暫定税率何に使われている道路財源から一般財源化の変遷と現在の用途

暫定税率何に使われている道路財源から一般財源化の変遷と現在の用途

暫定税率何に使われている

暫定税率の現在の用途と変遷
🛣️
道路特定財源時代(1974-2009年)

道路整備・維持管理に特化した財源として活用

💰
一般財源化後(2009年以降)

社会保障・防衛費・地方交付税などに幅広く充当

⚖️
現在の議論

廃止による家計負担軽減と財政収支への影響のバランス

ガソリンの暫定税率は、1974年に導入された「一時的措置」として始まり、現在まで50年近く続いている制度です 。当初は道路整備財源の確保が目的でしたが、2009年の制度改革により一般財源化され、使途が大きく変化しました 。現在では道路関連予算だけでなく、社会保障費や防衛費、教育予算など幅広い分野に活用されています 。
参考)ガソリン代、本当に安くなる?2025年12月廃止で修正協議中…

 

暫定税率導入の背景と道路特定財源制度

暫定税率は1974年の第一次オイルショック後、エネルギー価格高騰と道路整備財源不足を背景に導入されました 。当初の本則税率28.7円に25.1円を上乗せし、合計53.8円の税率となっています 。
参考)【1分解説】ガソリン暫定税率とは?

 

この制度は「道路特定財源」として機能し、ガソリンを多く消費する道路利用者が道路整備費を負担する受益者負担の原則に基づいていました 。集められた税収は以下の用途に充当されていました:
参考)たった1記事でわかるガソリン暫定税率とは – 初心者にもわか…

 

しかし、道路整備が進んだ現在でも税率は据え置かれ、「暫定」の名で恒久化された状態が問題視されるようになりました 。
参考)日本のガソリン暫定税率と二重課税問題|吉田 章

 

暫定税率一般財源化後の使途変更

2009年4月の制度改革により、道路特定財源は完全に廃止され、一般財源化されました 。この変更により、ガソリン税収の使途は大幅に拡大し、現在では以下の分野に活用されています:
参考)道路:道路IRサイト 財源 - 国土交通省

 

社会保障分野への充当

  • 年金・医療・介護制度の運営費
  • 少子化対策・子育て支援予算
  • 生活保護費などの社会保障給付

国家運営の基盤経費

  • 防衛費・外交予算
  • 教育・科学技術振興費
  • 地方交付税として地方自治体への配分

継続的な道路関連予算

  • 既存道路の維持・補修工事
  • 交通安全対策(信号機・ガードレール設置)
  • 除雪・防災対策
  • 老朽化したインフラの更新工事

一般財源化により、道路利用頻度の高い国民がガソリン消費量に応じて福祉や教育分野の税負担を重く担う構造となり、受益者負担の原則が崩れたとの指摘もあります 。

暫定税率廃止による影響と代替財源問題

現在、与野党間で暫定税率廃止に向けた協議が進められており、実現すれば年間約1.5兆円の税収減が見込まれます 。廃止による主な影響は以下の通りです:
参考)「ガソリン減税の財源は基礎的財政収支黒字が毎年4兆円出てその…

 

家計・企業への恩恵

財政への深刻な影響

政府は「2026年度以降、基礎的財政収支の黒字が毎年4兆円規模で出てくるから、その一部を使えば1.5兆円は十分に賄える」との見解を示していますが 、具体的な財源確保策は明確になっていません。
また、トリガー条項(ガソリン価格が3カ月連続で160円/リットルを超えた場合に暫定税率を停止する制度)も2011年の東日本大震災後から凍結されており、財政への影響を懸念する声が根強く残っています 。
参考)なぜガソリンが高い? トリガー条項とガソリン税の関係とあわせ…

 

暫定税率制度の構造的問題点

50年間継続してきた暫定税率制度には、いくつかの構造的な問題が指摘されています。
「暫定」の名による制度の欺瞞性
「一時的措置」として導入されながら事実上恒久化されたことで、国民の税制度への信頼を損ねています。政府が「必要だから当分の間」と説明しながら毎回延長を繰り返した結果、政策決定プロセスの正当性に疑問が生じています 。
二重課税構造の不公平性
ガソリン税に消費税が課される「Tax on Tax」状態が続いており、税制原則の公平性・簡素性に反するとの批判があります。消費税はガソリン本体価格だけでなく、ガソリン税や石油税の合計額にも課税されるため、税負担の透明性が低下しています 。
参考)もともとおかしい「ガソリン価格」。“かたくな”に続ける石油元…

 

目的と使途の乖離
道路整備目的で導入された税が一般財源化により他用途に転用されることで、「道路を使わない人の利益のために道路利用者が負担する」という逆転現象が生じています 。
国際比較における位置づけ
OECD諸国との比較では、日本のガソリン税負担率は42.3%で中位に位置し、欧州主要国(フランス55.7%、ドイツ54.4%など)より低い水準です 。しかし、アメリカ(約20%)と比べると2倍以上の負担率となっており、国内では高税負担への批判が根強く存在します。
参考)「日本のガソリン税は高い」は本当か?国際比較でわかる、アメリ…

 

暫定税率廃止議論の現状と今後の展望

2024年の衆院選後、政治情勢の変化により暫定税率廃止に向けた動きが加速しています。自民・公明両党と国民民主党が廃止で基本合意したものの、実施時期や代替財源確保で課題が残っています 。
廃止実現への課題

段階的実施案の検討
政府内では2026年4月からの廃止案や、それまで補助金を継続する案が検討されており、急激な制度変更による混乱を避ける方向性が模索されています 。
暫定税率制度は、道路財源確保という当初目的から一般財源化を経て、現在では国家財政の重要な柱となっています。廃止による家計負担軽減と財政健全性の両立が、今後の政策決定における最大の焦点となっています。