石油石炭税 ガソリン税の違いと税制改正動向

石油石炭税 ガソリン税の違いと税制改正動向

石油石炭税 ガソリン税の基本構造

石油石炭税とガソリン税の基本構造
課税段階の違い

石油石炭税は輸入・採取段階、ガソリン税は製造段階での課税

📊
税率構造

石油石炭税2.8円/L、ガソリン税53.8円/L(暫定税率含む)

🏛️
財源用途

エネルギー対策特別会計と道路財源への充当

石油石炭税の課税構造と財源用途

石油石炭税は、原油・石炭・天然ガスを対象とする国税で、1978年に導入されました 。課税段階は最上流の輸入者・採取者段階で行われ、現在の税率は原油1キロリットルあたり2,040円の本則税率に、地球温暖化対策税として740円が上乗せされ、合計2,780円となっています 。
参考)https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y164-09/ref01.pdf

 

ガソリンについては、1リットルあたり2.8円の負担となり、これは石油石炭税2.04円と地球温暖化対策税0.76円の合計です 。納税義務者は精製業者や石油輸入業者で、販売価格に転嫁されるため、最終的には消費者が負担することになります 。
税収の使途 💰

ガソリン税の暫定税率と二重課税問題

ガソリン税は揮発油税と地方揮発油税から構成され、1950年に道路整備財源として導入されました 。本則税率は揮発油税24.3円、地方揮発油税4.4円の計28.7円ですが、1974年から導入された暫定税率25.1円が上乗せされ、現在は1リットルあたり53.8円となっています 。
二重課税問題の構造 ⚖️
ガソリン価格における二重課税は、消費税が「ガソリン本体価格+石油石炭税+ガソリン税」の合計額に対して10%課税されることで発生します 。これは1989年の消費税導入時から続く構造的問題で、税金に対して再び税金がかけられている状態です 。
制度上は、ガソリン税の納税義務者が製造業者であることから法的には二重課税ではないとされていますが、実質的に消費者が負担する構造となっています 。軽油については製造時の課税がないため、この問題は生じません 。
参考)ガソリンは二重課税?│自動車整備士情報せいび界

 

石油石炭税とエネルギー特別会計の財政構造

石油石炭税の税収は、一般会計に収納された後、エネルギー対策特別会計のエネルギー需給勘定に繰り入れられます 。同勘定の歳入規模は約7,745億円で、石油石炭税が主要財源となっています 。
参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2016pdf/20161101016.pdf

 

エネルギー需給勘定の特徴 🏦

  • 石油証券及び借入金収入による資金調達機能
  • 備蓄石油売払代による収入
  • 前年度余剰金の繰越し
  • 雑収入による補完

この特別会計制度により、エネルギー政策の安定的な財源が確保されていますが、一方で資金の滞留や効率的な運用に関する課題も指摘されています 。特に周辺地域整備資金については、当面需要が見込まれない資金の滞留問題が会計検査院から指摘されています 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f633b228bc69fa935553601344d608aa9bba6ffe

 

ガソリン税暫定税率廃止論議の経済インパクト

2025年には与野党6党がガソリン税暫定税率の年内廃止で合意し、野党8党が11月1日廃止を求める法案を提出するなど、廃止に向けた動きが加速しています 。暫定税率廃止により、ガソリン価格は1リットルあたり25.1円引き下げられる見込みです 。
参考)ガソリン旧暫定税率廃止をめぐる動向と今後の課題 ~CPIコア…
youtube
廃止による影響規模 📈

  • 減税規模:約1兆円
  • ガソリン価格下落:25.1円/L
  • CPIコアへの影響:約0.3%ポイント押し下げ(推計)
  • 地方自治体への財源影響:地方揮発油税分の減収

しかし、財源確保の問題が残されており、自動車業界からは車体課税への付け替えやユーザー負担増への反対意見が表明されています 。代替財源の検討や地方自治体への配慮、関連補助金の扱いなど、複数の課題が存在しています 。
参考)https://www.jama.or.jp/operation/tax/pdf/Request_for_Tax_Reform_and_Budget.pdf

 

石油石炭税における地球温暖化対策税の役割と今後の展望

地球温暖化対策税は2012年から石油石炭税に上乗せする形で導入され、CO₂排出量1トンあたり289円の税負担が設定されています 。この税率は諸外国の炭素税と比較して低水準に設定されており、経済への配慮がなされています。
参考)https://solar-frontier.com/jpn/blog/pages/carbon-tax/

 

カーボンプライシングとの関係 🌱
2025年以降、政府は「成長志向型カーボンプライシング」の本格導入を予定しており、2027年度には排出量取引制度の本格稼働、2029年度には化石燃料賦課金の導入が計画されています 。これに伴い、既存のエネルギー関係諸税全体の総合的な見直しが検討されています。
参考)経団連:令和7年度税制改正に関する提言 (2024-10-0…

 

経済団連は地球温暖化対策税について、EBPMの観点から排出削減効果の定量的な評価を求め、廃止も含めた見直しを提言しています 。また、原料用途免税の本則非課税化や、消費税と石油諸税の適切な調整措置(二重課税の解消)についても検討が求められています 。
将来的な制度設計の方向性

  • 成長志向型カーボンプライシングとの整合性確保
  • 既存エネルギー関係諸税の統合・簡素化
  • 二重課税問題の抜本的解決
  • 地方財源への配慮