

実は、上場している銀行の中間財務諸表は「第一種」ではなく「第二種」に分類され、適用される会計基準も監査の種類も異なります。
中間財務諸表とは、年度決算の中間時点(事業年度開始から6か月)における企業の財政状態・経営成績・キャッシュ・フローの状況を示す財務諸表です。投資家が年度の本決算を待たずに経営情報を入手できるよう、半期報告書として金融商品取引法に基づき提出義務が課されています。
ここで重要なのは、2024年4月1日に施行された「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)による制度変更です。この改正で、上場会社の第1四半期・第3四半期の四半期報告書が廃止されました。廃止後は、四半期開示は証券取引所規則に基づく「四半期決算短信」に一本化されています。
制度変更が生じました。第2四半期報告書が「半期報告書」に変更されたのです。
この改正によって、半期報告書に含まれる中間財務諸表の種類が増えました。従来から存在した「中間財務諸表(銀行・非上場向け)」に加え、新たに「従来の四半期財務諸表に相当する中間財務諸表(上場会社向け)」が加わりました。これら2種類を法令上で区別するために生まれた呼称が、「第一種中間財務諸表」と「第二種中間財務諸表」です。
つまり2種類が共存しているということですね。
| 区分 | 相当する従来制度 | 主な対象会社 |
|---|---|---|
| 第一種中間財務諸表 | 従前の四半期(第2四半期)財務諸表 | 上場会社等(特定事業会社以外) |
| 第二種中間財務諸表 | 従前からある中間財務諸表 | 銀行・保険等の特定事業会社、非上場会社 |
なお、公表される半期報告書の書面上には「第一種」「第二種」という言葉はつきません。ただし、「経理の状況」の冒頭に第一種または第二種の別が記載されることになっています(PwC資料より)。
第一種と第二種のどちらに該当するかは、金融商品取引法第24条の5第1項の区分によって決まります。この仕組みを理解しておくと、投資先企業の中間財務諸表がどちらのルールで作られているかを判断できます。
🔵 第一種中間財務諸表の対象(新制度ルール)
- 上場会社等(特定事業会社を除く)➡ 典型的な製造業・小売業・ITサービスなどの上場企業
- 非上場会社であっても、有価証券報告書と半期報告書の提出義務がある会社のうち、特定事業会社を除く会社で、第一種を選択したもの
🔴 第二種中間財務諸表の対象(従来ルール継続)
- 上場している特定事業会社(銀行・保険会社・信用金庫等)
- 非上場の有価証券報告書提出会社(特定事業会社を除く)で第一種を選択しないもの
- 非上場の特定事業会社
ここで「特定事業会社」とは何かというと、銀行・保険会社・信用金庫などの金融系事業会社のことです。これらの企業は業種の特性上、従来から独自の中間財務諸表作成基準(1998年に企業会計審議会が公表した基準)が適用されてきました。
改正後もその扱いは変わっていません。
意外なのはこの点ですね。
銀行(たとえば三菱UFJ銀行や三井住友銀行の親会社)は「上場会社」ですが、金融系の特定事業会社であるため「第二種中間財務諸表」を提出します。東証プライムの上場企業だからといって、必ずしも第一種とは限らないわけです。
また、非上場会社は原則として第二種ですが、第一種を選択することも認められています。ただし、特定事業会社(非上場の銀行等)は選択の余地なく第二種のみとなります。
第一種と第二種では、適用される会計基準が根本的に異なります。この違いは、財務諸表の記載内容・詳細さ・比較期間にも影響します。
第一種中間財務諸表に適用される会計基準
2024年3月22日に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した「企業会計基準第33号:中間財務諸表に関する会計基準」(以下、中間会計基準)が適用されます。この基準は、廃止された四半期会計基準(企業会計基準第12号)の考え方をほぼそのまま引き継いで作られており、実務上の内容はほとんど変わらないと言われています。
変わらないというのが基本原則です。
適用される財務諸表の範囲は以下のとおりです。
- 中間連結貸借対照表
- 中間連結損益計算書(または中間連結損益及び包括利益計算書)
- 中間連結包括利益計算書(2計算書方式の場合)
- 中間連結キャッシュ・フロー計算書
なお、中間連結財務諸表を開示する場合は中間個別財務諸表の開示は不要です。
これも従来の四半期報告書の扱いと同様です。
第二種中間財務諸表に適用される会計基準
1998年に企業会計審議会が公表した「中間連結財務諸表作成基準」・「中間財務諸表作成基準」(以下、中間作成基準等)が引き続き適用されます。こちらは第一種より歴史が古く、より詳細な開示が求められるケースもあります。第一種と異なり、中間連結財務諸表を作成する場合でも中間個別財務諸表が別途必要となります。
求める開示水準が異なる点が重要です。
参考として、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した中間会計基準の公式情報は以下で確認できます。
中間財務諸表の会計基準に関する詳細な解説(デロイト トーマツ)
企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」等の解説|デロイト トーマツ
投資家が中間財務諸表を読む際、その「信頼性の根拠」として監査・レビューの種類を確認することは非常に重要です。第一種と第二種では受ける監査の種類が異なり、付与される保証水準に大きな差があります。
第一種中間財務諸表 → 期中レビュー(限定的保証)
上場会社等の提出する第一種中間財務諸表には、公認会計士等による「期中レビュー」が義務付けられています。
期中レビューは「限定的保証業務」です。
監査人が質問・分析的手続を中心とした手続を実施し、「適正に表示していないと信じさせる事項が全ての重要な点において認められなかった」という消極的な形式で結論を表明します。
つまり積極的に「正しい」とは言えない保証ですね。
第二種中間財務諸表 → 中間監査(合理的保証)
非上場会社や特定事業会社(銀行等の上場会社を含む)が提出する第二種中間財務諸表には「中間監査」が義務付けられています。中間監査は「合理的保証業務」であり、監査人が有用な情報の表示に関する意見を積極的形式で表明します。
| 項目 | 期中レビュー(第一種) | 中間監査(第二種) | 年度監査 |
|---|---|---|---|
| 保証の種類 | 限定的保証 | 合理的保証 | 合理的保証 |
| 意見・結論の内容 | 適正性に関する結論 | 有用性に関する意見 | 適正性に関する意見 |
| 形式 | 消極的形式 | 積極的形式 | 積極的形式 |
| 保証水準の目安 | 低め | 中程度 | 高い |
一見すると「中間監査(第二種)のほうが保証水準が高い」という逆転現象が起きているように見えます。実際、上場普通企業(第一種)の半期報告書には「期中レビュー(限定的保証)」しか付与されておらず、上場銀行(第二種)の半期報告書には「中間監査(合理的保証)」が行われているわけです。
これは意外なポイントですね。
この背景には歴史的経緯があります。2008年に四半期報告制度が導入されたとき、年3回の迅速な情報開示に対応するためにコストと時間を抑えた「レビュー」が採用されました。その仕組みが第一種中間財務諸表にそのまま引き継がれた形です。
中間監査と期中レビューの違いについての詳しい解説はこちらから確認できます。
【中間監査の保証水準】中間監査と期中レビューの違いもスッキリ整理|監査論.com
第一種と第二種では、適用される会計基準が異なるため、記載内容の詳細さや注記事項にも違いが生じます。この違いは、企業分析や株式投資の判断において見落としてはなりません。
第一種中間財務諸表の開示対象期間と記載内容
中間会計基準に基づく第一種中間財務諸表では、以下の開示対象期間が定められています。
- 中間会計期間末日の中間貸借対照表 + 前年度末日の要約貸借対照表
- 当中間会計期間および前中間会計期間の中間損益計算書・包括利益計算書
- 当中間会計期間および前中間会計期間の中間キャッシュ・フロー計算書
注記事項としては、セグメント情報(報告セグメントの利益・売上高)、収益の分解情報、1株当たり中間純損益、継続企業の前提に関する重要な不確実性などが含まれます。これは従来の第2四半期報告書の内容を引き継いでいるため、慣れ親しんだ投資家には読みやすい構成です。
第二種中間財務諸表の特徴的な記載内容
第二種では、1998年の中間作成基準等に基づき作成されます。特定事業会社(銀行等)の場合は、業種特有の記載が多いです。銀行であれば、一般企業の「売上高」に相当する「業務純益」「コア業務純益」などが並び、資金調達・運用の詳細も開示されます。
業種別の特性が色濃く出る点が特徴です。
また、第二種では中間連結財務諸表を作成する場合でも、中間個別財務諸表を別途作成・開示しなければなりません(第一種では連結開示のみで個別は不要)。
この点も大きな違いです。
2024年4月以降、上場会社の開示制度は大きく変わりました。以前は1年間に4回(第1〜4四半期)の四半期報告書が提出されていましたが、現在は以下のような体制になっています。
| タイミング | 法定開示(金融商品取引法) | 取引所規則に基づく開示 |
|---|---|---|
| 第1四半期末(3か月) | なし(廃止) | 四半期決算短信(任意でレビュー可) |
| 第2四半期末(6か月) | 半期報告書(中間財務諸表)🔵 | 四半期決算短信 |
| 第3四半期末(9か月) | なし(廃止) | 四半期決算短信(任意でレビュー可) |
| 年度末(12か月) | 有価証券報告書 | 決算短信 |
半期報告書が必須です。
投資家として注意したいのは、第1四半期・第3四半期の法定開示書類が廃止された点です。株式投資をする場合、これらの期間の決算情報は「四半期決算短信」でしか得られなくなりました。決算短信は、任意で公認会計士によるレビューを受けることができますが、強制ではありません。
一方、第2四半期(6か月時点)の半期報告書に含まれる第一種中間財務諸表には、公認会計士による期中レビューが義務付けられています。つまり、年間を通じて公認会計士が関与した開示書類は「半期報告書+有価証券報告書」の2回だけになったとも言えます。
投資情報として活用する際は、半期報告書の内容を丁寧に読み込む姿勢が以前にも増して重要になっています。
中間財務諸表は年度の財務諸表と比べ、一部の会計処理を「簡便的な方法」で行うことが認められています。これは中間財務諸表の性質上、迅速な開示が求められるためです。
第一種中間財務諸表で認められている主な簡便的会計処理は以下のとおりです。
- 原価差異の繰延処理:製造業などで生じる原価差異を中間期に繰り延べ、年度決算で調整することが認められています。
- 中間特有の税金費用の計算:期末の法人税等を合理的に予測し、それを基に中間期の税金費用を按分計算する方法が認められています。
- 有価証券の減損処理における中間切放し法・中間洗替え法:継続適用を条件に選択できます。
- 棚卸資産の簿価切下げにおける切放し法の継続:経過措置として従来の四半期実務を継続適用できます。
- 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便処理:前年度末に算定した貸倒実績率等を中間決算で使用できます。
これらが認められている理由は実務負担の軽減です。
ただし、これらの簡便的処理が使えるのは「財務諸表利用者の判断を誤らせない」ことが条件です。例えば、有価証券の含み損が大きく膨らんでいる局面では、簡便処理を安易に選択すると実態を反映しない可能性があります。投資家の立場から見ると、注記事項で「中間特有の会計処理を採用している旨とその内容」が開示されているかを確認することが大切です。
注記の確認が必須ということですね。
なお、2025年10月16日には「期中財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第37号)」が公表されており、第一種中間財務諸表と四半期財務諸表の会計基準を統合する方向で制度整備が進んでいます。今後もルール変更の動向に注目する必要があります。
実際の投資判断や企業調査において、第一種・第二種の区別をどう確認すればよいのでしょうか。最も手軽な方法はEDINET(電子開示システム)を活用することです。
📌 EDINETでの確認手順
1. EDINETのサイト(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp))にアクセス
2. 「半期報告書」を書類種別で絞り込んで検索
3. 対象企業の半期報告書を開き、「経理の状況」冒頭を確認
4. 「第1種中間財務諸表」または「第2種中間財務諸表」の記載を確認
実際の書類では冒頭にその記載があります。
また、注記事項の「中間特有の会計処理を採用している場合には、その旨及びその内容」という項目も投資判断に活用できます。たとえば、法人税等の按分計算方式や有価証券の減損処理方法を確認することで、その企業の中間期損益の信頼性をより深く理解できます。
銀行・保険会社などの第二種中間財務諸表を見る場合は、一般事業会社の第一種とは記載構成が大きく異なるため、業種特有の勘定科目(例:「業務純益」「資金利益」「役務取引等利益」など)に慣れておくことが重要です。
金融系企業の分析は別の知識が必要です。
金融系企業と一般企業の財務諸表を比較する際は、適用されている会計基準と監査の種類の違いを念頭に置くと、情報の信頼性を適切に評価できます。
半期報告書に関する公式の作成要領はこちらから確認できます。
金融に興味を持つ読者の間でも、第一種・第二種について混乱しやすいポイントがあります。以下に代表的な誤解と正しい理解を整理します。
❌ 誤解①「第一種のほうが第二種より上位・高品質な財務諸表だ」
✅ 正しい理解:「第一種」「第二種」は上位・下位の関係ではなく、「種類が異なる」という意味です。電気工事士では第一種が上位ですが、中間財務諸表の場合は単なる区分の名称です。むしろ監査の保証水準という観点では、第二種(中間監査=合理的保証)のほうが第一種(期中レビュー=限定的保証)より高い保証を受けています。
❌ 誤解②「銀行など上場金融機関は必ず第一種中間財務諸表を提出する」
✅ 正しい理解:銀行・保険会社などの特定事業会社は、上場していても第二種中間財務諸表を提出します。適用される会計基準も1998年の中間作成基準等であり、第一種(中間会計基準)とは異なります。
❌ 誤解③「四半期報告書廃止後は、中間財務諸表の情報量が減った」
✅ 正しい理解:第一種中間財務諸表は、従来の第2四半期報告書と「同程度の記載内容」を引き継いでいます。
情報量が大幅に減ったわけではありません。
ただし第1・第3四半期の法定書類は廃止されているため、年間4回から2回(半期+年度)の法定開示に変わっています。
❌ 誤解④「非上場会社は必ず第二種中間財務諸表を提出しなければならない」
✅ 正しい理解:特定事業会社でない非上場会社は、第一種を選択することも認められています。ただし特定事業会社の非上場会社は選択できず、第二種のみです。
誤解のまま投資判断をすると損になることもあります。
2025年10月16日、ASBJは「期中財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第37号)」を公表しました(2025年4月23日に公開草案を公表)。この基準は、第一種中間財務諸表と四半期財務諸表(取引所規則に基づく第1・第3四半期の短信ベース)の会計基準を「期中財務諸表」として統合する内容です。
制度がさらに整理されていくということですね。
この動きの背景には、「中間会計基準と四半期財務諸表に共通する取り扱いを一元的に規定する」という実務上の必要性があります。現状、半期(第一種中間財務諸表)と四半期(短信ベース)では適用される会計基準が異なり、企業の経理担当者や監査人にとって複雑な状況が生じていました。
なお、第二種中間財務諸表に適用される1998年の中間作成基準等については、同時期に一部改正(「中間連結財務諸表等の作成基準の一部改正」)が公表されており、こちらも今後の動向を継続的に追う必要があります。
投資家の観点からは、制度変更が行われた場合でも「提出される半期報告書の内容や比較可能性にどのような影響が生じるか」という視点で確認することが重要です。
投資判断の質を高めるためにも制度理解は欠かせません。
EYによる期中財務諸表会計基準の解説はこちらで確認できます。
「期中財務諸表に関する会計基準(案)」等の解説|EY Japan
証券外務員試験(第一種・第二種)の受験者にとっても、「財務諸表と企業分析」は重要な出題範囲です。試験では中間財務諸表そのものよりも「貸借対照表・損益計算書の仕組みと財務分析手法(ROE・EPS・PBRなど)」が中心的に問われます。
ただし、証券外務員として実務に就く場合、顧客に投資商品を提案するうえで、企業の半期報告書を読む機会は必ず出てきます。そのとき、「この銀行の中間財務諸表は第二種なので中間監査が行われている」「この製造業は第一種なので期中レビューだ」という区別が自然にできると、情報の信頼性を正確に評価したうえで顧客に説明できます。
実務で差がつくのはこういう細かい知識ですね。
証券外務員試験の財務諸表分野を学ぶ際は、以下のステップが効率的です。
1. まず財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書)の基本構造を理解する
2. 各財務指標(ROE・ROA・自己資本比率など)の計算式と意味を習得する
3. 中間財務諸表の第一種・第二種の区分と適用会計基準・監査の違いを整理する
4. 実際の半期報告書(EDINETで無料閲覧可)を1〜2社分読んでみる
財務諸表の基礎から試験対策までを幅広くカバーした解説はこちらも参考になります。
頻出問題「財務諸表」をマスターして証券外務員二種合格を目指す|オンスク.JP