トリガー条項と暫定税率の違いを解説

トリガー条項と暫定税率の違いを解説

トリガー条項と暫定税率の違い

トリガー条項と暫定税率の基本構造
トリガー条項の仕組み

価格160円を3ヶ月連続で超えた場合に暫定税率を自動停止する条項

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暫定税率の役割

本則税率28.7円に25.1円を上乗せした現行のガソリン税率

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両者の関係性

トリガー条項は暫定税率の課税を一時停止する制御機能

トリガー条項の基本的な仕組みと発動条件

トリガー条項は、ガソリン価格の高騰時に暫定税率の課税を自動的に停止する制度です 。具体的には、レギュラーガソリンの全国平均小売価格が3ヶ月連続で160円/ℓを超えた場合に発動され、ガソリン税25.1円/ℓと軽油引取税17.1円/ℓの課税が停止されます 。
参考)【家計コラム】関心を持ち、考え、備えよう!~今後ガソリン代は…

 

この仕組みは2010年度税制改正で創設されましたが、東日本大震災の復興財源確保のため2011年に凍結され、現在まで一度も発動されていません 。発動後は価格が3ヶ月連続で130円/ℓを下回った場合に課税が再開される復活条件も設定されています 。
参考)【1分解説】トリガー条項とは?

 

金融業従事者として注目すべきは、近年のガソリン価格水準では130円を下回ることは非現実的であり、事実上の恒久的減税となる可能性が極めて高いことです 。
参考)【ガソリン価格の最新動向(3)】ガソリン補助金はこれからどう…

 

暫定税率の歴史的経緯と現在の位置づけ

暫定税率は1974年に道路整備を目的として2年間の期限で導入された経過的措置でしたが、50年間にわたって延長・増額が繰り返されています 。当初の本則税率28.7円/ℓに25.1円/ℓが上乗せされ、現在のガソリン税は53.8円/ℓとなっています 。
道路特定財源制度は2009年に廃止され、暫定税率による税収は一般財源化されました 。これにより、道路整備という当初の目的から離れ、「当分の間税率」として政府の一般的な財源となっています 。
2024年12月には自民・公明・国民民主の3党が暫定税率廃止に合意し、2025年中の実施に向けて協議が続いています 。この動きは金融市場や関連業界への影響も予想されるため、注意深く監視する必要があります 。

トリガー条項と暫定税率の違いにおける法的位置づけ

法的観点では、暫定税率は租税特別措置法に基づく恒久的な税率であり、トリガー条項はその課税を一時停止する条項として位置づけられます 。トリガー条項は「一定事例発生した場合に税率変更や歳出削減などを自動実施する法律条項」として定義されています 。
参考)トリガー条項 - Wikipedia

 

現在の制度では、暫定税率は「当分の間税率」として法的に固定されており、トリガー条項の凍結により価格高騰時でも自動的な税率調整は行われません 。復興財源確保という名目で凍結されていますが、復興需要が一段落した現在でも解除されていない状況です 。
参考)ガソリンの課税と補助金 | 税理士法人シグマパートナーズ

 

金融業界では、この法的な不整合が政治的リスクとして認識されており、税制改正の動向が経済政策の予測において重要な要素となっています。

 

トリガー条項発動による経済的影響の違いと財源問題

トリガー条項が発動された場合、国と地方で年間約1.5兆円の税収減が見込まれています 。この規模は国税約1兆円、地方税約5千億円に相当し、公共サービスや道路網の維持管理財源に深刻な影響を与える可能性があります 。
参考)https://www.dlri.co.jp/files/ld/399830.pdf

 

一方、暫定税率の完全廃止では、より恒久的かつ大規模な財政影響が予想されます。現在の補助金政策では年間数千億円規模の支出となっていますが、税率調整による減収はこれを大きく上回る規模となります 。
金融業従事者の視点では、これらの財政影響が国債発行や金融政策に与える波及効果も重要な分析要素です。税収減による財政悪化は長期金利や円相場にも影響を与える可能性があります。

 

トリガー条項凍結解除と暫定税率廃止の政治的背景

2024年の衆院選結果により自民・公明両党が少数与党に転落し、議席を大きく増やした国民民主党の政治的影響力が高まったことが、暫定税率廃止合意の背景にあります 。これまで税収確保を優先してきた与党が、政権維持のために政策転換を迫られた形です。
トリガー条項の凍結解除については、ガソリンスタンドでの事務負担増大や価格変動による市場混乱への懸念が指摘されています 。財務省は「脱炭素に向けた国際的な潮流」も考慮要因として挙げており、環境政策との整合性も論点となっています 。
参考)ガソリン税「トリガー条項」凍結解除の課題「解決に至らず」 加…

 

興味深いことに、暫定税率は意図せざる「隠れカーボンプライシング」として機能していたとの分析もあり 、廃止が環境政策に与える長期的影響も注目されています。金融業界では、ESG投資の観点からもこの動向を注視する必要があります。
参考)ガソリン税暫定税率は“隠れカーボンプライシング”だったのか?…