中小法人の軽減税率で節税・適用条件と最新改正を解説

中小法人の軽減税率で節税・適用条件と最新改正を解説

中小法人の軽減税率の仕組みと最新改正を完全解説

資本金が1億円以下でも、軽減税率が自動的には適用されません。


📋 この記事の3つのポイント
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軽減税率15%の基本ルール

年間所得800万円以下の部分に法人税率15%が適用。大企業の23.2%と比べ最大65.6万円の節税効果があります。

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2025年度改正で追加された落とし穴

グループ通算制度の適用法人は2025年4月以降、軽減税率の対象から除外。該当すると税負担が年32万円増加します。

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適用期限は2027年3月末まで延長

令和7年度税制改正で2年間延長が決定。ただし「時限措置」であるため、次回改正の動向を継続的にチェックする必要があります。


中小法人の軽減税率とは何か|基本の仕組みと適用税率一覧


中小法人の軽減税率とは、一定の要件を満たす中小法人に対して、年間所得800万円以下の部分に通常より低い法人税率を適用する特例措置のことです。本来、法人税の税率は原則23.2%ですが、中小法人はその所得のうち年800万円以下の部分について15%(本則税率は19%)が適用されます。


この差は、数字で見ると非常に明快です。800万円 × (23.2% − 15%) = 65.6万円という節税効果が生まれます。コンビニ1店舗の月間家賃がおよそ10〜20万円だとすると、年間3〜6か月分の家賃に相当する金額が手元に残ることになります。つまり、制度を正しく活用しているかどうかで、毎年の手取り利益に大きな差がつくということです。


この制度はリーマンショック後の2009年(平成21年)に経済対策として始まった時限措置であり、以降、繰り返し適用期限が延長されてきた経緯があります。「毎回延長されるから大丈夫」という雰囲気がありますが、2025年度の改正では内容の見直しも同時に行われており、制度の中身が変化していることを見落とさないことが重要です。


以下の表が現行(令和7年4月1日以降)の法人税率の基本区分です。


































法人の区分 所得の範囲 税率
中小法人(通常) 年800万円以下の部分 ✅ 15%(軽減税率)
中小法人(所得10億円超の事業年度) 年800万円以下の部分 ⚠️ 17%(引き上げ後)
中小法人(適用除外事業者) 年800万円以下の部分 ❌ 19%(本則税率)
中小法人(グループ通算制度適用法人) 年800万円以下の部分 ❌ 19%(本則税率)
年800万円を超える部分(全法人共通) 年800万円超の部分 23.2%


軽減税率が条件によって異なることが、この表からわかります。「中小法人なら一律15%」という思い込みは、今や正確ではありません。制度をしっかり理解することが第一歩です。


参考(中小企業庁 公式)。
法人税率の軽減|中小企業庁(適用税率・適用期限・手続きの概要を掲載)


中小法人の軽減税率の適用条件|資本金だけでは判断できない理由

軽減税率の適用対象となる「中小法人」の定義は、「資本金または出資金の額が1億円以下」であることが大前提ですが、それだけで判断してしまうと大きなミスにつながります。


実は、資本金が1億円以下であっても以下のいずれかに該当する法人は、中小法人には含まれません。これが多くの経営者・経理担当者が見落としやすいポイントです。



  • 💼 大規模法人(資本金5億円以上)の100%子会社:親会社に完全に支配されている場合、資本金が1億円以下でも大法人扱いになります。

  • 🔗 100%グループ内の複数の大法人から株式の全部を直接・間接に保有されている法人:親会社が複数でも、合計で100%支配されていれば対象外です。

  • 👥 常時使用する従業員が1,000人超の法人:資本金が少なくても、雇用規模が大きければ対象外になります。

  • 🚫 適用除外事業者(過去3事業年度の平均所得が15億円超):過去の業績が好調だった法人は、今の規模が小さくても除外される場合があります。

  • 🔄 グループ通算制度の適用を受ける法人(2025年4月以降):令和7年度改正で新たに追加された除外要件です。


「大規模法人の100%子会社はダメ」が最も盲点になりやすいルールです。たとえばベンチャー企業を独立させた形で設立した子会社であっても、親会社が資本金5億円以上であれば、その子会社は軽減税率の恩恵を受けられません。見た目は中小企業でも、税務上は「大法人扱い」になるのです。


なお、「適用除外事業者」の判定は次の計算式で行います。


(前3事業年度の所得合計 ÷ 期間の月数合計) × 12 = 年平均所得

→ この金額が15億円を超えれば適用除外


たとえば3事業年度の合計所得が50億円なら、年平均は約16.7億円となり、適用除外に該当します。絶対に適用されると思っていたのに、過去の好業績が足かせになるケースです。これは意外ですね。


参考。
No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者|国税庁(中小法人の範囲と要件の詳細)


中小法人の軽減税率の計算方法|具体例でシミュレーション

軽減税率の仕組みがわかっても、「実際にどのくらい得になるのか」をイメージできなければ活かせません。ここでは具体的な数字で計算します。


まず確認しておくべきことは、法人税の課税対象は「利益」ではなく「所得」だということです。所得とは「益金 − 損金」で求められる税務上の数字であり、会計上の利益とは異なります。この違いをつかんでいることが前提です。


【ケース①:所得が2,000万円の中小法人の場合】



  • 800万円 × 15%(軽減税率)= 120万円

  • 1,200万円 × 23.2%(通常税率)= 278.4万円

  • 合計法人税額:398.4万円


もし軽減税率が適用されずに全額23.2%だった場合の法人税は、2,000万円 × 23.2% = 464万円になります。差額は65.6万円です。年間65万円以上の節税効果は大きいです。


【ケース②:所得が5,000万円の場合】



  • 800万円 × 15%(軽減税率)= 120万円

  • 4,200万円 × 23.2%(通常税率)= 974.4万円

  • 合計法人税額:1,094.4万円


適用なしの場合(5,000万円 × 23.2% = 1,160万円)と比べると、こちらも同様に約65万円の節税です。つまり、所得がいくら多くても「800万円以下の部分」にかかる節税効果の上限は約65.6万円ということが原則です。


所得規模にかかわらず、節税効果は最大65.6万円が条件です。


では逆に不利になるケースはどうでしょうか。たとえばグループ通算制度を使っている中小通算法人が2025年4月以降に15%から19%に変更された場合、800万円 ×(19% − 15%)= 32万円の負担増が発生します。意識していなかった法人には、突然の出費増になりかねません。痛いですね。


法人税のシミュレーションには、国税庁のパンフレット「会社の税金あらまし」が参考になります。


中小企業者の判定等フロー(国税庁パンフレット)|自社が中小法人に該当するか確認できます


2025年度改正で変わった中小法人の軽減税率|グループ通算制度と所得10億円超の新ルール

令和7年度(2025年度)税制改正では、軽減税率の適用期限が2年延長される一方、「見直し」という名の実質的な増税が一部の中小法人に課されました。変更点は大きく2つあります。


変更①:所得が年10億円を超える事業年度は軽減税率が15%→17%に引き上げ


資本金1億円以下の中小法人であっても、その事業年度の所得が10億円を超えた場合、年800万円以下の部分に適用される税率が15%から17%に引き上げられます。800万円 × 2% = 16万円の税負担増です。「年間所得が10億円を超えるなら大企業では?」と思うかもしれませんが、資本金は小さくても売上・利益が大きい会社は実在します。IT系やコンサルティング系のスモールカンパニーでは珍しくないケースです。これは使えそうです。


変更②:グループ通算制度の適用法人は軽減税率の対象外に


グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人が個別に申告しつつ、グループ全体で損益通算できる制度です(2022年4月に連結納税制度から改組されました)。2025年4月1日以降に開始する事業年度から、この制度の適用を受ける中小法人(中小通算法人)は軽減税率の対象から除外されます。


除外後の税率は19%(本則税率)です。従来の15%との差は4%であり、800万円に適用すると年32万円の増税となります。


改正は2025年4月1日以後に開始する事業年度が対象です。グループ通算制度を使っている法人は、この時点から実質的に軽減税率の恩恵がなくなっています。自社がグループ通算制度の適用を受けているかどうかを、この機会にぜひ確認しておきましょう。確認するだけでよいです。


参考(税理士.ch)。


中小法人の軽減税率を確実に受けるための手続きと独自リスク管理

軽減税率の適用要件を満たしていても、手続きを1つ間違えると全額を受け取れなくなるリスクがあります。手続き面での注意点をここで整理します。


「適用額明細書」の添付が必須


法人税の軽減税率を含む租税特別措置法の特例を受けるためには、法人税申告書に「適用額明細書」を添付して税務署に提出することが法律上の要件です。この書類の添付を忘れた場合、または記載内容に虚偽があった場合は、軽減税率を含む法人税関係特別措置の適用を受けられなくなります。


「申告書を出せばOK」と思っていた法人にとっては、まさに盲点です。書類1枚の添付忘れで、毎年最大65万円以上の節税メリットが消えてしまうのです。添付書類は毎期の申告で必要です。


この「適用額明細書」はどこで入手できるのでしょうか。国税庁のホームページ(nta.go.jp)からダウンロードできます。税理士に申告を依頼している場合は通常対応してもらえますが、セルフ申告の場合は特に注意が必要です。


独自視点:適用期限の「打ち切りリスク」を会社のキャッシュフロー計画に織り込む


金融や財務に関心のある方に特にお伝えしたいのが、この制度が「恒久措置ではなく時限措置である」という事実をキャッシュフロー計画に明示的に織り込んでいる会社は、実はとても少ないという点です。


現状の期限は2027年3月末(令和9年3月31日)です。これ以降、延長されない場合は翌事業年度から本則税率19%が適用され、800万円以下の所得に対する法人税が一気に約27%(= 19% ÷ 15% − 1)増加します。金額に直すと、最大で年160万円規模の追加税負担です。


3年以上の経営計画や設備投資計画を立てる際には、「2027年4月以降は軽減税率なし」のシナリオをベースケースに入れておくことが財務上の堅実な判断と言えます。中小企業向けの財務・税務クラウドツール(freee、弥生会計など)にも、こうした税率変更の試算機能が搭載されているものがあります。設定してみるだけで将来の納税額イメージが見えてきます。


つまり、節税を「当然あるもの」と前提に計画を組むことが、将来最も危険な経営判断です。


参考(国税庁)。
No.5759 法人税の税率|国税庁(税率区分・軽減税率の条件を公式に確認できます)




中小会社の株主総会――その法と実務