的につらい時期ではありますが、早めに証拠を確保しておくことが後の交渉を大きく左右します。


請求の流れとしては、①証拠収集 → ②弁護士への相談 → ③会社への示談交渉 → ④労働審判(または訴訟)という順番で進めるのが一般的です。労働審判は通常3回以内の期日で解決し、裁判に比べて時間とコストを抑えられます。JILPT(独立行政法人労働政策研究研修機構)の調査では、令和2〜3年の解決金の中央値は労働審判が150万円、裁判和解が300万円でした。


証拠収集と同時並行で、会社に「解雇理由証明書」を請求しておくことを強くお勧めします。会社が一度これを提出すると、後から別の解雇理由を追加主張することが法律上困難になるからです。これは労働者側にとって非常に有利な武器になります。


仕事でうつ病になったら会社に損害賠償を請求できる?要件や請求の流れなどを解説(ベンナビ労働問題)


不当解雇×うつ病の慰謝料を増額させる「見落とされがちな請求項目」

不当解雇でうつ病になった場合、多くの方が「慰謝料だけ」に目を向けがちです。しかし実際には、請求できる損害項目はそれだけではありません。これを知らずに示談してしまうと、数十万〜数百万円単位で損をすることがあります。


会社に対して請求できる主な損害項目は以下の通りです。


- 💊 治療費:うつ病治療にかかった医療費(通院費・薬代を含む)
- 📆 休業損害:うつ病で働けなかった期間の収入の損失
- 💴 バックペイ(未払賃金):不当解雇が無効の場合、解雇後の全賃金
- 💔 慰謝料:精神的苦痛に対する賠償(認定されれば50〜150万円程度)
- 🎓 後遺症による逸失利益:うつ病が後遺症として残った場合の将来収入の損失
- 📄 弁護士費用の一部:裁判で勝訴した場合、認容額の約10%が加算されることが多い


特に見落とされがちなのが「休業損害」と「逸失利益」です。うつ病が重症化し、長期にわたって就労できない状態になった場合、逸失利益は何百万円にも上ることがあります。後遺症が残った場合は12級の後遺障害として認定を受けることで290万円程度の障害補償が認められるケースもあります。


労災保険からの給付と会社への損害賠償は「重複して請求できない項目」と「できる項目」が混在している点も重要です。たとえば治療費は労災から支給されれば会社への請求から控除されますが、慰謝料は労災保険の支給対象外のため、会社に対して別途請求できます。この棲み分けを正確に理解していないと、もらえるはずのお金を取りこぼすことになります。


損害項目の整理は専門的な領域のため、弁護士に相談する際は「どの項目で請求できるか一覧を確認したい」と明確に伝えることで、取りこぼしを防ぐことができます。初回相談が無料の弁護士事務所(労働問題専門)を使えば、費用ゼロで全項目のチェックが可能です。


不当解雇の慰謝料とは?認められる場合や金額の相場を解説(咲くやこの花法律事務所)


金融業界で不当解雇・うつ病リスクが高い理由と予防的対策

金融機関や証券会社・保険会社などで働く人は、一般職種と比べて不当解雇やうつ病のリスクが特殊な形で高まりやすい環境にいます。この点は一般的な解雇・うつ病の記事ではほとんど触れられない独自の視点です。


金融業界特有のリスク要因として挙げられるのは、まず「数値目標(ノルマ)による極度のプレッシャー」です。営業目標が未達の場合、上司から日常的に叱責を受けたり、チーム内で晒し者にされるケースが報告されており、これが長期化するとうつ病の発症につながりやすくなります。厚生労働省の精神障害の労災認定基準では「上司等から、客観的に業務指導の範囲を逸脱した指導・叱責等を受けた」ことが強い心理的負荷として明示されています。


次に「業績不振を理由とした人員削減(整理解雇)」の問題があります。リーマンショックや市場変動期には、外資系金融機関を中心に突然の解雇通告が行われることがあります。整理解雇が有効と認められるには「解雇回避努力」「公正な人選」「十分な協議」の4要素が必要であり、これらを欠いた解雇は不当解雇となります。外資系ではパッケージ(退職金)を提示して退職勧奨してくるケースも多く、一度サインすると法的に争うことが極めて困難になります。サインする前に必ず弁護士に確認することが不可欠です。


さらに「内部通報後の解雇」という特殊リスクも存在します。金融機関では、コンプライアンス違反や不正行為を上司や金融庁に通報した結果、その後に業績不振などの名目で解雇されるケースがあります。公益通報者保護法により、通報を理由とした解雇は無効とされており、会社の行為が悪質と判断されれば高額な慰謝料が認められる可能性があります。


これらのリスクに備えるための予防的な行動として、「業務日誌をつける習慣」を日常的に取り入れておくことが有効です。上司からの叱責・長時間労働の実態・業務上の指示内容を日付とともにメモしておくだけで、後に労災申請や損害賠償請求の際の証拠として機能します。スマートフォンのメモアプリで十分ですので、今日から始めることをお勧めします。


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