相続財産管理人の選任費用と予納金の仕組みを徹底解説

相続財産管理人の選任費用と予納金の仕組みを徹底解説

相続財産管理人の選任費用:予納金・報酬・申立の全体像

予納金を払っても、相続財産が少なければあなたは1円も返ってきません。


📋 この記事の3ポイントまとめ
💴
費用は「申立費用+予納金」の2本立て

申立費用は約5,000〜6,000円ほどで済むが、予納金は10万円〜100万円と幅が大きく、相続財産の内容によって家庭裁判所が決定する。

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費用は原則「相続財産」から出る

相続財産に十分な現預金があれば申立人の自己負担はほぼゼロ。財産が少ない場合のみ、申立人が予納金を実質的に負担することになる。

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選任から清算完了まで最短でも10ヶ月超

公告・催告に要する法定期間だけで10ヶ月以上かかる。早めの申立と専門家への相談が費用と時間の節約に直結する。


相続財産管理人の選任が必要なケースと「清算人」への名称変更


「相続財産管理人」という言葉を調べていると、「相続財産清算人」という名称に出くわすことがあります。これは同じ制度です。2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法によって、旧来の「相続財産管理人」という名称が「相続財産清算人」に変更されました。ただし、インターネット上では旧名称の記事も多く残っており、混同しやすい点には注意が必要です。


選任が必要となる主なケースは以下の3つです。


- 法定相続人が誰もいない場合:独身で兄弟姉妹もなく天涯孤独の状態で亡くなったようなケースが該当します。


- 相続人全員が相続放棄をした場合:相続放棄をしても財産が宙に浮いたままになるため、清算人が必要です。


- 法定相続人が不在で特定遺贈があるケース:遺言によって特定の財産を渡す指定はあっても、相続人がいない場合です。


つまり基本原則は「財産の引き取り手がいない状態の解消」です。


注目すべき点として、近年は選任件数が急増しています。日本経済新聞の報道(2019年7月)によれば、選任数は2000年の7,639件から2017年には2万1,130件へと、約2.7倍にまで増加しました。未婚率の上昇や少子高齢化の加速が主な背景とみられており、今後さらに増える見通しです。


また、旧法では公告・催告などの法定手続き期間が合計で約14ヶ月以上かかっていましたが、改正後は最短約10ヶ月程度に短縮されました。これは財産を待つ債権者や特別縁故者にとって、実質的な時間コストの削減を意味します。


参考:2023年改正民法における相続財産清算人制度の詳細は裁判所公式サイトに掲載されています。


相続財産清算人の選任 | 裁判所


相続財産管理人の選任にかかる費用の内訳:申立費用と予納金

費用の構造は2段階です。まず申立時に必要な「申立費用」、次に場合によって必要になる「予納金」に分かれます。


申立費用の内訳(合計約5,000〜6,000円)


| 項目 | 金額の目安 |
|------|-----------|
| 収入印紙(申立書貼付用) | 800円 |
| 郵便切手(連絡用) | 約1,000円(裁判所による) |
| 官報公告料 | 約5,075円 |
| 戸籍謄本等の取得費用 | 450円〜(通数による) |


申立費用の合計は1万円に満たない金額です。これだけ見ると「安く済む」という印象を持つかもしれません。しかし問題は次の予納金にあります。


予納金の相場:10万円〜100万円


予納金は、相続財産管理人(清算人)の報酬や業務経費に充てるため、申立人が家庭裁判所に事前納付するお金です。具体的な金額は家庭裁判所が財産内容を審査して決定します。申立の段階では金額を教えてもらえず、選任直前に判明するという流れです。


目安として、預貯金が多い場合は予納金が低くなる傾向があり、不動産や株式が多い場合は手間がかかるため高くなりやすい傾向があります。たとえば遺産が預貯金100万円程度なら予納金が10万〜20万円台に収まることもありますが、不動産のみで現金がほとんどない場合は50万〜100万円を求められるケースもあります。


これは東京ドーム(敷地約4万6,000㎡)と草野球の公園くらいの差があるイメージで、財産構成次第で費用規模が根本的に変わります。


参考:予納金の詳細な解説はこちら。


相続財産の予納金ってなに?余ったら返ってくる? | 相続手続代行サポート


予納金は誰が払う?費用負担のルールと「返ってくるお金」の条件

予納金の負担者は申立人です。


申立人が故人の債権者であれば債権者が、相続放棄をした元相続人であれば放棄した人が負担します。特別縁故者(内縁の配偶者など)が申立をした場合も同様です。


重要なのは、この予納金が「返ってくる可能性がある」という点です。ただし条件があります。


- ✅ 返還される場合:相続財産に十分な現預金があり、清算後に余りが出た場合
- ❌ 返還されない場合:相続財産が少なく、清算費用を賄えなかった場合


たとえば、相続財産が「価値の低い地方の空き家のみ」という状況で50万円の予納金を納めた場合、売却してもほとんど手元に残らないため、予納金の多くが戻ってこないリスクがあります。


申立を行う前に「費用対効果の試算」が必要なのはこのためです。申立人が債権回収を目的としているなら、債権額と予納金を比較して採算が合うかを慎重に検討すべきです。費用倒れになるケースも珍しくありません。


また、相続財産に十分な現預金がある場合は、そもそも予納金の納付を求められないこともあります。つまり予納金が必要になること自体、「財産が薄い案件」のサインとも言えます。厳しいところですね。


参考:相続放棄後の管理義務と費用負担の関係については下記が詳しいです。


相続放棄をした後の管理責任 | 三井住友トラスト不動産


相続財産管理人の専門家報酬の相場と支払われる仕組み

家庭裁判所が選任する相続財産管理人(清算人)は、弁護士や司法書士などの専門家が就任することがほとんどです。専門家への報酬相場は月額1万円〜5万円です。


ただし、この金額は業務量や難易度によって変動します。財産の種類が多い、不動産が複数ある、債権者が多数いるといった複雑なケースでは報酬が高くなります。業務期間は清算が完了するまでの数ヶ月〜1年以上にわたるため、総報酬額は想定よりも膨らみやすい点に注意が必要です。


報酬の支払い方法:2パターン


まず原則は「相続財産から差し引かれる」形です。財産を売却・換価して得た資金から報酬と経費を支払うため、申立人の手出しは発生しません。


一方、財産が少ない場合や現預金がほとんどない場合は、事前に納付した予納金から報酬が支払われます。この場合、清算完了後に余った予納金が申立人に返還されますが、余らなければ戻りません。


ここで気になるのが「親族が清算人になれるか」という点です。相続財産清算人になるための国家資格は不要で、親族でも立候補できます。家庭裁判所に候補者として推薦することも可能です。これなら専門家報酬がかかりません。


ただし、誰を選任するかの決定権はあくまで家庭裁判所にあります。故人との利害関係や中立性を考慮して選任が行われるため、親族の推薦が通るとは限りません。これは使えそうですが、確実ではないということです。


参考:専門家報酬の相場と支払い構造については下記が参考になります。


各種管理人の選任の管理人報酬(予納金)の要否や相場 | 森川清法律事務所


相続財産管理人の選任費用を抑える3つの実践的な方法

費用が高額になりやすいことがわかったところで、節約策を整理します。


方法①:自分で申立を行う


相続財産清算人の選任申立は、弁護士や司法書士に代行を依頼することもできますが、代行費用として別途数万〜十数万円がかかります。申立書の書式や記載例は裁判所のウェブサイトで公開されており、一般の人でも対応可能です。


ただし、戸籍謄本は「被相続人が出生してから死亡するまでのすべての戸籍」を揃える必要があります。本籍地が何度も変わっている場合はこの収集作業が非常に手間になるため、そこだけ司法書士に依頼するという部分活用も現実的な選択肢です。


方法②:予納金を複数人で分担する


申立人は1人でなくても構いません。複数の利害関係人が共同で申立を行えば、予納金を分担することができます。たとえば、故人に債権がある人が複数いる場合は連名で申立を検討する価値があります。


方法③:遺言書養子縁組で事前に備える


これは「費用を抑える」というより「そもそも清算人が不要な状態にする」という発想です。遺言書があれば、遺言執行者が財産を処理できるため相続財産清算人は選任されません。相続人がいない状況が予想されるなら、生前に養子縁組を活用することで相続人を作ることも可能です。


金融資産を保有している人にとっては、相続財産清算人の問題は「将来の自分の財産が国庫に帰属してしまうリスク」とも直結します。なぜならば、死後に相続人がいなければ、残った財産はすべて国のものになるためです。生前対策の必要性は、こうした観点からも非常に高いと言えます。


この点について無料相談を受け付けている弁護士・税理士事務所も多いため、まずは相談だけでも検討してみるのが一つの出発点になります。


参考:費用を抑える方法や生前対策については下記の解説が詳しいです。


相続財産清算人(旧 相続財産管理人)の選任にはいくら必要?費用の内訳や節約方法を解説! | ベストロイヤーズ法律事務所




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