

あなたが「節税」「投資」を考えるとき、実は国の歳出構造を知らないと損をする。
「歳出(さいしゅつ)」とは、国や地方公共団体が1つの会計年度(毎年4月1日〜翌年3月31日)に支払う、すべての支出のことです。英語では "government spending" と呼ばれ、政府が公共サービスを提供するために使うお金全体を指します。
家計に置き換えると、わかりやすくなります。家計では1年間の「収入」と「支出」がありますよね。国の場合、収入にあたるのが「歳入(さいにゅう)」、支出にあたるのが「歳出」です。
つまり歳出は「国の年間の出費」が基本です。
ただし、家計の支出と少し異なるのが「義務的な支出」の多さです。家計では趣味の出費を削ることができますが、国の歳出の多くは社会保障費・国債費など、削れない性質のものが大半を占めています。厳しいところですね。
2025年度の国の一般会計歳出総額は115.2兆円。これを国民1人当たりに換算すると、約92万円規模の支出が毎年行われている計算になります。東京ドームのキャパシティが約5万人ですから、全国民の負担規模がいかに大きいかがわかります。
| 用語 | 意味 | 家計の例え |
|---|---|---|
| 歳出 | 国・自治体の年間支出 | 家計の年間総支払い |
| 歳入 | 国・自治体の年間収入 | 家計の年間総収入 |
| 一般歳出 | 歳出から国債費・地方交付税交付金等を除いた分 | 生活費・教育費など |
| 国債費 | 過去の借金の返済・利払い | 住宅ローン返済 |
「一般歳出」という言葉も重要です。歳出の総額から「国債費」と「地方交付税交付金等」を差し引いたものが一般歳出で、政府が実際に政策として使えるお金を示しています。2025年度の一般歳出は約68.1兆円です。
参考:歳出・歳入の構造についての財務省の解説ページ
財務省|予算はどのような分野に使われているのか
2025年度予算における歳出115.2兆円の内訳を確認すると、大きく3つのカテゴリーが全体の約4分の3を占めています。金融に関心がある人なら、この構造を把握しておくことが欠かせません。
① 社会保障関係費:38.3兆円(歳出全体の33.2%)
年金・医療・介護・こども子育て支援などに使われる費用です。一般歳出(政策経費)の中では56.2%という圧倒的なシェアを占めます。これは東京都の年間予算(約16兆円)の約2.4倍に相当する規模です。
② 国債費:28.2兆円(歳出全体の24.5%)
過去に発行した国債の元本返済(償還)と利払いに使われる費用です。この費用は「使いたくても政策に使えないお金」であり、歳出の硬直化の主因になっています。2025年度は過去最高額を記録しました。
③ 地方交付税交付金等:18.9兆円(歳出全体の16.4%)
全国どこでも一定水準の行政サービスが受けられるよう、国が地方自治体に配分するお金です。
この3つで歳出全体の74%を占めます。残りの約26%が公共事業・文教・防衛費などに充てられます。
| 歳出の主な項目 | 金額(2025年度) | 割合 |
|---|---|---|
| 社会保障関係費 | 38.3兆円 | 33.2% |
| 国債費 | 28.2兆円 | 24.5% |
| 地方交付税交付金等 | 18.9兆円 | 16.4% |
| 公共事業関係費 | 約6.0兆円 | 約5.2% |
| 防衛関係費 | 約8.5兆円 | 約7.4% |
| その他 | 約15.3兆円 | 約13.3% |
注目したいのが防衛費です。日本政府はGDP比2%への引き上げを目標に掲げており、2025年度の防衛関係費は前年度比約9.7%増となっています。この増加は今後も続く見通しであり、歳出全体の構造を変える大きな要因の一つとなっています。
結論は「歳出の中身を知ることが財政の読み解きの第一歩」です。
参考:財務省による社会保障関係費の詳細
財務省|社会保障関係費は今後も増えるのか
歳出と歳入の関係は、財政の健全性を測る基本的な指標です。家計でいえば「収入より支出が多ければ借金をせざるを得ない」という単純な話です。ただし、国の場合はその規模と影響が桁違いです。
2025年度の歳入の中身を見ると、税収は約78兆円が見込まれています。一方で歳出は115.2兆円。この差額は約37兆円以上となり、この不足分を「国債(公債)」の発行で補っています。
これが財政赤字の構造です。
国債は将来の税収を担保に借りるお金であり、将来世代への「ツケ回し」とも表現されます。2025年度末の普通国債残高は1,129兆円に達する見通しです。1,129兆円を1万円札で積み上げると、その高さは約1,129万kmにもなります。地球から月までの距離(約38万km)の約30倍です。
これは痛いですね。
財政健全化の指標として重要なのが「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」です。これは国債費(返済・利払い)を除いた歳出と、国債発行以外の歳入のバランスを示すもので、「今の政策がどれだけ借金に頼っているか」を示す数値です。
政府は長年「2025年度までにプライマリーバランスを黒字化する」目標を掲げてきましたが、大規模補正予算の編成などにより、黒字化の達成は後ずれしています。内閣府の試算では2026年度に28年ぶりの黒字化が視野に入っているとされています。
参考:財務省の財政関係資料
財務省|令和7年度一般会計予算 歳出・歳入の構成(PDF)
金融に関心のある方にとって、「歳出が増える=自分の投資や家計にどう影響するか」という視点が最も重要です。この点は一般的な解説記事ではあまり触れられていません。
① 国債金利への影響
歳出が膨らむと国債の発行量が増えます。市場に国債が大量に供給されると、需給バランスが崩れて国債価格が下落しやすくなり、金利が上昇する圧力がかかります。
金利上昇は既存の国債投資家にとっては保有債券の価値下落を意味します。また、変動金利の住宅ローンを持つ人にとっても返済額増加につながります。
② 株式市場への波及
金利が上昇すると、企業の借入コストが増加し、利益が圧迫されやすくなります。特に不動産・公益・金融セクターへの影響が大きく、株価の調整要因となります。一方、メガバンクなど金融機関は利ざやの拡大で恩恵を受ける側面もあります。
③ 増税・社会保険料上昇リスク
歳出の恒常的な膨張は、いずれ歳入側の増収策として跳ね返ってきます。防衛費増額に伴う所得税増税が2027年1月から開始されることも決定しています。社会保険料についても上昇傾向が続いており、実質的な手取り収入の減少につながっています。
これは使えそうな知識ですね。
歳出の変化を「投資の先読み」に使う方法
毎年末に財務省が公表する「翌年度予算案」を確認することで、どのセクターに政府支出が集中するかが把握できます。防衛費が増額される年は防衛関連株、公共事業費が増える年はインフラ関連株の動向に注意するといった具合に、歳出の変化は株式投資の参考情報として活用できます。
財務省の予算情報は無料で公開されており、毎年12月下旬の閣議決定後すぐに閲覧可能です。確認先は財務省公式サイト(mof.go.jp)の予算関連ページから行えます。
参考:国の財政と金利動向についての大和総研レポート
金融を学ぶ人が見落としがちな、しかし最も重要な論点がこの「自然増」の問題です。
社会保障費の「自然増」とは、制度を変えなくても高齢化の進展によって費用が自動的に増えていく現象です。毎年数千億円〜1兆円規模で社会保障費が自然に膨らみます。
現時点での数字を確認しましょう。
- 🏥 2025年度の社会保障関係費:38.3兆円(前年度比約6,000億円増)
- 👴 2025年にはいわゆる「団塊の世代」全員が75歳以上の後期高齢者になる
- 💊 75歳以上になると1人当たり医療・介護費が急増する
「団塊の世代」は約800万人規模です。この世代が全員後期高齢者になると、医療・介護費の自然増は一段と加速します。現役世代1人で高齢者1人以上を支える構図が現実になりつつあります。
社会保障費が増え続けると、次のような「個人への影響」が連鎖します。
1. 社会保険料の引き上げ:会社員の場合、給与から天引きされる健康保険料・厚生年金保険料の増加
2. 給付水準の引き下げ:将来受け取れる年金額のさらなる目減り
3. 消費税など間接税の引き上げ圧力:社会保障財源の確保に向けた増税論議
これだけ覚えておけばOKです:歳出の膨張は「将来の増税と給付減少」のリスクとセットで考える必要があります。
だからこそ、NISAやiDeCoを活用した自助努力型の資産形成が重要です。特にiDeCo(個人型確定拠出年金)は掛金が全額所得控除になるため、増税局面でも税メリットが大きくなります。まず「iDeCo シミュレーション」で自分の節税額を確認するところから始めるのがおすすめです。
参考:社会保障費の増加と財政の見通しについて
厚生労働省|給付と負担について(社会保障給付費の推移)