
揮発油税法における対象物質の核心は「温度15度において比重0.8017を超えない炭化水素油」として定義されています 。この定義により、一般的にはガソリンが主要な課税対象となりますが、厳密には灯油も物理的条件を満たしているため、法的には課税対象に含まれています 。
炭化水素油の定義において重要な点は、2種類以上の炭化水素を主成分とし(概ね50wt%以上)、15℃1気圧時に液体である必要があることです 。単一の炭化水素も炭化水素油に含まれ、これらと炭化水素以外の物との混合物も対象となります 。
参考)揮発油税について
炭化水素系の溶剤を取り扱う製造業や燃料関係業界では、この基準が製品分類の根幹となるため、金融業従事者が融資判断や投資分析を行う際の重要な評価指標となります 。
参考)揮発油税の具体例と灯油免税とは?~揮発油税と灯油免税を分かり…
本来の揮発油は、液体温度15℃の時の比重が0.8017以下の炭化水素油として厳密に規定されています 。この基準により、一般消費者が使用するガソリンのほぼ全てが課税対象となり、1キロリットルあたり48,600円(本則税率24,300円に特例税率分を加算)の揮発油税が課税されます 。
納税義務者は製油所から揮発油を移出する製造業者と保税地域からの引取者ですが、実際の税負担は消費者価格に転嫁されるため、最終的には消費者が負担する仕組みです 。課税標準は移出・引取数量から貯蔵・輸送による減少分(欠減控除率100分の1.35)を差し引いた数量となります 。
石油業界では、この税率が製品コストに直接影響するため、代替燃料の開発や燃費向上技術への投資が促進される要因となっています。金融機関による関連企業への融資判断では、この税負担が企業の収益性に与える影響を精査する必要があります。
みなし揮発油は法第6条と租税特別措置法第88条の6により、2つの異なる基準で規定されています 。法第6条のみなし揮発油は「揮発油に炭化水素油以外のものを混合したもので、性状や用途が揮発油に類似するもの」と定義され、液状90vol%留出温度が267℃以下の特定石化製品以外のものが対象です 。
租税特別措置法第88条の6のみなし揮発油は、より具体的な数値基準を設けており、比重0.8017超~0.8762以下、90vol%留出温度267℃以下、初留点100℃未満の3条件すべてに該当する炭化水素油が課税対象となります 。
参考)揮発油税とは?~揮発油の定義と揮発油税法をわかりやすく解説~…
この制度は1999年頃の代替ガソリン「ガイアックス」問題を契機として整備されたもので、従来の揮発油税法では捕捉できない新種燃料への対応策として機能しています 。エタノール混合燃料など、環境対応型燃料の普及に伴い、この判定基準の重要性は高まっています。youtube
特定石化製品は、石油化学工業において原料として使用されるベンゾール、トルオール、キシロール、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、アルキルベンゼンの6種類のBTX類を中心とした製品群です 。これらの物質は本来であれば揮発油税の課税対象となりますが、石油化学製品の製造原料として指定用途に消費される場合は免税措置が適用されます 。youtube
参考)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/request/meti/07y_meti_k_11.pdf
特定石化免税制度では、製造業者が事前に税務署へ承認申請を行い、指定された用途での使用を条件として免税が認められます 。20リットル以下の小容器については自動的に指定用途扱いとなる特例があり、実務上の利便性が図られています 。youtube
興味深い点として、一般的なガソリンにもBTX類が含まれているため、ガソリン製造過程でこれらの成分を分離・精製する際には特定石化製品としての取扱いが必要となる場合があります 。この複雑な制度理解は、石油化学企業への投資判断や信用評価において不可欠です。youtube
灯油は物理的には揮発油の定義に該当しますが、揮発油税法第16条および第16条の2により特別に免税措置が講じられています 。この免税制度の根拠は、揮発油税の成り立ちが「自動車運転者から道路維持・整備財源を徴収する」目的にあることから、道路を使用しない灯油ストーブや航空機燃料には課税の必要性がないという理論的背景にあります 。
参考)揮発油税 - Wikipedia
灯油規格の具体的基準は「引火点30℃以上かつ初留点140℃以上」とされ、ミネラルスピリット、ジェット燃料(ケロシン)、一般灯油がこの条件に該当します 。一方で、石油ナフサは初留点が135℃であるため、わずか5℃の差で灯油免税の対象外となる興味深い事例があります 。
この制度設計により、同一企業内でも製品の最終用途によって税務処理が大きく異なるため、石油関連企業の財務分析では製品ポートフォリオの詳細な把握が重要となります。特に航空燃料事業への参入企業では、この免税措置が収益性に大きく影響します。
国税庁:揮発油税法基本通達
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/kihatsu/kihatu01/02.htm
経済産業省:原料用石油製品等の非課税化要望資料
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/request/meti/07y_meti_k_11.pdf