執行認諾文言付き公正証書の作り方と費用・手順を完全解説

執行認諾文言付き公正証書の作り方と費用・手順を完全解説

執行認諾文言付き公正証書の作り方・手順・費用を徹底解説

公正証書を作れば裁判なしで差し押さえできる、と思っていませんか?実は執行認諾文言のない公正証書では強制執行は一切できません。


📋 この記事の3ポイントまとめ
⚖️
執行認諾文言がなければ意味がない

普通の公正証書では強制執行できません。「執行認諾文言付き」でなければ、裁判を経なければ差し押さえが不可能です。

💰
費用は2〜5万円が目安

公証役場に支払う手数料は債権額に応じて異なります。100万円の債権なら約1万7,000円、1,000万円なら約4万3,000円が相場です。

📝
弁護士なしでも作成できる

公正証書は本人同士が公証役場へ出向けば、弁護士・司法書士を使わずに作成できます。ただし、内容の確認は専門家に依頼するのが安全です。


執行認諾文言付き公正証書とは何か?普通の公正証書との違い

公正証書とは、公証人が作成する公文書のことです。契約書や遺言書金銭消費貸借契約など、さまざまな場面で活用されます。しかし、ただ「公正証書を作った」だけでは、裁判なしに差し押さえをする力はありません。


執行認諾文言とは何でしょうか?


執行認諾文言とは、「債務者が強制執行に服することを認める」という意思表示を証書に盛り込んだ条項のことです。この文言が入っていることで、裁判所での訴訟手続きを省略し、直接差し押さえなどの強制執行ができるようになります。つまり、この文言が入っているかどうかで、書類としての「効力」がまったく変わります。


具体的には、金銭の支払いを目的とした請求(貸付金の返済、売買代金の支払いなど)に限って利用できます。これが原則です。


通常、貸したお金が返ってこない場合は「訴訟提起→判決→強制執行」という3ステップが必要です。早くても半年、長ければ1〜2年かかるケースもあります。一方、執行認諾文言付き公正証書があれば、「執行文の付与申請→強制執行」の2ステップで済み、最短数週間で差し押さえに着手できます。これは使えそうです。


普通の公正証書との違いを整理すると、以下のようになります。



















種類 裁判なしの強制執行 主な用途
普通の公正証書 ❌ 不可 契約の証明・遺言
執行認諾文言付き公正証書 ✅ 可能 金銭消費貸借・養育費など


この違いを理解しておくだけで、金融取引における法的リスクを大幅に下げられます。金融に関わるなら、この区別は必須の知識です。


執行認諾文言付き公正証書の作り方・公証役場での手続き手順

では、実際にどのように作成するのか、手順を順を追って説明します。


ステップ1:公証役場への事前相談・予約


公正証書は全国に約300か所ある公証役場で作成します。インターネットや電話で事前予約を行い、作成したい証書の内容を相談します。多くの公証役場では、持参する書類のリストや証書の文案について事前にアドバイスをもらえます。予約は必須です。


ステップ2:証書の文案作成


公証役場の指示に従い、証書の文案を準備します。金銭消費貸借契約を例にとると、①貸付金額・貸付日、②返済期日・返済方法、③利息・遅延損害金の率、④強制執行認諾の条項、という4つの要素が必須です。


特に④の「強制執行認諾の条項」が抜けると、ただの公正証書になってしまいます。文案の段階で専門家(弁護士・司法書士)に確認してもらうと安心です。1〜2万円程度の相談費用で、後のトラブルを防げます。


ステップ3:必要書類の収集


必要書類は当事者の状況によって異なりますが、一般的には以下のものが必要です。


- 当事者全員の印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 当事者全員の実印
- 本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
- 代理人が出席する場合は委任状と代理人の身分証明書


印鑑証明書は市区町村の窓口またはコンビニで取得できます。300円程度です。


ステップ4:公証役場での署名・押印


予約した日時に、債権者・債務者の双方(または代理人)が公証役場に出向きます。公証人が文案を読み上げ、内容確認後に署名・押印を行います。双方が揃うことが原則です。


ステップ5:正本・謄本の受け取り


手数料を支払い、公正証書の「正本」と「謄本」を受け取ります。正本は債権者が保管し、強制執行の際に使用します。謄本は債務者に交付されます。正本の紛失には注意が必要です。


日本公証人連合会:金銭消費貸借に関する公正証書の解説ページ(手続き・費用の公式情報)


執行認諾文言付き公正証書の費用・手数料の計算方法

費用は「公証人手数料」として、債権額(目的価額)に応じて法律で定められています。これが原則です。


公証人手数料の早見表(公証人手数料令に基づく)




































目的価額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 23,000円
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円


これに加えて、「用紙代(証書の枚数×250円)」「正本・謄本の交付手数料(1枚250円)」なども加算されます。総額では、一般的な金銭消費貸借で2〜5万円程度になることが多いです。


意外ですね。


弁護士・司法書士に依頼した場合の費用


本人同士で公証役場に出向けば、手数料以外の費用はかかりません。一方、弁護士に依頼すると、文案作成・立会い含めて5〜15万円程度の追加費用が発生します。司法書士の場合は3〜8万円程度です。費用を抑えたい場合は、文案だけ専門家にチェックしてもらい、公証役場への出席は本人が行う、というやり方が効率的です。


実際のコスト感(イメージ)


例えば、友人に300万円を貸す場合、公証人手数料は11,000円です。司法書士に文案チェックを依頼すると1〜3万円の追加費用がかかりますが、合計でも4〜5万円以内に収まることがほとんどです。訴訟費用や弁護士費用(50〜100万円以上になる場合もある)と比べると、いかにコストパフォーマンスが高いかがわかります。


法務省:公証人手数料令(公式PDF)手数料額の根拠となる法令


執行認諾文言付き公正証書に必要な書類と記載事項のチェックリスト

公正証書作成で最も多いミスは「書類不備による当日の作成不能」です。事前にしっかり確認しておくことが重要です。


必要書類チェックリスト



  • ✅ 当事者全員の印鑑証明書(3か月以内発行)

  • ✅ 当事者全員の実印

  • ✅ 運転免許証・マイナンバーカードなどの本人確認書類

  • ✅ 代理人出席の場合:委任状+代理人の実印・印鑑証明書・本人確認書類

  • ✅ 法人が当事者の場合:登記事項証明書・法人実印・代表者の印鑑証明書


証書に記載すべき必須事項


金銭消費貸借の場合、以下の記載が必要です。



  • 📌 貸付金額・貸付日・返済期日

  • 📌 返済方法(一括/分割)・振込先口座

  • 📌 利息(年率)・遅延損害金の率

  • 📌 期限の利益喪失条項(分割払いの場合)

  • 📌 強制執行認諾の条項(これが最重要)


特に「期限の利益喪失条項」は見落としやすい項目です。これがないと、分割払いで1回滞納しても「残額全部を一括請求」できないケースがあります。これは注意が必要なポイントです。


執行認諾文言の記載例


実際に証書に入れる執行認諾文言は、以下のような形式が一般的です。


```
債務者は、本契約上の金銭債務の履行を怠ったときは、
直ちに強制執行に服する旨陳述した。


```


この文言があることで、公正証書が「執行力のある債務名義」になります。つまり、裁判なしで強制執行が可能になるということです。


代理人による作成は可能か?


当事者本人が公証役場に出向けない場合は、代理人に依頼できます。ただし、委任状に「実印を押捺したもの」と「印鑑証明書」が必要です。また、代理人は委任者の意思を確認できる立場の人物でなければなりません。家族・弁護士・司法書士が代理人になるケースが多いです。


法テラス:公正証書に関するよくある質問(費用・手続きの一般的な解説)


執行認諾文言付き公正証書で実際に強制執行する方法と限界・注意点

公正証書を作成したとしても、それで「完全に安全」とは言えません。知っておくべき限界があります。


強制執行の実際の手順


執行認諾文言付き公正証書で強制執行を行うには、以下の手順が必要です。


1. 執行文の付与申請:公証役場に正本を持参し、「執行文」の付与を申請する
2. 送達証明書の取得:債務者に公正証書が送達されたことを証明する書類を取得する
3. 強制執行の申立て:執行文付き公正証書と送達証明書を添えて、地方裁判所に強制執行を申し立てる


送達証明書の取得を忘れるケースが非常に多いです。これがないと強制執行の申立て自体ができません。


差し押さえできる財産の種類


強制執行の対象になる財産は主に、預貯金・給与(手取りの4分の1まで)・動産・不動産などです。ただし、差し押さえを実行するには「差し押さえる財産の特定」が必要です。債務者の勤務先や口座のある銀行がわからなければ、実際には差し押さえができないこともあります。これが公正証書の最大の限界です。


財産の特定が難しい場合は、「財産開示手続」(2020年改正民事執行法で強化)や「第三者からの情報取得手続」を活用できます。債務者が財産開示に応じない場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。制度として実効性が高まっています。


公正証書の「盲点」:消滅時効に注意


あまり知られていない点ですが、公正証書(執行力のある債務名義)の消滅時効は10年です。10年を超えると時効により強制執行ができなくなる可能性があります。これは注意が必要です。


時効を止めるためには、「時効の完成猶予・更新」の手続きが必要です。具体的には、債務者に対して内容証明郵便で督促を送る、または裁判所に執行を申し立てることで対応できます。


公正証書は「無敵の書類」ではない


詐欺や脅迫によって作成された公正証書は無効になり得ます。また、债務者が「公正証書の成立に問題がある」と主張して「請求異議訴訟」を起こすケースもあります。公正証書はあくまで強力なツールですが、完璧ではありません。金融取引では、担保の設定や連帯保証人を組み合わせることで、回収可能性をさらに高めるのが現実的な対応策です。


裁判所:強制執行(民事執行)手続きの公式解説ページ(申立方法・必要書類)