石油税ガソリン税の仕組みと暫定税率廃止の影響を金融業従事者が解説

石油税ガソリン税の仕組みと暫定税率廃止の影響を金融業従事者が解説

石油税ガソリン税の複雑な税制構造と金融業界への影響

石油税とガソリン税の税制構造
ガソリン税の二重構造

揮発油税24.3円と地方揮発油税4.4円の本則税率に、暫定税率25.1円が上乗せされ現在53.8円

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石油石炭税と温暖化対策税

石油石炭税2.04円に地球温暖化対策税0.76円が上乗せされ、合計2.8円が課税

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消費税による二重課税構造

ガソリン本体価格に各種税金を含めた総額に対して10%の消費税が課税される仕組み

石油税ガソリン税の基本的な税制構造と税率の内訳

石油税とガソリン税は、日本のエネルギー税制の根幹を成す複雑な税制システムです 。ガソリンには揮発油税と地方揮発油税を合わせた「ガソリン税」が課されており、現在の税率は1リットルあたり53.8円となっています 。この内訳は、本則税率である揮発油税24.3円と地方揮発油税4.4円の合計28.7円に、特例税率(旧暫定税率)25.1円が上乗せされた構造です 。
参考)ガソリン税とは?内訳や二重課税問題、暫定税率を分かりやすく解…

 

さらに、石油石炭税として本則税率2.04円に地球温暖化対策のための特例税率0.76円が加算され、合計2.8円がガソリン1リットルあたりに課税されています 。これらの税金に加えて、ガソリン本体価格とすべての税金を含めた総額に対して10%の消費税が課されるため、ガソリン価格の約4割が税金で占められる構造となっています 。
参考)自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料 : 財務省

 

金融業従事者として注目すべき点は、これらの税制が国の一般会計収入の重要な財源となっていることです。石油諸税の総額は年間約4兆円に達し、国の基本的な予算規模である一般会計総額の約4%を占める規模となっています 。
参考)ガソリンと税金のおはなし

 

石油税における暫定税率と特例税率の歴史的経緯

暫定税率の導入は1974年に遡り、道路整備財源の確保を目的とした「時限的措置」として開始されました 。この暫定税率は揮発油税に24.3円、地方揮発油税に0.8円の合計25.1円が上乗せされ、本来は期限付きの措置でしたが、50年以上にわたって延長が繰り返され、実質的に恒久化されています 。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-trend/gasoline-tax/

 

2009年には道路特定財源制度の廃止に伴い、暫定税率は「当分の間税率」として名称変更されましたが、税率水準は維持されています 。この経緯により、現在では「旧暫定税率」や「特例税率」と呼ばれることが多くなっています 。
参考)https://www.sekiyukumiai.or.jp/event/story.html

 

金融業界が注視すべき点として、この暫定税率廃止論議が政治的争点となっており、2025年の参院選においても重要な議題の一つとされていることです 。暫定税率廃止により1リットルあたり25.1円の値下げが実現すれば、消費者の可処分所得増加による経済効果が期待される一方、国の税収減少という財政面での課題も存在します。
参考)石破首相辞任で「ガソリン暫定税率廃止」を止めるな!価格高騰の…

 

石油税における地球温暖化対策税と環境政策の連動性

地球温暖化対策税は2012年に環境税として導入され、全ての化石燃料を対象として二酸化炭素排出量に応じた課税を行う制度です 。この税制は既存の石油石炭税に上乗せする形で実施されており、CO2排出量1トンあたり289円の負担となるよう設計されています 。
参考)地球温暖化対策のための税とは・意味

 

ガソリンの場合、CO2排出原単位に基づいて1リットルあたり0.76円が地球温暖化対策税として課税されています 。この税制の特徴は、急激な負担増加を避けるため、導入から3年半で3段階に分けて税率が引き上げられた点です 。平均的な家庭での年間負担は約1,200円程度と想定されており、月換算では100円程度の負担となっています 。
参考)地球温暖化対策税の役割|仕組みや徴収方法、海外での取り組みに…

 

金融業従事者の視点からは、この環境税がESG投資やグリーンファイナンスの推進と密接に関連していることが重要です。企業の環境負荷コスト増加は財務分析における重要な要素となり、特に運輸業や製造業の業績評価において考慮すべき要因となっています。

 

石油税ガソリン税における二重課税問題と法的論点

ガソリン税における二重課税問題は、消費税の課税ベースにガソリン税や石油石炭税が含まれることから生じる構造的な問題です 。具体的には、ガソリン本体価格にガソリン税53.8円と石油石炭税2.8円を加えた金額に対して10%の消費税が課されるため、「税金に対する税金」という状況が発生しています 。
参考)ガソリン税の上に“消費税”がかかる「Tax on Tax(二…

 

政府は「ガソリン税は石油会社が納税義務者であり、消費税は消費者が負担するため、形式的には二重課税ではない」と説明していますが 、最終的な税負担は消費者に転嫁されるため、実質的な二重課税との指摘が根強く存在します 。
参考)毎日車に乗るため、毎月ガソリン代が「4000円以上」かかって…

 

この問題は国際的にも稀な税制構造とされており、OECD諸国との比較においても日本独特の制度となっています。金融業従事者としては、この税制構造が消費者物価や企業コストに与える影響を適切に評価し、投資判断や融資審査において考慮することが重要です。Tax on Tax構造による実質的な税負担率の高さは、関連業界の収益性分析において見過ごせない要素となっています。

 

石油税ガソリン税廃止が金融市場に与える波及効果分析

暫定税率廃止による経済効果は多方面にわたって波及することが予想されます。1リットルあたり25.1円の暫定税率廃止により、年間の家計負担軽減は相当な規模となる見込みです 。ただし、現在実施されているガソリン補助金(1リットルあたり約10円)が廃止される可能性があるため、実質的な値下げ効果は約15円程度になると予想されています 。
金融業界への影響として、まず運輸業や物流業の収益改善が期待される一方、石油関連企業の売上減少という相反する効果が生じる可能性があります。また、国の税収減少により約1.3兆円規模の財政収入が失われることから、他の税制による補完措置や国債発行増加などの財政政策の変更が必要となる可能性があります。

 

投資環境への影響では、燃料コスト削減により内需関連株式の評価向上が期待される一方、財政悪化懸念による国債市場への影響も考慮すべき要素です。金融機関の融資業務においても、運輸業や製造業のキャッシュフロー改善による信用リスク低下が期待される一方、石油販売業者の経営状況には注意が必要となります。長期的には、この税制変更がエネルギー政策や環境政策の方向性に与える影響も、ESG投資の観点から重要な検討要素となるでしょう。