相続税経費になるもの完全ガイド控除対象費用

相続税経費になるもの完全ガイド控除対象費用

相続税経費控除対象

相続税で経費になるもの概要
💰
債務控除

被相続人の借入金や未払金など確実な債務が控除対象

⚱️
葬式費用

通夜・告別式費用や火葬料など社会通念上相当な範囲

控除対象外

税理士報酬や香典返しなど相続後に発生する費用

相続税経費債務控除の基本知識

相続税の計算において、債務控除は最も重要な経費項目です。被相続人が死亡した時点で確実に存在していた債務については、相続財産から控除することができます。

 

債務控除の対象となる主な項目は以下の通りです。

  • 借入金・ローン残高:銀行からの借入金、住宅ローンカードローンなど
  • 未払金医療費、光熱費、クレジットカード利用代金など
  • 公租公課:所得税、住民税、固定資産税などの未払い分
  • 買掛金:事業を営んでいた場合の仕入れ代金など

特に注意すべきは公租公課の取り扱いです。固定資産税や住民税については、納税義務が確定する日(固定資�税の場合は1月1日)以降に相続が発生し、相続開始日現在で未払いの場合に控除対象となります。

 

ただし、保証債務や連帯債務については特別な取り扱いがあります。保証債務の場合、主債務者が弁済不能で、かつ回収見込みがない場合のみ控除可能です。連帯債務については、負担すべき金額が明確な部分のみが控除対象となります。

 

相続税経費葬式費用の範囲

葬式費用は債務ではありませんが、相続税の計算上は経費として控除が認められています。ただし、すべての葬儀関連費用が対象となるわけではなく、社会通念上相当と認められる範囲に限定されます。

 

控除対象となる葬式費用

  • お通夜・告別式にかかった費用
  • 葬儀に関連する料理代
  • 火葬料・埋葬料・納骨料
  • 遺体の搬送費用
  • 葬儀場までの交通費
  • お布施・読経料・戒名料
  • お手伝いさんへのお礼
  • 運転手等への心付け

控除対象とならない費用

  • 香典返し:香典に対するお返しのため除外
  • 生花・盛籠等(喪主負担分以外)
  • 位牌・仏壇・墓石の購入費用
  • 法事費用(初七日・四十九日など)

葬式費用の控除を適用する際は、領収書の保管が重要です。お布施など領収書がないものについても、金額や支払先を記録しておくことで控除の根拠となります。また、葬儀社からの請求書には内訳を明確にしてもらい、控除対象外の項目と区別できるようにしておきましょう。

 

相続税経費にならない費用の注意点

相続に関連して発生する費用の中でも、経費として認められないものが多数存在します。これらを誤って申告に含めてしまうと、税務調査の対象となる可能性があります。

 

主な控除対象外費用

  • 税理士報酬:相続税申告のための費用は原則として控除不可
  • 司法書士報酬:相続登記などの手続き費用
  • 不動産鑑定費用:相続税申告のための評価費用
  • 遺品整理費用:清掃業者への支払いなど
  • 相続手続き関連費用戸籍謄本取得費用、郵送料など

特に税理士報酬については多くの誤解があります。「税金に関する費用だから控除できる」と考えがちですが、これは相続人が支払う費用であり、被相続人の債務ではないため控除対象外です。

 

ただし、例外的なケースも存在します。

  • 税務調査対応費用:修正申告が必要となった場合の一部費用
  • 確定申告関連費用:被相続人の所得税申告に関する費用の一部

これらの判断は複雑なため、専門家に相談することが重要です。また、相続に関連する費用は所得税の確定申告で経費計上できる場合もあります。不動産所得がある場合の固定資産税など、相続税では控除できなくても所得税では経費となるケースがあるため、総合的な税務対策を検討しましょう。

 

相続税経費取得費加算特例の活用

相続した財産を売却する際には、**「相続税の取得費加算の特例」**という制度があります。これは相続税の一部を譲渡所得の計算上の取得費に加算できる制度で、実質的に相続税を経費として活用できる画期的な仕組みです。

 

特例の適用要件

  • 相続または遺贈により取得した財産であること
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  • 相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年以内に譲渡していること

特例の効果
例えば、1,000万円の土地を相続し、相続税が100万円かかったとします。その土地を1,500万円で売却した場合、通常は500万円の譲渡所得に対して税金がかかりますが、この特例により相続税100万円を取得費に加算できるため、譲渡所得を400万円に減額できます。

 

計算の実例

  • 売却価格:1,500万円
  • 通常の取得費:1,000万円
  • 加算される相続税:100万円
  • 修正後の取得費:1,100万円
  • 譲渡所得:400万円(1,500万円-1,100万円)

この特例は相続直後の売却に限定されません。相続税の申告期限から3年以内であれば適用可能なため、相続後の資産整理を検討している場合は、このタイミングを意識した売却計画を立てることが重要です。

 

また、特例の適用には相続税の申告が前提となるため、相続税がかからない場合でも申告をしておくことで、将来の売却時に有利になる可能性があります。

 

相続税経費申告時の実務ポイント

相続税の申告において経費を適切に計上するためには、書類の整理と証明資料の準備が不可欠です。税務調査においても、これらの資料の有無が調査結果を大きく左右します。

 

必要な書類と整理方法
📋 債務関連

  • 金融機関の借入残高証明書
  • クレジットカード利用明細書
  • 未払い医療費の領収書・請求書
  • 公租公課の納税通知書

📋 葬式費用関連

  • 葬儀社からの請求書・領収書
  • 火葬場・斎場の領収書
  • お布施等の支払い記録(メモ可)
  • 料理・返礼品の領収書

申告書作成時の注意点
相続税申告書の第13表(債務及び葬式費用の明細書)には、各項目を詳細に記載する必要があります。特に以下の点に注意しましょう。

  • 債務の相手方:正確な名称・住所を記載
  • 債務の原因:借入理由や未払いの内容を明確に
  • 金額の根拠:残高証明書等の日付と一致させる
  • 葬式費用の内訳:控除対象・対象外を明確に区分

税務調査への備え
相続税の税務調査率は約10-15%程度ですが、経費項目は特に注目される部分です。調査官は以下の点を重点的にチェックします。

  • 債務の実在性と確実性
  • 葬式費用の妥当性と社会通念上の相当性
  • 相続人固有の債務との区別
  • 領収書等の証明資料の整合性

そのため、申告前には専門家による事前チェックを受けることを強く推奨します。書面添付制度を利用した申告では、税務調査率が1%未満に抑えられるという実績もあります。

 

継続的な記録管理
相続税の申告は一度で終わりではありません。修正申告や更正の請求の可能性、さらには相続財産の売却時の取得費加算特例の活用なども考慮し、関連書類は少なくとも7年間は保管しておくことが重要です。

 

デジタル化による書類管理も有効で、スキャンした書類をクラウドストレージに保存することで、紛失リスクを軽減し、必要時の検索も容易になります。