金融商品取引法金融サービス提供法違いと金融業界最新制度比較

金融商品取引法金融サービス提供法違いと金融業界最新制度比較

金融商品取引法金融サービス提供法違い

両法律の主要な違いと特徴
📊
規制対象の範囲

金商法は証券取引業者、金サ法は金融商品販売業者全般

⚖️
業務規制の違い

横断的規制vs縦割り規制の根本的な相違点

🔄
改正経緯

デジタル化対応と投資家保護強化の変遷

金融商品取引法の基本概要と規制範囲

金融商品取引法(金商法)は、有価証券や金融商品の公正な取引や価格の維持、流通の円滑化を図り、経済の健全な発展や投資家の保護を目的とした法律です。2007年9月30日に「証券取引法」から名称変更され、金融先物取引法などの金融商品に関する法律群を統合し、横断的な投資者保護法制として確立されました。
参考)金融商品取引法とは?概要や禁止行為、罰則をわかりやすく解説

 

金商法は「第一種金融商品取引業」「第二種金融商品取引業」「投資運用業」「投資助言・代理業」を規制対象としており、これらの業者が有価証券や金融商品を取引する際に守るべきルールについて定められています。特に、投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な制度整備が特徴的で、公開買付に関する開示制度や大量保有報告制度の整備、四半期報告制度の導入なども含まれています。
参考)金融商品取引法 - Wikipedia

 

近年では、2024年4月1日より四半期報告制度の廃止が実施され、スタートアップ企業の開示負担軽減にも配慮した改正が行われています。また、金商法は証券会社や投資顧問業者などの金融商品取引業者に対する包括的な規制体系を提供し、不正取引やインサイダー取引の防止も重要な役割を担っています。
参考)金融商品取引法(金商法)とは?ルールの概要・禁止行為・罰則な…

 

金融サービス提供法の制定経緯と目的

金融サービス提供法(正式名称:金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律)は、預金者や投資家の保護を目的に、2001年に金融商品販売法として制定され、デジタル技術の急速な進展にあわせて2020年に改正・名称変更された法律です。さらに2024年2月1日より現在の名称に改正・改称されています。
参考)金融サービス法|一般社団法人 第二種金融商品取引業協会

 

この法律の主要な目的は、金融商品販売業者等が金融商品の販売等に際し顧客に対して説明をすべき事項その他の金融商品の販売等に関する事項を定めることです。預貯金、株式、保険・共済など金融商品の販売に関わる業者に対して、重要事項の説明義務や断定的判断の提供等の禁止を義務付けており、販売業者が上記の義務を違反した場合、損害を被った消費者は販売業者に対して損害賠償請求をすることができます。
参考)金融サービス提供法

 

特筆すべきは、2020年の改正により「金融サービス仲介業」が新たに創設されたことです。この制度により、スマートフォン一台で銀行・証券・保険の多様な金融商品・サービスを購入できるようになり、一つの登録で銀行、証券、保険の各分野にわたるサービスを仲介できるワンストップ提供が可能となりました。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/shokeishin/tokutei_shotorihiki/pdf/2021_001_04_00.pdf

 

金融商品取引法の規制体系と業務範囲

金融商品取引法の規制体系は、投資性のある金融商品を対象とした包括的な枠組みを提供しています。法律の構造として、企業内容等の開示制度の整備、金融商品取引業を行う者に関する必要事項の規定、金融商品取引所の適切な運営確保などが主要な柱となっています。
業務範囲においては、有価証券の発行および金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図ることが規定されています。これにより国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的としています。
近年の改正動向として、2023年3月14日に提出された「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」では、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべき義務の規定の整備、顧客等への契約締結前の説明義務等に係る規定の整備などが盛り込まれました。また、ソーシャルレンディング等に関する規制の整備も重要な改正ポイントとなっています。
参考)【2024年4月等施行】金融商品取引法等改正とは? 四半期報…

 

さらに、スタートアップ企業への配慮として、特定投資家私募制度の見直しも検討されており、新規則で新たに提供または公表が義務付けられた特定証券情報に係る事務負担軽減が図られています。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/startup_finance/pdf/001_05_00.pdf

 

金融サービス提供法の仲介業制度と横断的規制

金融サービス提供法の最大の特徴は、2020年改正で創設された「金融サービス仲介業」制度にあります。従来の仲介業は業態ごとの縦割りだった既存の仲介業と異なり、1つの登録で銀行・証券・保険すべての分野のサービスを仲介可能とするなど、ワンストップ提供に最適化された制度設計となっています。
この仲介業制度では、協同組織金融機関や貸金業者のサービスも仲介可能で、一定の要件を満たせば電子決済等代行業の登録手続も省略可能となっています。金融サービス仲介業者は、金融商品取引法ではなく金融サービスの提供に関する法律上の登録を受け、金サ法令及び監督指針の適用を受けるとともに、原則として金サ法上の自主規制機関の自主規制に服することとなります。
参考)https://www.jsda.or.jp/houdou/kaiken/files/210915shiryou1.pdf

 

横断的規制の特徴として、業態ごとの縦割り法制からサービス提供に関する横断的な法制への転換が挙げられます。これまで銀行法、金融商品取引法、保険業法と分かれていた規制が、金融サービス提供法による統一的な枠組みに整理されました。ただし、顧客に対して「高度に専門的な説明」を要する金融サービスについては、金融サービス仲介業者は取り扱うことができないという制限も設けられています。

金融商品取引法改正によるデジタル化対応と実務影響

金融商品取引法の最新改正では、社会のデジタル化に対応した法体系整備が重要なテーマとなっています。2025年4月1日から施行される改正により、金融商品取引契約に係る顧客交付書面のデジタル化が実現されます。証券会社等が顧客のデジタル・リテラシーに応じて「書面」又は「デジタル」によることを選択できるよう規定が整備されました。
参考)金融商品取引契約に係る顧客交付書面のデジタル化について:金融…

 

実務への影響として、これまで「書面」による情報提供を受けていた顧客が、引き続き「書面」での交付を希望する場合には、その旨を証券会社等に請求すれば、これまでどおり書面での情報提供を受けることができます。一方、証券会社等によっては「デジタル」での情報提供に対応していないケースもあるため、情報提供に係る具体的な取り扱いについては、取引のある証券会社等からの案内確認が重要となります。
また、スタートアップ企業への配慮として、四半期報告制度の廃止が2024年4月1日から実施されており、上場会社の第1四半期と第3四半期の開示負担軽減が図られています。金融商品取引業の登録拒否要件についても見直しが行われ、暴力団または暴力団員との関係その他の事情に照らし、金融商品取引業の信用を失墜させるおそれがあると認められる者の登録拒否要件明文化や、人的構成要件の内容明確化が実施されました。
参考)ポイント解説・金商法 #9:2023年金融商品取引法等の改正…

 

これらの改正により、金融商品取引法は従来の証券取引中心の規制から、デジタル時代に対応した包括的な金融商品取引規制へと進化を遂げており、金融業界従事者にとっては新たな実務対応が求められています。
参考)https://www.fsa.go.jp/frtc/kikou/2019/20200203_P14-17.pdf