
揮発油税は、揮発油税法に基づいて温度15度において比重が0.8017を超えない炭化水素油に課税される国税です。実際の課税対象は主にガソリンとなりますが、灯油は別途石油税が課税されるため対象から除外されています。
参考)税の種類「揮発油税」/ホームメイト
納税義務者は製造所から揮発油を移出する製造者と保税地域から揮発油を引き取る輸入業者とされています。これらの事業者は、製造・移出数量から運輸中の減少分(欠減控除率1.35%)を差し引いた数量に基づいて税額を計算し、毎月の移出量について翌月末日までに申告・納付する義務があります。
参考)https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1000521/1000533.html
現在の税率は1キロリットル当たり48,600円(本則税率24,300円+特例税率24,300円)となっており、製造業者がガソリン価格にこの税額を転嫁するため、実際の負担者は消費者となる仕組みです。
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地方揮発油税は、もともと「地方道路税」として1957年に創設された地方譲与税で、国が徴収した後に地方自治体に譲与される税制です。2009年の制度改革により現在の名称に変更されましたが、その本質的な仕組みは変わっていません。
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国が先に徴収し、その全額を地方自治体に分配するというのが地方揮発油税の特徴です。現在の税率は1キロリットル当たり5,200円(本則税率4,400円+特例税率800円)で、令和3年度実績では約2,225億円が地方の一般財源として譲与されています。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-whatis-gasoline-tax/
譲与の基準は道路の延長距離と面積を基本とし、市町村道については道路の延長距離と面積で各3分の1ずつ、都道府県道については同様の基準で配分されています。この仕組みにより、地方自治体は道路整備や維持管理だけでなく、一般行政サービスの財源として活用できるようになっています。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_22.html
揮発油税の税率構造を理解するには、**本則税率と特例税率(旧暫定税率)**の区別が重要です。本則税率は揮発油税24,300円/KL、地方揮発油税4,400円/KLの合計28,700円/KLですが、実際には特例税率により53,800円/KLが課税されています。
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この特例税率の起源は1974年の田中角栄内閣時代にさかのぼります。第7次道路整備五か年計画の財源不足と第1次オイルショック後の財政悪化を背景として、「2年間の臨時措置」として導入された暫定税率が、その後50年近く延長され続けてきました。
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2009年には道路特定財源制度の廃止に伴い一般財源化され、2010年に暫定税率は廃止されましたが、**同額を課税する「当分の間税率」**が新設されたため、実質的な税負担は変わっていません。現在、政府・与党は廃止に合意しているものの、具体的な実施時期は財政健全化の観点から慎重に検討されている状況です。
参考)トリガー条項とは
揮発油税と地方揮発油税の使途は、道路特定財源から一般財源への変遷という重要な転換点を経験しています。1954年に揮発油税が道路特定財源とされて以降、長期間にわたって道路整備・維持管理にのみ使用されてきました。
参考)揮発油税/ガソリン税
2009年の税制改正により両税とも一般財源化され、現在では道路関連事業以外にも幅広く活用されています。揮発油税の税収約2兆790億円は国の一般財源として、社会保障費や教育費、防衛費など様々な政策分野に充当されています。
参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2022pdf/20220708087.pdf
一方、地方揮発油税の約2,225億円は地方の一般財源として全額譲与され、各自治体が地域の実情に応じて活用できます。この違いにより、国は税収を直接管理・運用できる一方、地方自治体は自主財源として柔軟な活用が可能となっています。金融業界においては、この税収構造が国と地方の財政状況や投資環境の分析において重要な指標となります。
沖縄県には全国唯一の揮発油税軽減措置が適用されており、これは金融業従事者にとって地域投資戦略の重要な考慮要素です。沖縄復帰特別措置法により、県内で流通するガソリンについて7,000円/KLの軽減が実施され、本土の53,800円/KLに対し46,800円/KLとなっています。
参考)揮発油税等(ガソリン税)の軽減措置|沖縄県公式ホームページ
この軽減措置は1972年の本土復帰以降継続されており、令和6年度税制改正では2027年5月14日まで3年間の延長が決定されました。さらに、ガソリン価格が3ヶ月連続で160円/Lを超えた場合には、特例税率の適用が停止され、軽減税率24.9円/Lが適用される「トリガー条項」も設定されています。
参考)https://www.nta.go.jp/about/organization/okinawa/topics/pdf/12100505.pdf
金融業界の視点では、この税制優遇により沖縄県の物流コストや事業運営費が本土と比較して有利となることが、地域投資や企業進出の判断材料として重要です。特に運輸業や製造業への投資検討において、この税制メリットは収益性分析の重要な要素となり、沖縄振興政策と連動した長期的な投資戦略の構築に影響を与えています。
参考)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/request/cao/06y_cao_k_07.pdf