ガソリン税暫定税率いつから始まり変遷と廃止議論の経緯

ガソリン税暫定税率いつから始まり変遷と廃止議論の経緯

ガソリン税暫定税率いつから始まり変遷と廃止までの全経緯

ガソリン税暫定税率の歴史的変遷
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1974年導入の背景

田中角栄内閣が第一次オイルショック後の財政逼迫と道路整備財源不足を背景に暫定措置として導入

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税率の変遷

当初2年間の臨時措置が延長を重ね、1979年に現在の25.1円となり50年間継続

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2025年廃止議論

与野党間で年内廃止に合意、補助金制度との関連で財源確保が重要課題

ガソリン税暫定税率導入の歴史的背景と田中角栄政権の決断

ガソリン税の暫定税率は1974年、田中角栄内閣の下で導入されました。この導入には複数の社会的背景が存在しており、第一次オイルショック(1973年)による石油価格の急騰と財政悪化が主要な要因でした。
当時実施されていた第7次道路整備五ヵ年計画(1973〜1977年度)では、計画事業量が当初の10兆3500億円から19兆5000億円へと大幅に拡大されており、深刻な財源不足に直面していました。高度経済成長期のインフラ需要増加と相まって、道路整備のための安定的な財源確保が急務となっていたのです。
参考)https://www.dlri.co.jp/files/macro/495361.pdf

 

この暫定税率は揮発油税の本則税率(28.7円)に上乗せする形で導入され、当初は「2年間の臨時措置」として位置づけられました。しかし、揮発油税が1954年に道路特定財源化されていたことから、新たに導入された暫定税率による増収分も道路整備を目的とする道路特定財源として活用されることになりました。

ガソリン税暫定税率の税額変遷と1979年の最終確定

暫定税率の税額は導入後、複数回の変更を経て現在の水準に至っています。1974年の導入時から2度のオイルショックなどの経済情勢を受けて段階的に引き上げられ、1979年に現在の1リットルあたり25.1円に確定しました。
参考)なぜ日本政府は「税金を取ることに熱心なのか」 約50年続く「…

 

この25.1円という税額は、本則税率28.7円と合わせて合計53.8円となり、現在まで維持されています。興味深いことに、当初「暫定」とされた措置が実質的に恒久化し、名目上は「一時的」な増税でありながら50年以上継続する結果となりました。
税率の変遷過程では、経済情勢の変化に応じた柔軟な調整が行われており、特に石油危機による燃料価格の不安定化や、道路整備事業の拡大需要が税率決定の重要な要因となっていました。1979年以降は税率が固定化され、政治的議論の焦点は税率の水準よりも制度の存廃や使途に移行していくことになります。

ガソリン税2008年失効復活騒動と政治的混乱の実態

2008年は「ガソリン国会」と呼ばれるほど暫定税率を巡る政治的混乱が発生した年でした。同年3月31日をもって暫定税率が一時失効し、ガソリン価格の大幅な変動が発生しました。
参考)ガソリン税 - Wikipedia

 

この失効は与野党の対立によるもので、民主党が暫定税率の即時廃止を主張する一方、福田康夫内閣は道路特定財源を2009年度から全額一般財源化するという新提案を示しましたが、合意に至りませんでした。結果として、暫定税率を含む租税特別措置法改正案の審議が年度内に完了せず、法的根拠を失った暫定税率が失効したのです。
参考)https://www.pressnet.or.jp/publication/view/080408_199.html

 

しかし、与党は衆議院での再議決により暫定税率を復活させ、2008年5月1日から再び53.8円の税率が適用されることになりました。この一連の過程でガソリン価格が1ヶ月間大幅に下落した後に再び上昇するという異例の事態が発生し、消費者の混乱を招くとともに政治制度の課題を浮き彫りにしました。
この経験は後の制度設計にも影響を与え、価格の急激な変動を避けるための仕組みづくりが重要課題として認識されるようになりました。

ガソリン税道路特定財源から一般財源化への転換点

2009年4月、ガソリン税の道路特定財源制度が廃止され、一般財源化が実現しました。この変更により、ガソリン税収は道路整備事業に限定されず、幅広い行政目的に活用可能となりました。
参考)ガソリン税の概要とその行方|税理士のための第一法規 喫茶

 

道路特定財源制度は1954年の揮発油税導入時から続いており、道路整備事業の安定的な財源として機能していました。しかし、道路整備の進展や財政需要の多様化を背景に、より柔軟な財源活用を求める声が高まっていました。
参考)道路:道路IRサイト 財源 - 国土交通省

 

一般財源化により、ガソリン税収は教育、社会保障、環境対策など様々な政策分野に配分可能となりましたが、同時に当初の導入目的である道路整備との整合性について疑問視する意見も生まれました。この制度変更は、暫定税率の存在意義そのものを問い直すきっかけとなり、後の廃止議論の伏線となったと考えられます。
財源の使途変更は政策の透明性向上につながった一方で、特定目的税としての性格を失ったガソリン税の位置づけについて、新たな議論を呼ぶことになりました。

ガソリン税トリガー条項創設と東日本大震災による凍結

2010年度税制改正において、ガソリン価格高騰時の負担軽減策として「トリガー条項」が創設されました。この制度は、ガソリンの3ヶ月平均小売価格が1リットルあたり160円を超えた場合、自動的に暫定税率の適用を停止し、本則税率28.7円のみを適用する仕組みでした。
トリガー条項の導入により、ガソリン価格が高騰した際には消費者負担を自動的に軽減できる制度が整備されました。しかし、この条項は実際には一度も発動されることなく、2011年3月11日の東日本大震災を契機に凍結されることになります。
震災後の凍結理由として、被災地の復旧・復興の妨げとなる流通混乱への懸念や、大幅な税収減による復興財源への影響が挙げられました。具体的には、トリガー条項発動前後でガソリンの買い控えや反動需要が発生し、全国的な燃料需給逼迫を招く可能性が危惧されたのです。
この凍結措置は「東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し、別に法律で定める日まで」とされ、現在まで継続しています。トリガー条項の凍結は、税制における緊急時対応の難しさを示すとともに、ガソリン価格対策の複雑さを浮き彫りにしました。

ガソリン税暫定税率2025年廃止議論と与野党協議の現状

2025年に入り、ガソリン税暫定税率の廃止に向けた具体的な政治的動きが活発化しています。野党7党は8月1日の臨時国会で、暫定税率を11月1日から廃止する法案を衆議院に共同提出しました。youtube
与野党間では年内のできるだけ早い時期に暫定税率を廃止することで基本合意が成立しており、現在は廃止に伴う財源確保策について協議が続けられています。暫定税率の廃止により、国は年間約1兆円、地方は約5千億円の税収減が見込まれるため、代替財源の確保が重要課題となっています。
参考)ガソリン暫定税率の廃止議論:法人増税による恒久財源確保が検討…

 

野党側は、廃止が実現するまでの間、現行の補助金を1リットルあたり10円から25円程度に段階的に拡大し、ガソリン価格を現状より15円程度安定的に低下させる案を提示しています。これにより、暫定税率廃止と補助金拡大を組み合わせた価格安定化策が検討されています。
廃止が実現した場合、ガソリン価格は1リットルあたり約25円の下落が期待される一方で、現行の補助金制度は終了する見込みであり、実質的な価格低下幅は約15円程度となる可能性が高いとされています。