

工事が完成してから売上を計上すると、節税効果が最大になると思っていませんか?実は工事進行基準を正しく適用すれば、赤字工事の損失を早期に損金算入でき、他の黒字事業と相殺することで税負担を大幅に減らせる可能性があります。
工事進行基準とは、建設工事やソフトウェア開発のように完成まで長期間かかる請負契約において、工事の進捗度合いに応じて毎期の売上と原価を分割計上する会計処理の方法です。土木・建築・建設業・受託ソフトウェア開発が主な適用対象となります。
収益計上の方法には大きく2つあります。工事進行基準と、完成・引渡し後に一括計上する「工事完成基準」です。この2つの決定的な違いは、「いつ売上を立てるか」のタイミングにあります。
| 項目 | 工事進行基準 | 工事完成基準 |
|------|-------------|-------------|
| 計上タイミング | 決算期ごとに進捗度に応じて分割計上 | 完成・引き渡し時に一括計上 |
| 期間中の損益 | 各期の進捗に応じた損益が反映される | 完成期まで損益はゼロ |
| 赤字の早期把握 | ✅ 可能 | ❌ 困難 |
| 事務作業の負担 | やや大きい | 比較的シンプル |
工事完成基準の場合、3年かかる大型工事では1年目・2年目に売上ゼロが続き、3年目だけに巨額の売上と損益が集中します。これでは投資家や金融機関が企業の実力を正確に評価できません。工事進行基準はこの問題を解決するために重要視されてきました。
つまり、毎期の経営実態を正直に見せる仕組みです。
欧米では以前から一般的な手法でしたが、日本では2009年4月1日以降に原則適用として採用された比較的新しい考え方です。
工事進行基準による計算は、どんな工事にも無条件で使えるわけではありません。会計上の適用には「成果の確実性」が必要で、以下の3要素を信頼性をもって合理的に見積もれることが条件です。
- 工事収益総額:契約で定められた請負金額など、受け取る対価の総額が確実に見積もれること
- 工事原価総額:完成に必要な材料費・労務費・外注費を含む原価の総額が合理的に見積もれること
- 決算日における工事進捗度:決算日時点での工事の進み具合を客観的かつ合理的に測定できること
これらのどれか1つでも信頼性のある見積もりができない場合、工事進行基準を適用できません。その場合は工事完成基準を使うことになります。
さらに法人税法上では、次の3要件をすべて満たす「長期大規模工事」に工事進行基準が強制適用されます。
- 📅 工事着手日から引渡し期日まで1年以上であること
- 💰 工事の請負対価が10億円以上であること
- 📋 請負対価の2分の1以上が、引渡し期日から1年を超えた後に支払われる契約でないこと
この3条件を全部満たす工事は選択の余地なく工事進行基準を使わなければなりません。3条件に該当しない工事は、企業が工事ごとに任意で選択できます。
3条件が条件です。
参考:法人税法上の長期大規模工事の要件(e-Gov法令)については、以下のページで詳しく確認できます。
e-Gov法令検索「法人税法 第六十四条」|長期大規模工事における工事進行基準の強制適用要件の確認に活用できます
工事進行基準で最も広く使われる計算方法が「原価比例法」です。名前は難しそうですが、考え方は非常にシンプルです。
「今まで使った原価の割合=工事の進み具合」として扱うわけです。
工事進捗度の計算式:
$$\text{工事進捗度} = \frac{\text{決算日までに発生した工事原価(累計)}}{\text{工事原価総額(見積)}}$$
当期の売上計上額の計算式:
$$\text{当期売上高} = \text{工事収益総額} \times \text{工事進捗度(累計)} - \text{前期以前に計上済みの売上高}$$
なぜ原価の割合で進捗を測るかというと、材料費・労務費・外注費などの実際発生原価は客観的に測定できる数値だからです。「体感的に何パーセント進んだ」という主観的な見積もりではなく、数値として検証可能な原価データを根拠にできる点が実務で評価されています。
これは使えそうです。
なお、原価比例法の他に「アーンドバリュー法(EVM)」という方法もあります。EVMはコストと出来高の両面からプロジェクトの進捗を測定するより精緻な手法で、計画値(PV)・出来高(EV)・実績値(AC)の3指標を用います。精度は高いですが、WBS(作業分解構造)の整備など事前準備の工数が大きいため、実務では原価比例法の方が一般的に採用されています。
実際の数値を使って、3年間の工事における計算と仕訳の流れを確認しましょう。
【前提条件】
| 項目 | 金額 |
|------|------|
| 工事収益総額 | 1億円 |
| 工事原価総額(見積) | 6,000万円 |
| 工事期間 | 3年 |
---
🔷 1年目(発生原価:1,500万円)
$$\text{工事進捗度} = \frac{1,500\text{万円}}{6,000\text{万円}} = 25\%$$
$$\text{当期売上高} = 1\text{億円} \times 25\% - 0\text{円} = 2,500\text{万円}$$
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|------|------|------|------|
| 完成工事原価 | 15,000,000円 | 現金預金等 | 15,000,000円 |
| 完成工事未収入金 | 25,000,000円 | 完成工事高 | 25,000,000円 |
---
🔷 2年目(当期発生原価:2,700万円/累計原価:4,200万円)
$$\text{累計工事進捗度} = \frac{4,200\text{万円}}{6,000\text{万円}} = 70\%$$
$$\text{当期売上高} = 1\text{億円} \times 70\% - 2,500\text{万円} = 4,500\text{万円}$$
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|------|------|------|------|
| 完成工事原価 | 27,000,000円 | 現金預金等 | 27,000,000円 |
| 完成工事未収入金 | 45,000,000円 | 完成工事高 | 45,000,000円 |
---
🔷 3年目(当期発生原価:1,800万円/累計原価:6,000万円)
最終年度は残り全額を計上します。
$$\text{当期売上高} = 1\text{億円} - (2,500\text{万円} + 4,500\text{万円}) = 3,000\text{万円}$$
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|------|------|------|------|
| 完成工事原価 | 18,000,000円 | 現金預金等 | 18,000,000円 |
| 完成工事未収入金 | 30,000,000円 | 完成工事高 | 30,000,000円 |
3年間の売上合計は2,500万+4,500万+3,000万=1億円となり、収益総額と一致します。累計で帳尻が合うのが工事進行基準の特徴です。
なお、工事未収入金とは建設業における売掛金のようなものです。実際に請求・入金がまだ済んでいなくても、進捗に応じて売上を認識した際に計上します。工事収益は認識済みだが未回収というニュアンスで「完成工事未収入金」と表現するのが一般的です。
工事進行基準では、一般的な会計とは異なる固有の勘定科目が登場します。混乱しやすいポイントなので、ここで整理しておきましょう。
| 勘定科目 | 内容 | 仕訳のタイミング |
|----------|------|-----------------|
| 未成工事支出金 | 工事中に発生した原価を一時的に積み上げる科目 | 原価が発生したとき |
| 完成工事原価 | 収益計上と同時に認識する当期の原価 | 収益を計上するとき |
| 完成工事高 | 進捗に応じて計上する売上 | 進捗に応じて収益認識するとき |
| 完成工事未収入金 | 収益は認識済みだが請求・入金がまだの金額 | 収益を計上するとき |
| 前受金・仮受金 | 入金はあるが収益として認識できない金額 | 着手前・中間金入金時 |
| 工事損失引当金 | 赤字が見込まれる工事の損失に備える引当金 | 損失見込み確定時 |
中でも注意が必要なのが「前受金・仮受金」の処理です。着手前に入金があっても、それはまだ売上ではありません。進捗に応じた収益認識がされるまで繰り延べ処理が必要です。前受金を誤って売上に計上すると財務諸表の信頼性が下がります。
これは必須の知識です。
工事進行基準を理解する上で、多くの人が見落としがちな重要な概念が「工事損失引当金」です。金融・会計の観点から非常に実用的な知識です。
工事損失引当金とは、工事原価総額が工事収益総額を上回ることが高い確率で見込まれ、かつその金額を合理的に見積もれる場合に計上する引当金です。
工事損失引当金の計算式:
$$\text{工事損失引当金} = \text{工事損失見込総額} - \text{当期までに認識済みの損失額}$$
具体的に考えてみましょう。仮に工事収益総額が5,000万円なのに工事原価総額が6,200万円になる見込みが立った場合、損失見込み額は1,200万円です。すでに進行基準で計上済みの損失が300万円であれば、残り900万円が引当金として計上されます。
仕訳例:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|------|------|------|------|
| 完成工事原価 | 9,000,000円 | 工事損失引当金 | 9,000,000円 |
この引当金は貸借対照表の流動負債に計上されます。また、同一工事の棚卸資産(未成工事支出金)がある場合は、相殺表示することも認められています。
重要なのは節税効果です。工事損失引当金は会計上の損金として処理でき、その損失額を当期の他の黒字事業の利益と相殺することができます。たとえば、あるプロジェクトで1,000万円の損失見込みが確定すれば、その分だけ課税所得を減らせます。工事完成基準であれば完成年度まで損失を認識できないため、この節税タイミングを逃してしまうのです。
早期発見が利益です。
参考:工事損失引当金の会計処理に関する詳細は、日本会計基準委員会(ASBJ)の公表資料で確認できます。
EY Japan「工事契約に関する会計基準 第2回:工事損失引当金」|引当金の計上要件・計算方法・仕訳処理の実務的解説が読めます
「工事進行基準は2021年に廃止された」という話を聞いて、もう関係ない話だと思っていませんか?これは大きな誤解です。
2021年4月に「工事契約に関する会計基準」は廃止され、代わりに「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」が適用されました。しかし、工事進行基準の計算ロジック自体はそのまま生き続けています。
新収益認識基準では、収益認識のタイミングを「一定の期間にわたり充足される履行義務」と「一時点で充足される履行義務」の2種類に分類します。従来の工事進行基準は前者に、工事完成基準は後者にほぼそのまま対応します。
新収益認識基準で進行基準的な処理を適用するための3要件:
- ① 契約の履行と同時に顧客が便益を受ける場合
- ② 契約の履行による資産の創出・増加が発生し、顧客がその資産を支配する場合
- ③ 履行によって別の用途に転用できない資産が生じ、かつ履行済み部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合
これら3要件のいずれかを満たす工事は、「一定期間にわたり充足される履行義務」として進行基準的な収益認識が適用されます。
条件が合えば問題ありません。
ただし、旧基準に比べて進捗度の認識はより厳密になりました。成果の確実性の判定や、変更が生じた際の再見積もり対応など、実務上の管理精度がより求められています。また、旧基準では「工事完成基準」を選べた場面でも、新基準では「原価回収基準」を適用しなければならないケースが出てきた点も重要な変更点です。
新収益認識基準は、大会社・上場会社・上場準備会社(子会社・関連会社を含む)に強制適用されます。中小企業は任意適用ですが、実務的には理解しておくことが必要です。
参考:新収益認識基準の全体像と建設業への影響については、以下のページが詳しいです。
freee「工事進行基準とは?収益認識基準との関係や廃止後の適用基準」|廃止の経緯から新収益認識基準への移行内容、仕訳例まで一通り解説されています
実務では、工事進行基準の計算でいくつかの典型的なミスが繰り返されます。金融や会計を学ぶ立場でも理解しておくと財務分析の精度が上がります。
❶ 収益と原価が対応していないケース
収益だけを計上して原価の記録が遅れると、実態より利益が大きく見えてしまいます。進捗率に基づく収益認識の正確性は、原価データのタイムリーな記録に依存します。決算期末だけでなく、月次や四半期ごとに収益と原価の対応を確認する運用が理想です。
❷ 前受金・仮受金の処理漏れ
着手前に受け取った手付金や中間金は、まず「前受金・仮受金」として処理します。進捗に応じた収益認識がされる前に売上計上してしまうと、収益が前倒しで計上され財務諸表を歪めます。請求書の発行タイミングと入金状況を一覧で管理し、収益認識のタイミングと照合する習慣が重要です。
❸ 工事原価総額の見積もりが甘いケース
原価比例法では工事原価総額の見積もりが進捗度計算の分母になります。見積もりが甘いと進捗度が過大に算出され、実態より多い収益が計上されます。追加要件やコスト増加が発生した場合は、原価総額を即座に修正して進捗度を再計算することが必要です。
厳しいところですね。
❹ 最終年度の計上方法の誤り
最終年度(完成年度)では、工事収益総額から過去の累積計上額を差し引いた残額を計上します。この際、進捗度を再計算してしまうミスがよく起きます。最終年度は進捗度ではなく「残額全額計上」が正しい処理です。
原価管理システムや会計システムを活用することで、これらのミスのほとんどは防ぐことができます。工事進行基準に対応したクラウドERPを導入することで、進捗率の自動算出・仕訳処理の一元化・前受金管理の自動連携が実現し、経理担当者の負担を大幅に削減できます。
金融に関心を持つ読者にとって、工事進行基準の知識は企業分析に直接役立ちます。建設・プラント・造船・ITシステム開発などの受注産業の財務諸表を読む際、進行基準の理解があるかどうかで分析の精度が大きく変わります。
📈 工事進行基準を使っている企業の財務諸表を読む際のポイント:
- 完成工事未収入金の増減:進行基準で認識した売上がまだ回収されていない金額です。この金額が急増している場合は、受注残が積み上がって順調に見えても、実際の現金回収が遅れているサインです。
- 未成工事支出金の水準:既に発生した原価のうち、まだ収益に計上されていない部分です。金額が大きいほど進行中の工事が多いことを示しますが、原価超過のリスクがないかチェックが必要です。
- 工事損失引当金の計上有無:赤字見込みの工事が存在するかどうかのシグナルです。引当金が突然計上された場合、受注採算の悪化が始まっているサインとして受け取れます。
さらに、工事収益の認識タイミングを操作しようとする粉飾リスクがある点も重要です。工事原価総額の見積もりは経営者の裁量が入る余地があります。意図的に原価総額を低く見積もると進捗度が高く算出され、収益が前倒しで計上されてしまいます。外部からは検証が難しい領域ですが、注記情報の見積もり方針や前年との数値の連動性をチェックすることで異変を察知できる場合があります。
この視点は意外ですね。
参考:工事進行基準の計算方法の詳細と実務的な会計処理については、以下の解説も参考になります。
SCSK ProActive「工事進行基準とは?適用要件や計算方法」|原価比例法の計算式から3年間の仕訳シミュレーション、新収益認識基準との関係まで網羅的に解説されています
工事進行基準の計算において、計算式そのものよりも実は「原価総額の見積もり精度」の方がはるかに重要です。これは多くの解説記事では触れられていない視点です。
原価比例法の分母は「工事原価総額(見積)」です。この数字は着工時点の見積もりに基づきますが、建設・開発現場では仕様変更、資材価格高騰、天候リスク、追加要件などにより実際の原価が見積もりから大幅に乖離することが少なくありません。近年は建材費の高騰が続いており、2023年以降の建設業では当初見積もりから10〜20%のコスト増が発生するプロジェクトも珍しくありません。
見積もりが甘いと何が起きるか。仮に工事原価総額を1億円と見積もって進捗度50%で5,000万円の売上を計上したところ、実際には原価総額が1億2,000万円に膨らんだとします。本来の進捗度は発生原価5,000万円÷1億2,000万円≒42%なので、計上すべき売上は4,200万円にとどまります。差額800万円の収益が過大計上されていたことになり、財務諸表の修正が必要になります。
つまり、工事進行基準の計算精度は経理だけの問題ではなく、工事現場・設計部門・調達部門が連携して見積もりを管理する体制そのものにかかっています。
財務の品質は現場の質です。
このようなリスクに備えるため、原価管理システムとERP(統合基幹業務システム)を連携させ、現場からのリアルタイムな原価実績データを会計処理に自動反映する体制を整えることが、工事進行基準を正しく運用する上での最重要インフラと言えます。工事進行基準対応のクラウドERPには、ZAC(株式会社オロ)やPROACTIVE Construction(SCSK)などが知られており、プロジェクト単位での損益管理・進捗度の自動計算・仕訳連動を実現しています。
オロ ZACブログ「工事進行基準とは?計上方法や新収益認識基準との関係を解説」|原価管理システムを活用した工事進行基準の実務運用について参考になります
十分な情報が集まりました。
記事を生成します。

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