

自己都合退職でも、教育訓練を1つ受ければ給付制限がゼロになります。
退職後にハローワークで手続きをすると、すぐに失業保険(雇用保険の基本手当)が振り込まれると思っている人は少なくありません。しかし実際には、受給開始まで「2つの待ちの期間」が存在します。それが「待期期間」と「給付制限」です。
まず、待期期間とは、ハローワークへ求職の申し込みをした日から通算7日間、失業保険が支給されない期間のことです。会社都合・自己都合にかかわらず、すべての離職者に例外なく適用されます。この7日間は「本当に失業しているかどうかを確認する期間」と理解してください。
一方、給付制限とは、待期期間の7日間が終わった後に、さらに一定期間、基本手当が支給されない状態のことを指します。つまり、給付制限が原則です。主に以下の2つのケースに該当する場合に発生します。
- 正当な理由がない自己都合退職(例:転職、飽き、人間関係など)
- 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(懲戒解雇など)
待期期間が「全員対象の7日間」であるのに対し、給付制限は主に「自己都合退職者」に課されるペナルティ的な仕組みです。これが条件です。
給付制限の仕組みは雇用保険法第33条に根拠があります。考え方としては、「会社都合で急に仕事を失った人」と、「自分の意思で退職した人」では、緊急度が異なるという判断に基づいています。自己都合の人は計画的に準備できる余地があるとみなされるため、すぐに給付を受けられない仕組みになっているのです。
| 種類 | 対象者 | 期間 |
|---|---|---|
| 待期期間 | 全離職者 | 7日間(固定) |
| 給付制限 | 主に自己都合退職者 | 1か月〜3か月(条件による) |
参考:雇用保険の給付制限に関する根拠法令はこちらで確認できます。
給付制限期間は、法改正によって大きく変わりました。意外ですね。
2025年3月31日以前に退職した場合は、自己都合退職であれば待期期間7日間に加えて原則2か月の給付制限がありました。そのため、実際に初回の失業認定を受けて振込まれるまで、退職後おおよそ2〜3か月以上かかるケースが一般的でした。
ところが、2025年4月1日以降に退職した場合は、給付制限期間が原則1か月に短縮されました。これは「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)」に基づく改正で、労働者が安心して転職・再就職活動を行えるよう支援する目的で実施されました。
改正後の給付制限期間をまとめると次の通りです。
| 状況 | 給付制限期間 |
|---|---|
| 2025年4月1日以降の自己都合退職(通常) | 原則1か月 |
| 2025年3月31日以前の自己都合退職(通常) | 原則2か月 |
| 過去5年間に3回以上自己都合退職し受給資格決定を受けた場合 | 3か月(例外) |
| 懲戒解雇など重責解雇の場合 | 3か月 |
「1か月に短縮されたから大丈夫」と思っていても、頻繁に転職を繰り返している人は要注意です。過去5年間で3回以上、正当な理由のない自己都合退職をしており、かつ受給資格決定を受けている場合、3回目以降は給付制限が3か月に据え置かれます。
たとえば、22歳で就職後、25歳・27歳・29歳とそれぞれ自己都合退職している場合、29歳での退職時の給付制限は3か月になります。5年以内に3回のカウントをされる、という点が原則です。このルールを知らないまま退職すると、生活費の計算が大きく狂いかねません。
参考:厚生労働省による2025年4月改正の公式説明ページです。
厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
自己都合でも、給付制限がゼロになる道が2つあります。これは使えそうです。
① 特定理由離職者への認定
形式上は「自己都合退職」であっても、やむを得ない事情がある場合は「特定理由離職者」に認定され、給付制限なしで受給できます。対象となる主な理由は次の通りです。
- 💊 病気・けが・心身の障害により就業が困難になった(医師の診断書等が必要)
- 👶 妊娠・出産・育児(受給期間の延長措置を受けた場合)
- 👴 親族の常時介護が必要になった
- 🏠 転居を伴う家族の転勤・転居などにより通勤が著しく困難になった
- 📉 勤務先の大幅な賃金引き下げ(3か月連続で賃金の30%以上の低下など)
これらの理由に当てはまる場合、ハローワークで「特定理由離職者」として認定を受ければ、7日間の待期期間が終わった翌日から基本手当を受給できます。つまり、実質1か月超は早く受給開始できます。
重要なのは、「離職票の退職理由」欄の記載内容です。会社が「自己都合」と記載していても、正しい理由を申し出て、証明書類(診断書・転居証明など)を提出することで認定されるケースがあります。離職票を受け取ったら必ず理由の確認を行いましょう。
② 教育訓練の受講で給付制限が解除(2025年4月新設)
2025年4月1日から新たに始まった制度として、厚生労働省が指定する「教育訓練給付金」の対象講座を受講した場合、給付制限期間が解除されます。適用されるタイミングは次の2つです。
- 離職前の1年以内に対象の教育訓練を受講していた場合
- 離職後(給付制限期間中)に対象の教育訓練を新たに受講する場合
どちらのケースでも、7日間の待期期間が終わった後、給付制限なしで基本手当が支給されます。リスキリング(学び直し)を推進するという国の方針が背景にあり、プログラミング・語学・資格取得など、幅広い講座が対象になっています。
退職を考えている段階で、厚生労働省の教育訓練給付制度の対象講座を確認しておくことで、受給タイミングを最大1か月以上早めることができます。これは得ですね。
参考:厚生労働省の教育訓練給付金対象講座の検索はこちらから。
「給付制限中は収入がゼロだからアルバイトをしたい」という気持ちは自然です。しかし、ここには落とし穴があります。
まず結論から言うと、給付制限期間中のアルバイトは申告を前提に認められています。ただし、働き方によって扱いが大きく変わります。
| 働き方 | 判定 | 影響 |
|---|---|---|
| 週20時間未満・短期 | 「内職・手伝い」扱い | 収入額次第で基本手当が減額 |
| 週20時間以上、または契約7日以上・週4日以上 | 「就職」扱い | 基本手当の受給資格を失う |
| 未申告でアルバイト | 不正受給 | 3倍返しの納付命令・支給停止 |
「週20時間以上」は、一般的なアルバイトでいうと「週5日・1日4時間以上」のペースが目安です。コンビニや飲食店で週5日入ってしまうと、受給資格そのものを失う可能性があります。
特に注意が必要なのが未申告のケースです。給付制限中に少しアルバイトをしたとしても、それを失業認定申告書に記入しないまま受給を続けた場合、不正受給とみなされます。
不正受給が発覚すると、以下のペナルティが発生します。
- 📛 不正行為以降のすべての給付が停止
- 💸 不正受給した金額の全額返還命令
- ❗ 悪質と判断された場合は「3倍返し」:返還額に加え、不正受給額の2倍相当の納付命令(合計で受給額の3倍)
たとえば、給付制限中に15万円分を不正受給した場合、最大で45万円の支払いを求められることになります。痛いですね。
さらに、マイナンバー制度の活用により、雇用保険とアルバイト先の雇用保険・税務情報が紐づきやすくなっています。「バレないだろう」という考えは非常に危険です。申告が必要なのが原則です。
参考:不正受給のペナルティの詳細はこちらで確認できます。
給付制限期間中に就職活動を続けて内定が出た場合、「待て、もらえる失業保険がなくなる?」と焦る人がいます。しかし実際には、早期に就職した方が金銭的に有利になるケースがあります。それが「再就職手当」です。
再就職手当とは、基本手当の受給資格者が、所定の給付日数を残した状態で早期に再就職した場合に支給される一時金のことです。再就職を後押しするための制度です。
受給条件の主なポイントは以下の通りです。
- ✅ 7日間の待期期間が満了後の就職であること
- ✅ 基本手当の給付残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていること
- ✅ 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受給していないこと
- ✅ 離職前の会社への再就職でないこと
- ✅ 1年を超えて雇用されることが確実な職であること
支給額は、「基本手当日額×残日数×給付率」で計算されます。給付率は残日数によって異なり、所定給付日数の3分の2以上残っている場合は70%、3分の1以上は60%です。
たとえば、基本手当日額が5,000円で所定給付日数90日のうち70日残っている状態(3分の2以上)で就職した場合、再就職手当は次のようになります。
$$\text{再就職手当} = 5{,}000 \text{円} \times 70 \text{日} \times 70\% = 245{,}000 \text{円}$$
もし失業保険を満額受給しようとすると 5,000円 × 90日 = 450,000円ですが、早期就職で得る給与収入を加えると、総合的には早期就職のほうがはるかに得なケースが多くあります。
なお、給付制限期間中に就職した場合は、待期期間(7日)の満了後1か月以内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職でないと再就職手当が支給されないという条件があります。この点は見落としやすいポイントです。1か月経過後であれば、自分で探した職場でも対象になります。
参考:再就職手当の詳細と計算方法はこちらから確認できます。