

遺贈で受け取った不動産の登録免許税、相続人以外だと税率が5倍になります。
相続登記をする際に法務局へ支払う「登録免許税」は、不動産の固定資産税評価額をベースに計算します。計算式はシンプルですが、端数処理や評価額の確認方法など、細かいルールを知らないと計算誤りが起きやすい税金です。
登録免許税の基本的な計算手順は、次の流れで進みます。
1. 固定資産税評価額を確認する(固定資産税課税明細書 または 固定資産評価証明書)
2. 課税標準額を算出する(各不動産の評価額を合計し、1,000円未満を切り捨て)
3. 税率をかける(相続の場合は0.4%、相続人以外への遺贈は2.0%)
4. 100円未満を切り捨てる(最終的な登録免許税額)
計算式は次の通りです。
$$\text{登録免許税額} = \text{課税標準額(固定資産税評価額合計から1,000円未満切捨て)} \times 0.4\%$$
たとえば、土地の評価額が1,500万円・建物の評価額が500万円の一戸建てを相続した場合、合計2,000万円の1,000円未満を切り捨てた2,000万円が課税標準額となります。
$$\text{登録免許税額} = 20,000,000 \times 0.004 = 80,000\text{円}$$
8万円が税額です。これはコンサート1回分の費用感と近く、決して小さくない金額といえます。
課税標準額の計算が基本です。
固定資産税評価額の確認には、毎年4~5月に自治体から送られてくる「固定資産税・都市計画税 課税明細書」を使うのが最も手軽です。紛失した場合は、不動産所在地の市区町村役場窓口で「固定資産評価証明書」を1物件あたり300円程度で取得できます。
なお、申請する年度によって使う評価額が変わる点に注意が必要です。登録免許税の計算には、申請日が属する年度(4月1日~翌年3月31日)の評価額を使います。3月31日と4月1日では使う評価額が異なるため、3月末から4月初旬に申請するタイミングでは年度の取り違えに注意してください。
法務局公式PDF「登録免許税の計算 売買・相続などによる所有権の移転の登記」|計算手順と端数処理のルールを公式が図解で説明
登録免許税の税率は、登記の原因によって大きく異なります。金融的な観点から特に重要なのが、「相続か遺贈か、そして誰が受け取るか」による税率の差です。
| 登記の原因 | 受取人 | 税率 |
|---|---|---|
| 相続による所有権移転 | 相続人 | 0.4%(1/1000の4) |
| 遺贈による所有権移転 | 相続人 | 0.4%(1/1000の4) |
| 遺贈による所有権移転 | 相続人以外 | 2.0%(1/1000の20) |
| 売買による所有権移転 | 誰でも | 2.0%(1/1000の20)※軽減措置あり |
ここが最も見落としやすいポイントです。「遺贈であっても相続人が受け取るなら0.4%」ですが、子ども以外の孫・友人・内縁のパートナーなど相続人以外が遺贈を受ける場合は税率が一気に2.0%に跳ね上がります。
2.0%が条件です。
たとえば、固定資産税評価額2,000万円の不動産を孫(代襲相続人でない)への遺贈で取得した場合、
$$\text{登録免許税額} = 20,000,000 \times 0.02 = 400,000\text{円}$$
同じ不動産を相続人が相続した場合の8万円と比較すると、5倍の40万円になります。痛いですね。
遺言書で財産を渡す相手が「相続人かどうか」によって税負担がこれだけ変わるため、遺言書の作成段階から相続人の範囲を確認しておくことが財務計画上のポイントになります。
また、「死因贈与」という方法で不動産を渡す場合も税率は2.0%となり、さらに不動産取得税(評価額の3〜4%)も課税される点で、遺贈よりも費用負担が大きくなることがあります。
国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」|相続人以外が財産を受け取る際の税負担増について公式が解説
相続登記の登録免許税には、令和9年(2027年)3月31日まで適用される免税措置が設けられています。これは原則として0.4%かかるところを0円にできる制度ですが、適用されるには明確な条件があります。
免税措置① 数次相続(相続登記未了のまま相続人が亡くなった場合)
親が亡くなり土地を相続したものの、その人も登記をしないまま亡くなってしまったケースです。この場合、亡くなった人(一次相続の相続人)を登記名義人にするための相続登記については、登録免許税が免税となります。祖父→父(登記未了で死亡)→自分という流れで土地が引き継がれた場合、「父→自分」の登記だけでなく「祖父→父」の登記分の税金も免除されます。つまり0円が条件です。
免税措置② 固定資産税評価額が100万円以下の土地
令和7年度の税制改正により、全国の土地で評価額が100万円以下であれば免税の対象になりました(建物は対象外)。農村部や過疎地の土地はこの条件に該当しやすく、活用できる可能性があります。
これは使えそうです。
ただし、両方の免税措置とも「自動的に適用される」わけではありません。法務局に提出する登記申請書に、以下の法令条項を明記しなければ免税は受けられません。
- 免税措置①の場合:`租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税`
- 免税措置②の場合:`租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税`
記載がなければ免税措置は受けられません。これは盲点になりやすく、申請書を自分で作成する際の必須チェックポイントです。
法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」|免税の2条件・申請書記載例・適用期間を法務局が公式解説
2024年4月1日から、相続登記が法律上の義務となりました。これによって、登録免許税の納付タイミングも実質的に「先延ばし不可」になっています。義務化の内容を正確に把握しておきましょう。
申請期限のルール
- 2024年4月1日以降に発生した相続:不動産を相続で取得したと知った日から3年以内
- 2024年4月1日より前に発生した相続:2027年3月31日まで(経過措置)
3年以内が原則です。
正当な理由なく期限内に申請しなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料は刑罰ではなく行政上のペナルティですが、裁判所からの通知で支払い義務が生じる点は変わりません。
「今すぐ登記しなくても大丈夫」という感覚で放置し続けると、次のような複合リスクが増大します。
- 相続人が増えて(数次相続・代襲相続)、全員の合意を取る手続きが格段に難しくなる
- 10万円の過料に加え、増えた相続人の分だけ戸籍収集コストが増加する
- 不動産を売却したいときに名義変更が完了していないと売れない
なお、相続登記の申請が事実上困難な場合(相続人が多数で遺産分割協議が整わないなど)には、「相続人申告登記」という暫定的な手続きで3年の期限をいったん保全することも可能です。
登録免許税自体は比較的少額でも、手続きを先延ばしにすることで将来的なコストが膨らむリスクがあるため、期限管理が重要です。
法務省「相続登記の申請義務化について」|義務化の根拠・過料の適用条件・相続人申告登記の制度を公式が説明
法務局への登録免許税の納付には3つの方法があります。実務上の選択肢を整理しておきましょう。
納付方法① 現金(金融機関・税務署で納付)
法務局の窓口では現金を直接受け付けていません。金融機関または税務署で「国庫金納付書」を使って納付し、受け取った領収証書を登記申請書に添付して法務局に提出します。領収証書の添付が必須です。
納付方法② 収入印紙(法務局・郵便局で購入)
収入印紙を購入して申請書に添付する方法です。実務では登録免許税が3万円超でも収入印紙で納付するケースが多く見られます。ただし収入印紙に消印・割印を押してはいけないことに注意してください。
納付方法③ キャッシュレス(オンライン申請の場合)
相続登記をオンラインで申請した場合は、インターネットバンキングを使って税金を電子納付できます。法務省の「登記・供託オンライン申請システム」(登記ねっと)を利用するもので、窓口に行く手間を省けます。
金融面での追加知識:事業用不動産の登録免許税は必要経費に算入できる
金融に関心のある人が見落としやすいのが、この点です。アパートや賃貸マンションなど事業用不動産を相続で引き継ぎ、不動産賃貸業を継続する場合、相続登記のために支払った登録免許税は不動産所得の計算上、必要経費として算入できます。
$$\text{不動産所得} = \text{総収入金額} - \text{必要経費(登録免許税を含む)}$$
たとえば固定資産税評価額5,000万円のアパートを相続した場合の登録免許税は、
$$5,000\text{万円} \times 0.4\% = 20\text{万円}$$
この20万円を必要経費に計上することで、課税所得を圧縮できます。自己居住用の不動産では経費にできないため、事業用か居住用かで扱いが大きく変わります。これは使えそうです。
具体的な経費算入の処理については、確定申告の際に税理士に確認するか、国税庁の「不動産所得の申告書の書き方」ページで必要経費の範囲を確認するとよいでしょう。
法務省「不動産登記の電子申請(オンライン申請)について」|登録ねっとを使ったオンライン申請・電子納付の方法を法務省が詳説