
印紙税は、経済取引に関して作成される文書に課される税金です。印紙税法に基づき、特定の文書(課税文書)を作成した際に納付する義務があります。
課税文書は第1号文書から第20号文書までの20種類に分類されており、文書の種類と記載された金額によって税額が決まります。印紙税の納付は、文書に収入印紙を貼り付け、その印紙に消印を押すことで行います。
印紙税の課税対象となる主な文書には以下のようなものがあります。
印紙税の計算においては、文書に記載された「契約金額」や「受取金額」が基準となります。基本的には税抜金額で判断しますが、消費税額の詳細な内訳の記載がない場合は、消費税を含めた金額で計算する必要があります。
不動産売買契約書に関する印紙税は、令和9年(2027年)3月31日までの軽減措置が適用されています。以下に不動産売買契約書の印紙税額一覧表を示します。
記載された契約金額 | 通常の印紙税額 | 軽減後の印紙税額 |
---|---|---|
1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超、50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超、100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超、500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超、1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超、5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超、1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超、10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
この軽減措置により、不動産取引における印紙税の負担が大幅に軽減されています。例えば、3,000万円の住宅を購入する場合、通常であれば2万円の印紙税が必要ですが、軽減措置により1万円で済みます。
不動産売買契約書の印紙税を計算する際の注意点として、消費税の取り扱いがあります。不動産売買の場合、土地は非課税、建物は課税となるため、契約書に記載される金額の内訳に注意が必要です。
領収書に関する印紙税は、記載された受取金額によって税額が決まります。以下に領収書の印紙税額一覧表を示します。
記載された受取金額 | 印紙税額 |
---|---|
5万円未満 | 0円(非課税) |
5万円以上、100万円以下 | 200円 |
100万円超、200万円以下 | 400円 |
200万円超、300万円以下 | 600円 |
300万円超、500万円以下 | 1,000円 |
500万円超、1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円超、2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円超、3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円超、5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超、1億円以下 | 2万円 |
1億円超、2億円以下 | 4万円 |
2億円超、3億円以下 | 6万円 |
3億円超、5億円以下 | 10万円 |
5億円超、10億円以下 | 15万円 |
10億円超 | 20万円 |
受取金額の記載のないもの | 200円 |
領収書の印紙税を正しく納付するためには、以下の手順を踏む必要があります。
注意点として、一般の個人が売主となってマイホームやセカンドハウスを売却する場合、営業に関しない受取書として発行する領収書には印紙は不要です。ただし、それ以外の不動産については印紙税がかかる場合があるため注意が必要です。
また、領収書の場合、売上代金に対する受取書が課税対象となります。売上代金とは、資産の譲渡対価、使用料、役務提供の対価などを指し、手付金も含まれます。ただし、株券等の譲渡代金、保険料、公社債や預貯金の利子などは売上代金から除外されます。
建設工事請負契約書についても、令和9年(2027年)3月31日までの軽減措置が適用されています。以下に建設工事請負契約書の印紙税額一覧表を示します。
記載された契約金額 | 通常の印紙税額 | 軽減後の印紙税額 |
---|---|---|
1万円以上100万円以下 | 200円 | 200円 |
100万円超、200万円以下 | 400円 | 200円 |
200万円超、300万円以下 | 1,000円 | 500円 |
300万円超、500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超、1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超、5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超、1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超、10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
建設工事請負契約書の印紙税計算において注意すべき点として、追加工事や変更契約の扱いがあります。追加工事や変更により契約金額が増額された場合、変更契約書にはその増額分に対応する印紙税を納付する必要があります。
また、建設工事請負契約書と一般の請負契約書は区別されており、一般の請負契約書には軽減措置が適用されません。一般の請負契約書には、工事請負以外の請負契約(例:広告契約、芸能人の出演契約など)が含まれます。
印紙税の計算には、いくつかの特殊なケースや注意点があります。税理士として知っておくべき重要なポイントを解説します。
1. 電子契約と印紙税
電子契約システムを利用して契約を締結する場合、紙の文書が作成されないため印紙税は課税されません。これは印紙税が「紙の文書」に対して課税される税金であるためです。電子契約の普及により、印紙税の節税が可能になっています。
2. 契約書の複数作成と印紙税
同一内容の契約書を複数部作成する場合、原則としてそれぞれに印紙を貼付する必要があります。ただし、「正本」と「副本」を明確に区別して作成した場合は、正本にのみ印紙を貼付すれば足ります。
3. 印紙税の過怠税
印紙税を納付せずに課税文書を作成すると、納付すべき印紙税額の3倍の過怠税が課されることがあります。ただし、うっかり印紙の貼り忘れがあった場合で、税務調査前に自主的に納付した場合は、過怠税が1.1倍に軽減されます。
4. 税務調査における印紙税のチェックポイント
税務調査では、以下の点が重点的にチェックされます。
税務調査で印紙税の納付漏れが発見された場合、過去3年分まで遡って追徴される可能性があります。特に大口の契約書や多数の領収書を発行している企業は注意が必要です。
5. 印紙税の非課税文書
すべての文書に印紙税が課されるわけではありません。以下のような文書は非課税とされています。
印紙税の計算において、非課税文書と課税文書の区別を正確に行うことが重要です。
印紙税は比較的小額であることが多いため見過ごされがちですが、大量の文書を扱う企業にとっては無視できない税負担となります。正確な計算と適切な納付を行うことで、不必要な追徴税や過怠税を避けることができます。
不動産売買契約書や建設工事請負契約書以外にも、様々な契約書に印紙税が課されます。ここでは、その他の主要な契約書における印紙税の計算方法と実務上の留意点について解説します。
1. 金銭消費貸借契約書の印紙税
金銭の貸借に関する契約書(ローン契約書など)には、以下の税率で印紙税が課されます。
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超、50万円以下 | 400円 |
50万円超、100万円以下 | 1,000円 |
100万円超、500万円以下 | 2,000円 |
500万円超、1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超、5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超、1億円以下 | 6万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 |
5億円超、10億円以下 | 20万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
金銭消費貸借契約書の場合、利息や手数料は契約金額に含めません。元本のみが印紙税の計算基準となります。
2. 土地賃貸借契約書の印紙税
土地の賃貸借に関する契約書(地上権設定契約書など)も、金銭消費貸借契約書と同じ税率で印紙税が課されます。ただし、契約金額の考え方が異なります。
土地賃貸借契約書の場合、契約期間が定められている場合は「賃料総額」が契約金額となります。例えば、月額10万円の賃料で2年間の契約の場合、契約金額は240万円(10万円×24ヶ月)となり、印紙税額は2,000円となります。
契約期間の定めがない場合や自